遺産相続手続き、いつまでに何が必要?期限ごとの流れと手順

遺産相続手続きは、複雑で手間取ることもありますが、適切な知識と準備があればスムーズに行えます。

本記事では、遺産相続手続きの流れを理解し、期限内に必要な作業を完了するためのガイドを紹介します。

また、弁護士や税理士など、遺産相続手続きに困ったときに頼れる専門家の種類や、どのような場合にどの専門家に相談すべきかも解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 遺産相続手続きはやることが多く、それぞれ期限が決まっている
  • 遺産相続手続きは自分で行えるが、膨大な時間・労力が必要
  • 直面している問題に応じて、弁護士・司法書士・税理士・行政書士に相談すべき

この記事の監修者

法律事務所キノール東京


代表


木野 綾子/弁護士

「法律事務所キノール東京」の代表弁護士(第一東京弁護士会所属)。1994年、早稲田大学政治経済学部卒業。裁判官として13年勤務した後、2010年に弁護士登録。東京地裁労働部での経験を生かし、労働紛争の経営者側の案件を多く手がける。人事・労務セミナー多数。近年は個人向けに相続案件にも注力中。

【全体スケジュール】 遺産相続手続きの主な流れ

遺産相続手続きを行う際には、いつまでにどんな手続きをする必要があるのか事前に把握しておくことが重要です。手続き全体の流れを理解しておけば、慌てることなくスムーズに手続きを進められます。

それでは早速、遺産相続手続きの主な流れを6つの大きなステップに分けて解説していきましょう。

まずは、被相続人(故人)が死亡した日を基準日(0日)として、行うべき手続きの概要と、その期限の一覧を以下に紹介します。

遺産相続手続きの主な流れ
ステップ1.
「7~14日以内」にまず必要な遺産相続手続きを実行
死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)
・年金の受給停止手続き(10日以内)
・国民健康保険等の資格喪失、および世帯主変更の手続き(14日以内)
ステップ2.
「1~2カ月以内」を目安に行う遺産相続手続きを開始
・公共料金やクレジットカード、銀行口座等の手続き(1カ月以内目安)
・遺言書の確認・検認(1カ月以内目安)
・相続人の調査・確定(2カ月以内目安)
相続財産の調査・確定(2カ月以内目安)
・生命保険金の受け取り手続き(2カ月以内目安)
ステップ3.
「3~4カ月以内」に必要な遺産相続手続きを実行
相続放棄限定承認単純承認の手続き(3ヵ月以内)
・所得税の準確定申告(4カ月以内)
ステップ4.
「9カ月以内」を目安に行う遺産相続手続きを進める
・遺産分割協議書の作成(9カ月以内目安)
・名義変更や相続登記の手続き(9カ月以内目安)
ステップ5.
「10カ月以内」に必要な遺産相続手続きを完了
相続税の申告(10カ月以内)
・相続税の納付(10カ月以内)
ステップ6.
「1~5年以内」に行える遺産相続手続きを確認
・遺留分侵害額請求(1年以内)
・葬祭費・埋葬料の請求(2年以内)
・相続税の軽減および還付請求(3年10カ月/5年10カ月以内)

以上が大まかな遺産相続手続きの流れです。遺産相続の際に行うべき手続きは非常に多いことが一見して分かりますね。以下では、これらのステップやそこでの手続きで行うべき内容を具体的に解説します。

STEP1. 「7~14日以内」にまず必要な遺産相続手続きを実行

被相続人の死亡が確認された際には、死亡届の提出など、早急に取り掛からなければならない手続きがあります。

故人が亡くなったばかりで精神的にも落ち着かない時期かと思いますが、これらの手続きは期限を過ぎると問題が生じる可能性があるため、忘れず済ませるように注意しましょう。

死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)

被相続人の死亡が確認された時、最初に行うべき手続きとしては死亡届と火葬許可申請書の提出が挙げられます。

死亡届は故人の死亡を法的に確定するための手続きです。社会保険や公的年金などの手続きにも影響を与えます。また、火葬許可申請書は死亡届と同時に提出するのが通例です。火葬許可申請書を提出しなければ、遺体を火葬できないので、葬儀も行えません。

