葬儀社の選び方のポイントは?葬儀社の見極めで気を付けることを解説

近親者が亡くなって葬儀の手配をしなければならないとき、どのように葬儀社を選べばよいかわからない方もいるでしょう。葬儀社を選ぶ機会は、何度も訪れるものではなく、誰かに聞く機会も多くありません。

遺族の希望に沿った葬儀を行おうとする葬儀社は、見積もりの形式や質問に対する回答などに、それがおのずと現れてくるものです。優良な葬儀社であれば、遺族の不安を理解して、それを解消しようと努めているからです。

今回の記事では、葬儀社を見極める際に気を付けるべきことを解説します。葬儀社の選び方に不安を抱えている方は、ぜひ最後までお読みください。

1分でわかる!記事の内容
  • 葬儀社とは、葬儀に関するさまざまな業務を一貫して行ってくれる会社
  • 葬儀には、専用の機材とともに専門知識が不可欠
  • 契約を急かす葬儀社には要注意

葬儀社とは

葬儀社とは、葬儀場の手配から会場の設営、式の運営に至るまで、葬儀に関するさまざまな業務を行ってくれる会社のことです。葬儀屋などとも呼ばれます。

葬儀を行ううえでは、祭壇や棺を始めとする設備や道具なども、知識を含む人的なサービスも、極めて専門性の高いものが必要とされます。葬儀社は、これらを一貫して提供するサービス業の1つです。

経済産業省がまとめた「特定サービス産業動態統計調査」によると、日本国内で葬儀業を扱う事業所は2022年現在で2,786社でした。2021年には2,692社、2020年には2,544社でしたから、年々増加している状況が伺えます。

葬儀社が増加している背景には、もちろん需要の増加があるでしょう。一方で、葬儀業を始めるには、資格や許認可などを必要としない点も考慮に入れなければなりません。

参入障壁が低い業種であることは、ともすれば会社ごとの格差が大きくなりがちです。つまり葬儀を依頼する際には、その会社を見極めなければならないことを意味しています。

参考:経済産業省-特定サービス産業動態統計調査

葬儀社の種類

葬儀社は、主に「葬儀専門業者」「冠婚葬祭互助会」「協同組合」「仲介業者」の4種類に分類されます。

いずれも葬儀一式のサービスを提供しているものの、費用の面や利用者の制限などが異なり、その事業者を選ぶべきかは一概にはいえません。

それぞれの特徴を把握して、ご自身にあった葬儀社を選びましょう。

葬儀専門業者

一般的にイメージされる葬儀社が、葬儀を専門に扱っている葬儀専門業者です。葬儀を行う斎場や遺体を搬送する霊柩車などを自社で保有していたり、これらの専門業者と提携していたりする形で、葬儀に関するすべてのサービスをワンストップで提供している業者と考えればわかりやすいでしょう。

葬儀を専門的に扱っているため、宗旨・宗派に応じた葬儀のしきたりなどにも詳しいスタッフが在籍しているケースが多いのも特徴です。

互助会

互助会とは、いわば会員制の冠婚葬祭サービス事業者のことを指します。

毎月一定の掛け金を積み立てていき、葬儀の際の費用にあてる仕組みのサービスで、葬儀だけでなく結婚式などを含めたすべての冠婚葬祭の行事を扱っているのが一般的です。

前払いで費用を積み立てることで割引が適用され、通常の費用よりも負担が少なくなるなどのメリットが生じます。

ただし、積立金で提供される葬儀は基本的な内容のものであることが多く、ご自身の希望するグレードに合わせると追加料金が発生することも少なくはありません。追加の費用が必要になる可能性があることは、心に留めておきましょう。

協同組合

農業協同組合(JA)や生活協同組合(生協)などの協同組合も、葬儀サービスを提供している事業者の1つです。

組合員となることでさまざまなサービスを安価に利用できる仕組みですから、葬儀社に直接依頼するよりも低価格で利用できる可能性が生じます。

基本的には組合員に対するサービスの一環であり、組合員以外が利用できるとは限りません。ただし、正規の組合員よりも要件が緩和された準会員のような形で利用できる可能性もあり得ます。

これらの組合が提供しているサービスは葬儀がメインではありませんから、地域のJAや生協が葬儀事業を行っているかの確認も必要です。

仲介業者

葬儀仲介業者とは、自社で葬儀を行うのではなく、提携している葬儀社の紹介をサービスとして提供している業者のことです。

利用者を提携先に紹介することで、実際に葬儀を行う葬儀社から仲介手数料を受け取る仕組みで、葬儀社に対して集客・営業のサービスを提供している会社ともいえます。

全国に3,000社近い数が存在する葬儀社ですが、当然すべての会社にブランド力があるわけではありません。利用者がインターネットで検索して葬儀社を選ぶとしたら、大手企業のネームバリューに対抗するのが難しい可能性もあるでしょう。

