税理士への相続相談は必要か?費用や司法書士に依頼するケースを紹介

遺産を相続することになったものの、税理士に依頼すべきか判断できずに困っている方もいるでしょう。相続税の申告手続きは複雑なので、専門家のサポートが必要です。

この記事では、税理士に相続相談をするメリットや、手続きを依頼する際の費用について解説します。司法書士に相談した方が良いケースについても紹介するので、どの専門家に相続相談すべきか迷っている方は必読です。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続税の申告は税理士へのサポートが必要
  • 税理士に相談するときは申告実績数とサポート体制を確認する
  • 節税対策をしたいなら税理士、相続登記をしたいなら司法書士がおすすめ

税理士への相続相談は必要か?

税理士への相続相談は、必ずしも必要というわけではありません。

税務署に聞けば簡単に解決できる相続問題もあるので、状況に応じて相談先を選ぶことが大切です。自分で相続税を申告するのが難しい場合や、相続税の申告を全て任せたい場合は、税理士へ相談すると良いでしょう。

相続税申告は個人でも行えますが、手続きが複雑で時間がかかるうえに、10カ月という申告期限が定められています。相続税の申告書作成は、税理士でも難しい専門性の高い作業です。

知識のない人が対応しようとしても思うように行かずに、期限を過ぎて追加の税を取られてしまうケースは珍しくありません。また、作成ミスが生じて追徴課税を受けるリスクも伴います。

相続税申告をミスなくスムーズに進めたいなら、税理士への相談をおすすめします。

税理士に相続相談をするメリット

税理士に相続相談をするメリットは、主に4つあります。

  • 相続税申告を代行してくれる
  • 相続税額を予測できる
  • 節税対策ができる
  • 税務調査を回避しやすい

メリットについて1つずつ解説します。

相続税申告を代行してくれる

税理士へ依頼すれば、複雑な相続税の申告手続きを代行してもらえます。相続税の申告はとても難しく、専門知識を持った税理士でも間違うことが珍しくありません。

相続税申告は多くの人にとって馴染みのない手続きであり、体力的にも精神的にも力を使います。申告書作成から必要書類の用意、相続税の計算まで作業は多岐にわたるため、専門知識のない人が抜け漏れなく手続きを行うのは極めて困難です。

相続税申告は死後10カ月以内に終える必要があり、期限を過ぎると罰金を課される可能性があります。家族が亡くなった後は葬儀などさまざまな手続きにも追われるため、相続税申告を期限内に抜け漏れなく行うのは難しいでしょう。

税理士に依頼すれば、相続税申告の手続きをほぼ全て丸投げでき、期限内に申告を終えられます。申告ミスも防げるため、税務署からあとで指摘を受けるリスクも回避できます。

時間的コストや心理的ストレスがなくなることを考えると、専門家に任せるメリットは大きいと言えるでしょう。

相続税額を予測できる

相続財産の状況からおよその相続税額を計算できるのも、税理士に相談するメリットです。

相続税が発生する場合、財産ごとに相続税評価額を算定して納税額をシミュレーションしますが、専門知識が必要なので個人で相続税額を予測するのは困難です。

相続税を計算するときは、事前に必要な資料を収集しなければならず、長期間を要します。税務署では具体的な相続税の計算に関する相談に対応していません。

相続税額は遺産分割の結果で変動することもあるため、必要に応じて数パターンを検証する必要があります。

相続税の計算が難しい場合には、税理士に相談して必要種類などを収集してもらいましょう。相続専門の税理士なら先を見据えた提案が可能なので、将来の不安も取り除けます。

節税対策ができる

税理士は相続税対策や節税についてアドバイスを提供してくれるため、1円でも相続税を安くしたい方は一度相談してみましょう。

節税対策は専門的な内容であるものの、税務署では相談に応じていません。そのため、相続税法や贈与税法などの知識を持っている税理士に相談して、解決するのが適切です。

相続税にはいくつもの特例制度が用意されており、税理士は個々の相続事例に照らし合わせて最適な特例制度を提案してくれます。

生命保険の活用や相続時精算課税制度の適用など、多角的なアドバイスを提供してくれるので、大きな節税効果を期待できるでしょう。また、相続税を支払い過ぎるというリスクも回避できます。

税理士に早めに相談しておけば、贈与税の非課税枠を活用した節税対策も可能です。被相続人が存命のうちに非課税で財産を贈与すれば、将来の相続税の負担を減らせます。

税務調査を回避しやすい

相続税申告をする際に税理士の署名があれば、個人が作成した申告書に比べて信頼性が高まり、税務調査を回避しやすくなります。

相続税申告において税務調査が行われる可能性は10%前後ですが、相続専門の税理士として税務署から信頼を得ている場合は、税務調査に入られるリスクが減少します。

税理士が申告をする際は「書面添付制度」を活用できます。書面添付制度とは、税理士が税務署の代わりに納税者を調査したことを全部書面にまとめて、申告書と一緒に提出する制度です。

万一税務調査の対象となった場合でも、書面添付を提出していると、税務署は納税者の調査に入れません。税務署からの電話がかかってくることもなく、税理士が対応してくれるので安心です。

税理士に相続相談をするのはどんな人?

