「納棺って聞いたことはあるけど、どのようなことをするの?」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?納棺の儀式に立ち会う機会は人生の中で少ないため、具体的にどのような内容なのか知らないことは多いですよね。
納棺とは、亡くなられた方のご遺体を清め、安心してあの世に行けるように施すことです。亡くなられた方とお別れをする機会でもあるため、心を込めてご遺体を清めましょう。
こちらの記事では、納棺で行われる具体的な内容や服装に関するマナーなどを解説します。納棺の儀式に参列するにあたって、知らないことが多く不安を抱えている方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
- 納棺とは、亡くなられた方のお顔やご遺体をお清めする大切な儀式
- 一般的に葬儀と納棺は同じ日に行われる
- 納棺の費用は10万円程度
納棺とは何か
納棺(のうかん)とは、亡くなられた方のご遺体をお清めすることです。通夜の前までに済ませるのが通例で、死後の世界へ旅立つための支度を「納棺」と言います。亡くなられた方をお送りするにあたって、重要な儀式と言えるでしょう。
また、納棺は亡くなられた方の旅支度だけでなく、大切な方とお別れするための貴重な時間です。亡くなられた方のご遺体をお清めしたあとは、思い出の品などの「副葬品」を棺に納めます。
実際には、葬儀社のスタッフや「納棺師」という専門家により行われるのが一般的です。
納棺に関する基礎知識
「初めて納棺に立ち会うから、どのような段取りかわからない」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?以下で、納棺の所要時間や服装など、一般的なマナーを解説します。
立ち会うのは近親者や懇意にしていた方
一般的に、納棺に立ち会うのは下記のような近親者や生前懇意にしていた方です。
- 配偶者
- 子
- 親
- 孫
- 兄弟姉妹
- 生前懇意にしていた方
納棺は、基本的に「亡くなられた方が遺族とお別れをする儀式」です。そのため、一般的に仕事関連の方や近隣住民の方は立ち合いません。
行う場所・所要時間
納棺を行う場所は、亡くなられた方のご遺体を安置している自宅や斎場です。自宅で執り行う場合は、葬儀社の方や納棺師の方を自宅にお呼びします。斎場で執り行う場合は、ご遺体が安置されている霊安室となります。
納棺の所要時間は、おおむね1時間~1時間半程度です。納棺は葬儀の前に行うケースが多いため、葬儀の3時間~4時間前程度に行うのが一般的です。例えば、通夜を行う予定時刻が18時の場合は、14~15時頃に納棺を執り行います。
所要時間は地域の風習などで異なることもあるため、近隣の方や葬儀社の方に確認しておくと安心です。
納棺時の服装は喪服が一般的
納棺時の服装は、喪服で参列するのが一般的なマナーです。同日に葬儀を行うケースが多いため、喪服か準喪服で参列しましょう。
ただし、自宅で行う場合は近親者のみで執り行うケースがほとんどなので、平服で参列することもあります。
光沢のあるものは避ける
納棺時の服装で、光沢のあるものは避けましょう。黒やグレーなど、暗い色で参列するのが一般的なマナーです。平服で参列する場合であっても、光沢のある服は「明るい」という印象を与えるため、納棺の儀式にふさわしくありません。
服装に迷ったら、下記の色合いや服を意識すればよいでしょう。
男性 | ・黒のスーツ・ネクタイ・靴下・靴 ・喪服 |
---|---|
女性 | ・黒のワンピース・スーツ ・黒いバッグ(装飾や金具のないもの) ・黒またはベージュのストッキング ・装飾のない黒のパンプス |
子どもの服装は派手にならないようにする
小さい子どもが納棺に参列する際には、派手にならないように気を付けましょう。未就学児の場合、キャラクターがデザインされた服装や明るい色合いの子ども服しか持っていないなど、ある程度は仕方ない部分もあります。
しかし、できるだけ地味な服装で参列し、亡くなられた方とお別れをしましょう。具体的に、子どもが参列する際の服装は下記のとおりです。
- 学校の制服
- 黒・紺・グレーの洋服
- 白のシャツ
- 黒・紺・グレーの靴下
- 黒・紺・グレーの靴
派手なアクセサリーは避ける
納棺に参列する際には、基本的に結婚指輪以外のアクセサリーは外します。ネックレスやイヤリングなどの装飾品を身に着けないように注意しましょう。
派手で目立つアクセサリーを身に着けていると「不謹慎」という印象を与えてしまいます。ただし、落ち着いた雰囲気がある真珠のネックレスであれば、身に着けていても問題ないとされています。
納棺の儀式の流れ
一般的に、納棺は葬儀社のスタッフや納棺師にお任せします。「納棺に参列するのが初めて」という方は、どのような流れで進んでいくのか把握しておきましょう。
末期の水で亡くなられた方を拭く
まずは、末期(まつご)の水で亡くなられた方のお顔を拭きます。末期の水とは、亡くなられた方の喉を潤し、喉の渇きに苦しむことなく旅立てるようにする意味合いがあります。
割り箸の先に脱脂綿を巻き、水につけて湿らせた状態で亡くなられた方の口元などを拭きましょう。末期の水は、亡くなられた方と関係性が近い方から順番に行うのが通例です。
- 配偶者
- 子
- 親
- 兄弟姉妹
- 子の配偶者
- 孫
- 叔父・叔母
