家族葬のマナーとは?遺族側・参列者側に分けて具体的に解説

「家族葬でのマナーとは?香典や服装などで気を付ける点はある?」「家族葬を行う際に、遺族側が知っておくべきマナーはある?」家族葬におけるマナーについて、このようにお悩みの方はいませんか?

家族葬は最近増えている葬儀のスタイルであり、招待する・参列するときのマナーについて、不安を抱えている方も多いでしょう。

この記事では、家族葬における、遺族側・参列者側のマナーを詳しくご紹介します。また、参列しない場合のマナーや心遣いについても解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 基本的に、家族葬と一般葬で守るべきマナーは同じ
  • 遺族側は、参列者が戸惑わないように明確に情報を伝える
  • 参列者側は、遺族の意向に従って行動し、負担をかけないようにする

そもそも家族葬とは?誰が参加できる?

まずは、家族葬の概要についてご紹介します。ここでは一般的な家族葬について解説しますが、葬儀のあり方は故人や喪主の意向、葬儀会場や地域によっても異なるため、柔軟に理解・対応することが必要です。

一般的には二親等以内の親族が参加

家族葬とは、主に故人の家族や親族だけで行われる小規模な葬儀を指します。故人と特に親しかった友人や仕事関係の方を呼ぶこともありますが、それでも参列者の総数は20名~40名程度になることが一般的です。

家族葬に招待する参列者の範囲は、故人や家族の意向で自由に決められます。例えば「二親等以内の親族」や「近隣に在住している親族」に限定するなど、家族や親族であっても参列者の範囲を限定することも可能です。

このように家族葬では、参列する方・しない方の区別が生じることから、後々トラブルに発展する可能性もあります。そのため、参列者の範囲を限定する場合には、明確な基準を設け、必要に応じてしっかりと理由を説明するようにしましょう。

一親等 父母、子およびその配偶者
二親等 祖父母、兄弟姉妹およびその配偶者、孫およびその配偶者

家族葬と密葬の違い

家族葬と似ている葬儀のスタイルとして、密葬があります。密葬とは、本葬に先だって家族や親族で行われる小規模な葬儀のことです。

著名人や有力者が亡くなった際、多くの弔問客が葬儀に訪れることが予想され、家族は故人との別れのときをゆっくりと過ごせなくなってしまいます。そのため、大規模な本葬やお別れの会を開く前に、故人と近しい方だけを集めて密葬を行うのです。

家族葬と密葬は「故人の家族や親族を中心に行われる小規模な葬儀」という点で共通していますが、そのあとに本葬等の大規模な葬儀を行うかどうかで違いがあります。

家族葬を行う予定でも、葬儀後に非常に多くの弔問客が訪れることが想定される場合には、家族葬ではなく密葬(と本葬)を行うことも検討しましょう。

家族葬 家族や親族を中心とした小規模な葬儀
密葬 家族や親族だけで小規模な葬儀を行い、後日大規模な本葬等を行う

【遺族側】家族葬のマナー

ここからは、家族葬を行う遺族側が気を付けたいマナーをご紹介します。家族葬とはいえ、一般葬と同じく、故人や参列者に失礼のないように行動することが大切です。

もっとも、家族葬をどのように行うかは喪主が自由に決められる点も多いため、葬儀会場とも相談しながら、家族に合ったあり方を検討しましょう。

服装は一般葬と同じ

基本的に、家族葬に参列する際の服装は一般葬と同様に、準喪服を着用します。一般的に「喪服=準喪服」として扱われます。

男性はブラックスーツに白のワイシャツが基本です。ワイシャツを選ぶ際、襟の先端がボタンで留められている「ボタンダウンカラー」は避けましょう。

ネクタイは黒無地を選び、タイピン等は着用しません。靴下と革靴も黒で統一し、靴に関しては紐靴が望ましいです。

女性は黒のワンピース・スーツ・アンサンブルを着用し、黒無地のストッキングにヒールのないパンプスを履きます。装飾品は1連パールと結婚指輪程度にとどめ、ナチュラルメイクを心がけましょう。