税理士に相続相談すべきケースは状況によって異なります。ここでは、どの状況で税理士に相続相談をするべきかを解説していきます。

税理士への相続相談が必要なケース

税理士への相続相談が必要なケースは、下記のとおりです。

税理士への相続相談が必要なケース
  • 遺産が基礎控除額より多いとき
  • 遺産が基礎控除額以下かどうかわからないとき
  • 実際にかかる相続税を計算したいとき
  • 節税対策について知りたいとき
  • 生前贈与における贈与税などを確認したいとき
  • 相続放棄したいとき

相続税には基礎控除額があり、遺産総額が基礎控除額を超える場合は相続税の申告が必要です。

基礎控除額は「3,000万円 + (600万円×相続人数) 」で計算されますが、基礎控除額ギリギリの場合でも財産評価額などで相続税が発生する場合があります。申告すべきかどうか判断が難しい場合は、税理士へ相談した方が良いでしょう。

遺産の計算をして基礎控除額内かどうかを明確に判断してもらえば、相続税がかかるのかを判別できます。また、申告しなかったことでペナルティの課税や税務調査を受けるリスクも回避できます。

生前贈与における贈与税などを確認したい場合も、税理士に相談するのが良いでしょう。生前贈与は相続税を減らす手段になりますが、場合によっては贈与税の負担が大きくなるケースもあります。

余計な手間を増やさないためにも、事前に税理士に相談して、適切な贈与の方法などを聞いておきましょう。

特に相続放棄は3カ月の期限があるため、相続が開始されてから早めの相談をおすすめします。

税理士への相続相談が不要なケース

税理士への相続相談が不要なケースは、下記のとおりです。

税理士への相続相談が不要なケース
  • 相続財産が基礎控除額以下である場合
  • 遺産に土地がない場合
  • 遺産総額が5,000万円以下である場合

相続財産が基礎控除額以下の場合は相続税がかからないため、税理士への相談は必要ないでしょう。最低でも3,600万円超の相続財産がないと、相続税の申告は必要はありません。 基礎控除は相続人の人数に応じて加算されるので、まずは法定相続人の人数を把握し、基礎控除額がいくらになるのかを確認しましょう。

遺産総額が5,000万円以下であれば相続税もさほど大きくならないため、ご自身で手続きを行うことも可能です。土地がない場合も複雑な手続きは不要なので、ご自身で申告をしても良いでしょう。

税理士に相続手続きを依頼するときの費用

相続手続きを税理士に依頼すると、報酬が発生します。依頼する前に、どれくらいの費用が発生するのかを確認しておきましょう。

税理士報酬の目安

相続手続きを税理士に依頼する場合の費用は、遺産総額の0.5~1%が相場です。

遺産総額税理士報酬(0.5〜1%)
5,000万円25〜50万円
1億円50〜100万円
3億円150〜300万円
5億円250〜500万円

上記の金額はあくまで目安であり、プラスの報酬が発生するのが一般的です。税理士報酬が加算される要因として、主に以下のようなケースが挙げられます。

  • 相続人の数が多い
  • 評価しにくい財産がある
  • 相続税の申告期限間際に依頼

相続人の数が多いと申告書の数が増えて計算の手間も増えるため、費用も上乗せされます。また、相続財産に非上場株式や土地など評価しにくい財産が含まれていると、財産評価の作業に手間がかかるので費用も高くなります。

申告期限近くになってから依頼をする場合も、割増料金が請求されるので注意が必要です。相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内と決まっています。

期限まで時間がない場合は、残されている日数で膨大な確認作業と申告を行わなければならず、プラスの報酬が発生します。

他にも状況に応じて追加料金が発生する場合があるので、事前に確認しておきましょう。

税理士報酬をシミュレーション

税理士報酬をシミュレーションする方法は主に3つあります。

税理士報酬のシミュレーション方法
  • 国税庁のホームページでシミュレーションする
  • 報酬額をシミュレーションできるサイトを利用する
  • 税理士に報酬額を見積もってもらう

