戒名とは?ランク一覧や値段相場、付けるときの流れを解説

「戒名には、どのような意味があるんだろう」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?親族の方が亡くなる機会は人生で多くはないため、戒名などの儀礼についてわからない点は多いですよね。

戒名とは、亡くなられた方が仏の世界で生きていくときに授けられる名前です。基本的に、遺族が菩提寺の僧侶に対して戒名料を支払い、読経のタイミングで戒名を授けてもらいます。

こちらの記事では、戒名が付けられる理由や果たしている役割、必要となる費用相場などを解説していきます。戒名の付け方で悩んでいる方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 戒名は亡くなられた方に対して付ける「新しい名前」
  • 戒名にはランクがあり、納める戒名料も異なる
  • 戒名を付けないことによるデメリットがある点に注意

戒名とは

戒名は「かいみょう」と読みます。亡くなられたあとに、菩提寺(先祖代々の墓)の僧侶から付けてもらうのが一般的です。

戒名は故人の新しい名前

戒名とは故人に授ける新しい名前のことです。日本では多くの世帯が仏教の檀家(寺院の信徒)となっており、菩提寺の僧侶に戒名を付けてもらうのが一般的です。仏の世界で生きていくために戒名が必要と考えられています。

仏教の世界では、亡くなったあとは「新しい存在」となり、過去の人生から解脱するという考え方があるためです。戒名は、墓石に掘られるほか、墓石の後ろに立てる卒塔婆(そとば)にも書かれ、亡くなられた方を偲ぶ際に用いられます。

戒名は故人が極楽浄土へ行くために付ける

戒名を付ける目的として、亡くなられた方が「極楽浄土へ行けるように導く」という点もあります。仏教の世界では、極楽浄土に行くために修行を行う必要があります。修行の際には戒名が必須と考えられているため、授けてもらうのが通例です。

また、単に亡くなられた方に対して新しい名前を付けるだけでなく、亡くなられた方の霊を安らかに成仏させる役割も果たしています

宗派ごとに戒名の付け方は異なる

仏教にはさまざまな宗派があり、戒名の付け方はそれぞれ異なります。菩提寺が信仰している宗教について調べておけば、どのような戒名が付くのかイメージできるでしょう。

  • 真言宗
  • 浄土宗
  • 浄土真宗
  • 日蓮宗
  • 曹洞宗・臨済宗(禅宗)

以下で、宗教ごとの違いについて解説します。

真言宗

真言宗は「梵字+院号+戒名+位号」という組み合わせです。頭に「アの梵字」がつけて、大日如来の仏弟子になったことを証明します。

なお、子どもが亡くなられたときは、「アの梵字」ではなく地蔵菩薩を表す「力の梵字」を用いるため、混同しないようにしましょう。

浄土宗

浄土宗は「院号+誉号+戒名+位号」という組み合わせです。院号の下に、道号ではなく「誉号(よごう)」を付ける点が特徴です。

誉号は、本来であれば念仏の教えを受け継ぐ「五重相伝」を授けられた方に対して付けられるものでしたが、現在では多くの方に用いられています。「誉」には、念仏の教えを受けた証としてのニュアンスもあるため、念仏を重視している浄土宗ならではの特徴と言えるでしょう。

なお、浄土宗の戒名の1文字目には阿弥陀如来を意味する「キリークの梵字」を使用することもあります。

浄土真宗

浄土真宗は「院号+釋号(しゃくごう)+法号」という組み合わせです。浄土真宗では、戒名ではなく「法名(ほうめい)」と呼びます。

浄土真宗は「阿弥陀如来のもとではすべてが平等に救われる」という教えの影響により、ランクを表す位号がありません。

また、浄土真宗の特徴である「釋号(しゃくごう)」には釈迦の弟子になるという意味があります。男性に対しては「釋(しゃく)」、女性に対しては「釋尼(しゃくに)」を付ける点が特徴です。

日蓮宗

日蓮宗は「院号+道号+日号+位号」という組み合わせです。日蓮宗では「戒名」という言葉は使わずに「法号(ほうごう)」という呼び方をします。

日蓮宗の法号では、「戒名」にあたる部分に「日」の字を用いる「日号(にちごう)」がある点が特徴です。日号の部分には、「日」の字と俗名の一部を合わせるのが一般的です。

