遺族年金をもらい始めたけど、税金を払う必要があるのか疑問に思っている方も多いでしょう。遺族年金をもらう方も工夫次第で節税できるため、税金についてきちんと把握しておく必要があります。
この記事では、遺族年金が課税対象にならない理由や、節税方法について解説します。確定申告が必要になるケースも紹介するので、ぜひ最後までチェックしてください。
- 遺族年金は厚生年金保険法によって非課税だと定められている
- 遺族年金受給者が扶養家族に入れば世帯全体で節税できる
- 他の収入がある場合は、遺族年金受給者でも確定申告が必要になる
遺族年金とは?
遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなったときに、遺族に支給される年金です。
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、国民年金への加入義務があります。会社などに勤務している人は、厚生年金にも加入します。国民年金と厚生年金に加入している人が亡くなった場合、遺族に対して生活費を賄うために遺族年金が給付されるのです。
遺族年金には「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族基礎年金は国民年金から支給され、遺族厚生年金は故人が加入する厚生年金から支給される仕組みです。
日本の年金制度は2段階で受給できる仕組みとなっており、亡くなった人が会社員だった場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。
ただし、遺族年金は申請しなければもらえません。自動的に支給されるものではないため注意が必要です。申請せずに放置しておくと、時効により受給権が消滅します。
申請しそびれて受給できなかったという事態を防ぐためにも、遺族年金の受給要件を確認しておきましょう。
遺族年金の受給要件
遺族年金の受給要件は、以下のように定められています。
死亡者の要件 | |
---|---|
遺族基礎年金 | 国民年金に加入中、または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある |
遺族厚生年金 | 下記いずれかの条件を満たす人 ・厚生年金に加入中、または加入中に傷病で初診日から5年以内に死亡 ・老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある ・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる |
亡くなった時点でどちらかの年金に加入しており、加入していた年金の受給資格期間が25年以上あるときに支給されます。
年金保険料の未納や滞納がある場合は、遺族年金を受け取れない場合があります。受け取れるか心配な方は、早めに年金事務所に相談しましょう。
遺族年金を受給する際は、年金請求書に必要事項を記入して、添付書類とともに年金事務所および年金相談センターに提出する必要があります。
添付書類で必要なものは、下記の通りです。
遺族年金を受け取る際は多くの書類を取り揃える必要があり、時間と手間がかかります。受給要件を満たしていても、手続きを正しく行わなければ遺族年金を受け取れません。遺族年金は死後5年で消滅時効となるため、期限までに申請が必要です。
自分で申請することが難しい場合は、社会保険労務士に相談してみましょう。社会保険労務士に依頼すれば、申請に必要な書類を集めてもらえます。代行を依頼するときは委任状が必要になるので、忘れずに用意しましょう。
遺族年金の受給対象者
遺族基礎年金と遺族厚生年金では、受給対象者に違いがあります。
受給者の要件 | |
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遺族基礎年金 | ・子どものいる配偶者 ・子ども |
遺族厚生年金 | ・妻 ・子どもや孫 ・55歳以上の夫、父母、祖父母 |
受給者の要件で2つの年金に共通しているのは、亡くなった方の子どもが対象になることです。どちらの年金も、子どもの条件は18歳になる年度の3月31日までとなります。(20歳未満で1級、2級の障害を持つ子も対象)
2つの年金で異なる点は、配偶者の要件です。遺族基礎年金の場合は、子どもを持つ配偶者であることが条件になります。
遺族厚生年金では、子どもを持つ妻は全員対象ですが、子どもがいない30歳未満の妻は、5年間しか受給できません。配偶者が再婚をすると、受給対象者から外れて受け取れない場合があります。
夫や父母、祖父母も対象ですが、55歳以上という年齢の要件があります。また、実際に支給されるのは60歳からです。受給対象者が複数いる場合は、続柄により優先順位の高い遺族1名がもらえます。
遺族年金の年金額
受け取れる遺族年金の金額は、子どもの有無や収入によって異なります。
受給額 | |
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遺族基礎年金 | 79万5,000円を基本額とし、子どもの人数に応じて加算 ・子どもが2人までは、1人につき22万8,700円加算 ・子どもが3人以上の場合、3人目から1人あたり7万6,200円加算 |
