遺産分割で兄弟はもめやすい?もめない分け方や注意点を解説

「遺産分割のときに兄弟でもめるかもしれない」「普段から兄弟仲が悪いため、遺産分割のときが心配」兄弟で遺産分割することについて、このような悩みを抱えていませんか?

遺産分割で兄弟がもめるケースは少なくありません。その原因は、疎遠であることや分けにくい遺産が多いことなど、家庭によってさまざまです。

この記事では、兄弟が遺産分割でもめる原因や、もめないための分け方について解説します。兄弟が遺産分割する際の注意点も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 兄弟で遺産分割に参加するのは「親が亡くなったとき」と「子どもや孫、親や祖父母のいない兄弟が亡くなったとき」の2つのケース
  • 兄弟は遺産分割でもめやすい
  • 兄弟が遺産分割でもめないためには、遺言書を作成しておくことや、こじれる前に弁護士に相談することが必要

遺産分割とは

遺産分割とは、遺産の分け方を決める手続きのことです。遺産分割は相続人全員で行う必要があり、1人でも欠けていると成立しません。

また、遺産分割の内容にはすべての相続人の合意が必要です。1人でも反対している相続人がいると、手続きが止まってしまいます。

どうしても協議がまとまらない場合は、家庭裁判所による手続きを検討する必要があります。

兄弟で遺産分割に参加するのはどんなとき?

兄弟で遺産分割に参加するケースは、2つあります。どちらのケースに該当するかによって相続割合は変わってきます。

  • 親が亡くなったとき
  • 子どもや孫、親や祖父母のいない兄弟が亡くなったとき

ここでは、それぞれの相続割合について詳しく解説します。

親が亡くなったとき

親が亡くなり、その子どもである兄弟が相続人になった場合の相続割合は以下のとおりです。

もう片方の親が存命の場合2分の1
もう片方の親もすでに死亡している場合すべて

もう片方の親が存命の場合の相続割合「2分の1」とは、兄弟全員で遺産の2分の1を相続するという意味です。そのため、兄弟の数が多ければ多いほど、それぞれが受け取る遺産は少なくなります。

相続人がもう片方の親と兄弟の場合の相続割合

兄弟の相続割合は、兄弟の人数によって異なります。

遺産総額が3,000万円で、もう片方の親である母親が存命しており、兄弟が2人だった場合の相続割合を見てみましょう。

兄弟の相続分である2分の1を2人で分けるため、兄弟の相続割合は4分の1ずつです。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
2分の1 1,500万円
子(兄弟)A 4分の1 750万円
子(兄弟)B 4分の1 750万円

以下は、遺産総額が3,000万円で、もう片方の親である母親が存命しており、兄弟が4人だった場合の相続割合です。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
2分の1 1,500万円
子(兄弟)A 8分の1 375万円
子(兄弟)B 8分の1 375万円
子(兄弟)C 8分の1 375万円
子(兄弟)D 8分の1 375万円

兄弟の相続分である2分の1を4人で分けるため、兄弟の相続割合は8分の1ずつです。もう片方の親が相続する割合は、兄弟が何人いても変わりません。

相続人が兄弟だけの場合の相続割合

一方、もう片方の親もすでに死亡しているときは兄弟だけが相続人になり、兄弟たちだけですべての遺産を相続します。この場合も、兄弟の数が多ければ多いほどそれぞれの相続割合は少なくなります。

以下は、遺産総額が3,000万円で、兄弟2人で相続するときの相続割合です。すべての遺産を兄弟2人で分けるため、兄弟の相続割合は2分の1ずつです。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
子(兄弟)A 2分の1 1,500万円
子(兄弟)B 2分の1 1,500万円

以下は、遺産総額が3,000万円で、兄弟4人で相続するときの相続割合です。すべての遺産を兄弟4人で分けるため、兄弟の相続割合は4分の1ずつです。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
子(兄弟)A 4分の1 750万円
子(兄弟)B 4分の1 750万円
子(兄弟)C 4分の1 750万円
子(兄弟)D 4分の1 750万円

兄弟は、長男も末っ子も関係なく全員平等に遺産を分割します。養子であっても同様です。また、たとえ婚外子であっても、被相続人認知していればほかの兄弟と同様の割合で遺産を相続できます。

