香典とは?意味や由来から失礼のない金額までを詳しく解説

香典とは、葬儀などの際に故人の霊前に供える金銭のことです。その意味はわかっているものの、表書きの意味や包むべき金額までを考えると、正しく理解している方はむしろ少数派なのではないでしょうか?

香典はお悔みの気持ちを示すとともに、「葬儀費用を一部負担する」考え方に基づくもので、多すぎても少なすぎても失礼にあたる恐れがあります。不祝儀袋や渡し方にもマナーがあり、正しく理解していなければ遺族に不快感を与えかねません。

今回の記事では、香典の意味や目安となる金額、渡し方のマナーまでを詳しく解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 香典は、故人の供養と遺族への支援を意味する霊前に供えるお金
  • 香典に包むべき金額は持参する方の年代や故人との関係性によって決まる
  • 葬儀以外の法要でもマナーを守って香典を持参しよう

香典とはご霊前に供えるお金のこと

香典とは、葬儀や法要の際に故人の霊前に供える金銭のことです。線香やお花の代わりに、お悔やみと遺族への支援の気持ちを込めて持参します。

かつては弔問客が線香や花を持参して供える風習がありましたが、これがお金に形を変えたものが香典です。

香典を「香奠」と記す場合があり、「香」の字は線香や抹香の意味、「奠」には「霊前に供える金品」の意味があります。

香典に包む金額の目安

香典を包む際に気になるのが、その金額ではないでしょうか?

香典には、お悔みの気持ちを示すとともに、葬儀費用の一部を負担するという遺族への支援の意味も込められているため、多すぎても少なすぎてもよくありません

香典の金額は地域によっても異なりますが、おおまかには香典を持参する方の年代や、故人との関係性によって決まるものです。

金額の目安を知りその範囲で包めば、遺族に不快な思いを抱かせる心配がなくなります。

故人との関係性や年代によって決まる

香典の金額は、主に故人との関係性の深さで決まります。また、年齢によっても「相場」といえる金額が変わる点に注意しましょう。

最も高額となるのがご自身や配偶者の両親の場合です。また、香典を持参する方の年齢が上になるほど金額は高くなります

両親や祖父母、兄弟姉妹など、親族への香典の場合は血縁関係の濃さで、友人や会社関係者などの場合には、生前の交流の深さを基準に決めるのが一般的な考え方です。

関係性に応じた金額の目安

香典の金額は地域などによっても異なるものの、ある程度の目安を知っておくと安心です。ご自身と故人との関係性に応じて、相場の範囲で決めるとよいでしょう。

ただし、会社や町内会など特定の組織で関係性を持つ方が亡くなった場合には、香典の金額を指定されるケースも少なくありません。その場合には、周囲と合わせるのが基本です。

香典の金額を決めるのが悩ましい理由は、故人や遺族に対する個人的なお悔みの気持ちを表すお金であると同時に、社会的行事の一環として渡す性質のものであることに起因します。

関係性に応じた金額の目安を知り、その範囲を大きく逸脱しない金額で渡すのが葬式のマナーとしては安心です。

親族の場合

親族への香典の金額は、血縁関係の深さで決めるのが一般的です。

ただし、葬儀を主催する立場の家族は香典を出しません。喪主を始め、亡くなった方と同居していた孫なども香典を出さないのが通常です。

香典の額が高くなるのは、1親等の血族、つまりご自身や配偶者の親が亡くなった場合です。

香典は基本的に世帯単位で用意するものですから、ご自身の親族であっても、配偶者の親族であっても同様に考えます。

血縁関係 香典の金額の目安
ご自身の親 5万円~10万円
ご自身の祖父母 1万円~3万円
ご自身の兄弟姉妹 3万円~5万円
配偶者の親 5万円~10万円
配偶者の祖父母 1万円~5万円
配偶者の兄弟姉妹 3万円~5万円
叔父叔母 1万円~3万円
その他の親族 5,000円~3万円