また、日蓮宗の法名では、道号の部分に関して男性は「法」、女性は「妙」を用います。

曹洞宗・臨済宗(禅宗)

曹洞宗と臨済宗の禅宗は「院号+道号+戒名+位号」と、一般的な戒名と同じ組み合わせです。白木位牌の1文字目には、「仏がいる世界に帰る」ことを意味する「新帰元」という文言が入ります。

また、冠字に「空」という漢字が用いられることがある点も、曹洞宗・臨済宗の特徴です。

戒名・ランク一覧

戒名にはランクがあり、生前の社会貢献や菩提寺への貢献などが評価されるケースが一般的です。もし家の中にご先祖様の仏壇がある場合、位牌に記されている戒名を見てみてください。

院殿号(いんでんごう)・院号(いんごう)

戒名の中で最もランクが高いのは院殿号(いんでんごう)、次いで院号(いんごう)です。院殿号と院号は、貴族・武士などの権力者に授けられていました。

具体的には、菩提寺に対して多大な貢献をした際には「〇〇院」という戒名がつけられることがあります。

道号

道号は、悟りを開いた方に付ける戒名で、亡くなられた方の性格や人柄を表します。院殿号や院号がない場合は、道号が戒名の一番上に付けられます。未成年の方が亡くなったときは、道号を用いません。

道号によく使われる文字として、下記が挙げられます。

  • 性格や趣味を表す文字:「光」「翁」など
  • 場所を表す文字:「海」「山」など
  • 住居を表す文字:「殿」「斎」など

戒名

本来、戒名とは「全体の中の一部」を指しますが、現在では道号などを含めたすべての名前を指します。

戒名の2文字の内、1文字は俗名から付け、もう1文字は仏や経典から漢字をいただくことが多いです。生前に、亡くなられた方が就いていた職業など「人生と深い関係がある文字」を、用いることもあります。

なお、歴代天皇を連想させる文字や縁起が悪い文字は、戒名として使えません。

位号

位号には敬称の意味があり、「様」というニュアンスをイメージするとよいでしょう。故人の社会的貢献度や性別によって付け方が異なり、例えば男性と女性では下記のような違いがあります。

  • 男性:(ランクが高い順に)大居士→居士→信士
  • 女性:(ランクが高い順に)清大姉→大姉→信女

「信士」や「信女」の位号を授けることが多いですが、決してランクが低いというわけではありません。一般人であれば、基本的に位号は「信士」や「信女」となります。

また、亡くなられた方が未成年の場合、下記のようになっています。

  • 5歳以下→幼児・幼女・水子など
  • 15歳以下→大童子・大童女など

戒名を付ける際の流れ

亡くなられた方に戒名を授けてもらうときは、菩提寺の僧侶に依頼するのが一般的です。寺院や宗派、地域によって違いがありますが、具体的な流れは下記のとおりです。

  1. 菩提寺の有無を確認する
  2. 僧侶との打ち合わせを行う
  3. 戒名のランク決めを行う
  4. 戒名が授与される
  5. 戒名料を支払う
  6. 葬儀

まずは菩提寺の有無を確認する必要があります。基本的に戒名は、納骨をした寺院で付けてもらいます。

菩提寺がなく、納骨をしない場合は必ずしも戒名を付ける必要はありません。戒名を付けたい場合は、遺族が戒名を付けることで対応できます。

菩提寺がある場合は、寺院の僧侶と打ち合わせを行い、亡くなられた方の人柄や職業などを伝えましょう。亡くなられた方の人生に関わる漢字が用いられるため、細かく情報を提供することが大切です。

戒名が授与されたら、葬儀で読み上げられます。葬儀で読み上げられることで、亡くなられた方に対して、正式に授与される流れです。

戒名が不要なケース

基本的に、戒名がないと葬儀を執り行えません。しかし、これは仏教に限った話です。信仰している宗教が仏教以外の場合や無宗教の場合は、そもそも戒名を付ける必要はありません。

