相続登記の手続きにかかる期間はどのくらい?短縮するコツも解説

「相続した土地を早く売り払いたい」「相続登記義務化が始まる前に手続きを完了させたい」などの理由から、相続登記にはどの程度の期間が必要か気になる方もいるでしょう。

相続登記の所要期間の目安は1〜2カ月です。申請してから登記が完了するまでは1週間程度ですが、遺産分割協議の取りまとめや相続人・相続財産の調査といった事前準備に時間がかかります。

相続登記の期間が長引く原因は何か、早く済ませるにはどうすべきか解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続登記にかかる期間の目安は1~2カ月
  • 遺産分割協議のとりまとめや資料収集に時間がかかる
  • 遺言書による相続でも、検認の手続きがあると時間がかかる

相続登記にかかる期間の目安は1~2カ月

相続登記とは、相続した土地や建物の名義を相続人へと移すための手続きです。登記に必要な書類の収集から、法務局に申請して登記簿が書き換えられるまでの期間は平均で1〜2カ月程度かかります。

不動産を売却または融資の担保として使いたい場合、売主(相続人)へ所有権の移転が完了している必要があります。相続登記はすぐ終わる手続きではないため、予定する売買のタイミングから逆算して、早めに手続きを済ませるのが重要です。

相続登記に時間がかかるのは、被相続人や相続人の戸籍・住民票の収集、遺産分割協議などの準備に手間が生じるためです。相続登記は窓口で申請書を作成するだけで済む単純な手続きではなく、多くの添付書類が求められます。

申請後も法務局内で内容に問題がないかチェックする時間が必要です。

相続登記では何に時間がかかる?

相続登記の主な期間は「遺産分割協議」「相続人・相続財産の調査」「登記申請後の審査」に分かれます。それぞれ何に時間がかかるのかみてみましょう。

遺産分割協議の確定

遺産分割協議で誰がどの財産を相続するか決める時間が必要です。被相続人による遺言書がない場合、法定相続分に基づく分配、または相続人間の話し合いで遺産分割の具体的な内容が決められます。

遺産分割協議が伴う場合、遺産分割協議書の作成が必須です。協議書は登記申請時の添付書類の1つで、相続人による話し合いの結果を法務局に伝える意味を持ちます。遺産分割協議書には相続人全員の署名・押印が必要です。

協議がなかなか進まなかったり、遠方にいる相続人と郵送でやり取りしたりすると、遺産分割協議書をまとめるまでに時間を要します。不動産が相続財産に含まれる場合、誰が取得するか話し合いが難航するケースも多々見られます。

一般的に土地は価値が高く、共有での保有は望ましくないと考えられることから、所有者・管理人の選任で揉めやすいのです。

相続人や相続財産の調査

公的な書類を取り寄せて、相続人や相続財産を確定させるために時間がかかります。被相続人名義の不動産をもれなく把握するには、市役所や区役所で名寄帳(なよせちょう)の取得が必要です。また、登録免許税の算出時に使う固定資産税評価証明書の取得も求められます。

上記の書類は不動産の所在地を管轄する役所で入手します。不動産が遠方にある場合や数が多いときなどは、書類の収集だけで数週間以上の時間がかかるでしょう。

相続人の調査では戸籍や住民票を揃える必要があります。相続の権利を持つ方を漏れなく見つけるためのほか、申請時の添付書類として不可欠です。

被相続人の戸籍は出生時から死亡時までのすべての謄本が必要です。結婚や離婚を何度も繰り返したり、引っ越しが多かったりして、本籍地の移動が多いと調査の負担が増えるでしょう。

登記申請後の審査

法務局に相続登記を申請して審査が完了するまでは、約1週間ほど必要です。繁忙期ならさらに時間がかかる場合もあります。申請書に不備があると差し戻しを受け、修正して再度提出が必要となるため、余計に時間がかかるでしょう。

相続登記が問題なく完了すると、法務局から登記識別情報通知の送付を受けます。

【ケース別】相続登記の期間

相続登記の期間に幅があるのは、遺産分割協議が伴うか否かで大きく変動するためです。注意が必要なのは遺言書による相続でも検認がある場合、その手続きに時間がかかることです。

シチュエーションごとの具体的な相続登記の期間をご紹介します。

遺産分割協議をする場合

遺産分割協議が伴う場合、目安の2カ月以上かかることも珍しくありません。

相続人が遠方にいる場合やまったく面識がない場合などでは、押印をもらう前段の事前説明だけでも大変です。理解を得て合意に達するまで、1人の相続人だけで数カ月かかることもあり得ます。さらに話し合いがこじれると、遺産分割協議書の完成だけで1年以上要するケースもみられます。

頑として譲らない相続人がいると、調停や審判などの法的な手続きが必要となる場合もあるでしょう。

遺言書による相続の場合

遺言書による相続の場合、書類の収集から申請の完了まで2週間程度で終わる場合もあります。申請には遺産分割協議書が不要で、遺言書の添付で足ります。

遺産分割協議に伴う相続人同士の話し合いや書類のやり取りを考慮せずに済むため、時間を短縮できるのが特徴です。遺言書による相続の場合、収集・添付すべき書類が少なくなります。

