相続登記を司法書士に依頼するケースとは?メリット・デメリットを解説

相続登記を自分で行うべきか司法書士に依頼すべきか、迷っていませんか?専門家へ頼んだ際に気になるのが報酬の費用ですが、自分で登記を行うとミスが起きそうで心配ですよね。

相続人の数が多く手続きが複雑になる場合や、遺産分割協議が難航しそうな場合などは司法書士に頼るのがおすすめです。

今回は相続登記を司法書士に依頼するメリット・デメリット、専門家に依頼すべきケースについて解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続登記を自分で行うと登記漏れが起きる危険がある
  • 相続人の数が多いときや不動産が遠方にあるときは司法書士に依頼がおすすめ
  • 相続人に未成年者や行方不明者がいるときも法律の専門家の力が必要

相続登記とは?

相続登記とは不動産の所有者が死亡した場合に、名義を相続人へと移す手続きです。相続登記の手続きは遺言や遺産分割協議で所有権を有するに至った本人が法務局に出向き、申請書類を提出します。

司法書士は報酬を受けて他人の登記申請を代行できるため、自分で手続きを行うのが難しければ、司法書士事務所に相談するのも一つの手です。相続登記には被相続人の出生時から死亡時までの戸籍や、相続人の住民票などの添付書類が必要です。

司法書士は申請書の作成のみならず、登記に必要な書類の収集や遺産分割協議書の作成なども代行します。登記事務を他人が代行する際に必要な相続登記の委任状の作成にも対応しているため、関連する業務を丸々任せられるのです。

相続登記を自分で行うメリット

相続登記を自分で行う大きなメリットは、司法書士に報酬を支払わずに済むことです。今まで曖昧にしか把握していなかった家の財産を、明確に把握できるのも特徴です。相続登記を自分で行うメリットを詳しく解説します。

司法書士に支払う報酬を抑えられる

相続登記を自分で行うことで、司法書士に支払う代行手数料の負担がなくなります。不動産の名義を移す手続きでは、登録免許税や申請に必要な書類の取得費用がかかります。加えて専門家に支払う報酬まで負担するとなると、相続人が支払うコストは決して小さくありません。

不動産1件当たり数十万円以上の費用が伴うケースも十分あり得ます。依頼する事務所の報酬体系や手続きの内容にもよりますが、司法書士への報酬だけで10万円以上かかる場合もあります。自分で手続きを行えば、相続登記の費用を大きく削減できる可能性が高いのです。

家の財産の種類や内容を把握できる

相続登記を自分で行うことにより、不動産の種類や場所、誰が所有権を持っているかなどが分かります。いくら自分の家の土地や建物でも、被相続人がまとめて管理している場合、財産について正確に把握できていない可能性が高いです。

相続登記を進めるにあたり、まず地番や家屋番号を調べて漏れなく把握する必要があります。相続財産の資料を収集する過程で自分の財産に対する理解は深まるでしょう。

相続登記を自分で行うデメリット

自分で手続きを行おうとすると、どうしてもミスが起きる可能性があります。法務局や市役所のホームページ等で調べながらだと、時間や手間がかかるのは避けられません。相続登記を自分で行う具体的なデメリットをみてみましょう。

登記漏れが生じる可能性がある

自分で相続登記を行う場合、相続財産の調査に不備があり、登記漏れが生じる危険があります。法務局は申請した不動産の登記は行いますが、その他に被相続人名義の土地や建物がないか調査するわけではありません。

例えば一戸建ての場合、建物や敷地だけではなく、隣接する私道等に持分があることも考えられます。共有部分に関して相続人はもちろん、被相続人でも把握していないケースも珍しくありません。このような隠れた不動産は登記の専門家ではないと、なかなか見つけられないでしょう。

書類集めに時間がかかる

戸籍や住民票などの申請に必要な書類を集めるために、市役所を何カ所も回ることになるでしょう。相続登記の際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。何度も転籍(本籍地を変える行為)を繰り返していると、取得すべき戸籍の種類も増えます。