戒名が不要なケース
  • 信仰している宗教が仏教以外
  • 無宗教

例えば、亡くなられた方がキリスト教を信仰していた場合、仏の世界には行かないため戒名は不要です。また、無宗教での俗名で葬儀を行うことが可能なので、「亡くなられた方全員に戒名が必要」というわけではない点に留意しましょう。

ただし、戒名を付けない場合は、墓地を選ぶ際に制約が出る点に注意が必要です。公営墓地や永代供養墓、納骨堂など仏教徒以外が納骨できる墓地を探す必要があるため、菩提寺に納骨する場合と比べて手間がかかります。

なお、菩提寺があるにも関わらず戒名を付けない場合、納骨を拒否されてしまう恐れがあります。「菩提寺の僧侶に付けてもらった戒名」でなければ納骨を受け付けない寺院も存在するため、事前に確認することが大切です。

お世話になっている菩提寺との関係が悪化すると、親族に不幸があったとき、自分を含めてあとの代が困ってしまいます。

戒名料の費用・値段の相場

戒名を付けてもらうときには、僧侶に対して戒名料を支払う必要があります。お金の問題は誰でも気になるものですから、戒名料の相場やお金がないときにどのような対策をするべきかを解説します。

戒名料の相場

戒名料の相場は、宗教や寺院によって異なります。寺院には、相談に応じて細かく設定しているところもあるため、事前に確認しておきましょう。

戒名料の金額はあくまでも目安ですが、安くても20万円〜30万円程度は必要です。戒名料はランクが上がるにつれて高額になります。

葬儀代とは別に用意する必要があるため、葬儀の日に僧侶へお渡しできるように準備してください。

宗派 戒名料の相場
浄土宗 約30万~100万円
浄土真宗 約20万~80万円
真言宗・天台宗 約30万~150万円
日蓮宗 約30万~150万円
臨済宗・曹洞宗 約30万~120万円

戒名料の渡し方

戒名料を渡すタイミングは、葬儀を行う日に僧侶に挨拶をするときが一般的です。戒名料は、お布施とまとめて1つの袋で渡して問題ありません。

もし渡すタイミングを逃したら、葬儀が終わったあとに僧侶へ渡しても大丈夫です。戒名料は、喪主から僧侶に直接渡しましょう

戒名料を渡すときのマナー

戒名料を渡すときに、意識するべきマナーがあります。単なる封筒ではなく「奉書紙(ほうしょがみ)」という紙に現金を包み、さらに「袱紗(ふくさ)」という贈り物を包むための布に包み、僧侶に渡すのが一般的なマナーです。

もし奉書紙の調達が難しい場合は、水引が付いていないシンプルな無地の封筒を使用しても問題ありません

なお、地域や菩提寺によっては、白黒または水引が付いた不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)を使用することが通例となっているケースもあるため、事前に確認しておくと安心です。

戒名料の表書き

戒名料を包んだ袋には、表書きとして「お布施」または「御布施」と書きます。下部には喪主のフルネームを記入しましょう。表書きは濃い墨の筆あるいは筆ペンで、丁寧に書いてください。

また、戒名料を封筒に入れて渡す場合は、金額や喪主の氏名・住所を書く必要があります。

お渡しする金額は、封筒にある中袋の表面に書き、喪主の氏名・住所は中袋の裏面左下に記入しましょう。

戒名料を払うお金がないときは住職に相談

戒名料は数十万円にのぼるケースが一般的なので、「支払うのがつらい」という方も多いのではないでしょうか?支払うのが経済的に厳しい場合は、菩提寺に対して事前に相談してみるとよいでしょう。

「先祖をきちんと弔いたい」という気持ちがあれば、戒名料に関する相談を行っても何ら問題はありません。後々になってトラブルとならないためにも、できれば費用を抑えたい点などを伝えてみましょう。

