遺産分割協議書の契印とは?割印との違いや押し方を徹底解説!

遺産分割協議書は、相続の手続きを進めるために必要不可欠な重要書類です。

そして遺産分割協議書の中には、「捨印」「割印」「契印」など多くの特殊な印鑑の押し方があることを知っておく必要があります。

この記事では遺産分割協議書の作成の流れ、「契印」と「割印」それぞれの違いと遺産分割協議書における押印のやり方について解説します。

「契印」や「割印」は絶対に必要なものではありませんが、これらの押印があることで遺産分割協議書の安全性や信頼性を高めることにつながります

これから遺産分割協議書を作成する予定がある方はぜひご覧ください。

1分でわかる!記事の内容
  • 遺産分割協議書の「契印」は、不正な複製や改ざんを防ぐのに役立つ
  • 遺産分割協議書の「契印」を押印する箇所は製本タイプとホッチキス留めタイプで異なる
  • 遺産分割協議書の「契印」には実印を使うこと 

この記事の監修者

行政書士立花技術法務事務所


代表


立花 信一/行政書士

神奈川県大和市の行政書士。契約書作成、補助金申請代行、建設業許可申請代行、産業廃棄物許可申請代行、遺言書作成、相続業務などを取り扱う。

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議をした際に作成する書類のことを指します。

下記のようなケースで遺産分割協議を実施することが一般的です。

遺産分割協議を実施するケース
  • 被相続人が遺言書を残しておらず、相続人が複数名いる
  • 被相続人が遺言書を残しているものの、相続人全員がその内容に納得できない
  • 相続登記(不動産等の名義変更)や相続税申告等の手続きが必要

遺産分割協議では「相続人の誰が」「何を」「どのくらい」相続するのかを話し合い、その協議で決定したことを遺産分割協議書にまとめます

遺産分割協議には相続人全員の同意と、印鑑を押すことを意味する「押印(おういん)」が必要です。そのため遺産分割協議には全ての相続人が参加することが求められます。

また、遺産分割協議後に作成する遺産分割協議書がないと、相続税の申告や預金の解約等の相続の手続きが進められません。早めに遺産分割協議を実施して、遺産分割協議書を作成することがおすすめです。

契印と割印の違い

遺産分割協議書を作成する際に、「契印」や「割印」という言葉を耳にするかもしれません。

「契印」と「割印」はいずれも遺産分割協議書に必要不可欠なものではありませんが、遺産分割協議書の安全性を高められるため押印することがおすすめです。

ここではそれぞれの違いと、遺産分割協議書における押印のやり方について紹介します。

契印とは

「契印」とは遺産分割協議書が2枚以上の複数ページに渡る際に、それがひとつなぎの書類であることを証明するために押印するものです。契印を押す際は実印を使用しましょう。

例えば、冊子になっている遺産分割協議書のページを一部抜き取って改ざんした際に、そのページに契印がなければ瞬時に改ざんしたことが分かります。

遺産分割協議書において契印は必要不可欠ではありませんが、書類の改ざんを未然に防ぐという意味で押印することがおすすめです。

遺産分割協議書の契印の押し方

遺産分割協議書が複数ページある場合、製本またはホッチキス留めのいずれかの形でまとめることが多いでしょう。それぞれのケースで契印の押し方が異なります。

ホッチキス留めの遺産分割協議書の場合

ホッチキス留めの遺産分割協議書の場合は、全てのページの見開き部分に相続人全員分の実印を押印します。

製本タイプの場合

製本タイプの場合は、途中のページが抜き取られたり新たにページを加えたりするリスクが低いため、全てのページの見開き部分に押印する必要がありません。下記の3つのパターンよりいずれかを選択し、相続人全員分の実印を押印します。

遺産分割協議書の契印の押し方(製本タイプ)
  • 製本テープにまたがって表面と裏面の両面に契印を押印
  • 製本テープにまたがって表面のみに契印を押印
  • 製本テープにまたがって裏面のみに契印を押印 

割印とは

割印とは遺産分割協議書を2部以上作成した際に、全て同じ内容であることを証明するために押印する方法です。遺産分割協議書は、全ての相続人が署名・捺印をした原本と控えを作成します。

不動産や預金の名義変更を行う相続人の代表者が原本を所有し、その他の相続人全員が控えを保有することが一般的です。割印を通じて原本と控えに関連性があることを証明できます。

割印は契印とは異なり、相続人全員の実印を押す必要はありません。相続人の代表者1名分の割印でも十分です。しかし、押印した相続人の数が多いほど書類としての信頼性を高めることにつながるため、できる限り相続人全員に押印してもらいましょう。

割印の押印によって、原本や控えの不正な複製・改善を防止できます。例えば、遺産分割協議書作成の後に、控えの一部に改ざんがあったとします。その際、他の控えや原本に割印が押印されていれば、その控えを受領した後に改ざんされたことがすぐに分かるでしょう。

遺産分割協議書の割印の押し方

割印を押したい遺産分割協議書の原本と、全ての控えをずらして重ねます。ずらし方は上下または斜が一般的です。そして、ずらした遺産分割協議書の原本とその控え全てにまたがるように、実印を押してください

遺産分割協議書の契印の押印を失敗した場合は?