被相続人が高齢者の場合や、結婚や離婚に伴う入籍・除籍が多い場合はとくに注意が必要です。加えて多数の相続人で土地を共有しているケースでは、相続人の調査や必要書類の取り寄せだけで数カ月かかることがあります。

必要な書類が分からず悩む場合がある

相続登記では状況に応じて必要な書類が異なるので、何を取得すべきか悩む可能性があります。相続人全員の戸籍謄本や被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票の除票等は必須です。

ほかにも相続登記の種類に応じて、追加で提出が求められる書類があります。遺産分割による登記・法定相続分による登記・遺言による登記で、準備すべきものが異なるのです。さらに被相続人の登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合は注意しましょう。

登記簿の住所とのつながりを辿るために、戸籍の除附票や改製原附票の取得が求められる場合があります。

相続登記を司法書士に依頼すべき場合

相続登記を司法書士に依頼すべきは相続関係が複雑な場合と、法的な専門知識が必要なケースに大別されます。具体的なシチュエーションを列挙するので、自分に当てはまる状況はないか確認してみましょう。

長年相続登記が放置された土地があるとき

相続登記をしない状態が長年続いている場合、相続人が死亡して新たに相続が発生しているケースも珍しくありません。登記に必要な資料の収集や、遺産分割協議の成立が難しくなってしまうでしょう。

登記が後回しになるほど権利を保有する相続人の数が増えます。また高齢で意思能力を失ったり、認知症等で判断ができなくなったりするリスクも高まります。

相続人の数が多いとき

相続人の数が多いと遺産分割協議の際に連絡を取る人物の数も増え、自分だけでは手が回らない可能性があります。なかには連絡先が分からない方や、一度も会ったことがない方もいるでしょう。相続人全員の戸籍謄本を集めて連絡を取るだけでも、手間や時間がかかります

面識のない相手にも個別で相続が発生した旨を伝えて、遺産分割協議をまとめるのは難しい話です。経験や知識を持つ司法書士へ相談すると良いでしょう。

相続した不動産が遠方にあるとき

相続人の数が少なくても、土地や建物が遠方にあるときは、司法書士への依頼を検討すべきだといえます。相続登記は不動産の所在地を管轄する法務局で行います。窓口申請のほか、オンライン申請や郵送申請も可能ですが、初めての方にはおすすめできません。

なぜなら郵送だと万一不備が生じた際に、書類の返却や再送が伴い、時間がかかる恐れがあるためです。オンライン申請も専用ソフトのインストールをはじめ、複雑な準備が伴います。始めから1人でできる方は少ないと思われるので、司法書士の手を借りるのがおすすめです。

相続関係が複雑なとき

相続関係によっては、被相続人から相続人への所有権の移転手続きがスムーズに進まない場合があります。未成年者や行方不明者、意思能力を失っている状態の者がいると、相続登記の前に裁判所での手続きが必要となるためです。相続関係が複雑になりやすい具体的なシチュエーションをご紹介します。

1.相続人に未成年者がいる

相続人のなかに未成年者がいる場合、家庭裁判所に申し立てて、特別代理人の選任が求められることがあります。18歳未満の者は法律上自分で財産の処分ができず、相続登記も自分では行えません。

通常であれば、親権者が代理で権限を行使します。しかし、親権者と未成年者がともに相続人になった場合、代理で手続きを行うのは認められません。自分が取得する財産を増やすために、未成年者の取り分を少なく設定する危険があるためです。

とはいえ本人が自分で財産を行使するのは不可なので、代わりに新たな代理人を選任する必要があります。特別代理人の選任は裁判所も絡んだ法的な手続きのため、司法書士や弁護士の手を借りないと難しいでしょう。