子どもや孫、親や祖父母のいない兄弟が亡くなったとき

続いては、子どもや孫、親や祖父母のいない兄弟が亡くなった場合です。亡くなった兄弟に配偶者がいるかどうかで兄弟の相続割合が変動します。ケース別の相続割合は以下のとおりです。

亡くなった兄弟に配偶者がいる場合4分の1
亡くなった兄弟に配偶者がいない場合すべて

兄弟が相続人になるのは、亡くなった兄弟に子どもや孫、親や祖父母がいないケースにかぎられます。

なぜなら、子どもや孫がいる場合の相続人は配偶者と子どもであり、子どもがいない代わりに親や祖父母がいる場合の相続人は、配偶者と親や祖父母であるためです。

相続人が配偶者と兄弟の場合の相続割合

以下は、遺産総額が3,000万円で、配偶者と兄弟2人で相続するときの相続割合です。兄弟の相続分である4分の1を2人で分けるため、兄弟の相続割合は8分の1ずつです。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
配偶者 4分の3 2,250万円
兄弟A 8分の1 375万円
兄弟B 8分の1 375万円

以下は、遺産総額が3,000万円で、配偶者と兄弟4人で相続するときの相続割合です。兄弟の相続分である4分の1を4人で分けるため、兄弟の相続割合は16分の1ずつです。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
配偶者 4分の3 2,250万円
兄弟A 16分の1 187万5,000円
兄弟B 16分の1 187万5,000円
兄弟C 16分の1 187万5,000円
兄弟D 16分の1 187万5,000円

配偶者の相続割合が多いため、遺産総額が少なく兄弟の人数が多ければ相続分は少なくなります。

相続人が兄弟だけの場合の相続割合

一方、亡くなった兄弟に配偶者がいない場合は兄弟だけが相続人になり、兄弟たちだけですべての遺産を相続します。

以下は、遺産総額が3,000万円で、たった1人の兄弟が相続するときの相続割合です。遺産を分けるべき相手が存在しないため、上記のケースでは兄弟Aがすべての遺産を相続します。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
兄弟A すべて 3,000万円

以下は、遺産総額が3,000万円で、兄弟3人で相続するときの相続割合です。すべての遺産を兄弟3人で分けるため、兄弟の相続割合は3分の1ずつです。

相続割合 遺産総額が3,000万円だった場合
兄弟A 3分の1 1,000万円
兄弟B 3分の1 1,000万円
兄弟C 3分の1 1,000万円

相続人が兄弟しかいなければ、「親が亡くなったケース」でも「子どもや孫、親や祖父母がいない兄弟が亡くなったケース」でも相続割合は同様です。

遺産分割で兄弟がもめるのはなぜ?

遺産分割で兄弟がもめるケースは少なくありません。なぜもめごとが起きてしまうのでしょうか?ここでは、遺産分割で兄弟がもめる原因について解説します。

  • 兄弟同士が疎遠である
  • 親の離婚・再婚で面識のない兄弟や生き別れの兄弟がいる
  • 兄弟間で分けにくい遺産が多い
  • 兄弟の配偶者が口出ししてくる
  • 遺言書の内容が不公平になっている
  • 特定の兄弟のみが親の介護をしていた
  • 特定の兄弟のみが親から生前贈与を受けていた

兄弟同士が疎遠である

兄弟同士が疎遠になっている場合はもめやすい傾向にあります。子どものころは仲良く遊んでいた兄弟でも、それぞれが独立し別の家庭を築いたり、長く離れて暮らしたりしているうちに関係性が変わってしまうためです。

中には、口もきかなくなってしまうケースもあります。たとえ遠方に住んでいても、定期的に顔を合わせて親の死後について話すような関係性であればよいですが、まったく会うことも話すこともしていない場合は要注意です。

現段階で疎遠になっているなら一度連絡をとり、話せる機会を設けてみるところから始めてみてはいかがでしょうか?