会社関係者の場合

会社関係者が亡くなった場合の香典は、上司・部下などの関係性によって金額が決まります。

ただし、社内で取りまとめて金額を合わせるケースや、連名で包むケースも多いため、それに従うのが基本です。

直属の上司・部下であった場合、周りの方より多めに香典を包むことも可能です。連名での香典を辞退するときは、取りまとめの方に一言かけておきましょう

関係 香典の金額の目安
同僚・上司・部下 5,000円~1万円
同僚の家族 3,000円~5,000円

友人・知人の場合

知人や友人に対する香典は、「生前に懇意にしていた」「お世話になっていた」など、その関係性の深さで決まります。

一般的な相場は5,000円~1万円程度ですが、親しかった友人や家族ぐるみの付き合いだった場合にはそれ以上の金額を包むケースもあるようです。

ただし基本的には相場の範囲内で包むのが、遺族に負担を掛けないという点で望ましいといえます。

逆に関係性の薄い知人などには、3,000円程度を包むケースも少なくありません。香典の金額を抑える場合には、香典返しを辞退するなどの配慮があるとよいでしょう。

夫婦で参列する場合

夫婦で参列する場合には、夫婦で1つの香典を包みましょう。

香典は基本的に世帯ごとに用意するもので、2人で参列するからといって2人分を用意する必要はありません。金額も1人分が一般的です。

他人と連名で香典を包むケースとは根本的に考え方が異なるため、香典袋にも世帯主の名前だけを書きます。

ただし夫の名前で出す場合にも、例えば妻の親族の葬儀に参列するときなどは、連名でも構いません。故人との関係で決めればよいでしょう。

葬儀後の精進落としに夫婦で出席する場合、1人分の金額で香典を包むことに不安を覚える方もいるでしょう。そのような場合には、食事に掛かる金額を考慮して多めに包んでも失礼にはあたりません。

包むべきでない金額

香典には目安となる相場がある一方で、包むべきではないとされる金額も存在します。忌み数とされる49や、割り切れる偶数の金額がそれです。

4は死を連想させること、9は苦と同じ音であることから、弔事などの場にふさわしくない数字とされています。

また、偶数の金額は「割り切れる」ことから、「故人との縁が切れる」ことを連想させるため、避けるべき数字とされているのです。

特に連名で香典を包む場合などには、注意すべきといえます。集めた結果4や9という数字になったり、偶数の金額になったりする恐れがあるためです。

縁起などを重視する葬儀の場では、このような配慮がないと、遺族に不快な思いをさせるかもしれません。

香典袋のマナー

香典を包む、いわゆる不祝儀袋にもさまざまなマナーがあります。

表書きや包み方などを間違えると、遺族に不快な思いをさせるかもしれません。香典袋に関するマナーについてもみていきましょう。

「御香典」「御霊前」「御仏前」の違い

不祝儀袋の表書きには、「御香典」のほかに「御霊前」「御仏前」などが用いられます。それぞれ意味が異なり、使うべきタイミングが違うことを知っておきましょう。

特に注意が必要なのは、御霊前と御仏前の違いです。

仏教では、故人は仏様になると考えられていますが、多くの宗派では亡くなってすぐに成仏するという教えではありません。四十九日までは霊として現世に留まり、極楽浄土へ行けるか否かの審判を受けるといわれています。