2.相続人に行方不明者がいる

相続人のなかに行方不明者がいる場合、家庭裁判所に申し立てて不在者財産管理人を選任しなくてはいけません。行方がまったく分からない方でも相続人から除外できません。遺産分割協議をまとめて相続登記を進める前段として、裁判に対する申立てが必要です。

なお相続人の所在が7年以上の間不明の場合、法律上死亡した扱いとする失踪宣告を受ける方法もあります。いずれにせよ裁判所に対する手続きが伴うため、相続人に行方不明者がいるなら、司法書士への依頼を検討するのがおすすめです。

3.相続人に正常な判断ができない方がいる

相続人に認知症等で意思能力を喪失した方がいる場合、家庭裁判所に申し立てて後見人の選任を受ける必要があります。とくに相続登記を放置し続けたことで、相続人が高齢化している場合は要注意です。

正常な意思判断ができない方を含む遺産分割協議は、無効だとみなされます。一から相続人全員に署名押印をもらうのが大変なことは、想像に難くないでしょう。家庭裁判所に後見開始の申し立てを行う際にも相続登記同様、多くの書類が必要です。

未経験者がインターネットや書籍で調べて、ミスなくこなすのは難しいと言わざるを得ません。手続きの複雑さを考えると相続人に認知症患者がいる場合、司法書士のサポートが必要だといえます。

相続登記の基礎知識

相続登記は必ず司法書士に依頼すべきとも、自分ですべきだとも断言できません。しかし自分で行う場合はもちろん、専門家を活用する際にも、相続や登記の基礎知識はあったほうが良いでしょう。手続きの流れや申請書類、期限など基礎的な知識をご紹介します。

相続登記の流れは?

相続登記の基本的な流れは次の通りです。

  1. 相続する不動産を把握する
  2. (遺言がない場合)遺産分割協議で所有者を決める
  3. 登記に必要な書類を収集・作成する
  4. 管轄の法務局へ申請する

まず被相続人が所有していた不動産の種類や権利関係等を把握します。亡くなった方の所有していた土地・建物が配偶者やその他の親族との共有名義になっている場合、相続の対象は被相続人の持分だけなので注意してください。

誰がどの不動産を譲り受けるかは被相続人による遺言書がある場合、その内容に従います。遺言書がないなら相続人全員の話し合いによって決められます。

相続登記の書類は?

相続登記の基本的な必要書類は次の通りです。

相続登記の必要書類
  • 被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • (遺言がない場合)遺産分割協議書
  • (遺言がない場合)法定相続人の印鑑証明書
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記申請書

戸籍謄本は本籍地の市役所や区役所等で取得します。被相続人の場合、出生時まで遡って謄本が必要なので、いくつかの役所に申請しなければいけません。

相続登記で遺産分割協議が伴う場合、協議書および相続人全員の印鑑証明書の添付も求められます。固定資産税評価証明書は、登記申請時に納める登録免許税の確認に必要な書類です。

登記申請書は法務局のホームページから取得できます。

遺言による場合・遺産分割による場合・法定相続分による場合で、書式が異なるので注意しましょう。

相続登記の期限は?

相続登記に期限はなく、締め切りに間に合わなかったからといって罰則を受けるルールはありません。しかし2024年4月1日から法改正によって制度が変更され、相続を知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科されるようになります。

相続登記を行う場所は?

相続登記の申請は、対象の不動産を管轄する法務局に対して行います。「故人が住んでいた住所地」ではないことに注意してください。管轄外の法務局に申請しても受け付けを拒否されてしまいます。どこが管轄かはホームページで簡単に分かるので、下調べを忘れずに行いましょう。

相続税はいくらかかる?

相続税は取得した相続財産の金額に応じて、10%~55%の税率がかかります。ただし基礎控除があり「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に満たなければ税金はかかりません。相続税は相続したすべての方が支払うわけではないと覚えておきましょう。

相続登記義務化とは?

2024年4月1日から相続登記義務化の制度がスタートします。罰則付きで期限も設けられるので注意が必要です。

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