お通夜の流れを徹底解説!日程の決め方、服装・香典のマナーも紹介

お通夜の流れを詳しく確認したいと考えていませんか?

喪主・遺族の方はお通夜の主催者にあたりますので、具体的な流れを把握することが大切です。参列者の方はお通夜の流れを確認することで、安心して参列できるようになります。

本記事では、お通夜の流れや注意事項についてまとめました。お通夜のマナーや日程の決め方といった押さえておくべきポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • お通夜は開式からはじまり、読経やお焼香を行って閉式する
  • 近年のお通夜は、夜通し行わない「半通夜」が増えている
  • お通夜の日程を決める際は、地域の風習や病院の安置期間に気を付ける

お通夜とは

お通夜とは、親戚や身内、親しく交流していた友人などが集まり、故人を偲ぶための儀式です。まずはお通夜の概要から確認しましょう。

従来のお通夜と現在のお通夜

従来のお通夜では、故人と親しい間柄の方が、夜通しお線香の灯を絶やさないように気を配りながら故人の遺体を見守っていました。「通夜」という言葉には「夜通し」という意味があるとされています。

しかし近年は、2時間ほどかけて執り行う「半通夜」と呼ばれる形式が増えています。焼香後の通夜振る舞いも含めると、3時間ほどの短時間で執り行われるケースが増えているようです。

亡くなった当日に親族だけで過ごす「仮通夜」を行わない場合、以下のような日程になります。

逝去当日 お通夜の準備
翌日 18:00 お通夜
19:00 読経・お焼香
20:00 通夜振る舞い
21:00 閉式
翌々日 11:00 葬儀・告別式

葬儀形式が変化した理由として、葬儀場に宿泊設備が用意されていないことや自宅で執り行う家庭が減ったことが挙げられます。

参列者の範囲

参列者の範囲に明確な決まりはありません。故人の意向を確認したうえで、最終的に遺族が参列者を選定しましょう。故人の意向に法的な拘束力はありませんが、あとでトラブルにならないように配慮する必要があります。参列者の一般的な範囲がこちらです。

お通夜の参列者の一般的な範囲
  • 直系の親族
  • 配偶者の親族
  • 仕事でお世話になった方
  • 仲のよかった友人・知人

親族を招く際は、3親等以内の親族を選ぶことが通例となっています。なお、家族葬でお通夜を執り行う場合は、参列者を幅広く招きません。故人と非常に親しかった友人・知人を招いて、両親、子ども、兄弟姉妹などの身内と静かに執り行うのが通例です。

仮通夜と本通夜の違い

仮通夜とは、亡くなった当日に、親族のみで行うお通夜のことです。仮通夜の翌日に参列者を招くお通夜を「本通夜」と呼びます。仮通夜を行わないお通夜は、単に「お通夜」「通夜」と呼びます。

仮通夜 本通夜(お通夜)
日程 亡くなった当日の夕方 仮通夜の翌日の夕方
目的 親族のみが集まり、故人と静かに一晩を過ごす 親族や身内、参列者が集まって、故人を偲ぶ
参列者 親族のみ 親族、友人・知人、仕事上でお世話になった方々

仮通夜は、親族が故人とゆっくり過ごすことを目的としているため、宗教的な儀式を行う必要はありません。また、お通夜では喪服を着用するのがマナーですが、仮通夜では黒、グレー、紺といった落ち着いた色合いの平服で構いません。

【遺族】逝去からお通夜までの流れ

ご本人が亡くなってからお通夜を執り行うまでの流れをご紹介します。

  • 訃報を流す
  • 葬儀社への連絡
  • スケジュールの調整
  • お通夜の告知・準備

方法や注意点を確認しておきましょう。

訃報を流す

まずは親戚や家族、故人と関係の深い友人などに向けて訃報を流します。訃報とは、亡くなったことを知らせる便りのことです。

遠方にお住まいの方は、お通夜の会場に到着するまでに時間がかかります。喪服の準備といった参列の準備もあるため、早めにお知らせすると親切でしょう。他の方々には葬儀の連絡と同時に訃報を流す方法で問題ありません。

連絡手段

訃報の知らせを届けるためには、電話が確実です。しかし、時間帯や相手の状況によっては連絡がつかないことも考えられます。電話で連絡がつかない場合は、メールやFAXを活用するとよいでしょう。

ただし、メールを活用する際は送信のやり方に注意が必要です。宛先をひとまとめにして送信する「一斉送信」を使用すると、相手によっては失礼と捉えられるかもしれません。電話で連絡がつかなかった旨を記載して、丁寧な文章を心がけましょう。

