葬儀社とは?種類や選び方、依頼できることを詳しく解説

葬儀を手配する必要が生じて調べてみると、葬儀社にもさまざまな形態があることがわかります。それらの違いを明確に把握している方は少ないのではないでしょうか?

葬儀社とは、葬儀の準備から運営に至るまでのサービスをワンストップで提供してくれる会社の総称です。ご自身の希望に即した葬儀社に依頼するには、葬儀社の種類や特徴を理解しておく必要があります。

今回の記事では、葬儀社の種類や選び方、依頼できることを詳しく解説します。最後までお読みいただければ、漠然とした葬儀社のイメージが明確になってくることでしょう。

1分でわかる!記事の内容
  • 葬儀社とは、葬儀に関するサービスをワンストップで提供してくれる会社
  • 葬儀社は許認可などがなく参入しやすい業種といえるため、優良なサービスを提供してくれる会社の見極めが必要
  • 僧侶の手配などはご自身で行わなければならないため、葬儀社ができることとできないことをしっかりと認識して準備する

葬儀社とは?

葬儀社とは、葬儀に関するサービスを一貫して提供してくれる会社のことです。

遺族が希望する葬儀の形式や規模に合わせて、斎場の手配や祭壇などの設営、遺体の移送や安置、通夜・葬儀の運営、会食や返礼品の準備に至るまで、すべての業務をワンストップで行ってくれます。

また、葬儀に関連する行政手続きを代行してくれるなどの、付帯サービスを取り扱っている会社も多くみられます。

葬儀屋との違い

葬儀社と似た名称として「葬儀屋」という言葉がありますが、葬儀社と葬儀屋は同じものを指しています。「葬儀業者」「葬儀会社」なども同義です。

また、葬儀だけでなく祭事も扱っている事業者は、葬祭業者などと呼ばれますが、こちらも葬儀に関する一連のサービスを提供している点では同様に捉えても差し支えないでしょう。

葬儀社の種類

葬儀社を大まかに分けると、「葬儀専門業者」「互助会(ごじょかい)」「協同組合系」「葬儀仲介業者」の4種類に分類されます。

葬儀の手配や運営に特化している業態や、霊柩車などを保有している運送事業社などに細分化はできますが、葬儀社を選ぶうえでは4種類の違いを把握しておけばよいでしょう。

葬儀費用や利用できる条件などが異なるため、それぞれの特徴を知ったうえで選ぶことをおすすめします。

葬儀専門業者

自社で葬儀に関する一連のサービスを提供する葬儀社が、葬儀専門業者です。一般的にイメージされる葬儀社がこの業態といえるでしょう。

近年では葬儀の規模や形式に合わせ、葬儀社のおすすめというパッケージプランを提供する形式が一般的です。

とはいえ葬儀専門業者も画一的なものではなく、さまざまな特徴を打ち出してきています。

葬儀の形式が多様化してきたことに伴い、近親者だけで執り行う家族葬に特化した葬儀社、宗教にこだわらない無宗教葬に特化した葬儀社など、より細分化してきているのです。

このため葬儀社を選ぶ際には、ご自身が希望する葬儀の形式を意識して、その形式を得意とする会社を候補とするのがおすすめです。

互助会

互助会とは、毎月一定の金額を積み立てることで割安で葬儀を行える、会員制のサービス業態です。葬儀だけでなく、結婚式や七五三などの祝い事も含めたすべての冠婚葬祭に対応している「冠婚葬祭互助会」が一般的です。

互助会は「相互扶助」を根底の考え方として成り立っている仕組みで、多額の費用を必要とする将来の慶事や弔事に供えて、会員同士が共同で掛け金を積み立てていきます。

このため葬儀を執り行う段階で直接葬儀社に依頼するよりも、費用負担が少なくなるのが特徴です。一般的な分割払いがサービス利用後の後払いであるのに対して、想定している葬儀費用を分割で先払いする形式といえばわかりやすいでしょう。