通常、これらの書類は、故人が居住していた市区町村または本籍地や死亡地の役所へ提出します。提出には、医師から提供される死亡診断書の原本と共に、手続きをする人(届出人)の公的な身分証明書(マイナンバーカードなど)が必要です。

これらの書類提出が正当な理由なく遅れた場合、行政から5万円以下の過料を科されることもあるので、十分ご注意ください。死亡届の受理について、役所は土日祝日や深夜でも対応しています。葬儀会社が代行してくれる場合もあるので、確認してみましょう。

年金の受給停止手続き(10日以内)

被相続人が年金受給者であった場合、年金の受給を停止する手続きを行う必要があります。厚生年金の場合は10日以内、国民年金の場合は14日以内に、「年金受給権者死亡届」を提出しましょう。この手続きを行う先は年金事務所もしくは年金相談センターです。

なお、マイナンバーカードを取得しており、年金機構へマイナンバー登録をしている場合は、死亡届の提出を省略可能です。

ただし、厚生年金の被保険者が亡くなった場合は、「資格喪失届」の提出が必要になるので注意しましょう。

年金受給の停止手続きを怠ると、不適切に年金が支給され続けることになるので、後で返還を求められることになります。故人の死を故意に隠し、年金を不正受給していたと判断された場合、詐欺罪に問われる恐れもあるので、忘れず手続きしましょう。

年金の受給停止手続きと同時に、遺族年金の申請をするのがおすすめです。遺族年金の支給額は年金の加入期間や支払総額によりますが、遺族の今後の生計を支える一助となります。

ただし、遺族年金は誰でも必ずもらえるとは限りません。手続きは複雑で、適用条件も厳しいので、不明な点があれば専門家に相談することをおすすめします。

国民健康保険等の資格喪失、および世帯主変更の手続き(14日以内)

被相続人の国民健康保険や後期高齢者医療保険の資格喪失手続きも必要です。また、故人が介護保険の被保険者証を所有していた場合は、その手続きもしなければいけません。これらの手続きおよび保険証の返却は市区町村の役所で14日以内に行います。

被相続人が社会保険の被保険者だった場合は、勤務先の会社が必要な手続きをします。この手続きは死後5日以内に行う必要があるので、故人が死亡したことを早急に知らせましょう。さらに、残された世帯人が2人以上いる場合は、世帯主の変更手続きも必要です。

これらの手続きを怠ると、保険料が不適切に請求され続けることがあるので、経済的負担を減らすためにも早期の手続きが必要です。世帯主が変更されない場合、公的な手続きが適切に行えない可能性もあります。

STEP2. 「1~2カ月以内」を目安に行う遺産相続手続きを開始

死亡届や年金の受給停止手続きなど、法的な期限が設けられている手続きが終わったら、次に行うべきは相続開始後1~2カ月以内に進めておきたい手続きです。

これらの手続きは明確な期限が設けられているわけではありませんが、放置すると不要な費用が発生することや、遺産分割協議に影響を及ぼす可能性もあるので早期の対応が必要です。

公共料金やクレジットカード、銀行口座等の手続き(1カ月以内目安)

遺産相続手続きにおいて重要な作業のひとつが、被相続人の名義になっている公共料金やクレジットカード、銀行口座などの管理です。これらは、適切な手続きが行われないと支払いが滞ったり、逆に余計な費用負担が生じたりして、生活に悪影響が出る可能性があります。

そのため、故人の死亡後は解約や名義変更などの必要がないか確認し、対応しなければいけません。

具体的には、ガス・水道・電気などの公共料金、銀行口座やクレジットカード、携帯電話料金、インターネットの利用料金などが要チェック項目です。

故人が動画や音楽などのサブスクリプションサービスを愛好していた場合は、その契約状況のチェックもしましょう。

余計な支払いを防ぐだけなら、故人の銀行口座やクレジットカードの凍結手続きをすれば済みます。しかし、そうすると故人の口座で公共料金などの支払いをしていた場合、未払い状態になってしまうので、契約の名義人や支払い方法の変更が必要です。

また、口座凍結をすると、生活資金の引き出しも当面できなくなるので、必要に応じて「遺産の分割前における預貯金債権の払戻し制度」を利用しましょう。

被相続人が所有していた銀行口座や証券口座等の確認や管理は、遺産相続手続きを適切にするために欠かせません。これらは相続財産の一部になるので、特に相続人が複数人いる場合は慎重な取り扱いが必要です。