被相続人の戸籍は死亡の事実が記載された除籍謄本だけで足り、出生時から死亡までの一連の添付は省略できるためです。被相続人の戸籍は添付書類のなかでもすべて集めるのが大変なものです。

遺言の検認を受ける場合

同じ遺言による相続でも家庭裁判所で検認を受ける場合、時間がかかるので注意してください。検認とは相続人に対して、遺言書の存在ならびに内容を明確にして、偽造や改変を防止するための手続きです。

遺言の効力には無関係ですが、この手続きを得ないと相続登記の申請が認められません。

検認が必要なのは故人が自筆で記した自筆証書遺言の場合にとどまり、公正証書遺言では不要です。遺言書の検認では申し立てから手続きが終わるまで、1〜2カ月程度かかります。

執行時は立会人のもと遺言の開封がなされるというシンプルな内容ですが、承認が下りるまでに時間を要します。検認の申立では被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。検認を受けるための書類の収集が伴い、通常の遺言と比べて手続きが煩雑になります。

相続登記で長引いてしまう理由

相続登記の期間が長引いてしまう主たる理由は、遺産分割協議および書類の収集です。それぞれ想定されるトラブルについて解説します。

遺産分割協議が難航する

相続人同士で意見がまとまらず、遺産分割の協議が難航するのはよくある話です。法定相続人となる配偶者や子、孫などには法定相続分が定められています。

法律上の取り分でスムーズに決まればよいのですが、実際には納得いかない相続人が出て、話し合いがこじれる場合があります。

話し合いがこじれる事例
  • 被相続人の介護をした子どもが法定相続分以上の分配を求める
  • 生前贈与を受けた他の相続人がご自身と同じ取り分なのは納得できない

生前に被相続人から贈与を受けた財産は、相続財産の対象から外れる場合があります。贈与を除いた金額を法定相続分どおりで均等に分配しても、不公平感を抱くのは否めないでしょう。

書類の収集に時間がかかる

相続人や相続財産が多くなるほど、必要な書類の数も増えます。申請には相続人全員の戸籍のほか、すべての不増産につき固定資産税評価証明書の取得が必要だからです。

相続人の特定および相続財産を把握するための資料収集が、相続登記の時間を左右すると言っても過言ではないでしょう。

時間のかかりやすい書類収集
  • 相続人や相続財産の数が多いとき
  • 相続登記をしないまま相続人が死亡した

相続人や相続財産の数が多いときを除くと、書類の入手で時間がかかりやすいのは二次相続があるときです。二次相続とは、相続登記をしないまま相続人が死亡した状況を指します。関係する権利者の数が増えるため、必要書類の数も多くなります。

相続人の配偶者や子、孫などの戸籍も必要で、書類の取得だけで何カ月もかかることも珍しくありません。

相続登記の期間を短縮するコツ

土地や建物の売却や担保の活用を考えていて、一刻も早く所有権移転登記を完了させたいと望む方もいるでしょう。登記にかかる時間は工夫することで短くできます。相続登記の期間を短縮する3つのコツをご紹介します。

相続開始後すぐに資料を収集する

相続登記で最も時間がかかりやすいのは、戸籍謄本や住民票、固定資産税課税証明書等の取得です。相続が発生したと分かったら、一刻も早く書類の収集に着手しましょう。

死亡後は葬儀の手配や弔問への対応などせわしなくなりがちですが、即座に市役所に確認したいところです。資料の収集にかかる時間を短くするには、相続人同士での協力が不可欠です。

不動産関係の資料は親族以外でも取得できます。相続した土地や建物の近くに住む相続人に名寄帳の取得を依頼したり、日中時間が取れる方に戸籍の取得を任せたりして工夫しましょう。

相続人や取り分を早めに決める

相続財産を誰がどれだけ取得するかを急いで決めて、遺産分割協議を早めに済ませましょう。法律上は協議の期限はありませんが、所有権の移転までスムーズに完了させたければ、早急な対応が求められます。

協議を先延ばしにしたことで相続放棄をした相続人の気が変わり、権利を主張し始める場合も考えられます。相続人や取り分を早めに決めるためには、相続人が一堂に会する場を設けるのがおすすめです。

話し合いから署名・押印までスムーズに進めば、遺産分割協議が1日で完了します。

司法書士に相談する

相続登記を司法書士に任せるのも1つの手です。必須の添付書類となる戸籍を正しく読解するには法的な知識が必要です。

相続人や相続財産の数が多いと、接触すべき市役所も各地に散らばっていて、1人の力だけで完了するのは困難を極めます。申請書類は、遺言による相続と遺産分割協議による相続とでは異なります。

個々のケースに応じた必要書類を効率良く取得するのは、相続登記がはじめてだと難しいと言わざるを得ません。せっかく苦労して書類を集めても、もれがあれば再度取得に奔走する必要があります。

以上のリスクを考えると、相続登記の費用は増えるかもしれませんが、資料の収集や申請書の作成・提出代行を司法書士に依頼するのが得策だといえます。

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