「お通夜での焼香をいつも見よう見まねでやっているが、正しいやり方や作法がわからない」「焼香の順番や流れがわからない」など、焼香のルールがよくわからないという方は多いのではないでしょうか?
お通夜での焼香のやり方には種類があり、それぞれにルールが存在します。また、宗派ごとに作法が異なるため、お通夜に参列する際は宗派の確認が必要です。
この記事では、お通夜での焼香のやり方や流れ、宗派ごとの作法について解説します。注意点もご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
- 焼香とは、お通夜や葬儀、法要の際に行う所作の1つ
- お通夜での焼香には、「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」の3種類がある
- 焼香台に向かう際は、数珠を忘れずに持っていく
お通夜とは
お通夜とは、亡くなった故人を偲ぶため、故人と生前親交のあった友人や知人、親族などが集まって行う儀式です。僧侶にお経をあげてもらい、故人との最後の時間を過ごします。
かつては朝を迎えるのを見守るために遺族や親族が遺体に寄り添い、夜通しろうそくや線香の番をするのが一般的なお通夜でした。
そのためお通夜といえば夜明けまで行われるものでしたが、現在ではお通夜のあと開かれる「通夜振る舞い」と呼ばれる会食を含めて2〜3時間で終了するケースがほとんどです。
焼香とは
焼香とは、お通夜や葬儀、法要の際に行う所作のことをいいます。基本的には、抹香(まっこう)を指でつまんで額の位置まで上げてから香炉にくべます。
抹香とは粉状にしたお香のことで、焼香には抹香を使用する場合が多いです。また、抹香を額の位置まで上げる行為を「おしいただく」といいます。
焼香は喪主や遺族をはじめ、式に参列した全員が順番に行います。焼香の方法には種類があり、宗派によって作法が異なるため注意が必要です。
間違った方法で行うと目立ってしまうため、事前に確認してから式に臨んだほうがよいでしょう。
お通夜での焼香のやり方
線香による焼香もありますが、抹香を使用するのが正式なやり方です。焼香の方法には3種類あり、葬儀場の形式によってどの方法で行うかが異なります。ここでは、お通夜での焼香のやり方について、種類別に解説します。
立礼焼香
立礼焼香(りつれいしょうこう)とは、立った状態で行う方法です。その場で行うのではなく、焼香台までご自身が出ていって行います。3つの中でもっとも一般的な方法で、椅子に座るタイプの葬儀場でよく用いられます。
流れは以下のとおりです。
- 数珠を房が下にくるようにして左手に持つ
- 席を立ち、焼香台まで移動する
- 喪主や遺族に向かって一礼する
- 香炉の前まで進み、遺影を見つめてから故人に向かって黙礼する
- 抹香を指でつまみ、おしいただいてから香炉にくべる(1〜3回)
- 数珠を手にかけ、故人に対して合掌礼拝する
- 香炉から数歩下がり、喪主や遺族に一礼する
- 席に戻って着席する
抹香は右手の親指と人差し指、中指で軽くつまみます。宗派によってはおしいただかない場合もあります。
座礼焼香
座礼焼香(ざれいしょうこう)とは、正座した状態で行う方法です。自宅の仏間や寺院の本堂など、畳敷きの場所でよく用いられます。焼香台までは、中腰か座ったまま膝を使って移動します。
流れは以下のとおりです。
- 数珠を房が下にくるようにして左手に持つ
- 焼香台まで中腰または膝を使って移動する
- 喪主や遺族に向かって一礼する
- 香炉の前まで膝をついたまま進み、座布団の上で正座する
- 遺影を見つめてから故人に向かって黙礼する
- 抹香を指でつまみ、おしいただいてから香炉にくべる(1〜3回)
- 数珠を手にかけ、故人に対して合掌礼拝する
- 膝を使って座布団から降り、喪主や遺族に一礼する
- 席に戻る
流れは立礼焼香と変わりません。
異なる点は、立礼焼香は立って行うのに対して、座礼焼香は正座で行う点くらいです。
回し焼香