また、金融機関で手続きを行う際は、故人の死亡を証明する書類や、相続人であることを証明する書類が原則的に必要となります。手続きをスムーズに進めるために、どのような書類が必要か事前に問い合わせるのがおすすめです。

遺言書の確認・検認(1カ月以内目安)

被相続人が遺言書を作成していた場合、遺言書に従って遺産を分けることが法律的に必要となります。そのため、遺産相続手続きを本格的に開始する際には、第一に遺言書の有無を確認することが欠かせません。

遺言書を自宅で保管している場合は、金庫やデスクの引き出しなどに保管されていることが多いです。あるいは、公証役場や弁護士などに預けられている場合もあります。前者の場合には、遺言書を確認するには、相続人であることを証明する書類の提示が必要です。

遺言書が見つかった場合、その内容に従い遺産を分配することとなりますが、遺言書の種類が公正証書遺言以外の場合、原則的に家庭裁判所で遺言書の検認手続きをしなければいけません。

特に封印されている遺言書は、自分で開封すること自体を控える必要があります。

検認手続きは、家庭裁判所に申し立てをした上で、相続人全員が期日に呼び出され、出席した相続人の前で行われます。遺言書の開封や内容確認および読み上げを裁判官が行うことで、その遺言書に不正な書き換えなどがされないようにする形です。

裁判官は検認後、遺言書が検認済みであることを示す証明書を発行します。金融機関などで相続手続きをする際に遺言書を使用するときは、この証明書が必要です。

相続人の調査・確定(2カ月以内を目安)

遺言書の有無や内容の確認ができたら、次は相続人の調査と確定を行います。これは遺産の公平な分配を保証し、適切な法的手続きを行うために必要なステップです。

遺言書がある場合、まずは遺言書で被相続人が指定した相続人を把握します。遺言書による遺産相続の場合、遺言で指定された人が遺産相続をするのが原則です。ただし、被相続人の配偶者や子、親などは、遺留分といって最低限の遺産を受け取る権利があります。

遺言書がない場合は、法律で遺産相続の権利を認められている「法定相続人」の洗い出しが必要です。具体的には、被相続人の配偶者、子、親、兄弟姉妹などが法定相続人の代表例です。

この調査は、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、そして相続人全員の戸籍謄本を集めることから始まります。これは戸籍情報や住民票を基に、相続人が誰なのか正確に特定するためです。

すべての戸籍謄本を取得するにはそれなりの時間が必要であるため、早期に調査を始めることが推奨されます。この作業が遅れると、遺産分割協議が遅れたり、相続税の申告に問題が生じたりする可能性があります。

相続財産の調査・確定(2カ月以内目安)

被相続人の遺産、つまり相続財産の調査・確定は、相続税申告や遺産分割において非常に重要なステップです。遺産は不動産、預金、株式、車、貴金属などの有形の財産だけでなく、被相続人が抱えていた借金などの負債も含みます。

調査に際しては、被相続人が保有していた各種書類や口座通帳、カード類を確認したり、不動産登記簿や株主名簿を確認したりします。また、金融機関や証券会社、不動産登記所などに直接問い合わせるのも方法のひとつです。

これらの調査は、相続税の申告や遺産分割を正確かつ公平に行うために必要なものです。この調査を怠ったり、遅れてしまったりすると、不正確な申告や、相続税申告期限の超過などにつながるおそれががあります。

生命保険金の受け取り手続き(2カ月以内目安)

もし被相続人が生命保険に加入していた場合、その保険金を受け取るための手続きを進める必要があります。生命保険金は一般的に相続財産ではなく、受取人が他の相続人の許可なしに直接受け取れる特例的な財産です。

生命保険金の請求期限は、被保険者の死亡日から3年間です。手続きには、被保険者の死亡を証明する死亡診断書、戸籍謄本、保険証券などが一般的に必要となります。手続きの窓口は契約した保険会社の請求窓口です。

この請求が遅れると、保険金を受け取れるまでの期間も当然長引きます。故人が亡くなった後はお葬式やお墓の費用などで出費が重なるので、特に経済的に不安がある方は生活資金を確保するためにも、できるだけ早い時期に保険金を申請するようにしましょう。