親の離婚・再婚で面識のない兄弟や生き別れの兄弟がいる

親の離婚や再婚で面識のない兄弟や、生き別れの兄弟がいる場合は遺産分割の際にもめる可能性があります。いくら血のつながった兄弟でも面識がなければ他人と変わらず、お互いにはじめからよい印象を持つことが難しいためです。

話には聞いていたというならまだしも、親の死後、戸籍を確認してはじめて兄弟の存在を知った場合は誰でも戸惑うでしょう。相手方も、突然記憶にない実の親の相続人になり、存在も知らなかった兄弟たちと遺産分割協議をしなければならないとなれば戸惑います。

また、生き別れのケースでは、もめる以前に連絡がつかないことも少なくありません。いくら手紙を送っても反応がなく、遺産分割協議が止まってしまうケースもあります。

このように、面識のない兄弟や生き別れの兄弟がいる場合はもめやすく、通常よりもハードルが上がってしまうのです。

兄弟間で分けにくい遺産が多い

遺産の中に不動産が多く含まれているなど、兄弟間で分けにくい遺産が多いケースはもめやすいです。たとえば預貯金であれば、法律で定められた相続分どおりに分けられます。

しかし、不動産を物理的に分けることは不可能なうえ、誰が相続するかについて兄弟間で意見が食い違うケースは少なくありません。

また、実家であれば「そのまま残したい」「売却したい」などさまざまな意見が出て、実家そのものをどうするかについてもめる可能性もあります。物理的に分けにくい遺産が多い場合は、相続人全員が納得できる方法を考える必要があるでしょう。

兄弟の配偶者が口出ししてくる

兄弟の配偶者が横から口出ししてくるケースもあります。兄弟の配偶者には相続権がないため、本来遺産分割に関して口出しできる立場ではありません。しかし、中には遺産分割協議に参加し、意見してくる配偶者もいます。

法律をかじっていて、何かと仕切りたがるパターンもあります。そのような配偶者がいると遺産分割協議が引っかき回されてしまい、もめる原因になり兼ねません。

兄弟の配偶者が余計な口出しをしてくる場合は、口出ししないようはっきりと告げましょう。

それでもきかなければ調停手続きを行うなど、兄弟の配偶者が口出しできない状況をつくり、相続人たちだけで話し合えるようにしましょう。

遺言書の内容が不公平になっている

遺言書の内容が不公平なケースも、もめる原因のひとつです。有効な遺言書があれば、基本的には遺言書の内容が優先されます。ただし、遺言書の内容に相続人全員が反対している場合は、遺産分割協議を行えます。

このとき、相続人全員が納得いかないのであれば、遺言書がない場合と同じように遺産分割協議を行えばよいだけです。問題は、遺言書どおりに遺産分割を行った際に得をする兄弟です。

得をする兄弟は遺言書どおりに相続したいため、遺産分割協議には反対するでしょう。しかし、ほかの相続人たちは納得しないため、相続人同士でもめごとが起こってしまうのです。

なお、遺言書の内容が「遺留分」を侵害するものであったときは「遺留分侵害額の請求」が認められる場合があります。遺留分とは、相続人に保証された最低限の遺産のことです。

また、遺産分割侵害額の請求とは、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害した人に対して金銭の支払いができる制度です。ケースによっては利用できないことや請求が認められないときもありますが、そのような手段があることを知っておきましょう。

特定の兄弟のみが親の介護をしていた

親の生前、特定の兄弟のみが親を介護していた場合も、もめやすいケースのひとつとして挙げられます。自分だけが長年親を介護していたにもかかわらず相続分が均等となると、介護していた兄弟が不公平に感じる可能性が高いためです。

重要なのは、親を介護していたことに配慮した分割方法にすることです。ほかの兄弟の分も親の介護を引き受けてくれていたことに対し、感謝の意味も込めて相続分を多めにすれば、無用なトラブルを事前に回避できるかもしれません。

なお、このような場合は、特別に貢献をしたとして「寄与分」が認められることがあります。寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人が、法律で定められた相続分を超えて相続できる制度です。

寄与分の金額は、遺産分割協議の中で話し合われます。遺産分割協議の場で金額が決定しないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、調停の場で話し合います。

特定の兄弟のみが親から生前贈与を受けていた

兄弟のうち、特定の兄弟のみが親から生前贈与を受けていると、遺産分割の際にもめやすくなります。遺産を公平に分けたとしても、特定の兄弟のみが生前贈与を受けたことによってどうしても不公平が生まれるためです。

このようなケースでは、「特別受益」が認められる可能性があります。特別受益とは、特定の相続人だけが得ていた特別な利益のことです。特定の兄弟だけが多額の資金援助を受けていたり、実家を譲り受けていたりする場合が該当します。

特別受益が認められれば、法律で定められた相続分どおりに相続するのではなく、生前贈与を受けた兄弟の相続分から特別受益分を差し引けます。なお、特別受益が認められるためには、兄弟で話し合わなければなりません。

