自宅葬とは?やり方やメリット・デメリット、費用などを詳しく解説

葬儀を自宅で行うことに興味があるけれど、どのように準備をすればよいかわからない方もいるでしょう。

時間の制約を受けずに住み慣れた故人の家から見送れる自宅葬は、近年そのメリットが見直され、増加傾向にあります。とはいえ葬儀を自宅で行うには、レイアウトなどの専門知識が不可欠で、自宅葬を扱う葬儀社の力を借りなければ難しいかもしれません。

今回の記事では、自宅葬のメリット・デメリットや手配の手順、費用などを詳しく解説します。自宅での葬儀を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

1分でわかる!記事の内容
  • 自宅葬とは、故人の自宅で執り行う葬儀のことで、時間の制約を受けずにゆっくりと、住み慣れた家から見送れるのが特徴
  • 広さの制約などを受けるほか準備の負担も大きくなるため、葬儀社に依頼して詳細な打ち合わせを行うことが望ましい
  • 一般の会葬を受けることも可能だが、近年では近親者だけの自宅葬が一般的

自宅葬とは?

自宅葬とは、文字通り故人の自宅で執り行う葬儀のことです。現在では、葬儀といえば専用の斎場などで行われることが一般化してきましたが、かつては自宅で葬儀を行うことは珍しくありませんでした。

少人数の世帯が増えたことや、近所付き合いが希薄になったことなどから減少してきた葬儀の形といえます。

通夜から葬儀・告別式までの基本的な流れは自宅葬でも変わらないものの、葬儀会場として自宅を選択することで、より自由な形での葬儀が可能となります。

自宅で葬儀を行うことは、単に葬儀会場の選択肢の1つというだけに留まらず、さまざま特色を出す意味を持つのです。

自宅葬のメリット

葬儀を行う会場によっても、葬儀のイメージは大きく変わります。葬儀のために設計された専用の斎場は利便性が高い反面、ともすれば画一的な印象を受ける可能性が否めません。

「故人が過ごした家」を会場にする自宅葬には、他の会場では得られないさまざまなメリットが生まれます。

住み慣れた家から見送れる

自宅葬のメリットとして何よりも多くの方があげるポイントが、「住み慣れた家から故人を見送れる」という点です。故人が自宅での葬儀を望むケースも多いといわれます。

故人へのお供えには、「故人が生前に好んだもの」を選ぶ方が多いでしょう。納棺の際には、故人の趣味や嗜好品にちなむものを副葬品として棺に入れる習慣がそれを物語っています。

故人の思い出が詰まった自宅で葬儀を行うことは、故人への追悼としても大きな意味を持つのです。

時間の制約がない

自宅葬では、会場の使用時間に制限がありません。外部の斎場のように終了時刻が定められているわけではないため、ゆっくりと落ち着いて故人を見送れるというメリットがあります。

特に通夜の場では、その影響が顕著です。現在では、夕方から夜にかけて行う「半通夜式」が一般的で、遺族がゆっくりと故人をしのぶ時間が取れない傾向があります。

自宅での通夜では、親しい間柄の方だけで故人を追悼し最後の夜を過ごすという、本来の形で行えるのです。

会場の費用がかからない

葬儀会場として自宅を利用すれば、基本的に会場費がかかりません

民間の斎場を利用した場合の使用料は、人数にもよるものの10万円~20万円程度が目安です。公営斎場でも5万円程度の支出は見込まなければなりません。

会場費は葬儀費用の中でも比較的大きなウエイトを占めますから、この支出がなければ、全体としての費用の抑制につながります。

自宅葬のデメリット

自宅で葬儀を行うことでさまざまメリットが生まれる反面、同時にデメリットも生じます。広さの制約があることに加え、近隣住民への配慮などのハードルをクリアしなければなりません。

自宅葬を検討するのであれば、デメリットもしっかりと把握しておきましょう。

参列者数が限られる

自宅葬のデメリットとしてまず考えておくべきは、自宅の広さに応じて参列者数が限られるという点です。

葬儀を行うためには、祭壇の設置や遺体の安置などで一定のスペースが必要です。これに加えて参列者が座る場所などの空間を確保する必要があるため、ある程度の広さがなければなりません。

自宅葬は一般の参列者も招いて行われるケースもありますが、これは広さに余裕がある場合に限られます。特に都市部で自宅葬を行う場合には、近親者だけの限られた人数で行う葬儀のほうが適しているといえるでしょう。

近隣トラブルのリスクがある

葬儀会場には、独特の雰囲気が生まれます。焼香の匂いが漂い、僧侶の読経の声や木魚の音などが周囲にも聞こえる可能性があるからです。このような葬儀独特の匂いや音を気にする方も、決して少ないとはいえません。