STEP3. 「3~4カ月以内」に必要な遺産相続手続きを実行

3~4カ月以内には、相続放棄の決定や所得税の準確定申告といった重要な手続きが待っています。これらの手続きは期限を過ぎてしまうと、大きな経済的負担が生じてしまうこともあるので注意が必要です。

相続放棄・限定承認・単純承認の手続き(3カ月以内)

相続が発生した場合、最初に行うべき手続きのひとつが、相続放棄、限定承認、または単純承認の選択です。

「相続放棄」は、全ての相続権を放棄することを意味します。これは遺産だけでなく、負債も相続しないという選択肢です。他方、「単純承認」は、遺産だけでなく負債も全て相続することを意味します。

「限定承認」は、負債を超える範囲でのみ遺産相続を行う選択肢です。つまり、限定承認ならば被相続人が負債を残していたとしても、相続人は自分の財産を切り崩さなければいけないほどの借金を背負う心配はなくなります。
なお、限定承認は相続人全員が申し立てを行う必要があります。

どの相続形式を選ぶかは相続人にとって非常に重要な決定です。例えば、被相続人が大きな負債を抱えて亡くなった場合、単純承認を選ぶと、相続人が多額の借金をそのまま引き継がなければいけません。その結果、生活が立ち行かなくなる恐れがあります。

相続放棄や限定承認の手続きは、相続発生(被相続人の死亡の認知)から3カ月以内に家庭裁判所で行う必要があります。

単純承認も含めてどの形式で遺産相続を行うかは、その期間内に決めなければいけません。

相続財産の確定を早めに行う必要があるのも、どの形式で相続を行うのが一番いいのか、十分な根拠を持って判断するためなのが大きいです。やむを得ない事情で期限内に手続きできない場合は、家庭裁判所に申請することで期限の延長が認められる場合もあります。

所得税の準確定申告(4カ月以内)

この時期を目安に行うべきもう1つの相続関係の手続きが、所得税の準確定申告です。準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の所得に対する税金を申告する制度のことで、死後4カ月の期間内に相続人が代行する必要があります。

準確定申告が求められるのは、亡くなった年の1月1日から命日までの間に被相続人に確定申告が必要な収入があった場合です。例えば、次に挙げるようなケースが該当します。

準確定申告が求められるケース
  • 被相続人が個人事業主だった
  • 被相続人が複数の事業所から給与所得を得ていた
  • 被相続人に副業などによる20万以上の収入があった
  • 被相続人に賃貸収入など不動産所得があった


準確定申告は、被相続人が最後に住民税を納めた市区町村の税務署に提出します。必要な書類は、被相続人の所得や支出を示す書類(源泉徴収票や領収書など)や戸籍謄本などとなります。

この手続きを期間内に進めないと、追加の税金が課される可能性があり、また税務署から調査を受けることもあります。したがって、期限内に手続きをすることが重要です。故人が例年確定申告をしていた覚えのある方は特に気をつけましょう。

STEP4. 「9カ月以内」を目安に行う遺産相続手続きを進める

相続開始からおよそ9カ月後を目安に、遺産分割協議書の作成や各種財産の名義変更などの手続きを進めていきます。期限を過ぎてしまうと法的なトラブルを招く可能性もあるため、早めに着手しましょう。

遺産分割協議書の作成(9カ月以内を目安)

遺産分割協議書とは、相続人全員が遺産の分割について話し合い、合意した結果をまとめた書類です。つまり、この遺産分割協議書は、その相続人が何を相続するのかについての合意を明確に記録するための重要な文書であり、後の相続税申告にも必要となる資料です。

ここでは、預貯金や不動産、株式などの遺産を誰が、どのくらい、どのように引き継ぐのかなど、遺産の振り分けを具体的かつ詳細に記載します。ここでしっかり合意を形成して文書に残しておくことで、相続人同士のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

なお、遺産分割協議が成立しない場合、裁判所に調停や審判を申し立てることも可能です。しかし、それには時間やコストがかかるうえ、裁判所がどのような判断を下すかも分かりません。

可能な限り相続人同士の協議を通して合意形成することが重要です。

この遺産分割協議書は、相続税の申告期限である10カ月前までに作成しておくことが理想的です。この期間を過ぎてしまうと、相続税の申告に影響を及ぼす可能性があります。

先述の通り、分割協議を行う際には相続人全員の参加が原則必要なので、早めに各人のスケジュール調整をして協議を行うことが重要です。

名義変更や相続登記の手続き(9カ月以内目安)