ただし拠出した積立金だけでは、必ずしも希望の葬儀が行えるとは限りません。

積み立てたお金で提供されるのは基本的なサービスに留まることが多く、葬儀の規模や形式によっては追加料金が発生する可能性があることは認識しておかなければなりません。

また、サービスを利用せずに解約した場合には、手数料が差し引かれるケースが多いことも覚えておきましょう。

協同組合系

協同組合系とは、農業協同組合(JA)や生活協同組合(生協)などの協同組合が、事業の一環として葬儀サービスを提供している形態です。

すべてのJAや生協が葬儀事業を行っているとは限りませんが、ご自身が加入している組合がサービスを提供している場合には、葬儀社に依頼するよりも費用負担が抑えられる可能性があります。

協同組合は、各組合員が出資をして自分たちが必要とするサービスを共同で運営する仕組みですから、基本的には組合員以外は利用できません。サービスを利用するためには、組合に加入する必要が生じるのです。

ただし、正規の組合員よりも加入条件が緩和された準組合員のような形で利用できるケースもありますから、地域のJAや生協などに確認してみるとよいでしょう。

葬儀仲介業者

葬儀仲介業者とは、葬儀社と利用者をつなぐサービスを提供する会社です。つまり自社では葬儀サービスの提供は行わず、提携している葬儀社に顧客を紹介し、その対価として葬儀社から仲介手数料を受け取ることで成り立っています。

葬儀仲介業者のサービスの特徴は、葬儀一式を共通のパッケージプランとして販売することで料金を明確化し、Webサイトを窓口として申し込みを受ける仕組みにあります。

いわば、認知度やブランド力に劣る小規模な葬儀社の営業を代行するシステムです。

利用者側からみれば、明確な料金設定で葬儀社を探しやすいなどのメリットがあります。ただし、パッケージ化された商品では、地域独特の風習などに対応できないケースがある点には注意が必要です。

葬儀社に依頼できること

葬儀社には、葬儀の準備から運営に至るまで、一連の手続きをまとめて依頼できます。

取り扱っている業務を、具体的に列記していきましょう。

葬儀会場の手配・設営

葬儀社には、遺族が希望する葬儀の規模や形式に合わせた葬儀会場を手配し、祭壇や参列者席を設営するなど、会場に関するすべての準備を一貫して依頼できます。

想定している参列者の人数や、予算に応じたパッケージプランを用意しているのが一般的です。

葬儀を行う会場は、葬儀専用に建てられた斎場だけに留まらず、自宅や地域の集会所なども利用できます。会場の広さや設備に応じて、葬儀を行うのに適した設営を任せられるのです。

葬儀の運営

葬儀の進行や参列者の対応など、葬儀の運営全般も葬儀社で行う業務です。

また、受付や案内などの係は遺族の知人などにお願いするケースが一般的ですが、葬儀社にスタッフを手配してもらうことも可能です。適任者が見つけられない場合などには相談してみるとよいでしょう。

会食・返礼品の手配

葬儀では、参列者に対するお礼などの意味を込めて、会食や返礼品を用意するのが一般的です。これらの場面での食事や返礼品の手配も、葬儀社にまとめて依頼できます。

特に参列者数が多くなりがちな一般葬では、会食や返礼品の手配を任せられることは非常に心強いです。参列者を限定しないため、実際に葬儀を行ってみなければ、必要な数が正確にはわかりません。

葬儀社に依頼すれば、参列者数の増減にある程度対応してくれるほか、余った返礼品を返品できるなどのサービスを提供してくれます。

遺体の搬送・安置

遺体の搬送や、亡くなってから葬儀までの遺体の安置も、葬儀社に依頼できる項目です。葬儀場に併設した安置室などで葬儀を待つだけでなく、ご自宅に安置した遺体が傷まないようにドライアイスなどの手配も任せられます。