葬儀社への連絡

葬儀社へ連絡を取り、亡くなったことを担当者へ伝えます。担当者からお悔やみの言葉を受け取ってから、葬儀の打ち合わせを行います。会場はどこにするか、喪主は誰が務めるのかなどを相談して、葬儀内容を具体的に決めていきましょう。

葬儀社との主な検討事項は、以下のとおりです。

葬儀社との主な検討事項
  • 葬儀を執り行う場所・日時
  • 火葬場
  • 葬儀の規模
  • 参列者の予想人数
  • 通夜振る舞いの料理など
  • 返礼品

事前に葬儀社が決まっている場合は、以下の内容を打ち合わせておくとその後の流れがスムーズになります。

葬儀社と事前に打ち合わせておくべき内容
  • 葬儀費用の予算
  • 予算に応じた葬儀プランの決定
  • 祭壇、棺、供花の選定
  • 故人の宗教や宗派
  • 喪主・世話役を誰が務めるか

なお、葬儀を滞らず進行させるには、死亡届や火葬許可証が必要です。死亡届とは、戸籍がある方の死亡を公的に証明する書類であり、火葬許可証は火葬の手続きの際に必要な書類になります。

本来、これらの書類は、親族などの届出義務者が行うこととされていますが、葬儀社が代行することも可能です。故人の逝去にともない遺族の方は心を痛めていることと思います。手続きにかかる負担を減らすためにも、葬儀社の代行サービスを利用しましょう。

葬儀社の探し方

葬儀社が決まっていない場合は、葬儀社を探すことになります。葬儀社の主な探し方がこちらです。

葬儀社の主な探し方
  • 病院からの紹介を受ける
  • 親戚や知り合いから紹介してもらう
  • タウンページなどの電話帳から探す
  • インターネット検索を利用する

葬儀社を選ぶ際は、こちらの相談に親切に対応してくれるところや明確な見積もりを提示してくれるところを選びましょう。検討する時間があれば、複数の葬儀社から見積もりをもらって、プランの内容や予算などを比較検討することも大切です。

スケジュールの調整

続いてお通夜を執り行うスケジュールの調整を行います。お通夜は、亡くなった翌日の夕方または翌々日の夕方から執り行いますが、希望する会場が予約できなかったり火葬場に空きがなかったりする場合は、日程の調整が必要となります。

また、仏式のお通夜では、僧侶の手配も欠かせません。菩提寺(ぼだいじ)のある方は、故人の氏名や死亡日時をお伝えしたうえで日程を相談しましょう。

お通夜の告知・準備

お通夜の日程が決まったあとは、あらためてお通夜の告知を行います。故人が生前お世話になった親戚や知り合いの方々に連絡しましょう。お通夜の告知には、日時、会場、喪主を忘れずに記載します。例文がこちらです。

父〇〇が×月×日×時に永眠いたしましたので、ご報告申し上げます。
生前に〇〇が賜りましたご厚情に深く感謝申し上げます。
通夜および葬儀告別式が以下の日程で行われますので謹んでお知らせ申し上げます。

1.日時
通夜 ×月×日×時
葬儀・告別式 ×月×日×時

2.場所
〇〇会館
住所 
電話番号 
※駐車場がない場合は、その旨を記載する

3.喪主
■■■
電話番号 △ △ △

お通夜の告知と並行して、以下の項目も準備しておきましょう。

  • 喪服
  • 数珠
  • お布施

お通夜の日程を決める際の注意点

お通夜の日程を決める際は、どのような点に注意したらよいのでしょうか?注意点を3つ解説します。

無理のない日程を組む

お通夜の日程を決める際は、遺族と参列者の双方に無理のない日程を組みましょう。

仮に故人が深夜から未明の時間帯に亡くなった場合、当日にお通夜を行うことも可能です。しかし、お通夜にかかる遺族の負担が大きくなるかもしれません。多くの参列者を招き故人を偲んでもらうためにも余裕のあるスケジュールを組みましょう。

一般的な日程の例がこちらです。

1日目 亡くなった当日
2日目 お通夜
3日目 葬儀・告別式

仮通夜をはさみ、4日間の日程で行うケースもあります。

1日目 亡くなった当日
2日目 仮通夜
3日目 お通夜
4日目 葬儀・告別式

日本には「墓地、埋火葬に関する法律」があり、死後24時間以上経過してから火葬または埋葬を行うことと定められています。そのため、故人の遺体は少なくても1日は必ず安置されることになります。