割印や契印が滲んだりかすんだりして、押印に失敗することもあるでしょう。その場合、失敗した箇所の上に少しずらして訂正印を押し、その隣に改めて契印または割印を押し直します。

仮に契印や割印に失敗しても「二重線」を引いてはいけません。二重線を引いてしまうと、他人が更に二重線で消してしまう危険性があるからです。

遺産分割協議書に契印や割印を押す際に注意すべき点

遺産分割協議書に契印や割印を押す際には、下記の2点に注意してください。 

  • 相続人全員の実印を押印し、印鑑証明書を添付する
  • 契印・割印がなくても法的に問題はない

それぞれの注意点について解説します。

相続人全員の実印を押印し、印鑑証明書を添付する

遺産分割協議書に押印する印鑑は、全て実印である必要があります。遺産分割協議書を相続人の人数分用意し、それぞれの末尾に相続人全員の印鑑登録証明書を添付するのを忘れないようにしましょう。

契印・割印がなくても法的に問題はない

割印や契印が押されていなくても法的に全く問題はなく、遺産分割協議書の有効性に変わりはありません。

遺産分割協議は相続人同士の合意によってのみ成立し、遺産分割協議書はそれを書面にした証明書に過ぎないからです。

しかし、遺産分割協議書が複数ページに渡る場合は契印を押しておくことをおすすめします。有効な書類であると認められて、その後法務局や金融機関などで相続の手続きをする際にスムーズに進められるからです。

遺産分割協議書作成の流れ

ここでは遺産分割協議書の作成の流れについて紹介します。遺産分割協議書作成の流れは下記の通りです。

  1. 財産の内容や相続人を記入する
  2. 遺産分割協議書に実印を押印する
  3. 遺産分割協議書に契印を押印する
  4. 遺産分割協議書を必要部数用意する

遺産分割協議書は相続の手続きに使用する大切な書類であるため、ミスは許されません。自分で作成する場合はこの記事を参考にしながら、正しく有効性のある遺産分割協議書を作成しましょう。

それではそれぞれのステップについて詳しく解説します。

 Step1: 財産の内容や相続人を記入する

遺産分割協議書の作成は手書きでもパソコンでもどちらでも構いません。下記のステップを踏んで書類を作成しましょう。

  1. 表題を「遺産分割協議書」にする
  2. 被相続人の氏名・本籍・最終住所などを記載する
  3. 相続人の氏名・住所・財産の内容を記載する
  4. 遺産分割協議が成立したことを明記する 

Step2: 遺産分割協議書に実印を押印する

遺産分割協議書の作成が完了したら相続人全員が署名し、実印を押印してください。トラブルを防ぐために署名は自筆で書くことがおすすめです。そして署名のそばに押印しますが、必ず「実印」を使いましょう

「実印」とは、居住している市長区村の役場に印鑑登録をした印鑑のことです。もし実印がない場合は、登録用のハンコを用意して印鑑登録をすれば、そのハンコを実印として使用できます。

相続税の申告や相続登記などの手続きには、遺産分割協議書と印鑑証明の2つが必要です。実印は必ず用意しておきましょう。

 Step3: 遺産分割協議書に契印を押印する

つづいて、遺産分割協議書に契印を押印します。この際に活用する印鑑も実印です。

ホッチキス留めの遺産分割協議書の場合は、全てのページの見開き部分に相続人全員分の実印を押印します。

製本タイプの場合は、下記の3つのパターンよりいずれかを選択し、相続人全員分の実印を押印します。

遺産分割協議書の契印の押し方(製本タイプ)
  • 製本テープにまたがって表面と裏面の両面に契印を押印
  • 製本テープにまたがって表面のみに契印を押印
  • 製本テープにまたがって裏面のみに契印を押印 

製本タイプや大きめの紙を使った遺産分割協議書であれば、契印を押す箇所が減り、押印のミスも回避しやすいでしょう。

Step4: 遺産分割協議書を必要部数用意する

最後に遺産分割協議書を相続人の人数分用意しましょう。

遺産分割協議書の作成は1部だけでも法的には問題がありませんが、実用面で問題になることがあります。

たとえば、預金口座と不動産の相続人が異なる場合、相続手続きをするためにそれぞれ遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書が1部しかない場合は、預金口座の相続手続きをしたあとに、不動産の相続手続きをしなければなりません。

各々が所持していないと上記のように使いまわすことになり、時間がかかってしまうのです。

そのため、作成や押印の手間がかかってしまいますが、遺産分割協議書を相続人全員分作成しておくことをおすすめします。 

遺産分割協議書の作成で困ったら専門家に相談を

遺産分割協議書は相続手続きのために法務局や税務局、金融機関に提出する重要な書類です。

契印の押印は法的に定められているものではありませんが、契印があると書類としての信頼性を高められると共に、不正な複製や改ざんなどの防止に繋がります

遺産分割協議書の安全を守るためにも、割印と併せて押印することがおすすめです。また、遺産分割協議書に使用する印鑑は全て「実印」で、最終的に印鑑証明書を添付する必要があることも忘れないようにしてください。

契印や割印だけに留まらず、遺産分割協議書の作成に悩んだ場合は専門家に相談しましょう。

専門家に遺産分割協議書の作成を依頼した場合、費用はかかりますが安心して手続きに利用できます。

ほかにもこちらのメディアでは、遺産分割協議に期限はあるのか遺産分割協議書の提出先についても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。