それでもまとまらなければ、遺産分割調停や審判による方法で決定します。

遺産分割で兄弟がもめないためのコツ

遺産分割で兄弟がもめないためには、どのような方法があるのでしょうか?ここでは、遺産分割で兄弟がもめないためのコツを6つ紹介します。

  • 親に遺言書を作成してもらう
  • 不動産の分け方を知っておく
  • 遺産をどのように分けるかの案を作成しておく
  • 遺産分割の際は寄与分や特別受益を考慮する
  • こじれる前に弁護士に相談する
  • 相続人全員が正しい知識と思いやりの気持ちを持つ

親に遺言書を作成してもらう

遺産分割で兄弟がもめないために、親に遺言書を作成してもらうという手段があります。

遺言書を作成してもらっておけば、基本的には遺言書の内容に沿って遺産を分割するため、遺産分割がスムーズに済みます。

ここで注意したいのは、遺言書の内容が不公平になってしまった場合は、かえってもめる材料になるということです。たとえば「兄弟のうちのひとりにすべての遺産を相続する」といった不公平な内容にすると、新たな争いを生んでしまいます。

そのため、遺留分に配慮した内容にする必要があります。

長年介護してくれた、家業を無償で手伝ってくれていたなどの理由から、特定の兄弟に多く遺産を相続させたいと親が考えている場合は、その理由やほかの兄弟たちにあてたメッセージを付言事項として記載することを提案してあげましょう。

不動産の分け方を知っておく

遺産分割で兄弟がもめないためには、兄弟それぞれが不動産の分け方を知っておくとよいでしょう。そのうえで、不動産をどのように分割するか兄弟で話し合いましょう。不動産の分け方を知ることで、不動産をどうしたいかについても具体的に検討できます。

不動産の分け方には、以下の4つの方法があります。

代償分割特定の相続人が相続する代わりに、ほかの相続人に金銭を支払う方法
換価分割不動産の売却で得た金銭を、相続人全員で分割する方法
現物分割不動産を物理的に分割する方法
共有分割不動産を何名かの相続人で共有する方法

それぞれ解説します。

代償分割

代償分割とは、特定の相続人が単独で不動産を相続し、その代償としてほかの相続人に代償金を支払う分割方法です。たとえば、兄が実家を相続する代わりに、弟に対してその相続分に応じた金額の現金を兄が支払うケースが該当します。

なお、代償金は相続人同士が話し合って決定しますが、決まらない場合は遺産分割調停や審判によって決定します。

換価分割

換価分割とは、不動産を売却し、その売却金を相続人全員で分割する方法です。

たとえば、相続人が兄と弟の2人で実家の売却金が2,000万円だった場合、兄と弟はそれぞれ1,000万円ずつ受け取ります。

現物分割

現物分割は、たとえば1筆の土地を4つに分筆して、4人の相続人がそれぞれの土地を相続する場合が該当します。

ただし、物理的に分割できない建物には適さない方法であるため、建物を分けるときは代償分割や換価分割など、ほかの分割方法を検討する必要があるでしょう。

共有分割

共有分割は、相続分どおりの割合でひとつの不動産を共有する方法です。たとえば兄弟3人で実家を相続する場合は、それぞれ3分の1の持分で共有します。

共有分割を選択する際に注意しなければならないのは、相続した不動産を利用するときも手放すときも、共有名義人全員の同意が必要になる点です。もめる可能性が高いため、あまりおすすめできない分割方法です。

遺産をどのように分けるかの案を作成しておく

遺産をどのように分けるかについて、事前に案を作成しておくのもよいでしょう。遺産分割が開始してから分割方法を一から考えるとなると時間がかかりますが、事前にいくつか案を用意しておけば、遺産分割がスムーズに進みます。

また、何の準備もなく話し合いをしても、なかなかうまくまとまりません。案があればその中から決めようとする心理が働くため、もめずに分割方法を決められる可能性が高まります。

遺産分割の際は寄与分や特別受益を考慮する

遺産分割の際は寄与分や特別受益を考慮することをおすすめします。なぜなら、寄与分や特別受益がある場合、どうしても不公平が生まれてしまうためです。寄与分、特別受益の概要については以下のとおりです。

