相続税路線価とは?図の見方や調べ方、計算方法など解説

相続税の計算をするときに、相続税路線価とは何かがわからず困っていませんか?

相続税路線価を理解できればご自身で土地を評価できるため、相続税対策や納税資金の準備をしやすくなります。

今回は、相続税路線価とは何かを解説するとともに、計算方法や調べ方をご紹介します。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続税路線価とは、相続税を計算する際に用いる土地の評価額
  • 相続税路線価は、国税庁ホームページや全国地価マップで確認できる
  • 相続税路線価を計算するときは、路線価補正によって評価額を加算・減額する

相続税の路線価とは?

「路線価」とは道路に面している土地の評価額のことで、「相続税路線価」は相続税を計算する際に用いる路線価を指します。

相続税路線価が必要になるのは、相続で取得した土地や敷地権に係る相続税を計算するときです。相続財産の中に自宅や事業所などの土地が含まれる場合は、相続税路線価を用いた評価額の計算が必要です。

固定資産税路線価との違い

路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があります。

固定資産税路線価とは、固定資産税を算出する際に基準となる土地単価です。どちらも公示価格を基準に評価額が決まる点は同じですが、下表のとおり異なる点があります。

相続税路線価固定資産税路線価
求められる評価額相続税評価額固定資産税評価額
単位1,000円単位1円単位
根拠となる税金相続税
贈与税
固定資産税
都市計画税
登録免許税
不動産取得税
評価主体国税庁市区町村(東京23区は東京都)
評価の頻度毎年3年に1回
価格時点毎年1月1日基準年(3年ごと)の1月1日
公表時期毎年7月ごろ基準年の4月ごろ
価格水準公示価格の80%程度公示価格の70%程度

相続税路線価は国税庁(国)が設定するのに対して、固定資産税路線価は市区町村が設定します。

価格を公表するタイミングや評価頻度もそれぞれ異なります。相続税路線価は毎年評価し直されますが、固定資産税路線価は3年に1度しか評価されません。

相続税路線価は毎年7月に公表されるため、相続の発生時期によっては、最新年度の路線価が公表されるのを待つ必要があります。例えば2023年3月1日に相続が発生した場合、2023年7月に公表される相続税路線価を使って計算します。

相続税路線価は相続税申告をする年度ではなく、相続が発生した年度の路線価を使う点に注意しましょう。

公示価格・実勢価格との違い

公示価格とは、土地売買の指標となる価格です。国土交通省が毎年、全国約2万6,000地点にある標準地の価格調査を行っており、相続税評価額や固定資産税評価額の基準になっています。

実勢価格とは、実際に売買取引される相場水準の価格です。公示価格と同水準ですが、売主と買主の当事者同士で決定されるため、相場から離れた価格で決まることもあります。

 相続税路線価公示価格実勢価格
使用時相続税
贈与税
相続税
固定資産税
不動産売買
評価主体国税庁国土交通省売主と買主
不動産会社
不動産鑑定士
評価の頻度毎年1月1日毎年1月1日取引の都度

相続税評価額を計算する際に、公示価格や実勢価格を基準にすると高くなるので、必ず相続税路線価を使いましょう。

相続税路線価の調べ方

相続税路線価の調べ方は複数ありますが、ここでは代表的な3つの方法をご紹介します。

国税庁のホームページで確認

相続税路線価は、国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で確認できます。 

まずは国税庁ホームページにアクセスし、以下の流れで該当土地の路線価図を探しましょう。

  1. 相続が発生した「年度」を選択
  2. 「都道府県」を選択
  3. 財産評価基準書目次の「路線価図」を選択
  4. 「市区町村」を選択
  5. 「地名」から「路線価図ページ番号」を選択
  6. 路線価図を確認

直近7年分の路線価図を確認できるので、 被相続人が亡くなってから相続税申告までに年をまたいだときは、死亡した年の路線価図を使いましょう。

全国地価マップで確認

一般財団法人資産評価システム研究センターが提供する「全国地価マップ」でも確認できます。

公的機関が作成したものではありませんが、操作性が優れており、市区町村または郵便番号を入力するだけで路線価を確認できます。固定資産税評価や公示価格もチェックできるため、他の評価方法による価格もまとめて確認したいときに便利です。

全国地価マップでは、以下の流れで路線価をチェックできます。

  1. 「全国地価マップ」にアクセス
  2. 「相続税路線価等(紫)」を選択
  3. 「郵便番号」や「住所の一部」を入力
  4. 検索結果から該当する土地を選択
  5. 「相続(紫)」のタブから「該当年度」を選択

PC版とスマホ版があるので、好きなほうにアクセスしましょう。ただし、相続税路線価の公表直後は最新版が反映されていないこともあるので注意が必要です。確実な情報を知りたいときは、国税庁ホームページで確認しましょう。

税務署等で確認

相続税路線価は、全国の国税局・国税事務所・税務署でも確認できます。インターネットで閲覧できない方は、最寄りの税務署で確認するとよいでしょう。

また、国立国会図書館では1953年以降の相続税路線価を公開しています。国税庁ホームページに記載されていない過去の路線価を確認したいときは、国立国会図書館「リサーチ・ナビ」にアクセスしましょう。