故人が亡くなった場所から安置場所への搬送や、葬儀場から火葬場への搬送など、葬儀を終えるまでには遺体の移動が必要な場面が何度か訪れます。

しかし遺体の搬送は、貨物自動車運送事業法に基づく許可が必要とされ、タクシーなどで運ぶことは認められません。

霊柩限定の許可を受け、霊柩車を保有している葬儀社であれば、問題なく遺体を搬送できるのです。

遺影の制作

遺族が選んだ写真をもとに、祭壇に飾る遺影を作成します。そのまま利用できる写真であれば問題ないですが、例えば背景を消すなどの加工が必要なケースも少なくないでしょう。これらの作業を含め、葬儀社に任せられるのです。

遺影はできるだけ故人の人柄がわかる、表情豊かな写真を使いたいものです。しかし、すべての条件を満たした遺影写真が手元にあるとは限りません。

気に入った写真があれば、加工を施すことで遺影に適した形にすることも可能です。

葬儀に関わる諸手続き

葬儀を行うためには、亡くなった方の住所地の市区町村などに死亡届を提出するとともに、火葬(埋葬)許可申請を行わなければなりません。

原則として同居の親族などが行う手続きですが、葬儀社で代行してもらえるのが一般的です。

死亡届には病院や警察などが発行する死亡診断書または死体検案書が必要になりますから、葬儀社での打ち合わせの際に持参しておきましょう。

ローンの申し込み

葬儀費用は高額な支出となりがちなため、現金一括での支払いが難しいケースもあり得ます。葬儀ローンを取り扱っている葬儀社であれば、自ら金融機関に出向かなくても、契約の際にあわせてローンの申し込みができます。

葬儀に利用できるローンは信販会社や銀行などで取り扱いがありますが、葬儀社で利用できるのは信販会社の商品が一般的です。

その場で申し込みができることから手間が掛からないなどのメリットがありますが、銀行などに比べると金利が高く設定されているケースもあることに注意しなければなりません。

ご自身で行う準備

葬儀に関わるサービスをワンストップで提供しているのが葬儀社とはいえ、ご自身で行わなければならない準備も少なからず存在します。

葬儀社の選定と並行して行う必要があるため、しっかりと把握しておきましょう。

僧侶の手配

僧侶に読経や戒名授与をお願いする場合には、基本的に遺族がご自身で手配しなければなりません。先祖代々のお墓があるお寺、いわゆる菩提寺(ぼだいじ)があるのであれば、できるだけ早めに連絡しましょう。

菩提寺が遠方にある場合にも、まずは連絡を入れておくことが必要です。同じ仏教であっても宗派によって考え方が異なるため、同じ宗派の教えにしたがって葬儀を行わなければならないからです。

菩提寺がなく新たにお墓を建てる場合などには、葬儀社に相談してみましょう。ただし、故人の宗旨・宗派は正確に確認しておかなければなりません。

形式・規模の決定

葬儀社を選び打ち合わせに入る前に、葬儀の形式や規模を決めなければなりません。

親族や故人の仕事の関係者、近隣の方などを招いて盛大に行う一般葬と、近親者だけで行う家族葬では、必要とされる準備も葬儀にかかる費用も大きく異なります。

葬儀の形式・規模の決定は喪主の役割とされますが、故人の希望などを踏まえて家族で話し合って決めましょう。

特に近年では葬儀の形式が多様化し、通夜を省いた「一日葬」や、宗教的儀式を行わない「無宗教葬」など、さまざまな形の葬儀が営まれています。

とはいえ、一般に浸透していない形式での葬儀は親族の理解を得られないケースもありますから、トラブルのないように配慮して決めなければなりません。

葬儀社を選ぶ際の注意点

葬儀社を選ぶ際には、葬儀サービス業界の特徴を踏まえた注意点を認識しておかなければなりません。

経済産業省がまとめた「特定サービス産業動態統計調査」によると、全国には2,786社(2022年現在)の葬儀社があるとされます。数が多いからこそ、優良な葬儀社を見極める必要があるのです。