参列者が学生・子どもの場合には、制服があれば制服を着用し、制服がない場合には黒やグレーの落ち着いた平服でも構いません。

家族葬では、喪主や遺族の意向により、参列者の服装を指定することも可能です。例えば高齢者の参列者が多い場合などに、「平服でお越しください」「普段着でも結構です」などと伝えておくことで、参列者の負担を軽減できます。

ただしこの場合には、平服の方に気まずい思いをさせないよう、参列者全員にその旨を伝えておくようにしましょう。

香典返し

家族葬においても、香典・供花・供物・弔電などをいただいたときは、お返しを送るのがマナーです。一般的には、いただいた金額の3分の1から半分程度の品物を送るものとされています。

ただし、供花・供物については、「香典返しと同様に行う」「香典がない場合にはお返し不要」など複数の考え方があります。地域差もあるため、葬儀会社とも相談しながらケースバイケースでの判断が必要です。

お返しの品物を送らない場合、または弔電をいただいた場合には、お礼状を書いて送ります。香典等をいただいた際に「返礼不要」との連絡を受けていたときも、お礼状は忘れずに送りましょう。

お返しは四十九日を終えたあと、お礼状を添えて送ります。葬儀を神道式で行った場合には三十日祭または五十日祭が終わったあと、キリスト教式であれば追悼ミサや昇天記念日が終わったあとが適しています。

香典返しのタイミングは宗教・宗派によっても違いがあるため、葬儀会場に確認しましょう。

【参列者側】家族葬のマナー

家族葬に参列する方が気を付けたいマナーや心遣いについて解説します。家族葬は、故人との最後のときをゆっくり過ごすために開かれるものですから、家族や遺族に負担をかけないように気を付けましょう。

服装は一般葬と同じ

家族葬に参列する方も、一般葬と同様に、基本的には準喪服を着用します。

通夜に参列する際に「平服・普段着でお越しください」と連絡を受けている場合、カジュアルな装いは避け、男性であれば黒やグレーの落ち着いたスーツを着用しましょう。また、女性は黒やグレーのワンピース・スーツ・アンサンブルが適しています。

香典を持参するときは、香典の封筒を袱紗(ふくさ)に包みます。袱紗がない場合には寒色のハンカチや風呂敷で代用しましょう。

お悔やみの言葉

家族葬の会場に到着したら、まずは喪主や遺族にお悔やみの言葉をかけます。故人や家族と親しくしていた場合など、いろいろと伝えたいことがある場合でも、挨拶は手短に済ませましょう

また、死や別れを連想させる忌み言葉や、同じ言葉を繰り返す重ね言葉、「頑張って」「元気を出して」などの安易な励ましの言葉を使わないように注意が必要です。

代表的なお悔やみの言葉として「ご冥福をお祈りします」というものがありますが、実はこの言葉は浄土真宗・神道・キリスト教の信徒に対しては用いません。

参考:真宗大谷派法栄山三宝寺-真宗は冥福を祈らない?

仏教
(浄土真宗を除く)
ご冥福をお祈りします
神道 御安霊(ごあんれい)の安らかならんことをお祈りします
キリスト教 安らかな眠りにつかれますようお祈りします

このように、お悔やみの言葉には宗教・宗派ごとにルールがあるため、葬儀がどの宗教で行われるのか、遺族や葬儀会社等に確認しておきましょう。

宗教に関係なく使える言葉としては、「お悔やみ申し上げます」や「ご愁傷さまです」などがあります。

焼香

仏教式の葬儀では、僧侶による読経の途中で焼香を行います。

焼香の手順や作法は宗派によって異なりますが、多くの場合は葬儀が始まる前に葬儀会場からアナウンスがあるため、安心してください。

焼香台の前に立つとき、および焼香を終えて席に戻るときに遺族と僧侶に一礼するのがマナーです。

宗派 焼香の作法や回数
天台宗 特に決まりなし
真言宗 押しいただき、3回
浄土宗 押しいただき、1~3回
浄土真宗本願寺派(西) 押しいただかず、1回
浄土真宗東本願寺派(東) 押しいただかず、2回
臨済宗 1回(押しいただくかは自由)
曹洞宗 2回(1回目のみ押しいただく)
日蓮宗 押しいただき1~3回