相続税路線価図の見方

調べたい土地の路線価図を見るときは、土地に面した道路に記載されている「数字」「アルファベット」「図形」の3つを確認します。

数字1平方メートルあたりの土地の価格
(1,000円単位)
アルファベット借地権割合
道路の図形土地の地区区分

地図に記載のある数字を1,000倍したものが路線価です。例えば「200」の場合、この道路に面している土地1平方メートルあたりの価格は20万円になります。

アルファベットは借地権割合を表しており、AからGまで以下のように設定されています。

アルファベット借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

借地権割合とは、土地の貸主と借主の権利の割合です。借地権割合が大きいほど借り手の権利も大きくます。土地を借りている場合は相続対象となり、土地を貸している場合は借地権割合に応じて相続税の評価額を減額できます。

なお、自身が所有する土地に自身で建物を建てて住んでいる場合は、借地権割合を加味する必要はありません。

円や四角形などの図形は、道路に接する土地の地区区分を表します。図形がなく「← →」だけの記載であれば、その土地の地区区分は「普通住宅地区」となります。

相続税路線価による土地の評価額の計算方法

相続財産に土地がある場合は、相続税路線価から土地の評価額を計算する必要があります。

実際に支払う相続税がいくらになるかを、以下のケースをもとに計算してみます。

土地の条件 路線価:250E(25万円)
面積:300平方メートル
他の相続財産 預貯金:5,500万円
相続人 妻と子2人
相続割合 妻:1/2
子:1/4ずつ(法定相続分どおり)

路線価から土地の相続税評価額を計算

相続税路線価による土地の評価額(補正なし) を、以下の計算式で算出します。

  • 土地の評価額=1平方メートルあたりの路線価×土地の面積(平方メートル)

まずは財産ごとに相続税評価額を計算し、遺産総額を求めましょう。預貯金は現在の残高がそのまま評価額になります。

  • 土地の相続税評価額:25万円×300平方メートル=7,500万円
  • 遺産総額:7,500万円+5,500万円(預貯金)=1億3,000万円

遺産総額を算出したら、基礎控除(相続税の非課税枠)がいくらになるか計算します。

  • 基礎控除=3,000万円+(600万円×相続人の数)

遺産総額から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を求めます。

相続人が妻と子2人の場合
  • 基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
  • 課税遺産総額:1億3,000万円(遺産総額)-4,800万円(基礎控除)=8,200万円

相続税の速算表から相続税の総額を計算

課税遺産総額を相続割合で分け、各人の課税額を算出します。

各人の課税額
  • 妻:8,200万円×1/2=4,100万円
  • 子A:8,200万円×1/4=2,050万円
  • 子B:8,200万円×1/4=2,050万円

次に、各人の課税額に相続税の税率を乗じて相続税の総額を算出します。課税遺産総額に応じた税率は、以下のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

上記の表から、それぞれの課税額に応じた税率と控除額を適用し、相続人の税額を合計したものが相続税の総額になります。

相続税の総額
  • 妻:4,100万円×20%-200万円=620万円
  • 子A:2,050万円×15%-50万円=257万5,000円
  • 子B:2,050万円×15%-50万円=257万5,000円
  • 相続税の総額:620万円+257万5,000円+257万5,000円=1,135万円

相続割合から各相続人の相続税を計算

相続税の総額を相続割合で分けて、各人の相続税を計算します。

下記金額が、実際に支払う相続税の内訳です。

実際に支払う相続税の内訳
  • 妻:1,135万円×1/2=567万5,000円
  • 子A:1,135万円×1/4=283万7,500円
  • 子B:1,135万円×1/4=283万7,500円

土地の状況に合わせた路線価補正の種類

土地は正方形や長方形などの整った形ばかりではなく、使いにくい形状もあります。土地としての利用価値が低い場合は、路線価補正をして評価額を減額します。

補正がある場合の土地評価額は、以下のとおりです。

  • 土地の評価額=路線価×土地の面積×補正率

補正は複数適用しても問題ありません

ここでは、路線価補正を6種類ご紹介します。

奥行価格補正

奥行価格補正とは、標準的な土地と比較して「奥行きが長い」または「奥行きが短い」場合に適用する補正です。

例えば、同じ100平方メートルの土地でも土地A(10m×10m)と土地B(20m×5m)では、土地Bの奥行きが長くて宅地としての利用価値が低いため、補正を行います。

奥行価格補正率は、以下のように「奥行距離」や「地区区分」により異なります。

奥行距離
(メートル)
ビル街地区高度商業地区繁華街地区普通商業・併用住宅地区普通住宅地区中小工場地区大工場地区
4未満0.800.900.900.900.900.850.85
4以上6未満0.920.920.920.920.900.90
6以上8未満0.840.940.950.950.950.930.93
8以上10未満0.880.960.970.970.970.950.95
16以上20未満0.931.001.001.001.000.990.99
36以上40未満0.980.940.950.921.001.00
56以上60未満1.000.970.860.870.87
76以上80未満0.920.810.820.830.96
96以上100未満0.970.820.800.800.810.90
100以上0.950.800.80

