火葬式の服装にルールはあるのかと気になっていませんか?
火葬式は、お通夜や告別式を行わず火葬と収骨のみをおこなう、シンプルな葬儀のスタイルです。参列者も親しい方々に限定されるため「あまりかしこまらなくていいのかな?」と思われる方もいるでしょう。
この記事では火葬式の服装マナーについて解説します。身だしなみや注意点も詳しく解説しますので、火葬式に参列する方はぜひ参考にしてください。
- 火葬式でのご遺族の服装は、一般葬と同じように「正喪服」か「準喪服」を着用する
- 「平服でお越しください」と案内された場合は略喪服で参列する
- 火葬式の持ち物や身だしなみなどのマナーも一般の葬儀と変わらない
火葬式とは
火葬式とは火葬だけを執り行う式のことで、ご遺体を安置しているところから火葬場へ直接向かうため「直葬」ともいわれます。
一般葬では、お通夜と告別式が2日間に分けて行われますが、火葬式はお通夜や告別式を行わず、火葬と収骨のみを行います。ご家族や親族のみで執り行われ、他の参列者を呼ばないのが一般的です。
最近では、終活に関するインターネットなどの情報からも、火葬式の認知度は高まっています。
昔のように、親戚付き合いや地域とのつながりが少なくなった現代人の、ライフスタイルにもマッチしているのでしょう。葬儀にかかるご遺族の負担や費用をなるべくかけたくない方などに選択されています。
火葬式の服装は喪服が一般的
火葬式はシンプルな葬儀のスタイルですが、参列者は一般葬と同じように喪服で参列するのがマナーです。
喪服は以下のような格式に分けられます。
- 正喪服
- 準喪服
- 略式喪服
一般葬などでは、親族は正喪服を着用することが通常です。ただし、和服などを着る機会が減っている現代では、正喪服ではなく準喪服が一般化しています。とくに、火葬式の場合では親族の方も準喪服を着るケースが多いでしょう。
一般の参列者は準喪服や略喪服を着用して葬儀に参列します。身内での小規模な葬儀ですが服装に特別なルールはなく、他の葬儀と変わりません。節度のある服装とマナーで臨みましょう。
【男性】ご遺族の服装
男女とも、ご遺族の火葬式での服装は「正喪服」か「準喪服」を着用します。男性の正喪服は、和装の場合が五つ紋のついた黒い紋付羽織袴、洋装の場合はモーニングコートです。
モーニングコートには、共布地の黒ベストを合わせます。ズボンは黒とグレーの縦縞模様で裾はシングルです。ただし、モーニングコートは昼の正装です。着用できるのは朝〜昼とされているため、お通夜ではブラックスーツを着用します。
準喪服はシングルかダブルのブラックスーツに白シャツです。
ブラックスーツは黒ければよいというものではなく、ビジネス用の黒いスーツとは異なります。
礼服のブラックスーツの黒色は、色味が深く高級感のある漆黒です。また、ビジネススーツの生地には光沢がありますが、礼服の生地には光沢がありません。
色の感じやフォルムなどが礼服とビジネススーツでは異なるので、マナー違反にならないように注意しましょう。
【女性】ご遺族の服装
女性の正喪服は、和装が黒無地で五つ紋または白装束、洋装が光沢感のない黒無地のワンピースにボレロ・スーツ・アンサンブルです。
準喪服もワンピース・スーツ・アンサンブルなどのブラックフォーマルなので、正喪服の洋装と同じ装いになります。
トップスの袖丈は肘が隠れる長さ、スカートはひざが隠れる長さを選び、肌の露出は最小限に抑えましょう。体のラインが出ない、シンプルなデザインがベストです。
【男性】参列者の服装
男性の参列者の服装は「準喪服」のブラックスーツが一般的です。一番格式の高い正喪服は、喪主やご遺族側が着用するものとされているため、参列者は着用しません。
火葬式では参列者が略喪服を着用する場合もあります。略喪服の場合は黒・濃紺・ダークグレーなどの落ち着いた色合いのビジネススーツに白のシャツを合わせて、派手なものは避けましょう。
【女性】参列者の服装
参列者の女性も「準喪服」なので、ご遺族の女性と同じくワンピース・スーツ・アンサンブルなどのブラックフォーマルです。
略喪服の場合は黒でなければならない決まりはありません。黒・紺・ダークグレーなどの地味な色のワンピースやスーツなどが略喪服に該当します。白や暗めの色のブラウスを選択しても大丈夫です。略喪服でもパンプスとストッキングは黒がベストです。
略喪服とはいえ、フォーマルな場所で着用するものなので、できるだけ地味な色合いの服装を選択するようにしましょう。
【子ども】火葬式での服装
高校生以下の子どもは、学校や保育園、幼稚園の制服が正装になります。制服がない場合の服装は、落ち着いた色味であればとくに決まりはありません。派手な色柄やキャラクターものなどは避けておきましょう。
赤ちゃんは、基本的に参列を控えたほうがよいとされています。ただし、ご遺族との関係性から参加したいケースもあるでしょう。赤ちゃんの服装を気にする必要はありませんが、控えめな色合いの服装、おくるみを選びます。