つまり葬儀の時点では故人は仏様になっていないため、御霊前という表書きが正しいのです。御仏前は、四十九日を過ぎたあとの法要で使う表書きとされています。

一方で浄土真宗では亡くなったらすぐに成仏するという考え方のため、葬儀の際から御仏前を用い、御霊前は使いません。

御香典は前述のとおり、「霊前に供える線香や金品」という意味です。故人の宗派がわからないときなどは、御香典として包むのが無難ともいえます。

香典の包み方

香典の包み方にもいくつかの作法があります。以下の3点を忘れないようにしましょう。

  • 新札を使わない
  • お札の肖像画は裏向きの下側
  • 外袋のとじ込みは上から下

特に外袋の閉じ方は忘れがちです。とじ込みが上から下となるように折る意味は「悲しみに暮れる涙を流すため」で、祝儀袋とは逆に閉じます。

例え閉じ方を忘れても、この意味を知っておけば安心です。「涙を流すために上から下」ということをしっかりと覚えておきましょう。

香典の渡し方

香典は袱紗(ふくさ)に包んで持参し、お悔みの言葉を添えて両手で渡すのがマナーです。その際、先方から表書きが読める方向で渡します。

また、通夜と葬儀に参列する場合には、両方で香典を渡すのはマナー違反であることも覚えておきましょう。

香典を2回渡すことは「不幸が重なる」と考えられることから、不吉なこととされています。通夜の受付で香典を渡し、葬儀の際には記帳だけをするようにしましょう。

香典を持参する法要

香典を持参する場は、通夜や葬儀だけではありません。年忌法要の際などにも持参するものと知っておきましょう。

葬儀以外で営まれる、香典を持参すべき法要についても説明します。

初七日

仏教では亡くなって7日ごとに審判を受けると考えられており、初めての審判にあたるのが初七日です。

葬儀後の初めてとなる法要が初七日法要ですが、近年では葬儀の際にあわせて執り行うケースが増えており、初七日当日に法要を営む方が少なくなってきています。

葬儀とは別に法要を営むのであれば、葬儀の半額程度の金額を目安に、食事の有無などを考慮して香典を包むとよいでしょう。

四十九日

四十九日法要は、7回目に当たる最後の審判(49日目)をもって最終的に極楽浄土に行けるかどうかが決まるとの考えから営まれる法要です。七七日(なななのか)とも呼ばれます。

香典の金額は、葬儀の際の半額から7割程度が目安とされますが、法要後の会食に参加する人数などを考慮して決めるとよいでしょう。

葬儀の際と同様、法要の際の香典にも遺族に対する金銭的な支援の意味合いがあります。法要のあとには会食の席が設けられるのが一般的ですから、夫婦や子連れで出席する場合には多めに包むのがマナーです。

四十九日法要からは、薄墨を用いないことも覚えておきましょう。

薄墨には「涙で墨が薄まった」「急な訃報で墨をする時間がなかった」などの意味がありますが、事前に予定がわかっている四十九日からは薄墨を使わないのがマナーとされています。

一周忌・三回忌

故人が亡くなった命日には、年ごとに法要を行います。これが年忌法要です。命日の翌年に行うのが一周忌で、2年目に三回忌、6年目に七回忌を行います。

一周忌や三回忌なども、僧侶を呼んでお経をあげてもらったり、会食の場を設けたりすることから、参列者は香典として1万円~3万円程度を包むのが一般的です。

四十九日を過ぎた法要では、御霊前という表書きを用いないことも覚えておきましょう。一周忌・三回忌の香典は、御香典や御仏前が正しい表書きです。

七回忌以降

亡くなって6年目の命日に営む法要が七回忌で、以降は12年目の十三回忌、16年目の十七回忌と続きます。

読経や会食などの法要の流れは変わりませんから、三回忌などと同様に1万円~3万円程度の香典を包むのが一般的です。

七回忌以降は正式な喪服ではなく、ダークスーツなどの略喪服を着用しましょう。

仏式以外の葬儀の場合

日本で営まれる葬儀は仏式が多いものの、神式やキリスト教式で行われる葬儀に参列するケースがあるかもしれません。

ここまで記した香典に関する説明は仏式を基準としたものであるため、神道やキリスト教の場合にも触れておきましょう。

神道の場合

神道の葬儀に参列する場合にも、香典に相当する金銭を用意するのが通常で、玉串料(たまぐしりょう)がこれに該当します。表書きは「御霊前」や、「御神前」「御玉串料」「御榊料」などとするのが一般的です。

不祝儀袋は基本的に仏式と大きく変わりませんが、蓮の花などの絵柄は仏教のものなので使用してはいけません。また、御香典という表書きも仏教のものです。

キリスト教の場合

キリスト教の場合には、「御花料」「献花料」と書くのが一般的です。カトリックでは「御ミサ料」という表書きも用いられます。

不祝儀袋は無地か、十字架や白い百合の花などが書かれているものを選びましょう。十字架はイエス・キリスト、百合の花は聖母マリアの象徴です。

香典を郵送する場合の注意点

遠方で行われた葬儀や、所要で参列できなかったなどの理由で香典を郵送する場合には、現金書留封筒で送るのがルールです。

また香典に関する基本的なマナーは、持参するときと同様に考えれば間違いありません。お悔みの言葉と参列できないお詫びを書いた手紙を添えて送りましょう。

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