仲介業者はブランド力に劣る葬儀社を利用者につなぐ事業といえ、利用者側からみれば、大手企業に限らずに選択の幅が広がるなどのメリットがあります。

葬儀社の選び方のポイント

葬儀社を選ぶ際には、注意すべきいくつかのポイントが存在します。

特に時間のない中で葬儀社を決める場合、希望通りの葬儀が行えなかったり、想定していた予算を大幅に上回ったりというトラブルが生じる懸念も否めません。

しっかりとポイントを押さえて葬儀社を選びましょう。

費用の見積もりを明確に提示してくれる

葬儀費用の見積もりは、一般の方にはわかりづらい項目が少なくありません。このため明確な見積もりを提示してくれる葬儀社を選ぶことが大切です。

「提示されたプランの料金に何が含まれているのか」「参列者などの要因で変動する可能性がある項目は何か」など、詳細な補足説明をしてくれるという視点で選ぶのもよいでしょう。

葬儀の見積もりは、遺族が希望する規模や形式に則したパッケージプランで提示されるのが一般的です。とはいえ提示される項目は、葬儀社ごとに異なります。使用される祭壇や棺のグレードも、見積もりではわからないケースもあり得ることです。

予算を正確に把握するだけでなく、納得のいく葬儀を行ううえでも、明確な見積もりを提示してくれる葬儀社をおすすめします。

希望の葬儀形式に対応している

葬儀の形式が多様化し、以前から行われている一般葬だけが選択肢ではなくなりました。故人や遺族が希望する葬儀形式に対応している葬儀社を選ぶことも大切な基準です。

例えば「自宅で葬儀を行いたい」というケースでは、斎場で行うのとは違い、会場の設営や葬儀の運営にさまざまな制約が加わります。

使い慣れた斎場を利用する葬儀であれば高い品質のサービスを提供する葬儀社であっても、条件の異なる自宅葬には対応できないかもしれません。

葬儀社に相談する際には、「どのような形の葬儀を行いたいか」という希望を、ある程度明確にしておくことも必要です。

支払い方法を選べる

葬儀を行うには、決して少なくない費用を伴います。現金一括での支払いだけでなく、「クレジットカードや葬儀ローンの利用などに対応してくれる」という点も、選択の際に考慮するべきポイントです。

葬儀費用の相場は150万円~200万円程度といわれます。すぐに現金で用意することが、難しいケースもあるでしょう。すべての費用を葬儀社に支払うわけではないですが、葬儀社に支払う葬儀一式の費用は大きな割合を占める支出です。

葬儀社によっては、提携している信販会社の葬儀ローンなどを紹介してくれます。葬儀社での打ち合わせの際に申し込みができれば、時間的な余裕のない葬儀の準備では大きなメリットとなります。

契約を急かさない

葬儀社の選択の際に特に注意が必要といえるのが、契約を急かす葬儀社です。検討の余地を与えない葬儀社は、あまりおすすめできません。

葬儀社の見積もりを一目見て、その内容を正確に理解することは簡単ではありません。詳細な項目に関しては、家族と相談して決めたいケースもあるでしょう。葬儀社のスタッフであれば、そのような遺族の気持ちを理解しているはずです。

であるにも関わらず契約を急かすケースは、「他社との比較を避けたい」という意図がある可能性も否めないでしょう。

葬儀社を選ぶタイミング

葬儀社を選ぶタイミングは、逝去後が一般的です。とはいえこれは、最適解とはいえません。

生前予約などの選択肢も知っておけば、よりご希望に沿った葬儀が行える可能性が高まります。

生前に選ぶ場合

ご本人が亡くなってから遺族の方が葬儀社を選ぶのが一般的ですが、本人が存命中に自ら葬儀の内容や依頼する葬儀社を検討することもできます。

逝去後に予約していた内容の葬儀を行ってもらう「生前予約」を取り扱う葬儀社も多くありますから、本人がご家族とともに生前に葬儀社を選ぶのは有効な選択肢です。

本人が亡くなったあとに遺族が葬儀の準備をする場合、時間的な制約が厳しい中で葬儀社を選ぶ必要があります。故人が希望する葬儀の形も、遺族に正確に伝えられているかはわかりません。

本人がご家族とともに葬儀の形を決め、葬儀社を選んでおけば、希望に沿った葬儀の実現につながるうえ、遺族の負担を大幅に軽減できるのです。

逝去後に選ぶ場合

逝去後に葬儀社を選ぶ場合には、遺体を安置する前に依頼するか、安置後に依頼するかを意識しておくことが大切です。

病院などで亡くなった場合、霊安室に遺体を安置できる時間は限られています。すぐに葬儀社を手配して、自宅や葬儀場の安置室に移送しなければならないケースもあるでしょう。