火葬式の服装の基本的マナー
ここからは、火葬式の服装で気になる、基本的なマナーを解説します。着用した服装が失礼にあたらないように確認しておきましょう。
平服の指定がある場合には略喪服で参列する
「平服でお越しください」と案内された場合は略喪服で参列します。男性は落ち着いた色合いのビジネススーツ、女性は落ち着いた色合いのワンピースやスーツです。服装に特に指定がない場合は準喪服で参列します。
平服とは「礼装でなくてよい」という意味で、礼装ほどきっちりした格好ではなくてもよいということです。普段着のことではないので注意しましょう。
夏もジャケットを脱がない
通夜や葬儀中は、夏でもジャケットを脱がないのがマナーです。
男性の場合は、ジャケットとシャツが喪服のマナーで、腕まくりもできません。半袖のシャツを着ていても、ジャケットを羽織ればわかりませんが、半袖シャツは正装ではないため注意が必要です。どうしても暑い場合は夏用の喪服を選択するのも1つです。
女性の場合も、暑いからといって肌の露出が多い服装は避けましょう。女性は、ワンピースの場合は半袖も許容範囲とされています。しかしその場合も、ジャケットやボレロを羽織っていないのはマナー違反になります。
肌の露出が多いのは好ましくないため、半袖よりも五分袖や七分袖が無難です。しかし、最近は従来の夏に比べるとひどい酷暑であることから、熱中症対策のため参列者に配慮されるケースもあるようです。
冬は地味で目立たない羽織ものを着る
冬は喪服の上からコートを羽織ってOKです。葬儀に着用するのであれば黒いコートがベストですが、黒以外のコートでも問題ありません。
黒以外のコートにする場合は、グレーや紺など黒に近い色がおすすめです。ただし、革製のものや毛皮、ファーは避けてください。カジュアルすぎるジャンパーやフードジャケット、ダウンジャケットなども避けたほうがよいでしょう。
葬儀の場にふさわしい、フォーマル感のあるデザインを選ぶようにしましょう。
宗教による服装の違いはあまりない
喪服には、宗教による服装の違いがほとんどありません。
神道やキリスト教でも仏式と同じ喪服を着用して参列できます。違いといえば、カトリック信者の女性が、トークハットと呼ばれる帽子を着用することがある点です。トークハットとはツバがない小さな円形の帽子のことで、正装の一部とされています。
ただし、トークハットを着用するのは喪主や親族のみです。参列者はトークハットを着用しないように注意しましょう。
服装以外の身だしなみ・持ち物のマナー
火葬式に特別な持ち物はなく、ハンカチなどの基本的な持ち物だけで十分です。身だしなみも一般の葬儀で気をつけることと変わりません。
服装だけでなく、持参する持ち物や身だしなみがマナー違反にならないよう気をつけて参列しましょう。
靴や小物は黒を選ぶ
靴・バッグなどの小物も黒を基調としたシンプルなデザインを選ぶのが基本です。明るい色や派手なデザインはもちろんNGです。
男性のネクタイやベルト、靴下も黒を着用します。光り物はふさわしくないため、光沢のある素材や大きな金具がついているものは避けましょう。女性はパンプスやストッキングも黒でそろえます。
ハンカチは白か黒が基本です。ただし、地味な淡い色、落ち着いた柄や刺繍、控えめなレースなどのデザインは問題ありません。
アクセサリーは控える
男女とも結婚指輪以外のアクセサリーは控えるのがマナーです。腕時計も光沢感のあるものを選ばないようにします。
アクセサリーの中で認められているのが真珠のアクセサリーです。涙の象徴とされる真珠のアクセサリーは、ご遺族に哀しみの気持ちを表すものとして身につけてよいとされています。
ただし、ネックレスの場合は一連の短いデザインのものに限られます。二連のネックレスは「不幸が重なる」、長いネックレスは「悲しみが長引く」ことを連想させるため、葬儀の場にふさわしくありません。
革製品は控える
「革」や「毛皮」などは殺生をイメージさせるため、控えるのがマナーです。ただし、靴とベルトは黒いシンプルなデザインのものであれば問題ありません。
革のバッグもできる限り控えるほうがよいとされています。バッグの表面が爬虫類のうろこ状になっているなど、はっきりと動物だとわかるようなデザインは避けましょう。
髪色は暗くする
火葬式に参列する際、髪色は暗い色であることが基本のマナーです。派手な髪色をしている方は染め直すか、スプレーなどで一時的に黒くしておくのがおすすめです。
ただし、最近では髪色を染めている方が多いため、派手でなければ許容範囲とされています。長い髪はまとめ、スタイリング剤を使いすぎて光沢が目立たないようにして、清潔感のある髪型に整えましょう。
髪をまとめる際は、華美なヘアクセサリーは避け、黒のヘアゴム・ピン・バレッタなどを使い、耳より下でまとめます。