遺産分割協議が終了したら、次は不動産や預貯金、有価証券類、その他財産の名義変更や相続登記の手続きに移ります。これらの手続きは、相続財産の所有権が相続人に移ったことを法的に確定させ、財産の管理を円滑に進めるために欠かせないものです。

名義変更の具体的な手続きは、財産の種類によります。例えば、不動産の場合は司法書士に依頼して相続登記を行うのが一般的です。また、預貯金や有価証券類の場合は、各金融機関に遺産分割協議書と戸籍謄本等の必要書類を提出し、手続きを進めます。

一方、自動車や船舶などの登録財産については、各登録機関にて名義変更の手続きを行う必要があります。その際、遺産分割協議書や戸籍謄本のほか、それぞれの登録証明書等が必要となります。

これらの手続きは、あらかじめ準備しておいた遺産分割協議書を元に進めるため、遺産分割協議の重要性が再度強調されます。期間を過ぎてしまうと、財産の管理や利用に不便が生じてしまう可能性もあるので、早めの手続きが求められます。

STEP5. 「10カ月以内」に必要な遺産相続手続きを完了

次のステップでは、遺産相続における最も重要な手続きの1つである相続税の申告と納付を行います。相続税に関する手続きは遅延すると厳しいペナルティが科されるため、早めに対応することが必要です。

相続税の申告が必要なのは、相続財産が一定額(基礎控除額)を上回る場合、または特定の控除を適用する場合です。

基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」の数式で計算できます。また、控除の種類としては配偶者控除などが存在します。

具体的な申告手続きは、調査により判明した遺産の評価から始まります。すなわち、相続財産の種類や価値を詳細に把握し、それらを正確に申告することが必要です。評価書類や遺産分割協議書、そして相続登記に関する書類などが必要となることもあります。

また、相続税は相続開始後10カ月以内に申告を行う必要があります。申告は税務署に行い、必要書類を提出します。適切な申告を行うためには、相続関係に長けた税理士や弁護士などの専門家の助力を得ることが有効です。

相続税の申告は、相続財産の管理や相続人の負担軽減のために重要な手続きです。期限を過ぎて申告を行うと、税務調査を受けたり遅延税が課されたりする可能性もあるので、期間内に手続きを済ませましょう。

相続税の納付(10カ月以内)

相続税の申告後、確定した税額に基づき納税を行わなければいけません。

相続税の納付に際して、税務署から納付書が送られてくることはないので、自分自身で税務署や金融機関、郵便局などに出向いて納付書を入手・作成する必要があります。

税理士に頼むのもおすすめです。

相続税の納税は相続人全員に負担義務があります。相続税の負担割合は、実際に取得した遺産の割合に従うことが一般的です。

また、納税のための資金調達が困難な場合、適用可能な場合には納税の猶予や分割納付の制度を利用できます。しかし、そのためには申請手続きが必要となります。

納税の期限を過ぎてしまうと、延滞税が課されるだけでなく、最終的には差し押さえなどの滞納処分が行われる可能性があります。そのため、期間内に納税手続きを行うことが重要です。

STEP6. 「1~5年以内」に行える遺産相続手続きを確認

相続税の申告と納付が完了した後も、相続人としての権利を守り、損をしないために確認するべき手続きはあります。以下で、それぞれの手続きの詳細と期間を解説します。

遺留分侵害額請求(1年以内)

遺留分とは、法律により相続人が最低限保証されるべき相続財産のことです。これは相続人の生活を保護するための制度で、その割合や実際の金額は相続財産の額をはじめ、相続人の人数や立場によって異なります。

遺留分の侵害が起こるのは基本的に遺言による相続の場合です。自分の遺留分が侵害された場合、相続人はその遺留分を侵害している相続人に対して請求を行えます。この遺留分侵害額請求は、被相続人の死亡から1年以内、または遺留分が侵害された事実を知ってから1年以内に行うことが必要です。

遺留分侵害額請求は裁判所を通じて行われ、専門的な知識を必要とするため弁護士に依頼をすることが一般的です。

葬祭費・埋葬料の請求(2年以内)