寄与分被相続人に対し特別に貢献した相続人が、本来の相続分よりも多く相続できる制度
特別受益特定の相続人が、被相続人から特別に受けた利益

たとえば、親を長年介護してきた兄弟には多めに遺産を渡せるようにする、親から生前贈与を受けていた兄弟の相続分は減らすなど、できるだけ公平になるよう遺産を分割しましょう。

こじれる前に弁護士に相談する

遺産分割の際に兄弟でもめる可能性があるなら、もめごとに発展する前に弁護士に相談しましょう。完全にこじれてしまってからでは、いくら弁護士に相談したとしても、兄弟同士で話し合うことすらできない可能性があるためです。

その場合は遺産分割協議ではなく、遺産分割調停や審判などといった手続きをするしかなくなります。しかし、早い段階で弁護士に相談し間に入ってもらえば、まだ冷静なうちにきちんとした話し合いができるでしょう。

また、弁護士であれば遺産分割協議での交渉もできるため、もめごとの原因になっている兄弟への交渉も任せられます。遺産分割協議書の作成をはじめ、さまざまな相続手続きもサポートしてもらえるため、相続人の負担も軽くなるでしょう。

相続人全員が正しい知識と思いやりの気持ちを持つ

遺産分割でもめないためには、相続人全員が相続に対して正しい知識を持つことが重要です。

なぜなら、兄弟一人ひとりが自分の相続人としての立場や、法律ではどのように相続分が定められているのかといったことを知っておけば、それだけでも遺産分割がスムーズに進むためです。

相続について基本的なことがわかっていれば、ほかの兄弟に対してそうそう無茶な要求はしないでしょう。また、それぞれが思いやりの気持ちを持つことも大切です。

自分の利益ばかりを主張するのではなく、「姉はひとりで親を介護していたのだから多めに相続できるよう提案しよう」というような思いやりをお互いに持って遺産分割に臨むと手続きがスムーズに進み、家族の絆も深まるかもしれません。

兄弟で遺産分割する場合に注意すべきこと

兄弟で遺産分割する際に、注意すべきことがいくつかあります。ここでは、兄弟で遺産分割する場合に注意すべきことを紹介します。

ここでいう「兄弟」とは、「亡くなった兄弟の相続人になった兄弟」のことです。

相続人が兄弟の場合は相続税が2割増になる

相続人が兄弟で相続税がかかるケースは、相続税が2割増になります。なぜなら、相続人が兄弟の場合は、相続税の2割加算の対象になるためです。相続税がかかる可能性があるなら、念頭に置いておいたほうがよいでしょう。

なお、相続人が被相続人の配偶者や実子、父母であれば2割加算の対象ではないため2割増になりません。

相続人が兄弟の場合は再代襲相続ができない

相続人が兄弟の場合、ケースによっては再代襲相続ができません。被相続人が亡くなった時点で相続人となるべき人がすでに亡くなっていた場合に、その子どもや孫などが相続人になることを代襲相続といいます。

また、亡くなった相続人の祖父母や孫など、2代にわたる代襲相続を再代襲相続といいます。再代襲相続は、被相続人から見て相続人が親や祖父母などの直系尊属、または子どもや孫などの直系卑属でないとできません。

そのため、相続人が兄弟である場合は1代のみの代襲相続しかできません。つまり、兄弟の子どもは代襲相続できますが、孫は代襲相続できないのです。

相続人調査が複雑になる可能性がある

相続人が被相続人の兄弟である場合、相続人調査が複雑になる可能性があります。相続が発生したら、まず誰が相続人になるのかを調査しなければなりません。

その際は被相続人の戸籍謄本を取得し、そこからいったん被相続人の出生時までさかのぼり、相続人を特定していきます。相続人が兄弟ならば、状況によっては甥や姪の戸籍謄本も必要です。

そのため、シンプルに配偶者と子どもが相続人となるケースよりも膨大な数の戸籍謄本を取得しなければならなくなることがあります。

遺産分割で兄弟同士がもめないよう備えよう

遺産分割で兄弟がもめないための分割方法や、注意点について解説しました。記事の中でも述べたとおり、兄弟間の相続はもめやすい傾向にあります。しかし、兄弟が相続でもめるのは、被相続人にとって本意ではないはずです。

もめる可能性が少しでもあるならば、遺言書の作成や早めに弁護士に相談するなど、できるだけもめないで済む対策をとる必要があるでしょう。

ほかにもこちらのメディアでは、遺産分割協議書の提出先についてや遺産分割と相続の違いについても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。