準確定申告とは?不要な人の条件や必要書類、書き方を解説

確定申告は知っていても、準確定申告とは何かわからず疑問に思っていませんか?

相続手続きでは準確定申告が必要になる場合があるので、事前に手続きの方法を把握しておくことが大事です。

この記事では、相続時に必要となる準確定申告とはどのようなものかどのようなときに行わなければならないかなどを詳しく解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 準確定申告とは、相続人が故人の代わりに確定申告をすること
  • 会社で年末調整をしていた人は準確定申告が必要ない
  • 被相続人の源泉徴収票や控除証明書などの書類が必要になる

準確定申告とは?

準確定申告とは、亡くなった人の生前の所得に対して確定申告をすることです。亡くなった人の代わりに、相続人が確定申告を行います。

相続人が2人以上いる場合は、すべての相続人が署名と押印をして、連名で申告書を提出しましょう。

準確定申告が必要な人と不要な人

準確定申告は必要な人と不要な人がいます。

必要な人の条件

準確定申告が必要になる人は、次のとおりです。

準確定申告が必要な人の条件
  • 自営業者やフリーランスなどで事業収入があった場合
  • 2カ所以上から給与を得ていた場合
  • 2,000万円以上の給与所得があった場合
  • 事業所得・不動産所得がある場合
  • 400万円以上の年金受給があった場合

申告が必要になるのは、自営業・フリーランスなどで事業所得がある人、アパートなどの賃貸収入を得ているなど不動産所得のある人が亡くなった場合です。

会社員だった場合でも、2カ所以上から給料を受け取っていたり、給与の収入が2,000万円を超えたりする場合には必要となります。

給与所得者は会社が年末調整をするため、本来なら確定申告は必要ありません。しかし、所得が2,000万円を超える高額所得者は、会社の年末調整の対象外となります。

申告が必要かどうか見極めるために、収入源などを整理しておきましょう。

不要な人の条件

申告不要のケースは、次のようになります。 

準確定申告が不要な人の条件
  • 会社で年末調整をしていた場合
  • 年金受給額が400万円以下で、その他の所得が20万円以下の場合
  • 準確定申告を行う相続人が相続を放棄した場合

給与所得以外の所得がなく会社で年末調整をする場合には、申告は不要です。

年金受給者で年間受給額が400万円以下、かつ他の収入が20万円に満たない場合も必要ありません。基本的に生前に確定申告をしていなかった人は申告不要です。

相続放棄をすれば相続人ではなくなるので、申告は必要ありません。相続放棄を検討中の場合も申告する必要はなく、他の相続人が申告すれば済みます。

準確定申告の必要書類

準確定申告の必要書類は、以下の6つです。

確定申告書

準確定申告に使用する申告書は、通常の確定申告に使うものと同じです。

確定申告書A 給与または年金のみの所得の場合
確定申告書B 個人事業主、不動産収入所得者、給与以外の所得がある場合

収入が給与所得だけの場合は、申告する項目が少ないので申告書Aだけで大丈夫です。しかし、事業所得や不動産所得の申告も必要な場合は、記載する項目が多いので申告書Bも使います。

被相続人の源泉徴収票

被相続人に給与収入があった場合は源泉徴収票が必要です。勤め先から交付された源泉徴収票の原本を提出しましょう。

被相続人が公的年金等を受給していた場合は、日本年金機構から受け取った源泉徴収票を提出します。

被相続人が個人事業主だった場合や不動産賃貸業をしていたときは、預貯金通帳、請求書、領収書など事業に関するすべての帳票類が必要です。

被相続人の控除証明書

相続人が保険料を支払っていた場合、以下4つは所得控除の対象になるので、控除証明書を揃えておきましょう。

所得控除の対象になる保険料
  • 生命保険料
  • 社会保険料
  • 地震保険料
  • 小規模企業共済等掛金

控除証明書とは保険料の支払いを証明する書類で、所得控除を受ける際に添付書類として提出する必要があります。

保険会社によって発行時期が異なるので、早めに保険会社に連絡して確認しておきましょう。

所得税及び復興特別所得税の確定申告付表

相続人等が2人以上いる場合は、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)」が必要です。

付表には、相続人代表の氏名や各相続人の情報を記入します。相続人全員の署名・押印ならびに本人確認書類の添付が必要になるので、準確定申告が必要だと判明した段階で相続人に伝達し、手配できるものは事前に準備しておきましょう。