第3条 埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。

引用元:厚生労働省-墓地、埋葬等に関する法律

遺族の方の中には「遺体が傷んでしまうのでは?」と不安を感じる方がいるかもしれません。しかし、葬儀社は遺体を管理する専門家ですので、衛生面に配慮して適切に管理してくれます。

地域の風習を確認する

お通夜を含む葬祭全般では、六曜の「友引」「仏滅」を避ける風習があります。六曜とは、中国から伝わった暦を指し、運勢のよい日と注意すべき日が定められている風習です。

地域によっては、友引や仏滅にお通夜を執り行うべきではないと考える方がいるかもしれません。実際に友引をお休みにしている火葬場も存在するため、地域の風習を確認しておくのがよいでしょう。

病院の安置期間に気を付ける

病院で亡くなった場合は、ご遺体を搬送する手続きをとらなくてはいけません。病院の霊安室は、ご遺体を短時間安置する場所となりますので、すみやかに葬儀社へ連絡して、自宅や斎場までご遺体を搬送してもらう必要があるのです。

安置できる時間に上限を定めている病院もあるため、葬儀社は早めに決めておくのがよいでしょう。本人が亡くなった際にも、親身にサポートしてくれるはずです。

【参列者】訃報の連絡からお通夜までの流れ

訃報からお通夜までの流れについて、参列者の目線で解説していきます。もしも訃報を受け取ったら、どのように対応すればよいのか、具体的な対応方法をみていきましょう。

お悔やみの言葉を伝える

訃報を受け取った場合は、まず連絡をくれた方にお悔やみの言葉を述べましょう。お悔やみの言葉とは、悲しみの最中にいる遺族の気持ちを思いやってかける言葉のことです。気落ちしている遺族に対して、以下のような言葉を述べます。

遺族へのお悔やみの言葉の例
  • この度はご愁傷様です
  • 謹んでお悔やみ申し上げます
  • 心よりお悔やみ申し上げます

お悔やみの言葉は、遺族に直接お会いして述べるのが最も礼儀正しいといえます。しかし、ご自身が遠方に住んでいて駆け付けられない場合は、電話でお悔やみを述べても構いません。

電話で遺族と話す際は、話が長くならないようにご注意ください。遺族は傷心であるにもかかわらず、お通夜の準備で忙しくしています。お悔やみの言葉のあとに取り乱してしまったりすると、その間遺族の手をわずらわせてしまうでしょう。

突然の訃報に驚いてしまうかと思いますが、電話は簡潔に終わらせるのがマナーです。なお、メールやFAXで訃報を受け取った場合は、こちらもお悔やみの言葉を文章にしてお返しします。無理に電話をかける必要はありませんのでご注意ください。

参列する準備を整える

故人と非常に親しい間柄の場合をのぞき、葬儀と訃報の連絡は同時にいただきます。訃報の連絡を受け取った際は、まずお通夜の日時や場所を確認して、参列できるスケジュールを組みましょう。確認すべき項目がこちらです。