この場合、複数の葬儀社を比較するどころか、病院から紹介を受けた葬儀社以外には選択肢がないとも考えてしまいがちです。

慌てて決めるのではなく、「まずは搬送だけを依頼する」という選択肢があることを知っておきましょう。

葬儀社選びで準備すること

葬儀社を選ぶ際には、葬儀の際に必要となるものを、遺族が把握しておかなければなりません。

依頼先を決めたあとに急いで用意するのではなく、葬儀社選びと並行して事前に準備を進めましょう。

宗旨・宗派を確認する

葬儀の準備を進めるにあたっては、故人の宗旨・宗派を確認しておかなければなりません。僧侶の読経や戒名授与を依頼する場合には、これらの情報が不可欠だからです。

僧侶の手配は葬儀社とは別に、ご自身で行うケースも多いです。しかし、先祖代々のお墓がある菩提寺(ぼだいじ)との付き合いがなければ、故人の宗教がわからないケースも少なくありません。

日本で最も多く営まれているのは仏式の葬儀ですが、仏教にもさまざまな宗派が存在します。このため、宗派までをしっかりと把握しておかなければならないのです。

葬儀形式・規模を決める

葬儀形式や規模によって、葬儀の印象は全く変わります。「どのような形で故人を見送りたいか」という希望は、しっかりと葬儀社に伝えなければならない項目です。

それによって葬儀費用も異なりますから、予算も踏まえたうえで決めなければなりません。

親族だけでなく仕事の関係者や近隣の方などの参列を受ける一般葬と、身近な家族だけで執り行う家族葬では、葬儀の主旨すらも異なります。

多くの方の追悼を受けて盛大に見送りたいのであれば前者が、近親者だけで落ち着いて見送りたいのであれば後者が適切な選択肢です。

遺影を準備する

葬儀社を選択するのと並行して、祭壇に飾る遺影を準備しておきましょう。明るく鮮明な写真で、故人の人柄がわかるような自然な表情のものがよいでしょう。故人が気に入っていた写真があるのなら、それを使うのもよい選択です。

遺影写真は「あまり若すぎないものを」ともいわれますが、一方で「元気なころの写真を使いたい」というご家族は少なくありません。

年齢に固執しすぎるよりも、表情のよさなどを優先する選び方もよいでしょう。

死亡診断書・死体検案書を準備する

葬儀を行うためには、市区町村に死亡届を提出するとともに、火葬(埋葬)許可申請を行い許可を受けなければなりません。

この手続きは葬儀社で代行してもらえるケースが多いですから、葬儀社に依頼する際に死亡診断書(死体検案書)を準備しておきましょう。

死亡診断書・死体検案書は、いずれも人が亡くなったことを医学的・法律的に証明する書類です。

同一の書式ですが、病院などで亡くなった場合に発行される書類が死亡診断書、自宅などで亡くなった場合に警察が発行する書類が死体検案書という違いがあります。

葬儀社の選び方に関するよくある質問

葬儀社を選ぶ機会は、何度も訪れるものではありません。それだけに、実際にその場にならなければわからない項目が多くなりがちです。

誰かに聞く機会にも恵まれにくいものですから、葬儀社の選び方に関するよくある質問をチェックして、できるだけ疑問を解消しておきましょう。

葬儀社に心付けは必要?

心付けは対価を支払ったうえで、さらにお礼の気持ちとして渡すものですから、必ずしも必要なものではありません。心付けとは、葬儀社のスタッフなどにお礼の気持ちとして渡すお金のことです。

もともとの葬儀は近隣の方などの協力で行っていましたから、手伝ってくれた方に心付けを渡すのが一般的でした。

現在は葬儀社に対して費用を支払ってサービスの提供を受けているため、欧米的な感覚でいうところのチップと同じ位置づけと考えればわかりやすいでしょう。

特にお世話になった、丁寧に対応してくれたことに対するお礼の気持ちを示したい場合に限って渡せばよいでしょう。

ただし、葬儀社では心付けの受け取りを禁じている会社もみられます。その場合には、無理に渡すのは控えましょう。

搬送だけを頼んでもよい?

病院で亡くなった場合には、早急に遺体を搬送しなければならないケースが生じます。この場合には、搬送だけを依頼することも可能です。

葬儀を依頼する葬儀社が決まっている場合には、遺体の搬送もその葬儀社が行うのが一般的ですが、決まっていない場合には、慌てて決める必要はありません。

葬儀社では、遺体搬送だけのサービスも提供しています。まずは時間の制約のある霊安室から搬出し、その後にしっかりと比較検討して葬儀を依頼する葬儀社を決めましょう。

見積もりより費用が高くなるケースは?

例えば会食で提供する料理や返礼品などは、実際に通夜や告別式を行って参列者数が確定しなければ明確にはなりません。想定していた人数より多ければ、見積もりよりも高い金額を請求されます。

これ自体は避けられないことですが、金額が変動する項目やその要因などをしっかりと説明してくれる葬儀社を選ぶことが望ましいです。

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