相続放棄申述書の書き方とは?放棄の理由を記入例つきで解説

「相続放棄の申述書の書き方を知りたい。記入例やひな形はある?」相続放棄をお考えの方で、このようにお悩みの方はいませんか?

相続放棄申述書は、裁判所に提出する法的な書類ではありますが、記入例を参考にすれば難しいものではありません。

この記事では、相続放棄申述書の書き方や、提出先の調べ方をわかりやすく解説します。また、相続放棄申述書を提出後の手続きも詳しく解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続放棄申述書のひな形と記入例は裁判所のWebサイトから入手できる
  • 相続の理由欄は簡単な記述でOK
  • 相続放棄の手続きは専門家と相談して進めよう

相続放棄申述書とは?

相続放棄を行うためには、裁判所に対する相続放棄の申述が必要です。

第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

引用: e-gov法令検索-民法938条

この申述は、裁判所に直接行って行うことも可能ですが、一般的には申述書を郵送して行います。

以下からは、相続放棄申述書がどのような書類なのか、入手方法や提出期限とあわせて詳しく解説します。

相続放棄申述書は相続放棄を認めるための書類

相続放棄申述書とは、相続放棄を行う際に提出しなければならない書類です。相続放棄は、遺産に関するすべての権限を捨てることを意味します。

借金や支払い責務などのマイナス財産を手放せる方法ではあるものの、相続放棄を行うためには正しい手順を踏む必要があります。

そこで必要となるのが相続放棄申述書なのです。

相続放棄申述書の入手方法・ダウンロード先

相続放棄申述書のフォーマットは全国共通であり、裁判所のWebサイトから入手できます。

参照:裁判所-相続の放棄の申述

記入例も同じく公開されているため、こちらもダウンロードと印刷をしておきましょう。

相続放棄申述書の提出先

相続放棄申述書の提出先は、被相続人(亡くなった方)が最後に住民登録をしていた地域を管轄する裁判所です。

地域を管轄する家庭裁判所は、裁判所のWebサイトから確認しましょう。

参照:裁判所-裁判所の管轄区域

更に具体的な提出先(庁舎や部署など)は各裁判所によって異なるため、前もって管轄裁判所の代表電話番号に問い合わせるとよいでしょう。

被相続人の最終居住地は、相続放棄手続に必要な被相続人の住民票除票または戸籍附票に記載されています。

相続放棄申述書の提出期限

相続放棄は、相続の開始(被相続人の死亡)、および自分が相続人になったことを知った時から3カ月以内にしなければなりません。

第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(以降略) 

引用:e-gov法令検索-民法915条

3カ月の期間を「熟慮期間」といいます。

熟慮期間を経過すると基本的に相続放棄はできなくなり、相続を単純承認(プラスの財産もマイナスの財産も承継)したことになってしまいます。

相続放棄の必要書類・添付書類

相続放棄の必要書類は、次のとおりです。相続人と被相続人の続柄によって必要書類が異なるため、注意が必要です。

また被相続人が遠方に住んでいた場合等、郵送での書類取得には時間がかかるため、余裕をもってスケジュールを組みましょう。

続柄必要な書類
共通・収入印紙代(申述人1名につき800円分)
・連絡用の郵便切手代(裁判所によって異なるが、おおむね500円程度)
・住民票除票、除籍謄本、戸籍謄本などの発行手数料(300円から750円程度)
・相続放棄申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人の戸籍謄本
配偶者・相続放棄申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・被相続人の死亡が記載された戸籍(除籍改製原戸籍)謄本
子・孫・被相続人の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被代襲者(本来の相続人)の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
親・祖父母・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している方がいる場合(相続人より下の代の直系尊属に限る)、その直系尊属の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
兄弟姉妹・甥姪・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(甥姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続放棄申述書の書き方と記入例

相続放棄申述書は、基本的に裁判所の記入例に従って作成すれば問題ありません。資料を参照しながら書いたほうがいい箇所がいくつかあるため、まずは相続放棄の必要書類を一通り揃えるとよいでしょう。

以下からは、具体的な記入例と注意すべきポイントを解説します。

裁判所名・日付・申述人名

一番上に、管轄裁判所の名前と記入日、申述人(相続放棄する方)の氏名を記入します。

ご自身の本籍地や現住所は、念のためご自身の戸籍謄本と住民票を確認しながら、正確なものを記入しましょう。

押印は認印で構いませんが、インク補充式のスタンプ印は使用できません。

収入印紙の貼付

相続放棄手続の手数料として、収入印紙800円分を貼付します。

収入印紙は法務局や役所、郵便局で購入できるほか、一部のコンビニエンスストア(200円分のみ取扱い)で入手できます。

収入印紙の購入先
  • 法務局
  • 役所
  • 郵便局
  • 一部のコンビニエンスストア

役所で購入できる、よく似た証票に「収入証紙」がありますが、こちらは相続放棄手続には利用できないため、注意してください。

また、通常は収入印紙を貼付した後に消印を押す必要がありますが、相続放棄申述書では必要ありません。

法定代理人等の情報

申述人に法定代理人がいる場合には、法定代理人の住所等を記入します。

法定代理人とは未成年者の親権者や、成年被後見人後見人など、法律の規定によって代理人となった方をいいます。法定代理人がいない場合、この欄は空欄のままで構いません。

なお、本人の意思により代理を依頼する場合は「任意代理人」であるため、この欄には何も記入しないでください。

被相続人の情報

被相続人の本籍地、および死亡年月日は、被相続人の戸籍附票から確認できます。

また、被相続人の最後の住所は、被相続人の住民票除票で確認し、正確に記入しましょう。

相続の開始を知った日

相続放棄申述書のなかで、もっとも大切とも言えるのが、「相続の開始を知った日」です。

相続放棄は3カ月の熟慮期間のうちに行う必要があるため、「相続の開始を知った日」から相続放棄申述書の提出が3カ月以上かかっている場合には、原則として相続放棄は認められません。