お通夜参列前に確認すべき項目
  • お通夜会場までの移動手段
  • 一緒に参列する方
  • 駐車場の有無※車で向かう場合
  • 仕事などのスケジュール

次に参列するために必要な準備をととのえます。お通夜で必要な持ち物は以下のとおりです。

お通夜で必要な持ち物
  • 喪服
  • 数珠
  • 香典・袱紗(ふくさ)
  • ハンカチ

基本的にお通夜に手荷物は持っていきませんが、必要に応じてカバンや折り畳み傘などを用意しましょう。

女性の場合は、お化粧道具や替えのストッキングを用意しておくと安心です。髪の長い方はヘアピンやゴムを用意してもよいでしょう。喪服の選び方については後述します。

参列できない場合は必ず連絡を

お通夜は、故人を悼み遺族に思いやりの言葉をかける大切な儀式です。そのため、お通夜に招かれた場合は極力参列するようスケジュールを調整しましょう。

また、何らかの事情でどうしても開始時刻に間に合わない場合は、遺族に遅れる旨を連絡しておくのがマナーです。参列できない場合は、欠席の連絡を忘れずに入れましょう。

欠席する際は、以下のいずれかの方法で弔意を伝えます。

お通夜に欠席する場合の弔意の伝え方
  • 弔電を送る
  • 供花を送る
  • 後日弔問する

故人や遺族に失礼のないように必要な対応を取りましょう。

お通夜における弔問のマナー

弔問とは、遺族へお悔やみの言葉を伝えるために、故人が安置されている場所を訪問することを指します。遺族に迷惑をかけないためのマナーを確認しましょう。

お通夜前に弔問するケース

弔問はお通夜の前に行うのが通例となっています。しかし、お通夜前の遺族はさまざまな準備で忙しくしていますので、遺族から弔問に招かれた場合に訪問しましょう。

遺族から連絡がない場合でも、伺ってよいか遺族へ確認してから訪問することも可能です。事前連絡を忘れずに行い、失礼のないようご注意ください。

お通夜後の弔問が適切なケース

遺族がお通夜前の弔問を望まない場合は、お通夜の席で哀悼の意を表すことになります。お通夜に参列できなかった場合は、葬儀後の法要の際に弔問できないか検討してみましょう。

なお、仏教では、亡くなった日から数えて四十九日目に、極楽浄土へ行けるかどうかの最終審判を受けるとされています。そのため弔問は四十九日法要までに行うのが一般的です。

弔問の際は、喪服を着用する必要はありません。黒やグレーといった地味な色合いの平服と数珠を用意しましょう。香典やお供え物を持参しても構いません。

お通夜当日の流れとタイムスケジュール

お通夜当日の流れとタイムスケジュールをみていきましょう。一般的な例をご紹介します。

17:30 受付・記帳

お通夜の受付は、開始時刻の30分前からから行われます。移動手段や移動時間を確認して、余裕を持って会場を目指しましょう。

受付の方にお悔やみの言葉を述べてから、芳名帳に氏名や住所を記入します。次に袱紗(ふくさ)から香典を取り出して、受付の方にお渡しします。受付が済んだら、お通夜会場の席に着席して開式のあいさつを待ちましょう。

喪主・遺族の場合は、開始時刻の2時間前に会場入りするのがよいでしょう。お通夜当日は以下の項目を行います。

お通夜当日に喪主・遺族が行うこと
  • 式場設営を確認する
  • 供花の配列や札名を確認する
  • 返礼品を確認する
  • 世話役の方々へあいさつする
  • 僧侶を出迎える

受付時間になったら、参列者に記帳をお願いしてから香典を受け取りましょう。会計係の方は、受け取った香典が誰からのものなのか、あとで確認できるように記録することが大切です。

18:00 開式~読経・お焼香

開始時刻になると、司会役の方より開式のあいさつがあります。間もなく僧侶による読経(どきょう)がはじまり、読経の最中にお焼香を行います。お焼香の順番がこちらです。

  1. 喪主
  2. 遺族
  3. 参列者

読経とは、僧侶が声を出してお経を読むことを意味します。お経とは、お釈迦様の教えを弟子たちが再編したものとされており、故人をあの世へ導く役割のほか、遺族の悲しみをいやす役割もあると考えられています。

この世を生きている方々に向けて、悟りへの道筋を示す内容が含まれていますので、参列者も読経に耳を傾けるのよいでしょう。

お焼香のやり方

お焼香とは、故人の供養のために香を焚いておがむことです。ご自身の穢れを落とすためにも行われています。参列者の人数や会場の規模によって、「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」のいずれかの方法で執り行われています。

以下の表で、それぞれのやり方や注意点を確認しましょう。

種類 作法
立礼焼香
  1. 焼香台の手前でとまる
  2. 遺族と僧侶に黙礼する
  3. 正面に向かって黙礼する
  4. 右手の親指、人差し指、中指の3本で抹香をつまみ、押しいただく※
  5. 抹香を香炉にくべる
  6. 正面に向かって合掌する
  7. 正面に向かって黙礼する
  8. 遺族と僧侶に黙礼する
座礼焼香
  1. 中腰の姿勢で祭壇の前に進む
  2. 正座して、遺族と僧侶に黙礼する
  3. 正面に向かって黙礼する
  4. 膝立ちの姿勢で焼香前に進む
  5. 焼香・合掌膝立ちの姿勢で後ろに下がる
  6. 遺族と僧侶に黙礼する
回し焼香
  1. ご自身の席でお盆が回ってくるのを待つ
  2. 隣の方に会釈して、お盆を受け取る
  3. 香炉をご自身の前において合掌する
  4. 焼香・合掌
  5. 隣の方へお盆を回す
※つまんだ抹香をご自身の目の位置より上の高さにささげて持つことを「押しいただく」といいます。押しいただく際は、故人を供養する気持ちを込めるとよいでしょう。

19:00 閉式

お焼香と読経が終わると、お通夜は一旦閉式となります。喪主は、遺族を代表して参列者の方々へお通夜のあいさつを行い参列への感謝を述べます。通夜振る舞いと葬儀・告別式の案内も忘れてはいけません。