国税庁のホームページでは、財産を相続した人向けに、相続税申告が必要かどうかを判定できる「相続税の要否判定検討表」を配布しています。相続財産を一通り記入して「遺産総額×0.5~1.0%」で計算すれば、報酬の目安がわかります。

この他、「申告要否判定コーナー 」でも報酬のシミュレーションができます。

国税庁以外にも、税理士法人のウェブサイトなど、報酬額をシミュレーションできるサイトは複数あります。サイト上で計算すると、おおよその金額がわかるでしょう。

ただし、報酬計算のシステムは事務所ごとに異なるため、見積もりと実際のコストが変わることがあります。

最も確実なのは、実際に税理士に相談して報酬額を見積もってもらう方法です。税理士に頼めば、相続人の数や相続財産の内容から的確に計算してくれます。

相続を依頼する税理士の選び方

相続を依頼する税理士を選ぶときは、以下のポイントをチェックしましょう。

  • 申告実績数が豊富
  • サポート体制が充実
  • 税理士報酬が明確

各ポイントについて詳しく説明します。

申告実績数が豊富

税理士を選ぶ上で重要なポイントは、申告実績数と経験です。相続税申告は、経験とノウハウによって相続税の支払額やアドバイスなどが大きく変わります。相続税の実務経験が5年以上で、申告実績が年間50件以上あれば安心です。

申告実績数を比較するときは、事務所全体の実績ではなく担当者の実績を見ましょう。事務所全体の申告実績が年間500件以上でも、担当税理士が50人いれば、1人あたりの実績は平均で10件ほどしかありません。

実績と経験のない税理士に頼んでしまうと、財産評価に時間がかかったり、税務調査でミスが発覚して追徴課税を受けたりしかねません。 依頼する前に、担当税理士の実績と経験を必ず確認しましょう。

税理士事務所のホームページには、申告実績を記載するケースも多いですが、事務所全体の実績を記載している場合があります。相談を依頼するには、担当者個人の申告実績をヒアリングしましょう。

サポート体制が充実

書面添付制度など、税務調査のサポートがあるかも大事なポイントです。書面添付制度を活用すれば、税務調査に入られるリスクを減らせます。

万一税務調査が実施された場合に、税理士が調査に同席するか、修正申告を行ってもらえるかなどを、依頼前に確認しましょう。

相続税申告が終わった後も、相続不動産の売却や二次相続対策など、さまざまなイベントが待ち構えています。せっかくならば、アフターサポートが充実している税理士に頼みましょう。

相続税のシミュレーションをする場合、二次相続まで加味しないと相続税が増えるケースがあります。今回の相続だけでなく、二次相続対策まで見越したサポートを受けられるかを重視しましょう。

税理士報酬が明確

税理士のホームページを見るときは、報酬の額が明確に記載されているかを確認しましょう。

「〇〇万円~」のように最安値が表記されているケースが多いですが、個々の相続事例で税理士報酬は変動します。まずは、数社以上から見積もりを取り、そこに含まれるサービスやサポートをチェックしましょう。

税理士報酬の一般的な相場は、遺産総額の0.5~1%と言われています。遺産総額が2億円なら、税理士報酬は100〜200万円程度が相場です。

相場と比べて報酬が高すぎたり安すぎたりする場合は要注意です。安かろう悪かろうの税理士もいないとは限らないので、見積もりの内容をしっかり確認しましょう。

税理士に相続相談する前に準備しておくこと

税理士への相談時間は限られているため、時間をいかに有効活用するかがポイントになります。限られた時間内で大事なことを聞くために、以下のものを用意しておきましょう。

  • 相続財産の一覧表
  • 被相続人の家族構成

あらかじめ準備しておくと、短時間でも効率良く相談を進められます。

相続財産の一覧表

Excelなどで作成した相続財産の一覧表を持参しましょう。相続財産を元に相続税の計算をするため、一覧表がなければ具体的な相談ができません。

金額の大きな財産に記載漏れがあると、相続税額が大きく変わってしまいます。金額が大きくなりやすい相続財産は以下の通りです。

財産預貯金
有価証券(株式、社債など)
土地、建物
生命保険金
退職金
書画骨董
事業に係る財産(売掛金など)
債務金融機関からの借入金
事業に係る債務(買掛金など)
葬式費用 