遺族厚生年金 | 厚生年金の加入期間や収入によって変動 |
遺族基礎年金の場合、受給額は子どもの数に応じて決まります。子どものいる配偶者が受給する場合、79万5,000円の基本額に加えて、子ども1人あたり22万4,500円が1年間に支給されます。子ども3人目から1人あたり7万4,800円が加算される仕組みです。
子どもの人数別の遺族基礎年金額は以下のとおりです。
子どもの数 | 基本年金額 | 子の加算額(年額) | 受給総額(年額) |
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1人 | 79万5,000円 | 22万8,700円 | 102万3,700円 |
2人 | 79万5,000円 | 22万8,700円+22万8,700円 | 125万2,400円 |
3人 | 79万5,000円 | 22万8,700円+22万8,700円+7万6,200円 | 132万8,600円 |
4人 | 79万5,000円 | 22万8,700円+22万8,700円+7万6,200円+7万6,200円 | 140万4,800円 |
子どもが受給者の場合、配偶者が受給する場合の子どもの人数から1人(受給者である子どもの分)を引いた数で計算します。例えば子どもが2人いる場合、子が受給する年金は79万5,000円+22万8,700円となり、これを子ども2人で折半します。
遺族族厚生年金の計算方法は、故人の老齢厚生年金の4分の3と決まっており、生前の収入によって受け取る年金の金額が異なります。
遺族年金が非課税の理由
公的年金から給付される遺族年金は収入とみなされないため、課税対象にはなりません。
遺族厚生年金が非課税となるのは、厚生年金保険法第41条を根拠としています。この法律では、国から給付される年金や給付金には課税しないと定めています。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、どちらも非課税です。非課税となる金額に上限はなく、受給額すべてが非課税対象となります。
どれだけ金額が大きくても収入とみなされないため、確定申告は必要ありません。
遺族年金は、家族が亡くなったときの生活保障となります。非課税になるため、特に子どもがいる家庭には生活を送るうえで貴重な収入となるでしょう。
非課税の対象になる税金
遺族年金以外にも、非課税の対象になる年金があります。
寡婦年金 | 一定の条件を満たした妻が60~65歳まで受給できる年金 |
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死亡一時金 | 保険料を36月以上納付した場合に受給できる年金 |
寡婦年金は、国民年金に加入していた夫が亡くなった場合に、その妻が60歳から65歳になるまでの間支給される年金制度です。受給額は夫の老齢基礎年金の4分の3です。保険料を10年以上納めていたこと、婚姻関係が10年以上続いていることが受給条件になります。
死亡一時金は、保険料を支払っていた期間に応じて12〜32万円の間で決定します。受け取れるのは被保険者が亡くなった日の翌日から2年なので、期限が切れる前までに手続きをしましょう。
ただし、遺族年金や寡婦年金を受給する場合は、死亡一時金を受け取れません。どちらかを選ぶ必要があるので注意が必要です。
遺族年金受給者の節税方法
遺族年金受給者の節税方法には、以下3つがあります。
- 扶養家族に入る
- 社会保険の被扶養者になる
- マル優・特別マル優を利用する
それぞれの方法について、詳しく解説します。
扶養家族に入る
家族と同居している場合、扶養家族に入ることで世帯全体の節税になります。税制上の扶養に入るには、以下の条件があります。
- 生計を一にしていること
- 1年間の合計所得額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)
遺族年金は非課税なので所得額に含まれません。遺族年金以外の収入がなければ、条件はクリアできるでしょう。
例えば、70歳未満の人が扶養に入る場合、所得税38万、住民税33万円が控除されます。70歳以上の人が扶養に入る場合、所得税58万円、住民税が45万円控除される仕組みです。(所得控除)
同居していない場合でも所得税48万円、住民税38万円が控除されます。別居していても扶養親族に入るだけで扶養義務者の所得によっては節税になるので、お得だと言えるでしょう。
社会保険の被扶養者になる
社会保険の被扶養者になることで、国民健康保険料を納付する必要がなくなります。遺族年金をもらっていても、以下の条件を満たす方は社会保険の扶養に入ることができます
- 遺族年金を含めた年収が130万円以下(60歳以上の場合は180万円)
- 同居の場合は被保険者本人の年収の2分の1未満
- 別居の場合は被保険者本人からの仕送り額よりも少ないとき
国民健康保険料は75歳になるまで納める必要があるので、75歳未満の人であれば社会保険上の扶養に入るメリットはあるでしょう。
扶養する人が国民健康保険の被保険者である場合は、扶養されていても健康保険料の金額は同じなので、扶養に入るメリットはありません。