被相続人が加入していた健康保険組合からは、死亡に伴い葬祭費や埋葬料が支給されることがあります。これらは、葬儀費用や墓地の整備費用を補助するための制度であり、相続人にとっては重要な経済的支援となります。

支給を受けるためには手続きが必要で、通常は死亡から2年以内に行う必要があります。申請期限は長いですが、故人の保険資格喪失の手続きをするとき、一緒に済ませてしまうのがおすすめです。

相続税の軽減および還付請求(3年10カ月/5年10カ月以内)

相続税の軽減請求は3年10カ月還付請求は5年10カ月の期間内で行えます。

相続税には配偶者控除などが適用できますが、この控除を利用するには、遺産分割協議を終えて、相続税の申告・納付時点で遺産が分割されていることが必要です。しかし、遺産分割協議が長引いたなどの理由で、控除を使わずに相続税を納付することもありえます。

そのような場合、相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」も併せて提出することで、3年以内に遺産分割が行われた場合に税額を軽減できます。

また、相続税の計算違いなどにより、不要に多くの相続税を納付してしまった場合は、その分の過払い金を還付するように税務署へ請求可能です。相続税を過度に払いすぎていないか不安な場合は、税理士に相談するのも一考の価値があります。

遺産相続の手続きは自分でできる? 状況別チェックリスト

遺産相続手続きは非常に複雑で、しばしば困惑を覚えるものです。その際に役立つのが弁護士などの専門家に相談することですが、多くの方にとっては、専門家に相談すべきかどうかさえ判断が難しいことですよね。

遺産相続手続きを自分で行うか専門家に依頼するかの判断は、さまざまな要素に左右されます。以下のチェックリストには、自分で遺産相続手続きを行うことが難しくなる可能性のある状況をまとめています。

check!
  • 遺産分割協議が済んでいない
  • 主な相続財産に自宅・現金以外の物が含まれる
  • 各財産の評価額がわからない
  • 不動産の評価額がわからない
  • 特例や控除を使っても納税金額がゼロにならない
  • 相続発生日から過去3年以内に生前贈与があった
  • 相続時精算課税制度を利用した生前贈与があった
  • 過去10年間に他の相続があった
  • 被相続人が賃貸物件のオーナーだった
  • 農地の相続がある
  • 外国に所在する財産の相続がある
  • 小規模宅地を共有で相続する

これらはあくまで参考の1つですが、自分が直面している遺産相続手続きの難しさを判断するための基準として使ってみてください。

チェックリストの項目で4個以上チェックがついた場合、またはNo.10~12に1つでもチェックがついた場合は、専門家への相談をおすすめします。

遺産相続手続きの代行を頼むには? 依頼先と費用の目安

遺産相続手続きの全過程を自分で進めるのが難しい場合や、間違いを防ぐために専門家に依頼することを検討されている方もいるでしょう。遺産相続手続きを代行してくれる専門家には主に「弁護士」「司法書士」「税理士」「行政書士」の四つの職種があります。

これらの専門家はそれぞれ対応できる業務範囲や得意分野が異なります。また、費用に関してもそれぞれに異なるので、依頼する際はそれぞれの特徴を把握しておくことが重要です。

遺産相続の分割協議で揉めているなら「弁護士」

遺産相続に関連する問題は多岐にわたります。相続人間で遺産分割について意見が合わず、紛争が生じた場合や、遺言書の解釈について不明確な点がある場合など、法律的な専門知識を必要とする事象が多く発生します。このような複雑な問題を解決するための専門家が弁護士です。

弁護士は、遺留分侵害額の請求から遺産に関する紛争の解決、訴訟や調停などの法的手続きまで、あらゆる遺産相続問題を取り扱うことができます。そのため、相続財産が多額で複雑な手続きが必要な場合や、遺産分割や遺留分の請求等で揉めている場合など、弁護士の支援を得ることは有効な解決策となります。

弁護士の費用はケースの難易度や弁護士の経験・専門性などによりますが、一般的には数万円程度が法律相談やアドバイスの費用とされています。交渉や裁判手続きが必要な場合や複雑なケースでは、それ以上の費用が必要となることもありますので、事前の相談と確認が重要です。