自宅で葬儀を行う際には、事前に近隣の方に挨拶をして、事情を説明することが不可欠です。

また一般の参列者を受け入れる葬儀では、多くの方が集まること自体にも配慮しなければなりません。

特に参列者が自家用車で来場することが想定される場合には、路上駐車などでトラブルが生じることがないよう、近隣の駐車場などを確認しておくことも必要です。

準備などの負担がある

自宅葬を取り扱っている葬儀社に委託すれば、葬儀全般の運営は任せられますが、それでも葬儀に要する準備の負担は外部の斎場を利用するよりも大きくなりがちです。

会場として利用するスペースを確保するために家具を移動したり、扉などを外したりといった作業が必要になるケースが多いからです。

葬儀専用に作られた斎場は、祭壇の設営や参列者の動線などを考慮して設計され、利便性が高く作られています。自宅葬は利便性をある程度犠牲にするため最低限の準備でよいものの、負担としては大きくなる可能性が否めないのです。

自宅葬の手配

自宅で行う葬儀であっても、葬儀社が提供している自宅葬のプランを利用することが現実的です。葬儀社に依頼せずにご自身で行うという選択肢もありますが、この場合はさらに負担が大きくなります。

遺体の搬送に必要な霊柩車や会場に設置する祭壇・棺、遺体安置のためのドライアイスなどをご自身で用意しなければならないからです。

葬儀社への依頼を前提に、自宅葬の手配の流れをみていきましょう。

葬儀社との打ち合わせ

自宅葬を葬儀社に依頼する場合には、一般的な斎場を利用する際に必要な打ち合わせに加え、自宅のスペースに応じた最適な形式を決める詳細な確認が必要です。

具体的には、祭壇の有無や設置する場合の大きさ、棺の搬送ルートの確認、会食の有無や形式などが挙げられます。

自宅葬に合わせた、葬儀社おすすめのプランを用意しているところに依頼するとよいでしょう。

打ち合わせでは、火葬場の空き状況や僧侶の都合などを考慮して葬儀日程を決め、参列者数に応じて会場のレイアウトなどを検討します。葬儀の流れや祭壇・棺のグレードなどの詳細に関しては、提示されたプランをもとに必要な項目をオプションで加えればよいでしょう。

葬儀の打ち合わせや形式の決定は喪主の役目です。葬儀費用にも影響を及ぼすため、ご自身の予算を正確に把握して打ち合わせに臨みましょう。

僧侶などの手配

菩提寺(ぼだいじ)がある場合には、葬儀を行う旨の連絡をできるだけ早めに入れなければなりません。僧侶の都合を確認したうえで、葬儀日程を調整する必要があるからです。

僧侶には、読経や戒名授与を依頼します。「どの場面で読経をお願いするか」についても細かく打ち合わせをしなければなりません。例えば通夜と葬儀だけでなく、火葬場での読経をお願いしたい場合などは、事前に伝えておきましょう。

菩提寺がないときは、ご自身の宗旨・宗派に基づいてお寺を探します。どこに依頼すべきかわからない場合には、葬儀社で相談することも可能です。

自宅での準備

葬儀の日程や形式が決まったら、それに合わせて自宅での準備を行いましょう。会場とする部屋のスペースや、棺の搬送ルートにあたる通路を確保することが必須です。

場合によってが家具などを移動しなければならないほか、引き戸などを外しておく必要が生じます。当日になって不都合が生じることがないよう、打ち合わせの際に間取り図をもとに葬儀社に相談しておきましょう。

自宅葬で注意するポイント

自宅葬では、その他の会場で行う場合には気にする必要がないポイントにも注意を払わなければなりません。

葬儀を円滑に進めるために押さえておかなければならない注意点を解説します。

祭壇を設営するスペース

祭壇とは、葬儀場の正面に据えられた、遺影や仏具、お供え物を飾る壇のことです。葬儀の象徴的な位置づけで、故人の供養のために設けるとされています。

広さの制約がある自宅葬では、あまり大きな祭壇は使えません。祭壇を設営するためのスペースを確認したうえで、適切なサイズのものを選択することが必要です。

また、祭壇を使わないという選択肢もあり得ます。特に近親者だけで自宅葬を行う場合には、祭壇を設けないことで広さに余裕ができるだけでなく、親密な葬儀を行えるというメリットも生じるからです。

葬儀の象徴となる祭壇がない葬儀では、故人の棺、遺体に向かって手を合わせる形となります。ごくごく身近な家族や親しかった友人で見送る葬儀では、むしろ故人とは別の象徴を設けないという選択肢も好まれるのです。