上記の順番で、末期の水で亡くなられた方のお顔をきれいに拭いてあげましょう。
湯灌でお清めをする
末期の水で亡くなられた方を拭いたら、湯灌(ゆかん)で亡くなられた方のご遺体全体を清めます。湯灌とは、亡くなられた方をお風呂に入れて清めることです。湯灌には「この世の穢れを洗い落とす」という意味合いがあります。
また、現世からあの世へ旅立つにあたって「きれいな状態で行けるように」という思いも込められています。あの世での安寧を願い、安らかに生きていくうえで大切な儀式と言えるでしょう。
なお、浴槽を使わずに清拭だけで済ませるケースもあります。葬儀社次第で方法が異なるため、気になる方は事前に確認しておくとよいでしょう。
エンバーミングを行う
エンバーミングとは、亡くなられた方のお顔を、生前の姿に近づけることです。エンバーミングを訳すと「遺体衛生保全」で、衛生面にも配慮しながら特別な技術を用いて、安らかな姿でお別れできるように施します。
特に、長い闘病生活をお送りしていた方の中には、瘦せてしまい元気だったころの面影を失ってしまうケースも少なくありません。エンバーミングを行うことで、元気な姿であの世にお送りできるでしょう。
死化粧を施す
死化粧(しにげしょう)とは、亡くなられた方へ施す化粧です。エンバーミングと似ており、生前における健康な表情に近づけるように、顔剃りを行い髪の毛を整えます。さらに、女性の場合はファンデーションやチークなどを用いてメイクを施します。
エンバーミングと死化粧を行うことで、穏やかな表情・元気な姿で安らかに旅立つ準備を整えられるでしょう。
死装束を着せる
死装束(しにしょうぞく)とは、亡くなられた方に対して着せる「あの世へ旅立つため」の装束です。一般的に死装束は上下白の着物で、頭に被る「笠」やすねに巻く「脚絆(きゃはん)」など修行僧になぞらえた小道具もお渡しし、支度を整えます。
修行僧のように装う理由は、仏教では「亡くなったあと四十九日間は旅に出る」と考えられるためです。
なお、近年は上下白の着物以外の死装束を施すケースが増えています。葬儀社によっては、エンディングドレスや生前好んで来ていた服を着せることも可能です。希望の死装束がある場合は、事前に相談するとよいでしょう。
ご遺体と副葬品を棺に入れる
死装束を着せたら、ご遺体と副葬品を棺に入れます。副葬品とは、亡くなられた方を弔うために棺に納める品物です。一般的に、副葬品として納めるのは生前愛用していたものや好物です。
「あの世に行っても、楽しく暮らせるように」という思いを込めて、副葬品を選ぶとよいでしょう。ご遺体と副葬品を納め、最後に棺の蓋を閉めると納棺は終了となります。
副葬品として入れられるもの
副葬品を入れる際には、亡くなられた方の愛用品などを入れることが一般的です。火葬を行う関係で、副葬品には入れられるものと入れられないものがある点に注意しましょう。
具体的に、入れて問題ない副葬品は下記のとおりです。
- 花
- 菓子(缶やプラスチックの容器からは出す)
- お気に入りの服
- 手紙
- 書籍
- 写真
- 趣味に関するもの(燃やせるもの)
以下のものは、自治体や火葬場によって棺に入れられるか異なります。事前に確認しておきましょう。
- ペースメーカー
- 補聴器
- 大きなぬいぐるみ
- 分厚い書籍
ぺースメーカーや補聴器などの医療器具は、火葬中に爆発する恐れがあります。また、分厚い書籍や大きなぬいぐるみを入れると、酸素不足を起こすケースが起こりえます。
亡くなられた方をお送りするためにも、不安がある場合は事前に確認することが欠かせません。
副葬品として入れられないもの
不完全燃焼を起こす恐れがあるものや有害物質が生じる恐れがあるものは、副葬品として入れられないケースがほとんどです。具体的には、以下のものが該当します。
- アクセサリー
- 腕時計
- ライター
- スプレー缶
- 乾電池緩衝材
- 釣り竿
- ゴルフクラブ
- 総入れ歯
- 眼鏡
- 携帯電話・スマートフォン
- ガラス製品
- 革製品
- ペットボトルなどプラスチック製品
- ビニール製品
- CD・DVD
- お金
- 大きな果物
火葬中に爆発などの事故が起こってしまうと、火葬場のスタッフが怪我をしてしまう恐れがあるので、ライターやスプレー缶を入れるのは危険です。また、ダイオキシンをはじめとした有害物質が生じる可能性があるものを入れるのは、法律上禁止されています。
お金に関しては「三途の川を渡るための小銭」を入れるケースがあります。原則としてお金を燃やすことは法令上禁止されていますが、地域の風習によっては硬貨を入れることもあるため、確認しておくとよいでしょう。
納棺の費用相場
納棺の費用相場は、葬儀社や地域によって差があるものの、おおむね10万円程度です。一連の葬儀を葬儀社に依頼する際には、納棺に関する費用がプランに含まれているか確認しましょう。
葬儀社によっては、湯灌を行う方法で「シャワー式」「浴槽式」などの選択肢を用意していることもあります。また、死装束もいくつかパターンを用意していることもあるため、予算に合わせて選択するとよいでしょう。
納棺は「亡くなられた方を、気分よくお送りするため」の儀式ではありますが、遺族の費用負担が過重になってしまうのは問題です。費用面で気になることがある場合は、きちんと事前に葬儀社へ見積もりを依頼し、確認することが大切です。
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