不整形地補正

不整形地補正とは、土地が台形や三角形などの「いびつな形状」にかかる補正です。土地が四角い形状でも、道路に斜めに接していれば不整形地補正が行われます。

不整形地補正率は「土地の地区区分」「地積区分」「がけ地割合」によって定められています。

地区区分高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区普通住宅地区
地積区分ABCABC
がけ地割合
10%以上0.990.991.000.980.990.99
15%以上0.980.990.990.960.980.99
20%以上0.970.980.990.940.970.98
25%以上0.960.980.990.920.950.97
30%以上0.940.970.980.900.930.96
35%以上0.920.950.980.880.910.94
40%以上0.900.930.970.850.880.92
45%以上0.870.910.950.820.850.90
50%以上0.840.890.930.790.820.87
55%以上0.800.870.900.750.780.83
60%以上0.760.840.860.700.730.78
65%以上0.700.750.800.600.650.70

がけ地割合とは土地の不ぞろいな部分の割合で、「(想定整形地の面積-不整形地の面積)÷想定整形地の面積」で求めます。

間口狭小補正

間口狭小補正とは、道路に接する土地の「間口が狭い」場合に行う補正です。

少し奥まった場所に適用されるケースが多く、特に中小工場地区や大工場地区では土地評価額を最大2割減額できます。

間口狭小補正率は「間口距離」と「土地の地区区分」によって異なります。

間口距離
(メートル)
ビル街地区高度商業地区繁華街地区普通商業・併用住宅地区普通住宅地区中小工場地区大工場地区
4未満0.850.900.900.900.800.80
4以上6未満0.941.000.970.940.850.85
6以上8未満0.971.000.970.900.90
8以上10未満0.951.001.000.950.95
10以上16未満0.971.000.97
16以上22未満0.980.98
22以上28未満0.990.99
28以上1.001.00

奥行長大補正

奥行長大補正とは、「間口の広さに対して奥行が長い」場合に適用する補正です。奥行きが間口の2倍以上になると奥行長大補正が適用され、最大1割の評価額を減額できます。

奥行長大補正率は、「奥行の長さと間口の幅の割合」と「土地の地区区分」によって異なります。

奥行距離間口距離ビル街地区高度商業地区繁華街地区普通商業・ 併用住宅地区普通住宅地区中小工場地区大工場地区
2以上3未満1.001.000.981.001.00
3以上4未満0.990.960.99
4以上5未満0.980.940.98
5以上6未満0.960.920.96
6以上7未満0.940.900.94
7以上8未満0.920.92
8以上0.900.90

がけ地補正

がけ地補正とは、「土地の一部が崖や斜面」の場合に適用する補正です。崖や斜面を含む土地は建物を建てにくいため、評価額が下がります。

がけ地補正率は、「(土地の総面積における)がけ地面積の割合」と「がけ地がある方位」によって異なります。

がけ地地積総地積西
0.10以上0.960.950.940.93
0.20以上0.920.910.90.88
0.30以上0.880.870.860.83
0.40以上0.850.840.820.78
0.50以上0.820.810.780.73
0.60以上0.790.770.740.68
0.70以上0.760.740.70.63
0.80以上0.730.70.660.58
0.90以上0.70.650.60.53

がけ地割合は、崖のある土地の方位と「崖部分の面積÷全体の面積」で求めます。

接道状況に応じた加算補正の種類

土地の利便性が高い場合には、「加算補正」を適用して評価額を上げます。

路線価の加算補正には、「側方路線影響加算」と「二方路線影響加算」の2種類があります。

側方路線影響加算

側方路線影響加算は、「土地の正面と側面に道路が接している」場合に適用する補正です。

側方路線影響加算率は「角地」と「準角地」によって異なります。


地区区分
加算率
角地の場合準角地の場合
ビル街地区0.070.03
高度商業地区、繁華街地区0.100.05
普通商業・併用住宅地区0.080.04
普通住宅地区、中小工場地区0.030.02
大工場地区0.020.01

1平方メートルあたりの路線価の計算式は以下のとおりです。

  • 正面路線の路線価+側方路線の路線価×側方路線影響加算率

側方路線影響加算率は、路線価が高いほう(正面路線)ではなく、路線価が低いほう(側方路線)にかける点に注意しましょう。

二方路線影響加算

二方路線影響加算とは、「土地の正面と裏面が道路に接している」場合に適用する補正です。

二方路線影響加算率は「土地の地区区分」によって異なります。

地区区分加算率
ビル街地区0.03
高度商業地区、繁華街地区0.07
普通商業・併用住宅地区0.05
普通住宅地区、中小工場地区、大工場地区0.02

1平方メートルあたりの路線価の計算方法は以下のとおりです。

  • 正面路線の路線価+裏面路線の路線価×二方路線影響加算率

路線価が高いほうの道路を「正面路線」、低いほうの道路を「裏面路線」として、裏面路線に加算率をかけます。どちらの道路を正面路線にするかを間違えると、税額が大きく変わるので注意しましょう。

複数の道路と接しているときは、二方路線影響加算率と側方路線影響加算率を組み合わせて計算します。

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