喪主から参列者の方に向けて直接お話しする機会はそう多くありません。形式にあまりとらわれずに感謝の気持ちを伝えましょう。

19:10 通夜振る舞い

通夜振る舞いとは、参列してくれた方々や僧侶に対して、食事やお酒を振る舞い感謝の意を表す儀式です。また、故人と縁のある方々と飲食を共にすることで、故人を偲ぶという目的もあります。出席した際は、一口でも箸を付けるようにしましょう。

通夜振る舞いは1時間ほどで終了となりますが、途中退席しても構いません。喪主または遺族に一言あいさつをしてから、退席しましょう。

21:00 閉式

通夜振る舞いが終了したあと、参列者は帰宅します。喪主・遺族は喪に服していますので、お見送りをする必要はありません。

たとえ参列者が目上の方であっても、口頭で感謝の気持ちを伝えたりその場で深くおじぎしたりすれば失礼にはあたりません。

なお、地域によっては葬儀会場で清めの塩をいただく場合があります。清めの塩とは、身体を清めるための塩のことで、自宅の玄関先で体に振りかけて使用します。具体的な使い方がこちらです。

  1. 塩をつまむ
  2. 胸、背中、足元の順番で振りかける
  3. 振りかけた塩を手で払う
  4. 足元に落ちた塩を踏む
  5. 玄関をまたいで自宅に入る

お通夜における服装のマナー

お通夜における服装のマナーについて、遺族が着用する喪服と参列者が着用する喪服に分けて解説します。遺族や参列者に失礼のないように、喪服のマナーや注意点を確認しましょう。

正装として喪服を着用する

お通夜の席では、故人の死を悼む気持ちをあらわすために、礼服である「喪服」を着用するのがマナーです。礼服とは、冠婚葬祭の際に着用する衣服を指します。喪服とは、喪中の際に着用する黒や薄墨色(うすずみいろ)の衣服です。

喪服には「正喪服」「準喪服」「略喪服」があり、正喪服が最も格式が高く、参列者は遺族より格式の高い喪服を着用してはいけない決まりになっています。立場によって着用すべき衣服が異なるため注意が必要です。

正喪服 モーニング
五つ紋の紋付羽織袴
準喪服 ブラックスーツ
アンサンブル
ワンピース
略喪服 ビジネススーツ
ワンピース

お通夜の席では喪服以外にも注意すべきマナーが存在します。以下の表でご確認ください。

男性 女性
顔・頭髪 髪や髭は適度に整える(無精髭や寝ぐせはNG) 髪の長い方は、低めの位置でまとめる
ナチュラルメイクを心がける
喪服以外に着用する衣服 白色で無地素材のワイシャツ
黒のネクタイ
黒のブラウス
黒のストッキング(素足やベージュはNG)
その他の注意点 光沢のある靴は履かない
結婚指輪以外のアクセサリーは外す
ネックレスは1重のものを身に付ける
目立つマニキュアは避ける(黒の手袋を着用する)

遺族は正喪服または準喪服を着用する

お通夜で、遺族が着用するのは、正喪服または準喪服となります。正喪服とは、喪服の中で最も格式の高い礼服を意味しており、洋装だけでなく和装も存在します。お手元にない場合は、冠婚葬祭の礼服を扱っている専門店でレンタル可能です。

準喪服とは、正喪服の次に格式の高い礼服です。正喪服と異なり和服は存在しないため、基本はブラックスーツとなります。ブラックスーツとは、葬儀や結婚式で着用する礼服を指し、黒のビジネススーツとは色や光沢などが異なります。

ブラックスーツ ビジネススーツ
濃い黒(漆黒)
光沢 なし あり
生地 ウール ポリエステル混合

ブラックスーツは、礼服(フォーマルスーツ)の専門店や大型百貨店などの礼装売り場で購入できます。なお、正喪服は、お通夜だけでなく葬儀・告別式から一周忌または三回忌まで着用するのが一般的です。

男性の場合

遺族の男性が着用する正喪服は、洋装ならモーニングスーツ、和装ならば五つ紋の紋付羽織袴(もんつきはおりはかま)となります。

ただし、「未亡人や故人と近い親戚は和装を着用すべき」といった風習もあるため、地域の文化や風習についても確認しておくと安心です。準喪服を着用する場合は、ブラックスーツを選びましょう。