借入金や葬式費用などがある場合は債務控除の対象になり、相続財産を減らす効果があるので、併せて記載しておきましょう。

相談時間は限られているので、1円単位まで記載する必要はありません。百万円以上の財産を百万円単位で記載した方が効率的です。

被相続人の家族構成

被相続人の家族構成は相続税額に大きく影響するので、準備が必要です。

相続税の基礎控除は法定相続人の数に左右されます。1人増えるごとに600万円加算されるため、1人違うだけで相続税額は大きく変わります。

生命保険金や死亡退職金の非課税枠も法定相続人の数が影響します。配偶者控除未成年者控除障害者控除など、どの財産をどの相続人が相続するかによっても相続税額は変わるので、家族構成をしっかり伝えられるようにしておきましょう。

税理士に相続を依頼するときの注意点

税理士に相続を依頼するときは、以下の3点に注意が必要です。

  • 相続に弱い税理士もいる
  • 値段だけで決めない
  • 複数の税理士に相談してから選ぶ

注意点をしっかり把握したうえで、税理士を選定しましょう。

相続に弱い税理士もいる

税理士の中には相続が専門外の人もいます。税理士にも専門領域があり、法人業務を中心とする税理士も多いため、相続に精通していない税理士は珍しくありません。

相続に弱い税理士に依頼してしまうと、高額な報酬を請求されたり、充分な節税を行ってもらえなかったりして、不利益を被る可能性があります。

依頼する前にホームページを見て、相続専門の事務所かどうか確認しましょう。相続税専門と謳っている場合でも、経験や専門性の高さは人それぞれ異なります。

税理士のプロフィールを見て、どんな事務所でどんな経験を積んだか、相続に関連する資格保有の有無などを確認しましょう。

値段だけで決めない

相続税は税理士の経験や知識によって納税額が大きく変わるため、報酬額だけで税理士を選ぶのは得策ではありません。見積もり時点では安くても、あとから成功報酬として追加で請求するところもあります。

適用漏れが発生して、あとで余分な相続税を支払うこともあるので注意が必要です。

相続税の申告だけでなく、節税提案もしてくれる税理士を選びましょう。相続税には控除や特例制度が多数あり、これらの制度を利用した節税提案が必要です。

報酬が高くても、しっかり節税対策をして納税額を抑えられれば、手元に残るお金は増えます。

後から相続財産が見つかることを考慮し、修正申告となっても追加請求をしない場合もあるため、安いのがベストとは言えません。値段以外の要素にも目を向けて、安心して依頼できるかどうかを考えましょう。

複数の税理士に相談してから選ぶ

相続相談をするときは、1人だけでなく複数の税理士にあたってみましょう。同じ相続税専門の税理士であっても、人によって見方や気づくポイントは異なります。

複数の税理士に相談すれば、それぞれの違いがわかり、相談しやすい人を見分けやすくなります。多くの税理士は初回無料相談を行っているので、実際に会って相性が合うかどうかも確認しておきましょう。

一度会っただけで税理士を選ぶ必要はないので、セカンドオピニオンも活用しながら納得がいくまで検討してください。

相続相談は税理士と司法書士のどっちがおすすめ?

相続手続きに関わる専門家は税理士だけではありません。以下のように、状況次第では税理士以外の専門家に相談した方が良いケースもあります。

  • 節税対策をしたいなら税理士
  • 相続登記をしたいなら司法書士

税理士と司法書士は、どのようなケースで相談すべきかを解説します。

節税対策をしたいなら税理士

節税対策を重視する場合は、税理士に相談しましょう。相続税申告には基礎控除や配偶者控除といった控除があり、小規模宅地特例などを利用して相続税を減額できます。

配偶者控除なら1憶6,000万円まで非課税になることがありますが、各種控除や制度は利用条件や内容が複雑です。個人で申請するのは困難なので、節税対策をしたいなら税理士に依頼しましょう。

各種控除・制度を利用せずに払い過ぎてしまった税金は、一定期間を過ぎると返還してもらえません。そのため、最初に申請することが大事です。

相続税申告という複雑で専門的知識がいる手続きは、はじめから税理士に依頼したほうが失敗するリスクを軽減できます。

相続登記をしたいなら司法書士

相続登記を行う場合は、司法書士へ依頼しましょう。 相続登記とは、被相続人(亡くなった人)が所有していた不動産の名義を変更することです。

2024年4月1日から相続登記を義務化する法律が施行されるため、登記を怠ると10万円以下の過料が科せられます。

相続登記は自分でもできますが、登記の専門家である司法書士に依頼した方がメリットは大きいです。

相続登記は必要書類から申請書の書き方までルールに沿う必要があり、決して簡単な手続きではありません。必要書類を集めて正確に申請するには、相当な時間と労力が必要です。

忙しくて手続きが進まない場合や、手続きに不安がある場合は、最初から司法書士に依頼したほうが良いでしょう。

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