相続登記の原本還付とは?還付できる書類や手続きの方法も解説

相続登記を行う際、ほかの手続きに使用する書類まで提出しなければならず、どのように対応すればよいかお困りではないでしょうか?

相続登記では事前に原本還付の請求を行うことで、必要書類の原本を返却してもらえます。しかし、還付してもらうには事前申請が必要であり、申請していないと二度と手元には返ってきません。

この記事では相続登記の原本還付を受ける方法や、還付できる書類について解説します。注意点や返却方法もまとめているため、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続登記の原本還付とは、提出書類の原本を返してもらえる制度のこと
  • 原本還付を希望するときは、該当書類の原本とコピーを法務局に提出する
  • 相続登記のために作成された書類は返還されない

相続登記の原本還付とは?

相続登記における原本還付とは、登記の際に提出した必要書類の原本を返してもらうことです。

相続登記とは相続した土地・建物の名義を変更することで、変更の際には亡くなった方(被相続人)の住民票除票やすべての相続人の戸籍謄本などを提出しなければなりません。

上記の書類は裁判所や金融機関へも提出する必要があるため、事前に原本還付を申請しておくことでその後の手続きがスムーズに行えるのです。

相続登記の原本還付を受けるメリット

相続登記の原本還付を受けるメリットは、大きく分けて2つです。

  • 時間とお金を節約できる
  • 書類を手元で保管できる

それぞれ解説します。

時間とお金を節約できる

相続登記の原本を返却してもらうことにより、時間とお金の節約になります。相続登記の際に提出する書類は多岐にわたり、それらはほかの手続きでも必要になります。

仮に原本還付を請求せずに各手続きを行う場合、新たに書類を取得しなければなりません。窓口へ足を運ぶ時間はもちろんのこと、取得費用もかかります。

原本還付を請求しておけば、法務局が申請内容を調査したタイミングで返却されます。これにより、返ってきた原本を再利用して次の手続きが行えるのです。

書類を手元で保管できる

大切な書類を手元で保管できることも、原本還付を受けるメリットです。相続登記に必要な書類のなかには、再取得ができない書類もあります。

戸籍謄本などは時間とお金がかかるものの、本籍地のある市区町村役場へ行けば新たに発行してもらえます。しかし、遺産分割協議書や遺言書は1通かぎりの書類であるため、返却してもらわないと次の手続きへと進めません。

また、遺産分割協議書や遺言書は相続人同士で揉めてしまった際に、ご自身の主張を裏付ける重要な書類でもあります。トラブル回避という意味でも、原本を手元で保管する必要があるのです。

原本還付できる書類・できない書類

原本還付の請求を行えば原本を返却してもらえると説明しましたが、なかには返却されない書類もあります。

原本還付できる書類・できない書類は以下のとおりです。

還付できる書類 還付できない書類
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・すべての相続人の戸籍謄本
・遺産分割協議書
・遺言書
・固定資産評価証明書
・印鑑証明書
・登記申請書
・委任状
・相続関係説明図

原本還付の基準は、相続登記を申請するために作成された書類か否かという点です。たとえば、登記の目的や相続人について記載した登記申請書は、「相続登記を申請するために作成された書類」に該当するため、返却されません。

相続登記で原本還付してもらう方法

相続登記で原本を返却してもらう方法をご紹介します。

  1. 還付してほしい書類をコピーする
  2. コピーに署名押印して契印を押す
  3. 法務局へ提出する

1.還付してほしい書類をコピーする

まずは原本を返却してほしい書類をコピーします。コピーする際は拡大・縮小することなく、実物と同じサイズで行いましょう。

遺産分割協議書が何ページにもおよぶ場合、相続登記に関係のないページは省いてもかまいません。ただし、必要・不要なページの見分けが困難であるため、ミスを避けるためにもすべてのページをコピーすることをおすすめします。

なお、提出書類に不備があった場合、補正するよう法務局から連絡が入ります

2.コピーに署名押印して契印を押す

次に、コピーした書類に署名して印鑑を押します。その際、余白部分に「原本と相違ありません」という文言を記載してください。

コピーが複数枚ある場合は、コピーした書類を束ねてホチキスで止めます。その後、もっとも上に来る書類にのみ文言の記載と署名押印を行いましょう。

ホチキスでまとめたあとは、書面の追加や差し替えを防ぐために契印(けいいん)を押します。1ページ目を開き、1ページ目と2ページ目の見開き部分に印鑑を押してください。

3ページ目以降にも同じ作業を行えば契印の完了です。なお、署名押印と契印に使用する印鑑は、登記申請書に押した印鑑と同一のものを使用しましょう。

原本還付してほしい書類が1枚の場合、契印は必要ありません。

3.法務局へ提出する

作成したコピーのまとめは原本・登記申請書と一緒に法務局へ提出します。コピーだけを提出するのではなく、コピーと原本をあわせて提出する点に注意しましょう。

必要書類の提出先は、該当する不動産を管轄している法務局です。たとえば、東京に住んでいる方が大阪市中央区にある不動産の相続登記を行う場合、大阪市中央区を管轄している大阪法務局に提出します。