女性の場合

遺族の女性が着用する正喪服は、洋装ならアンサンブル、和装ならば五つ紋の紋付羽織袴(もんつきはおりはかま)となります。

和装を着用する場合は、着物、帯締め、下着や足袋の色合いにも注意が必要です。心配な場合は、親族や葬儀社に確認しておきましょう。準喪服を着用する場合は、ワンピースまたはブラックスーツを選びます。

参列者は準喪服または略喪服を着用する

葬儀の席では、遺族よりも格式の高い喪服を着用しないことがマナーです。そのため、参列者は準喪服または略喪服を着用します。略喪服とは、急な弔問や三回忌以降の法要で着用する礼服です。

なお、礼服と反対の意味を示すのが平服ですが、葬儀の場面では注意が必要です。

葬儀における平服とは略喪服を指します。遺族から「平服で構いません」といわれても、落ち着いた色合いのビジネススーツを着用しましょう。

男性の場合

参列者の男性が着用する準喪服は、ブラックスーツとなります。略喪服では、黒、グレー、紺などのビジネススーツを選びましょう。スーツの下には、白色で無地のワイシャツを選び、黒のネクタイを着用します。

男性の場合は、お化粧道具などを必要としませんので、できるだけカバンや荷物を持たずに両手を空けて参列しましょう。

女性の場合

参列者の女性が着用する準喪服は、ワンピースやブラックスーツを選びます。略喪服の場合は、黒のワンピースが基本ですが、グレーや紺などのワンピースでも問題ありません。

女性の場合は、お化粧道具や替えのストッキングを持参すると何かあった際に役立ちます。バックを選ぶ際は、黒色で光沢のない素材のものを選びましょう。

お通夜における香典の常識

お通夜では、霊前に供えるために香典を持参します。故人を正しく偲ぶためにも香典の常識を確認しておきましょう。

意味と目的

香典とは、供花やお香の代わりに故人の霊前に供える金品のことです。その目的は、故人への供養の気持ちを示すこと、葬儀に多額の出費が必要になった遺族の金銭的な負担を軽減することの2つです。

香典は、参列する一行の代表者が袱紗(ふくさ)に入れて持参し遺族へお渡しします。

表書きの書き方

香典の表書きは、薄墨の毛筆を使って記入します。これには、「突然の訃報を聞いて急いで駆け付けたため、十分な濃さの墨を用意できなかった」という意味があります。

また、表書きの文言は、故人の宗教や宗派に合わせるのがマナーです。例えば、仏式のお通夜では、「御霊前」や「御仏前」と記載します。浄土真宗の場合は、「故人は亡くなってすぐ仏様になる」と考えられているため、「御仏前」を使用しましょう。

宗教が神道(しんとう)の場合は「御神前(ごしんぜん)」または「御玉串料(おたまぐしりょう)」と記載します。キリスト教には、カトリックとプロテスタントがありますが、両者に使用できる記載方法は「御花料(おはなりょう)」です。

表書き
仏教 御霊前
御仏前
神道 御神前
御玉串料
キリスト教 御花料
無宗教または不明の場合 御霊前

なお、香典は、水引(みずひき)と呼ばれる帯紐がついた袋に入れます。水引にはいくつかの種類がありますが、葬儀では黒白の水引や黒銀の水引がついた帯袋を選びましょう。

紅白の水引や金銀の水引は、「慶事」というめでたい席で使用されていますのでご注意ください。

渡すときのマナー

香典をお渡しする際は、必ず袱紗から香典袋を取り出してお渡ししましょう。袱紗から取り出す際の作法が以下のとおりです。

  1. 受付の方にお悔やみの言葉を述べて一礼する
  2. 右手に袱紗をのせる
  3. 左手で袱紗を開く
  4. 左手で袱紗から香典袋を取り出す
  5. 香典袋を袱紗の上にのせる
  6. 相手から見て表書きが読める向きにする
  7. 両手でお渡しする

弔事では、袱紗を左手で開くことがマナーとなります。また、「この度はご愁傷様です」「突然のことで、お悔やみを申し上げます」といったお悔やみの言葉を述べることを忘れないようご注意ください。

相場

香典の包む金額は、故人との関係性によって異なります。一般的な相場がこちらです。

故人との関係性 一般的な相場
両親 5万円から10万円
兄弟・姉妹 3万円から5万円
祖父母 1万円から3万円
親戚 1万円から3万円
友人・知人 5,000円から1万円
仕事関係の方 5,000円から1万円
近所の方 5,000円未満