葬儀社は許認可がいらない

葬儀社を営むには、特別な許認可がいりません。「葬祭ディレクター」など、個人に与えられる資格は多数存在するものの、これらはいずれも民間資格です。開業に際して「有資格者が在籍すること」などの規定も設けられていません。

つまり、葬儀社は開業のハードルが比較的低い業種といえるのです。

参入障壁が低いことは、優良とはいえない企業が参入する可能性があることを示しています。このため葬儀社を選ぶ際には、複数の葬儀社から見積もりを取るなどで比較検討し、ご自身の希望に適した会社を見極めなければなりません。

例えば前述した葬祭ディレクターなどの資格をスタッフが保有していることも、1つの目安にしてもよいでしょう。

葬祭ディレクターは、厚生労働省が認定する技能検定の一種で、葬儀に関する一定の専門知識を持つスタッフであることが認められる資格です。

「真剣に葬儀業に取り組んでいる」「葬儀社としてスタッフの育成に力を入れている」などの面で、アドバンテージがあるといえるでしょう。

葬儀社によって見積もりが異なる

葬儀費用は葬儀社のパッケージプランに基づいて提示されるのが一般的ですが、ここに含まれる費用はすべての葬儀社で同じとは限りません。

同様の形式・規模で作成された見積もりであったとしても、葬儀社によって詳細な項目が異なるケースが少なくないのです。

斎場の使用料や祭壇などの設営費などは同一であったとしても、設定されたグレードに差異があることは珍しくありません。

葬儀までの日程に応じて追加される安置費用なども、見積もりでは同様の額であったにも関わらず、日数の延長による追加料金で大きな差が生じる可能性もあり得ます。

葬儀社の見積もりを正確に把握することは容易ではありませんが、できるだけ詳細な内容を確認しながら検討していくことが望ましいです。

火葬場は運営主体が異なる

葬儀に関するすべての手続きを葬儀社に依頼できますが、基本的に火葬場は運営主体が異なることも覚えておきましょう。

全国には1,400カ所余りの火葬場がありますが、民間の葬儀社が運営しているのは、ごく僅かです。

大半は市町村などの自治体か、事務組合などが保有する公共施設ですから、利用の際に故人や遺族の住所地によって制約があるケースも少なくありません。

葬儀社を介して火葬場を手配することも可能ですが、葬儀社に希望を伝えたとしても、必ずしも通るとは限らない点を認識しておく必要があります。

参考:厚生労働省-全国火葬場データベース

葬儀形式に合った葬儀社を選ぶ

葬儀社を選ぶ際には、ご自身が希望する葬儀形式に合った会社に依頼することが大切です。特に無宗教葬・自由葬などと呼ばれる比較的新しい形式の葬儀を行う場合は、適切なアドバイスが得られない可能性が生じます。

近年では、近親者だけの少人数で行う家族葬が一般的な形式として浸透しつつあります。

家族葬は参列者を限定するという点を除いては、基本的な葬儀の流れは一般葬と変わりません。執り行われる葬儀の中でも多数を占めているため、「家族葬ができない」という葬儀社にあたる可能性は低いといえるでしょう。

しかし同じ家族葬でも、例えば「自宅のマンションで行いたい」という場合、会場の広さや棺が通る動線の確認など、さまざまな制約をクリアしなければなりません。

こうなると、すべての葬儀社が最善のサービスを提供してくれるとは限らないのです。

故人や遺族が希望する葬儀の形式は何か、最も重視するポイントは何かを、あらかじめ認識したうえで葬儀社を選ばなければなりません。

複数社の見積もりを比較する

葬儀社を選ぶ際には、できるだけ複数社の見積もりを比較して検討しましょう。

同じ形式、同じ参列者数で見積もりを取ったとしても、葬儀社が提示するプランに含まれる項目やグレードは、各社によって異なります。「A社では標準とされる項目がB社ではオプションとなっている」などのケースも少なくはありません。

複数社の見積もりを比較することで、その費用が合理的かを見極めやすくなります。加えて、重視する必要のない項目や不要なサービスなどを認識することにもつながります。

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