この「相続の開始を知った日」とは、被相続人の死亡を知った日とも言い換えられます。

例えば同居親族など、被相続人の死亡後すぐにその事実を知った場合、死亡日と「相続の開始を知った日」は同じ日です。

一方、被相続人と疎遠であり、被相続人の死亡を死亡後1年後に知った場合には、その日から3カ月間が熟慮期間となります。

放棄の理由

相続を放棄する理由は、次の1から6のうち、最も近いものを選択する方式となっています。

  1. 被相続人から生前に贈与を受けている
  2. 生活が安定している
  3. 遺産が少ない
  4. 遺産を分散させたくない
  5. 債務超過のため
  6. その他

1から5に当てはまらない場合には6を選び、右側の記入欄に理由を記述しましょう。この記入欄は非常に小さいため、あまり長い理由は記入できません。具体的な記入例については、後ほど詳しくご紹介します。

相続財産の概略

最後に、相続財産の内訳を調べ、概略を記入します。

相続税の申告とは異なり、相続放棄手続では相続財産の記載に完璧な正確性は求められていません。

例えば現金預貯金はおおよその金額で構いませんし、土地は金額ではなく面積だけの記載でも認められます。

ただし、あえて虚偽の記載をすると、相続放棄が認められない可能性も生じるため、ある程度は正確に把握・記入しましょう。

放棄の理由の書き方と具体例

相続の理由として挙げられている選択肢に該当するものがない場合、右側の記入欄に理由を記述します。相続放棄はどのような理由でも認められるため、基本的に何を書いても構いません

実際に相続放棄が認められた例として、次のような理由が挙げられます。

実際に相続放棄が認められた理由
  • 遺産分割協議に参加したくない
  • 相続に関わりたくない
  • 遠方に在住している
  • 相続不動産が遠方に位置している
  • 被相続人と疎遠である
  • 他の相続人と疎遠である
  • 相続に関わりたくない
  • 債務超過の疑いがある
  • 特定の相続人に相続させる

どうしても詳細に理由を記入したい場合、記入欄に「別紙記載のとおり」と書き、別紙にて詳細を述べるという方法もあります。

無理に詳細を述べる必要はありません。

相続放棄申述書を提出した後の手続き

相続放棄に必要な書類を揃え、相続放棄申述書を記入したら、管轄の家庭裁判所に送付しましょう。

ここからは、相続放棄申述書を提出したあとの手続きを解説します。

相続放棄照会書に回答する

相続放棄申述書を提出すると、約2週間ほどあとに家庭裁判所から「相続放棄照会書」が送られてきます。もし送られてこない場合には、そのまま手続きが進んで「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

内容は裁判所によって様々ですが、基本的に、相続放棄の意思や「相続を知った日」が正しいかを確認する内容です。

この照会書は、裁判所の個人名を差出人名とし、一般的な茶封筒で送付されることもあるため、注意が必要です。

相続放棄申請受理証明書を請求する

相続放棄照会書の送付後2週間ほどで、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。この通知書が届くと、相続放棄手続はすべて終了です。

通知書は一度しか発行されず、再発行には応じてもらえないため、大切に保管しましょう。


相続財産に借金などの債務がある場合や、金融機関での手続きの際、相続放棄を証明するために「相続放棄申述受理証明書」の提出を求められることがあります。

この証明書は、家庭裁判所に請求すれば1通150円で取得できます。以前は相続を原因とする不動産の登記移転手続に証明書が必要でしたが、現在は原則不要となりました。

相続放棄申述書に関するよくある疑問と答え

相続放棄は家庭裁判所を通じた手続きであるため、何かと不安に思われる方も多いでしょう。以下からは、相続放棄申述書に関するよくある疑問と、その答えをご紹介します。

実印と印鑑証明は必要?

相続放棄申述書には押印欄がありますが、実印を利用する必要はありません。また、印鑑証明書の添付も不要です。

100円ショップなどで購入できる安価な認印を使うことは可能ですが、インク補充タイプ(スタンプ式)の印鑑は利用できません。

一方で、遺産分割協議書では実印を用いるほうがよいでしょう。法律で実印の利用が求められているわけではありませんが、遺産分割協議書を金融期間等に提出する際、実印の利用と印鑑証明書の添付を求められることがあります。

誰かに代筆してもらってもいい?

相続放棄申述書の記入は、申述人本人が行うことが前提とされていますが、何らかの事情で本人による記入が困難な場合、誰かに代筆を依頼することも可能です。

代筆を依頼する際には、別途委任状を作成する必要があります。委任状の形式に決まりはなく、以下のような内容が一般的です。

委任状に記載する内容
  • 委任状の作成日
  • 委任者(委任する人)の住所および氏名・押印
  • 代理人(委任される人)の住所および氏名・押印
  • 委任の理由
  • 委任の範囲

具体的には、委任状の作成日と委任者・代理人の情報を記載したうえ、「私は、上記の者を代理人と定め、相続放棄の申述に関する一切の権限を委任します。」等と記載します。

書き損じた場合の修正方法は?

相続放棄申述書に書き損じをしてしまった場合、二重線で当該箇所を削除しましょう。さらに訂正印を押し、上下の空いているところに正しいものを記入します。訂正印は署名押印欄に利用したものと同じものを使いましょう。

なお、修正テープや修正液などは利用できません。

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