香典袋には、外袋と中袋があります。中袋の中央に、「金壱萬円也」などと包んだ金額を記載して中袋の裏側に住所と氏名を記載しましょう。

なお、香典にはシワの入ったお札を使用するのがマナーとされています。これは「このときのために用意しておいた」と遺族の方々に誤解をあたえないためです。新札しか用意できなかった場合は、折り目を付けてから納めるようにしましょう。

お通夜におけるあいさつの種類

お通夜におけるあいさつには、「喪主・遺族から参列者へのあいさつ」と「参列者から喪主・遺族へのあいさつ」が存在します。以下の項目を確認して、正しいあいさつを身に付けましょう。

喪主・遺族から参列者へのあいさつ

喪主には、遺族を代表して参列者全員に向けてあいさつする役割があります。参列者のお焼香が終了して、僧侶による読経が終わったタイミングが一般的です。あいさつに含める項目がこちらです。

参列者へのあいさつに含める項目
  • 自己紹介
  • 参列者へのお礼
  • 生前のご厚意へのお礼
  • 通夜振る舞い・告別式の案内

上記の項目を踏まえた例文をみてみましょう。

遺族を代表いたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。長男の〇〇でございます。
本日はお忙しい中、お通夜に参列していただきまして、誠にありがとうございます。父も皆様にお越しいただき、さぞ喜んでいることと存じます。
また、生前は、皆様より格別のご厚意をたまわりましたこと、故人に代わり深くお礼申し上げます。
ささやかながら別室にお食事をご用意いたしました。父の供養のために、今しばらくお付き合いいただけますと幸いです。
なお、葬儀・告別式を明日11時より〇〇にて執り行いますので、ご都合がよろしければ、ご会葬くださいますようお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。

通夜振る舞いに行う喪主のあいさつについても、以下に例文をご紹介します。

本日は急なお知らせにも関わらず、故人の通夜に足を運んでくださいまして、誠にありがとうございました。
皆様のご厚意に、故人もさぞかし喜んでいることと存じます。
夜も更けてまいりました。名残惜しくはございますが、お忙しい方もいらっしゃるかと存じますので、本日はこれにて終了とさせていただきます。
なお、葬儀・告別式は明日〇〇日の〇〇時より△△にて執り行いますので、ご都合がよろしければご会葬くださいますようお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。

喪主のあいさつでは、参列者へのお礼と葬儀の案内を伝えることが重要です。故人の人柄がわかるようなエピソードを含めてもよいでしょう。参列者の気持ちに配慮して、湿っぽくならないよう簡潔な内容を心がけます。

お通夜のあいさつでは、原稿を用意してもマナー違反にはあたりません。メモや原稿用紙を用意するのもよいでしょう。あいさつの時間は、400字詰めの原稿用紙1枚分、時間にして3分ほどが目安となります。

参列者から喪主・遺族へのあいさつ

参列者が喪主・遺族へあいさつする際は、「ご愁傷さまです」といったお悔やみの言葉を述べます。哀悼の意を表すために、小さめの声でトーンを抑えて伝えることが大切です。

遺族の心情に配慮するためにも、ご自身の気持ちや故人との思い出は語らず、簡潔にあいさつしましょう。

お通夜のあいさつのNG項目

お通夜のあいさつでは、忌み言葉や重ね言葉を口にしないことがマナーです。また、死因をしつこく尋ねることも遺族の心情に配慮していない行為にあたりますので気を付けましょう。

遺族だけでなく参列者も突然の訃報に心を痛めていますが、正しく故人を偲ぶために適切な作法を心がける必要があるのです。

忌み言葉・重ね言葉を使用する

忌み言葉とは、不吉な事柄を意味する言葉、縁起がよくないとされている言葉のことです。言霊(ことだま)という概念が広まっている日本では、冠婚葬祭の場面で忌み言葉を避ける風習があります。注意したい忌み言葉がこちらです。

直接的な言葉 死ぬ、死、死去、急死、四、九
間接的な言葉 消える、浮かばれない、切れる、苦しい、大変なこと、とんでもないこと、落ちる、迷う

上記の言葉は、葬儀の場面では別の言葉に言い換える必要があります。例えば、死ぬといった直接的な言葉は、「逝去」「亡くなる」「突然のこと」といった言葉に置き換えなくてはいけません。

重ね言葉とは、同じ表現を繰り返す言葉です。日常的に使用する場面も多い重ね言葉ですが、お通夜の席では不幸を連想させてしまうためご注意ください。代表的な重ね言葉と言い換え例がこちらです。