棺が通る動線

自宅葬で問題となりがちなのが、棺が通る動線の確保です。

棺の大きさは故人の体格に応じて異なりますが、一般的なサイズでも長さ180センチ、幅60センチ程度です。通常は複数人で運びますから、その空間も考慮して必要な間口を確保しなければなりません。

人の手で運ぶことが難しい場合にはストレッチャーを利用することもありますが、それでも移動するには相応の間口が必要です。また、動線上の段差などにも注意しなければなりません。

マンションは管理規約を確認

一般的に自宅葬が行われるのは一戸建ての住宅が多いですが、マンションなどの集合住宅でも不可能ではありません。ただしこの場合には、事前に管理規約などを確認することが不可欠です。

規約によって集会などが禁止されているケースもあり、葬儀ができない可能性もあるからです。規約に目を通してもわからない場合には、管理会社などに連絡をして確認しておきましょう。

棺の出入りにエレベーターを利用する場合には、かごの大きさも確認します。

通常の状態では奥行きが足りないケースでも、長尺の荷物の搬入を想定したスペース確保の扉が付いているエレベーターなどでは、利用できる可能性があります。

自宅葬の費用

葬儀に要する費用は、参列者の人数や葬儀形式によって大きく異なります。自宅葬は会場の費用が必要とされないほか、参列者数が限られるケースが多いことから、費用を抑えられる傾向が強い形式です。

とはいえ、葬儀自体が比較的大きな出費を伴うものであることは否めません。自宅葬に要する費用についてもしっかりと把握しておきましょう。

葬儀そのものの費用は抑えられる 

自宅葬の費用相場は、40万円~60万円程度といわれ、一般的な葬儀費用の相場といわれる150万円~200万円と比較すると大幅に費用が抑えられるといえます。

会場費が削減できるほか、広さの制約から多くの参列者を招かないケースが多く、通夜振る舞いなどの会食を省略する場合が多いことも費用を抑えられる理由です。

お布施などは変わらない

会場費がかからないことや参列者数が少なくなることで、葬儀全般の費用が抑えられる一方で、僧侶などに対するお礼、つまりお布施の金額は自宅葬でも変わりません

お布施は僧侶による読経や戒名授与に対するお礼として支払うもので、通夜から告別式までを依頼した場合の相場は20万円~50万円程度といわれます。

参列者の数や会場などによる影響を受けないため、一般葬と同様の費用を見込んでおかなければなりません。

自宅葬に関するよくある質問

自宅葬に興味があるけれど、実際に行うには不安があるという方もいるかもしれません。ここで自宅葬に関するよくある質問を確認して、疑問を解消しておきましょう。

それでもなお不明な点がある場合は、自宅葬のプランを提供している葬儀社などに直接質問してみることをおすすめします。

葬儀社なしで火葬はできる?

葬儀社を通さずに自宅葬を行っても、火葬場の利用に関して問題が生じることはありません。火葬場に併設された公営斎場など一部のケースを除いては、基本的に葬儀社と火葬場の運営主体が異なるからです。

葬儀費用に火葬料が含まれているケースでも、単に葬儀社に費用を預けて火葬場に支払う仕組みであることが大半です。ご自身で直接火葬場の予約を取り、費用を支払えば問題ありません。

ただし、自宅から火葬場へ遺体を搬送する際には、霊柩車が必要です。火葬場だけでなく、これに付随して必要となるものの手配を忘れずに行う必要があります。

家族葬は通夜なしでもいい?

家族葬とは近親者だけで行う小規模な葬儀を指しますが、通夜なしで行うことも可能です。一般の参列者を迎えないため、比較的自由な形式で行いやすい葬儀形式といえます。

自宅葬も、広さの制約などから家族葬として行われることが多く、通夜を省略するなど葬儀の流れを変更することに対しても基本的には制限がありません。

ただし、宗教上の教えから定められた儀式を省くことで、お墓に入れなくなる可能性も生じます。菩提寺があるご家庭など、入るお墓が決まっているケースでは、あらかじめお寺に相談しておくことが不可欠です。

友人の自宅葬に参列していい?

自宅葬であっても、必ずしも参列者を制限するとは限らず、一般の会葬を受けるケースもあります。また、親しかった友人の葬儀であれば、家族葬に招かれる可能性もあるでしょう。

ただし訃報を受けた段階で、遺族が会葬を辞退する意思を示しているときは、参列してはいけません。判断が付きかねる場合には、遺族や葬儀社に参列の可否を確認してみるとよいでしょう。

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