付表の様式は国税庁のホームページからダウンロードできます。

被相続人の医療費の領収書

医療費控除の申告をする際は、被相続人が医療機関を受診したときに発行された領収書が必要です。

生前使用した医療費等の領収書を揃えておきましょう。

委任状

相続人等が2人以上いる場合で、準確定申告に係る還付金を1人の相続人が代表して受け取るときは、委任状が必要です。

委任状の様式は国税庁のホームページからダウンロードできるので、フォーマットにもとづいて記載すれば問題ありません。

遠方に住む相続人がいる場合には、委任状に署名・押印して郵送してもらうことになるので、早い段階で連絡しておくとよいでしょう。

必要書類の取得はダウンロードが便利

確定申告書の用紙は最寄りの税務署で取得できますが、税務署まで出向く時間がない場合やさらに手軽に取得したいときは、ダウンロードが便利です。

国税庁ホームページ「確定申告書等の様式・手引き等」では、確定申告書や手引きなどを掲載しているので、必要な用紙をダウンロードできます。

準確定申告の書き方

準確定申告では、通常の確定申告と同じ申告書を使用しますが、書き方は相続人の数によって異なります。

相続人等が1人の場合 ・申告書に「準確定」と追記する
・相続人の情報を記入する
相続人等が2人以上の場合 ・申告書に「準確定」と追記する
・相続人の情報は不要

相続人等が2人以上の場合は確定申告書付表を添付するため、第一表には被相続人について記載するだけでよく、相続人の情報は不要です。国税庁のホームページには申告書の記載例があるので、参考にしましょう。

相続財産や相続割合を記載する箇所があるものの、申告時には未確定のケースが多いため、空欄でも問題ありません。

準確定申告の申告方法

申告方法は、以下4つの方法から選択できます。

  • 税務署に持参
  • 郵送
  • 電子申告
  • 税理士に依頼

各方法について解説します。

税務署に持参

亡くなった人が生前に住んでいた住所地を管轄する税務署窓口に、必要書類を直接持参して提出しましょう。

土日祝日など税務署の閉庁日や営業時間外は、敷地内に設置されている時間外収受箱へ投函して提出できます。相談したいことがある場合は、営業時間内に持参しましょう。

郵送

税務署宛てに郵送して申告する方法もあります。 郵送する際は、返信用の封筒と申告書を2部送付しましょう。後日、1部に受領印を押して返送してもらえます。

通信日付印によって表示された日が、提出日となります。

電子申告

準確定申告は、e-Taxを利用した電子申告が可能です。ただし電子申告では、相続人がそれぞれ個別に申告できません。そのため、事前に代表者を定めてから手続きを行うことになります。

代表者は、相続人全員が署名した「準確定申告の確認書」を、電子申告時に添付しましょう。

税理士に依頼

準確定申告は税理士に代行を依頼できます。税理士に頼めば、帳票類の整理集計から所得税、相続税における還付金の計算まで、すべて代行してくれます。

電子申告では、事前に必要なソフトをダウンロードしたり電子証明書を取得したりしなければならず、人によっては作業が難しいと感じるでしょう。手間をかけたくない場合は、電子申告を税理士に任せるのがおすすめです。

税理士に依頼すれば、所得控除の見落としなどもなく、正確かつスムーズな申告が可能になります。時間がなくて申告できない場合は、税理士に依頼しましょう。

税理士が代理して相続税の申告・申請をする場合は、委任状は不要です。委任状の代わりに、税務署に「税務代理権限証書」を提出する必要があります。税務代理権限証書とは、税理士が税務代理の権限を有していると証明する書類です。

準確定申告の期限

準確定申告には期限が定められています。期限を過ぎるとペナルティを受けるので、早めに準備を始めましょう。

期限は相続開始の翌日から4カ月以内

準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内です。

例えば4月1日に死亡を知った場合は、その4カ月後にあたる8月1日が申告期限日となります。死亡日が2月1日で、それを知ったのが2カ月後の4月1日であった場合、死亡の事実を知った日の翌日から4カ月後にあたる8月1日が期限となります。