自分で戒名を付けることも可能

戒名は、必ずしも菩提寺の僧侶に付けてもらう必要はありません。遺族が基本的なルールを守ったうえで、自分たちで付けることも可能です。

実際に、宗教ごとのルールに基づいて遺族が亡くなられた方の戒名を付けるケースもあるため、決して珍しいことではありません。

ただし、菩提寺があるにも関わらず、勝手に戒名をつけるとその後に菩提寺との関係が悪化する恐れがあります。何らかの理由で遺族が戒名を付けるときは、事前に菩提寺に相談するとよいでしょう。

生前戒名を行う

生前戒名とは、亡くなられた方が、亡くなられる前に「自分で自分の戒名をつける」ことです。生前戒名を行うことで、亡くなられた方が希望する戒名を自分の意思で付けられるメリットがあります。

菩提寺に対して「自分が死亡したあとに備えて、生前戒名を付けてほしい」旨を伝えれば、対応してくれるケースがほとんどです。戒名を生前に付けられることを知らない方は多いですが、必要に応じて検討してみてください。

戒名なしで故人を送るデメリット

戒名は必ず要するものではありませんが、戒名をつけずに故人を送ることで想定されるデメリットがあります。具体的に、どのようなデメリットがあるのか把握しておきましょう。

  • お墓に入れない恐れがある
  • 位牌に戒名が書けない
  • 批判を浴びることがある

お墓に入れない恐れがある

戒名を付けないことで、お墓に入れない可能性があります。先祖代々の菩提寺のお墓に入っている場合、戒名を付けないことで「菩提寺との関係を断った」とみなされることがあります。

そのため、菩提寺との関係がなくなり、先祖代々のお墓に入れない恐れがある点は認識しておきましょう。今回亡くなられた方に限らず、親族も菩提寺のお墓に入れないと、後代に迷惑が掛かってしまう恐れもあります。

位牌に戒名が書けない

戒名を付けないと、位牌に戒名を書けません。位牌とは、「亡くなられた方の魂が宿っているもの」と考えられており、亡くなられた方を弔ううえで欠かせない仏具です。

位牌には亡くなられた方の戒名や俗名、享年などが記されており、位牌がないと「亡くなられた方の魂が帰ってくる場所」がありません

お盆をはじめ、先祖を弔うための行事を大切にしている方にとっては、位牌に戒名を書けないことで後悔してしまう可能性があります。

批判を浴びることがある

亡くなられた方に対して戒名を付けないことで、親戚や世間から批判を浴びることがあります。亡くなられた方に対しては戒名を付けることが一般的であり、付けないと「親不孝」「不謹慎」という印象を持たれてしまうのです。

しきたりを大切にする親族や、保守的な考えをしている親族がいる場合、戒名を付けないことで猛反対を受ける事態も考えられます。大切な方が亡くなられたことに加えて、戒名をめぐって遺族と争うようなことがあれば、大きなストレスとなるでしょう。

そのため、「つけたくない」と考えている場合は、きちんと親族同士で相談し、意思疎通を図ることが欠かせません

戒名に関するよくある質問

戒名に関して真剣に考える機会は多くないため、不明点は多くありますよね。以下で、多くの方が感じている疑問をご紹介します。

戒名のランクは高いほうがよいですか?

戒名にランクはあるものの、ランクの高低は供養の度合いに影響ありません。ランクが低くても、亡くなられた方が「成仏できない」ということはないため、過度に気にしなくても大丈夫です。

もしランクが低い戒名を付けたとしても、亡くなられた方が仏の世界で不利益を被ることはないため、安心してください。

戒名をあとから変更することはできますか?

菩提寺の考えや価値観次第で、戒名をあとから変更可能です。変更を希望する場合は、菩提寺の僧侶に相談してみましょう。

なお、一度付けた戒名を変更する場合、再度戒名料を支払う必要があります。変更せずに済むように、最初から納得できるものを付けてもらいましょう。

菩提寺がわからない場合、戒名はどのようにつければいいですか?

菩提寺がどこか分からない場合、まずは親族に確認しましょう。親戚の誰かが葬儀を行った際に、読経をしてくれた僧侶がいれば、その僧侶がいる寺院が菩提寺となります。

もし親族がおらず調べようがないときは、葬儀社に菩提寺を紹介してもらうか、自分自身で探す必要があります。

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