マル優・特別マル優を利用する
遺族基礎年金や寡婦年金をもらっている妻は、マル優や特別マル優制度を利用した節税が可能です。
マル優とは、遺族基礎年金や寡婦年金をもらっている人が利用できる制度で、預貯金350万円までは利子が非課税となります。特別マル優は、遺族年金等を受給している人の持つ国債・地方債350万円までの利子が非課税になります。
マル優と特別マル優は併用可能です。合わせて利用すれば合計額700万円までの利息を非課税で受け取れます。
非課税の対象 | |
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マル優 | 預貯金 合同運用信託 特定公募公社債等運用投資信託 一定の有価証券 |
特別マル優 | 国債 地方債 |
ただし、マル優・特別マル優を利用して国債等を買い付けする場合、インターネットから申し込むと課税扱いになることがあります。非課税の適用を受けたい場合は、金融機関に事前に問い合わせて、手続き方法や対象となる商品を確認しておきましょう。
遺族年金で確定申告が必要になるケース
遺族年金は非課税なので、基本的に確定申告は必要ありません。しかし、以下3つのケースに当てはまる場合は、確定申告が必要です。
- 給与以外の所得が年間48万円以上ある
- 給与所得があり年末調整を受けていない
- 未支給年金を受けた
他の収入がある場合は、遺族年金の受給者でも確定申告が必要になるケースがあります。どのような場合に確定申告が必要になるのか、ここで確認しておきましょう。
給与以外の所得が年間48万円以上ある
給与以外の所得が48万円以上発生した場合、所得金額分の確定申告を行い、納税しなければなりません。 給与以外の所得には、以下のようなものが当てはまります。
- 自分で事業をして発生した事業所得
- 家賃収入からなる不動産所得
- 保険会社から受け取った保険金
上記の所得が年間48万円以上ある場合は、確定申告が必要です。本人が亡くなったときに未支給であった年金や保険会社から下りる保険金は収入扱いとなるため、申告が必要です。
事業を引き継いで発生した事業所得、不動産を相続して発生した不動産所得などがある場合も注意が必要です。
給与所得があり年末調整を受けていない
年度の途中まで給与所得者だった場合は、年末調整が済んでいないので確定申告が必要です。
通常、会社員やパート・アルバイトの給与所得者は、勤務先で年末調整を受けるため、確定申告を行う必要はありません。しかし、年の途中で退職して年末まで就職しなかった場合、年末調整を行っていないことになるので、自身で申告しなければなりません。
また、2か所以上の勤務先から給料を受け取っている場合も、1年間のトータルの税額を計算していないため、確定申告が必要になります。
未支給年金を受けた
亡くなった方の未支給年金を遺族が請求して支給を受けた場合は、一時所得となるため課税対象です。
一時所得には特別控除があるので、50万円を超えなければ税金を払う必要はありません。実際に50万円を超える未支給年金を受け取る人は少ないでしょう。
しかし、他の一時所得と合算して50万円を超える場合は所得税がかかるので、申告を忘れないように注意が必要です。なお、遺族が受け取った未支給年金には相続税はかかりません。
遺族年金の確定申告をしなかった場合はどうなる?
期日までに確定申告締め切りの期日を過ぎても確定申告はできますが、ペナルティが発生します。ペナルティは「無申告加算税」と「延滞税」の2つです。
無申告加算税とは、本来納付すべき税金に加えて課される税金です。納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円以上は20%の割合を乗じて計算した金額が課せられます。申告期限から1カ月以内に自主的に納付すれば、無申告加算税は課されません。
延滞税とは、期日までに納付しなかった税金にかかる罰則的な税金です。期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。納期限の翌日から2カ月を経過する日までは年7.3%、2カ月を経過した日以降は年14.6%です。
期限を過ぎてしまうと、本来納めるべき税に加えて、さらに多くの税金を納めないといけません。期限を過ぎるほどに加算される額が大きくなるので、できるだけ早く申告を行うのが得策です。
ペナルティを受けないためにも、確定申告の期限はきちんと守りましょう。
遺族年金で分からないことがあれば専門家に相談を
遺族年金は厚生年金保険法によって非課税だと定められており、所得税や住民税などのすべての税金がかかりません。同居している家族の扶養に入ったり、マル優・特別マル優を利用したりすれば、節税効果を望めます。
ただし、遺族年金受給者であっても、他の収入があれば確定申告が必要になるので注意が必要です。どこまでが非課税で、どこから課税されるのか、事前にしっかり確認しておきましょう。
ほかにもこちらのメディアでは、死亡届の提出期限はいつまでかや死亡届のコピーの必要性についても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。