重ね言葉 言い換え例
たびたび(度々) 何度も、いつも
つぎつぎ(次々) 立て続けに
ますます(益々) さらに、もっと
ちかぢか(近々) 近いうちに
みるみるうちに たちまち
いよいよ 一層、なおさら
しばしば 何度も、いつも
もともと はじめから、もとは
とうとう これから
わざわざ あえて

忌み言葉や重ね言葉以外にも、「あのときこうしていれば…」といった過去を悔いる言葉は、遺族に負担をあたえるおそれがあります。

また、「がんばってください」「落ち込まないで元気を出して」といった言葉も、気落ちしている遺族には不適切かもしれません。遺族をいたわる言葉をかけたいときは、「お体を大切にお過ごしください」「ご自愛ください」といった表現に置き換えましょう。

死因を詳しく尋ねる

お通夜を含めた葬儀の席では、遺族の心情に配慮するのが大切です。故人の死因を詳しく尋ねる行為は、亡くなった原因を遺族が回想することにつながりますので、決して行ってはいけません。

また、子どもが亡くなった場合は、自分の子どもの話題は避けるなど遺族の心情に配慮した立ち振る舞いを心がける必要があります。

長時間話す

急な訃報を受けた遺族は、傷が十分に癒えない中、お通夜の準備に取りかかっています。遺族の負担を避けるために、お話は長くならないよう注意しましょう。

遺族と故人にまつわるエピソードなどを話し合いたい場合は、通夜振る舞いの席が適切です。お互いに腰を据えて話せる場面で、故人との思い出を振り返りましょう。

お通夜後の流れ

最後にお通夜後の流れを解説します。以下の内容を確認して、お通夜後のイメージを持ってみましょう。

  • 葬儀・告別式
  • 出棺・お骨上げ
  • 初七日法要
  • 精進落とし

葬儀・告別式

葬儀・告別式とは、通夜の翌日に執り行われる故人と最後のお別れをする儀式です。葬儀・告別式における葬儀とは、宗教的な儀礼儀式を指し、以下の流れで行われます。

  1. 僧侶による読経
  2. 引導
  3. 弔辞・弔電
  4. 遺族のお焼香

一方の告別式とは、社会的なお別れの儀式を指します。遺族のお焼香が終わり参列者の焼香がはじまった段階で、葬儀から告別式へと移行します。

  1. 参列者のお焼香
  2. 献花
  3. 釘打ち
  4. 喪主のあいさつ

釘打ちとは遺体を安全に運ぶため、棺に釘を打つ行為のことです。釘打ち後は、遺体のお顔を拝見することはできないため、故人に会えるのは釘打ち前が最後の機会となります。

お別れの花を敷き詰めたり思い出の品を詰め込んだりしながら、故人との最後のお別れを行いましょう。釘打ちが終わったあと、喪主からのあいさつがあります。

出棺・お骨上げ

棺を霊柩車まで移動させたあと、遺族は火葬場に向けて出発します。参列者は遺族や霊柩車の出発を見送ってから解散となるでしょう。故人と関係が深かった参列者は、火葬に立ち会うことを勧められるかもしれません。

火葬場に到着したあとの流れがこちらです。

  1. 火葬炉前に棺を安置する
  2. 僧侶による読経
  3. 焼香
  4. 火葬
  5. お骨上げ

棺が火葬炉に入って間もなく、火葬がはじまります。火葬はおよそ1時間から2時間ほどかかるため、遺族は別室で待機しましょう。火葬後は、お骨上げを行い、遺骨を骨壺や骨箱に納めて火葬は完了となります。

初七日法要

初七日法要(しょなのかほうよう)とは、故人が亡くなった日から数えて七日目に行われる儀式です。くり返しになりますが、仏教では、亡くなってから四十九日の期間、七日ごとに極楽浄土へ行けるかどうかの判断がくだされると考えられます。

故人が判断を受けている期間で、最初に行われる法要が初七日法要です。僧侶の読経や焼香を行うことで、故人の成仏を願います。なお、初七日法要の日時や場所は、菩提寺と相談して決定するのが通例です。

精進落とし

精進落としとは、初七日法要の際に設けられる会食の席です。もともとは、四十九日法要のあとに設けられるものでしたが、現在は初七日法要や火葬後に設けられることが一般的です。

精進落としは、参列者や僧侶へお礼の気持ちを示すことと、遺族と参列者で故人を偲ぶために設けられます。お通夜後に行われる通夜振る舞いの目的と同じですが、参列する方の顔ぶれや人数が異なります。両者の違いを以下の表で確認しましょう。

通夜振る舞い 精進落とし
時期 お通夜のあと 法要のあと、火葬のあと
食事形態 大皿の料理 1人1膳

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