期限日までに、申告と納税の両方を終わらせる必要があるので、早めの対応が必要です。

通常の確定申告では、所得が生じた年の翌年2月16日から3月15日までの間に申告するので、準確定申告の期限とは異なる点に注意しましょう。

期限を過ぎた場合はペナルティを受ける

期限内に申告を完了できなかった場合は、所得税以外に「延滞税」と「無申告加算税」が課せられます。

延滞税は、期限翌日から実際に納付する日までの日数に応じて計算されます。納税が遅れるほど、支払う税額も増えてしまうので早めの対応が必要です。

納税した日 延滞税の税率
期限翌日から2カ月以内 原則7.3%特例2.4%(令和5年)
期限翌日から2カ月以上 原則14.6%特例8.7%(令和5年)

税率は変動しており、令和5年1月1日~12月31日の延滞税には、令和5年の税率が適用されます。

延滞税の計算は「未納税額×滞納日数÷365×税率」となります。延滞税の具体例をチェックしていきましょう。

相続税1,000万円の納付を90日延滞した場合

(1)2カ月以内の延滞税:1,000万円×2.4%×61日÷365日=4,010円(1円未満は切捨)

(2)2カ月以上の延滞税:1,000万円×8.7%×29日÷365日=6,912円(1円未満は切捨)

(1)+(2)=10,922円(100円以下は切捨)

上記シミュレーションの結果、90日延滞した場合の延滞税は10,900円です。

期限後1カ月以内に自主申告すれば無申告加算税はかかりませんが、1カ月を過ぎると課税されます。無申告加算税の税率は、以下のように申告のタイミングによって異なるので注意しましょう。

申告の時期 無申告加算税の税率
税務調査の通知前 5%
税務調査の通知後から調査前 50万円まで:10%50万円を超える部分:15%
税務調査後 50万円まで:15%50万円を超える部分:20%

税率は税務調査の通知前に申告すると最も低く、税務調査後の申告が最も高くなります。無申告加算税は、相続税に上記の税率を乗じて計算できます。

申告のタイミング別に、具体例をチェックしていきましょう。

税務調査通知前:相続税額500万円の場合

500万円×5%=無申告加算税25万円


税務調査の通知後から調査前:相続税額200万円の場合

50万円×10%+150万円(200万円-50万円)×15%=無申告加算税27.5万円


税務調査後:相続税額1,000万円の場合

50万円×15%+950万円(1,000万円-50万円)×20%=無申告加算税197.5万円

加算税や延滞税が発生すると、本来納める必要のない税金が発生します。申告が遅くなるほど、支払う税金の金額も増えていくため注意が必要です。

申告時期が4カ月と短いこともあり、手続きに手間取るとすぐに期限を迎えてしまうでしょう。申告遅延が起きる可能性は高いので、申告期限までに間に合う自信がない方は、早い段階で税理士に相談しましょう。

準確定申告の注意点

準確定申告をする際は、以下の3点に注意が必要です。

  • 死亡後に支払った医療費は控除の対象にならない
  • 2年分の準確定申告が必要な場合がある
  • 確定申告書作成コーナーは利用できない

事前に注意点を把握して、申告手続きを進めていきます。

死亡後に支払った医療費は控除の対象にならない

被相続人の死亡後に親族が支払った医療費は、所得控除の対象にはなりません。例えば、被相続人にかかった治療費や入院費用を亡くなった後に支払った場合は、控除の対象外になります。

医療費や生命保険料などの所得控除を受けるには、死亡の日までに被相続人が支払った費用であることが条件です。

2年分の準確定申告が必要な場合がある

相続開始日の日付によっては、2年分の申告が必要になるケースもあります。

例えば、被相続人が2022年度分の確定申告をしないまま2023年に亡くなった場合、2022年分と2023年分の申告をしなければなりません。

なお、2年分の申告をする場合でも、申告期限はどちらも相続開始から4カ月以内です。

故人の死亡日が1〜3月だと、前年分の申告を済ませていない可能性が高いので、前年分の申告状況を確認しておきましょう。

確定申告書作成コーナーは利用できない

準確定申告をする際に、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーは利用できません。

確定申告書等作成コーナーでは、インターネットを通じて申告・申請ができます。画面の案内どおりに金額等を入力するだけで申告書を作成でき、e-Taxによる送信が可能です。金額は自動計算されるので、誤りがありません。

しかし、準確定申告では手書きでの申告、もしくは電子申告になります。通常とは扱いが異なるので注意が必要です。

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