回し焼香(まわししょうこう)とは、自ら席を移動して焼香をしに行くのではなく、回ってきた香炉を用いてその場で行う方法です。葬儀場の規模が小さく、焼香のために移動することが難しい場合に用いられます。
流れは以下のとおりです。
- 香炉が回ってきたら、会釈して受け取る
- 香炉を膝に置く
- 数珠を手にかけ、祭壇に向かって合掌する
- 抹香を指でつまみ、おしいただいてから香炉にくべる(1〜3回)
- 再度数珠を手にかけ、故人に対して合掌礼拝する
- 次の方に香炉を回す
次の方がいるなら香炉を次に回しますが、いないのであれば喪主に返します。会場が狭く、立ち上がって返しに行けないときはほかの方に喪主まで回してもらいましょう。椅子に座っていても正座でも流れは同じです。
焼香を行う順番
焼香は誰から行ってもよいわけではなく、順番が決められています。順番は以下のとおりです。
- 喪主
- 遺族・親族
- 参列者
まずは喪主が焼香をし、続いて遺族や親族が順番に行います。遺族・親族の中でも順番があり、血縁の濃い方から行うこととされています。
もっとも優先されるのは二親等内の親族ですが、その中でも順位が上に来るのは故人の親です。そのほか、故人を介護していた方や同居の親族など、事情によって順番が繰り上がる場合もあります。
喪主と参列者では焼香の流れが異なる
喪主と参列者では、焼香の流れが異なります。喪主と参列者では立場が異なるためです。
たとえば喪主が一礼するのは僧侶や参列者であるのに対し、参列者は喪主や遺族に一礼します。喪主が遺族に一礼したり遺族が喪主やほかの遺族に対して一礼したりすることは不自然であるため、相手を間違えないよう注意しましょう。
喪主が焼香する場合の流れについては、以下の見出しで解説します。参列者が焼香する際の流れについては、「お通夜での焼香のやり方」を参考にしてください。
喪主が焼香するときの流れ
最初に喪主が焼香をします。そのため、喪主の所作はほかの遺族や参列者の見本になります。喪主が焼香する際の流れは以下のとおりです。
- 数珠を房が下にくるようにして左手に持つ
- 席を立って参列者に一礼する
- 焼香台まで移動する
- 香炉の前で遺影を見つめてから故人に向かって黙礼する
- 抹香を指でつまみ、額の高さまで上げてから香炉にくべる(1〜3回)
- 数珠を手にかけ、故人に対して合掌礼拝する
- 香炉から数歩下がり、僧侶、参列者の順番で一礼する
- 席に戻って再度僧侶、参列者の順番で一礼する
- 着席する
上記はもっとも一般的である「立礼焼香」の場合の例です。「座礼焼香」であれば、座った状態で上記を行います。「回し焼香」は僧侶から喪主へと香炉が手渡され、ほかのケースと同様喪主から焼香がスタートします。
喪主が焼香を終えたら遺族へと香炉が渡り、最後に参列者です。遺族も喪主のやり方に合わせます。
焼香の作法は宗派によって異なる
宗派によって焼香の作法が異なります。ここでは、宗派ごとの特徴や作法をそれぞれご紹介します。
天台宗
天台宗は、焼香の回数や作法が明確には決まっていないといわれています。しかし何度も行うとあとがつかえてしまうため、1回または3回でとどめておくのが一般的です。
焼香の作法にはルールがないため、おしいただくかおしいただかないかは自由です。なお、線香を立てるなら3本準備します。数珠は房を下にして左手で持ちます。
真言宗
真言宗は3回焼香を行います。おしいただく際は額の位置までしっかり上げましょう。
線香を立てるなら3本必要です。「3」という数字にこだわる理由は、仏教の三密(身、口、心)や三宝(仏、法、僧)から来ているのではないかといわれています。
なお、数珠は房を下にして左手で持ちます。
浄土宗
浄土宗では、焼香の回数が決められていません。3回行うことが多いですが、念のため喪主やほかの参列者に合わせましょう。
抹香はおしいただき、香炉に落とします。抹香を持ち上げる手に左手を添えるという独自のマナーがあるため、忘れないよう注意しましょう。
線香を立てるなら1本です。線香を2〜3つに折って横向きに置く「寝線香」を行うこともあります。