窓口へ出向いて提出するほか、管轄の法務局が遠方にある場合は郵送も可能です。郵送する場合、封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便にて送りましょう。

相続関係説明図を提出する場合

相続登記の原本還付を請求する際、通常は返却してほしい書類をコピーして提出することを説明しました。しかし、戸籍に関する証明書(戸籍謄本・戸籍抄本など)は、相続関係説明図の添付によりコピーを提出することなく原本を返却してもらえます。

相続関係説明図とは亡くなった方と相続人の関係を一覧でまとめた、家系図のような書類です。

相続人の数が少ないときはコピーで対応できますが、数が多いとコピーを刷る手間が生じます。1つにまとめて契印を押す作業にも時間が取られてしまうため、状況によっては相続関係説明図もあわせて提出しましょう。

なお、相続関係説明図の提出により返却される書類は、以下のとおりです。

返却される 返却されない
・戸籍謄本
・戸籍抄本
・除籍謄本
・改製原戸籍
・遺言
・遺産分割協議書
・住民票の除票
・印鑑証明書

遺言書や遺産分割協議書などは相続関係説明図を提出したからといって返却されるわけではないため、必ずコピーを同封しましょう。

相続登記で原本還付してもらうときの注意点

相続登記の原本還付に関する注意点をご紹介します。

すぐに還付されるわけではない

原本還付請求をしたからといって、すぐに原本が返却されることはありません。提出された書類を法務局が確認する必要があるため、10日~14日ほどの時間を要します。

また、法務局の混雑具合によっては、1カ月以上待つこともあるでしょう。相続登記の次に行う手続きがある点も考慮し、余裕を持って進めることが大切です。

あとから還付を求めても返却されない

原本還付の手続きを行わずにあとから「返却してほしい」と伝えても、相続登記時に提出した原本は戻ってきません。

戸籍謄本や戸籍抄本は市区町村役場へ行けば再度発行してもらえますが、遺言書や遺産分割協議書などは1通かぎりの書類です。

もしも遺産分割協議書のコピーを取り忘れていた場合、相続人全員に連絡を入れて再協議し、協議書を再作成しなければなりません。膨大な手間がかかるため、必ずコピーをしてから提出しましょう。

原本はどのように還付される?

相続登記の原本還付を請求した場合、以下2つの方法で原本が返却されます。

  • 法務局の窓口で受け取る
  • 郵送してもらう

法務局の窓口で受け取る

1つ目は窓口で受け取る方法です。相続登記を申請した法務局へ直接出向いて返却してもらう方法ですが、登記が完了していても法務局から連絡は入りません。

法務局の窓口に問い合わせるか、ホームページにて公開されている「登記完了予定日」から確認し、受け取りに行きましょう。

郵送してもらう

2つ目は郵送により返却してもらう方法です。相続登記に必要な書類の原本は、原則として法務局の窓口から返却されます。

そのため、郵送してほしい場合は、相続登記を申請する際の登記申請書に、郵送を希望する旨を記載しなければなりません。

登記申請書の添付情報の下部に「送付の方法により原本還付書類の受領を希望します」と「送付先の住所 申請人の住所」の2つの文言を加えましょう。

【郵送返却時の登記申請書の書き方】

なお、郵送での返却を希望すると、書留郵便または信書便にて送られてきます。

返信用封筒と切手を準備する

郵送により返却してもらうときは、相続登記を申請する際に返信用封筒と切手を提出しましょう。封筒はA4サイズの書類を折らずに入れられる「角2封筒」が好ましいです。

切手に関しては、返却される書類の重さによって金額が異なります。

たとえば、相続人の数が少ないと書類の量も抑えられますが、相続人の数が増えると返却してもらう書類の量も多くなります。切手を用意する際は自宅または郵便局で返却を希望している書類の重さを量り、重量を確認してから切手を購入するとよいでしょう。

郵便局の書留郵便を利用する場合、具体的な金額は以下のようになります。

  • 重さが50g以内:120円(定形外郵便物50g以内)+480円(一般書留)=600円
  • 重さが100g以内:140円(定形外郵便物100g以内)+480円(一般書留)=620円
  • 重さが150g以内:210円(定形外郵便物150g以内)+480円(一般書留)=690円

参考:郵便局-第一種郵便物 手紙

切手の準備ができたら、封筒と一緒に法務局の窓口へ提出します。封筒の宛名に申請人の住所を記載し、切手を貼り付けない状態で提出しましょう。

なお、相続登記が完了した証である「登記識別情報通知書」を郵送にて受け取る場合、提出した書類の原本も同封されています。

登記識別情報通知書用の封筒と原本還付用の封筒をそれぞれ用意する必要はなく、登記識別情報通知書の返信用封筒のみ提出すれば問題ありません。

おすすめの記事

ほかにもこちらのメディアでは、相続登記の費用相続登記は自分でできるのかどうかについても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。

\相続1分診断!/