また、弁護士に相談する際は、その弁護士が相続案件を専門としているかどうかを確認することが重要です。相続案件は専門性が求められる分野であり、経験豊富な弁護士に依頼することで、適切なアドバイスやサポートを受けることが可能となります。

弁護士に相談するのがおすすめのケース
  • 相続人間で遺産の分割について意見が合わず、紛争が起きている場合
  • 遺言書の解釈について揉めている場合
  • 相続財産が多額で、複雑な手続きが必要な場合
  • 遺留分侵害額請求が起きている場合

相続財産に不動産が含まれるなら「司法書士」

遺産相続の中でも特に、不動産の扱いは専門的な知識を要求されます。そのため、相続財産に不動産が含まれる場合や、遺産分割協議書の作成が必要な場合には、司法書士の支援を検討するのがおすすめです。

司法書士は不動産登記や法的な文書の作成など、遺産相続に関する手続きをスムーズに進めるための専門家です。また、相続人全員が一致して遺産分割協議を進められる状況でも、公正な手続きを行い、将来的なトラブルを防ぐ役割を果たします。

遺産分割協議書の作成や不動産登記の手続きにかかる費用は、ケースによりますが、一般的には遺産分割協議書の作成には数万円、不動産登記の手続きには数十万円程度が必要となる場合が多いです。

ただし、費用は地域や案件の内容により異なるため、具体的な見積もりを事前に取得することをおすすめします。また、司法書士に依頼する場合も、その司法書士が相続案件や相続がらみの不動産登記に精通しているかどうかを確認することが重要です。

司法書士に相談するのがおすすめのケース
  • 相続財産に不動産が含まれる場合
  • 相続人全員が一致して遺産分割協議を進められる状況
  • 遺産分割協議書の作成が必要な場合

相続税の申告を不備なく行うなら「税理士」

相続税の申告についての相談であれば、税理士がおすすめです。相続の際には、どのくらいの遺産があり、誰が何をどのくらい相続するのかを税務署に申告する必要があります。その結果、相続税を支払う必要があった場合には、それを支払います。

相続税申告における税理士への報酬は、0.5%から1%が相場と言われています。

場合によっては相場以上に費用が高くなることもあります。例えば、相続人が多い場合や、申告までの十分な時間がない場合です。税理士事務所により料金形態は異なりますので、しっかりと確認をしましょう。

税理士に相談するのがおすすめのケース
  • 相続財産の総額が基礎控除額を超える場合
  • 相続税の申告や納付に不安がある場合
  • 特例や控除の適用を検討している場合

面倒な手続きのみ代行してもらうなら「行政書士」

行政書士は、一般の人々が複雑で面倒と感じる行政手続きをスムーズに進めることをサポートする専門家です。その業務範囲は各種証明書の取得、許可申請、申告書作成など、幅広い行政手続きをカバーします。

例えば、相続財産の中に車や船舶が含まれており、名義変更の申請が必要な場合や、遺産分割に関する公正証書作成などが当てはまります。

一般的には煩雑とされる手続きを行政書士に委託することで、スムーズに手続きを進めることが可能です。

また、専門的な知識が必要な手続きを誤りなく遂行するための支援も行います。その費用は、依頼する業務の内容や手間、依頼する行政書士によって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度が目安となります。

ただし、遺産分割協議や遺留分侵害額請求などの法律問題、税金の計算や申告については、それぞれの専門家である弁護士や税理士に依頼することが適切です。

行政書士はこれらの専門分野の知識を有していないため、法律問題や税金計算についてのアドバイスは得られません。そのため、専門分野に関しては適切な専門家を選び、相談することが重要です。

行政書士に相談するのがおすすめのケース
  • 各種証明書の取得や申請が必要な場合
  • 面倒な手続きを避けたい場合
  • 手続きの専門知識がなく、トラブルを避けたい場合

遺産相続の手続きに困ったら専門家に相談を

遺産相続の手続きは複雑で時間がかかるものですが、期間ごとに必要な手続きとその重要性を理解し、計画的に準備を行えばスムーズに進行できます。また、手続きが困難な場合には、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの専門家に依頼することが問題解決の助けになります。本記事で解説したことをぜひ役立ててください。

ほかにもこちらのメディアでは、遺産相続手続きの期限はいつまでについてや不動産の相続手続きについても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。

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