合掌する際は合わせた両手に数珠をかけ、房は手首付近にくるよう下向きにします。
浄土真宗(本願寺派)
浄土真宗には「本願寺派」と「大谷派」があります。本願寺派は焼香を1回だけ行い、抹香をおしいただかないのが特徴です。
数珠は房を下にして左手で持ちます。合掌の際は合わせた両手に数珠をかけ、房は手首付近にくるよう下向きにします。どちらの宗派にあたるのかは、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。
浄土真宗(大谷派)
本願寺派が焼香を1回だけ行うのに対し、大谷派は焼香を2回行います。ただし、抹香をおしいただかない点は本願寺派と同じです。
数珠は房を下にして左手で持ち、合掌の際は合わせた両手に数珠をかけます。房は手首付近にくるよう下向きにします。
臨済宗
臨済宗では、おしいただかずに1回だけ焼香を行うのがマナーです。ただし、ケースによってはおしいただく場合や、焼香を3回行うときもあるため要注意です。どのようなパターンで行うのかを、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。
なお、数珠は合掌するときもしないときも、房を下にして左手で持ちます。合掌の際は左手に数珠をかけ、房を下にしたまま合掌します。
曹洞宗
曹洞宗では、2回焼香を行うのが基本です。1回目はおしいただきますが、2回目はおしいただかないのがマナーであるため、間違えないよう注意しましょう。
線香を立てる場合は1本です。数珠は房を下にして左手で持ちます。
日蓮宗
日蓮宗では、導師である場合とそのほかとで焼香の回数が異なります。導師なら3回、導師以外であれば1回です。どちらもおしいただきます。
なお、導師とは最高責任者としてお通夜や葬儀、法要を取り仕切る僧侶のことです。
線香を立てる際は1本または3本準備しますが、地方によって異なる場合があるため、わからないときは葬儀社に問い合わせましょう。数珠は二重の輪にして左手で持ち、房は下向きにします。
神道
神道では焼香を行いません。その代わり、「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」という神前に玉串を捧げる儀式を執り行います。
玉串奉奠はお通夜や葬儀といった弔事だけでなく、結婚式や七五三などの祝いごとでも行われる、神道では非常に重要な儀式です。祭壇に紙垂(しで)と呼ばれる紙をつけた榊(さかき)を捧げ、故人に弔意を表します。
キリスト教
キリスト教でも焼香は行いません。その代わり「献花」を行います。献花とは、故人との別れを偲ぶ際に行う日本独自の風習です。キリスト教だけではなく、無宗教の場合も行うことがあります。
献花では花を手にしたら故人に対して一礼し、根のほうが祭壇側を向くよう供えるのがマナーです。キリスト教徒であれば十字を切り、無宗教なら聖職者と遺族に一礼して席に戻ります。
お通夜で焼香をする際の注意点
お通夜で焼香する際に注意すべきことはあるのでしょうか?ここでは、お通夜で焼香をする際の注意点について解説します。
焼香だけを行う場合は遺族に確認する
焼香だけ行いたい場合は、遺族に確認してから訪問しましょう。焼香だけ行っても失礼にはあたりませんが、遺族への気配りは必要であるためです。
お通夜が始まる前に焼香をさせてもらうか、始まってからであれば会場に入れるタイミングで入らせてもらいます。くれぐれも、勝手に訪問して勝手に焼香を済ませることがないよう注意しましょう。
焼香の際には数珠を持っていく
焼香の際には数珠が必要です。焼香のあと、数珠を用いて合掌礼拝をするためです。席を立つ際に、椅子の上に置いていくことがないようにしましょう。
なお、数珠を他人と貸し借りするのはマナー違反です。そのため数珠を忘れてしまった場合でも、貸し借りはできません。ご自身の数珠をしっかりと手にしておきましょう。
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