ノーメイクは避け控えめなメイクをする
火葬式の参列に派手なメイクはNGです。とはいえ、ノーメイクでも失礼にあたるためマナー違反とされています。
ラメが入っているファンデーションやアイシャドウ・マスカラなどのポイントメイク、濃い色の口紅などは避け、ナチュラルなメイクが基本です。ノーメイクで疲れた印象を与えないように配慮しましょう。また、派手なネイルは落としておくのがマナーです。
簡単にネイルを落とせない場合は、ネイルを隠すために黒の手袋をつけるのも1つです。しかし、葬儀での焼香や食事の際には手袋を外さなければならない場合があります。火葬式では葬儀や食事の場面がないかもしれませんが注意しましょう。
ネイルポリッシュを重ね塗りしたり、ネイルシールを貼ったりして一時的に対処する方法もありますが、葬儀の場にふさわしくないネイルの場合は、オフしておくのがベストです。
火葬式での服装以外の注意点
ここから、服装や身だしなみ以外のマナーも確認しておきましょう。
香典は辞退されることがある
火葬式の場合、葬儀などをしないので香典を辞退することが多い傾向にあります。香典の辞退が知らされていた場合は無理に渡してはなりません。香典を受け取ると、そのあとの香典返しの用意などもご遺族の負担になってしまいます。
辞退の連絡がない場合は、香典を袱紗(ふくさ)に包んで持参します。火葬場に向かう前にご遺族へ渡しておくとスムーズです。
弔電や供花も辞退している場合が多い
火葬式では、香典と同様に弔電や供花も辞退される可能性があります。
弔電は、葬儀が行われる葬儀会場へ送るものです。火葬式は葬儀や告別式を行わないため、届け先の葬儀会場がなく、弔電を読み上げる時間も設けられていません。
どうしても届けたい場合は、喪主のご自宅に届けたり、葬儀会社からご遺族へ渡してもらったり調整が必要になります。
供花や供物なども同様です。ご遺族が受け取れるのかを確認し、辞退されているようなら負担にならないように配慮が必要です。
棺には入れられないものがある
火葬の際に、故人のご遺体と一緒に棺の中に入れる品を「副葬品」といいます。副葬品には、不燃物など棺に納められないものがあるので注意しましょう。
一般的に納めることが多い副葬品は、お花・手紙・寄せ書き・食べ物・洋服などです。生前の愛用品、思い出の品とともにお見送りします。
納められない副葬品は、不燃物として分類されるガラス・金属のものです。メガネ・腕時計・指輪などが該当します。金属やガラス類は完全に燃え切らず、ご遺体の損傷を招く恐れがあるため注意が必要です。
ビニールやゴム製品、プラスチック製品などは燃やすことで環境を害するため副葬品として納めるのは控えます。
また、ゴルフクラブや釣り竿に含まれる、カーボンが使われている製品も火葬炉の故障原因となるため納められません。
トラブルを防ぐため、副葬品選びの判断で困ったら葬儀会社や火葬場の担当者に必ず相談しましょう。
火葬式の基礎知識を理解
火葬式の流れや火葬式を行うメリットなど、一般的な基礎知識も理解しておきましょう。
一般的な火葬式の流れ
一般的な火葬式の流れは以下のとおりです。
- 遺体を搬送・安置する
- 葬儀の打ち合わせをする
- 死亡届を提出する
- 火葬場に出棺する
- 火葬後に遺骨を骨壺に納める
死亡が確認されたらまずご遺体の安置場所を確保します。葬儀会社に、ご自宅か専用の安置施設まで寝台車で搬送してもらうことが可能です。
無事に安置できたら、葬儀の打ち合わせや死亡届の提出が必要です。火葬は「埋火葬許可証」がなければ実施できません。埋火葬許可証を発行するために、自治体の窓口に「火葬許可申請書」と「死亡届」を提出します。
これらの手続きは、葬儀会社がサービスとして代行してくれる場合もあるので、ご遺族での手続きが負担になる場合は確認してみましょう。
火葬の当日は、出棺する前に故人の身支度を整えて棺へ納める「納棺の儀」を行います。棺の中にお花や思い出の品、愛用品などの副葬品を納めて故人を偲びましょう。
火葬場に着いたら最後のお別れをしたあとに、炉の中に棺を納め火葬されます。火葬が終わったら遺骨を骨壺に納める「お骨上げ」を行い、火葬式が終了します。最後に埋葬許可証が渡されるので、なくさないように保管しておきましょう。
火葬式のメリット
火葬式を行うメリットは、葬儀の費用が抑えられる点です。
通夜や告別式を行わないシンプルな葬儀のため、葬儀会場の費用・人件費・宗教的な儀式・参列者への食事や返礼品にかかる費用が抑えられます。お別れの時間も短く、参列者も限定されるためご遺族の負担も最小限です。
最近では、経済的な理由やライフスタイルの多様化により火葬式の需要が高まっています。葬儀になるべくご遺族の負担やお金をかけたくない方も多いため、火葬式を選択する方が増えていくでしょう。