神道式の葬儀では専用の枝を捧げる玉串奉奠(たまぐしほうてん)が、キリスト教式の葬儀では献花が行われます。これらの儀式にも手順や作法がありますが、故人を偲ぶ心を大切にし、あまり形式にとらわれすぎないようにしましょう。

【参列しないとき】葬儀後のマナー

ここからは、家族葬に参列しないときのマナーや心遣いについてご紹介します。

葬儀に参列できない場合、何らかの形で弔意を示したいという方も多いと思います。しかし、思いがけず遺族に迷惑をかけてしまわないよう、注意が必要です。

香典の送り方

家族葬に参列しない場合、基本的に香典は送りません

これは、香典を送ると遺族は香典返しを用意しなければならなくなり、遺族に負担をかけてしまうためです。訃報や葬儀の案内に明確に香典辞退の意向が示されている場合はもちろんのこと、記載がない場合でも、香典を送るのは控えましょう。

弔電の送り方

他に弔意を示す方法として、弔電があります。遺族が弔電を断っていない場合には、送っても構いません。

ただし、明確に弔電を辞退していなくても、「香典・供花・供物などのご厚意は謹んで辞退いたします」などの記載がある際は、弔電を送るのも控えたほうが無難です。

弔電の送り先・例文

弔電を送るときは、喪主名(フルネーム)を宛名とします。名前がわからないときは「故〇〇様 ご遺族様」としても構いませんが、できれば葬儀会場に問い合わせるなどして、喪主名を確認したほうがいいでしょう。

弔電を葬儀が行われる前に送る場合、送り先は葬儀会場です。弔電は故人のそばに供えられるため、喪主や遺族のもとに送ってしまうと、弔電を葬儀会場に持参する手間が生じるためです。

弔電は遅くとも葬儀が行われる朝までに送る必要がありますが、どうしても間に合わない場合には、後日喪主や遺族の自宅宛に送っても構いません。

弔電を送る場合
  • 宛名:喪主名(フルネーム)
  • 送り先:葬儀会場
  • いつまで:葬儀が行われる朝までに送る

弔電の文面を考えるときは、お悔やみの言葉と同様に、宗教や宗派に注意が必要です。弔電は口頭での挨拶と比べて文面を考える余裕があるため、失礼のないように心がけましょう。

葬儀会場に問い合わせれば宗教や宗派を教えてもらえますが、時間的な猶予がない場合や、宗教色をなくしたいときは、以下の例文を参考にしてください。

弔電に句読点を打つべきかどうかは人によって判断が分かれるため、使わないほうが無難といえるでしょう。

一般 ご逝去を慎み 心より哀悼の意を表します
ご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
仏教(浄土真宗を除く) ご生前のご厚情に深く感謝するとともに 心からご冥福をお祈りいたします
仏教(浄土真宗を含む) ご往生の報に接し 謹んで哀悼の意を表します
神道 御霊の御平安を心よりお祈り申し上げます
キリスト教 ご昇天の報に接し 心より哀悼の意を表します

弔問の可否の確認

家族葬に参列できなかった場合、または参列しなかった場合には、弔問を検討している方も多いと思います。直接遺族の家に伺う弔問は、特に遺族に負担をかける可能性が高いため、必ず前もって弔問の可否や時間帯等を確認しましょう。

葬儀の前後は遺族も忙しく、また心の整理がついていない時期でもあるため、葬儀後1週間ほど時間を空けて伺うのがおすすめです。

弔問に伺う際には、菓子折りや花などの供物を持参します。あまり高価なものを用意するとお返しの負担をかけてしまうため、高くても3,000円~5,000円程度にとどめましょう

弔問では、遺族にお悔やみの言葉をかけ、祭壇でお祈りをしたら、早めにお礼を述べて退去するようにしてください。

弔問に行く際の服装

弔問に伺うときには、葬儀の前後を問わず、喪服は着用しません。これは、葬儀前の弔問には「急ぎ駆けつけた」という意味があり、葬儀後の弔問では遺族に悲しみを思い出させない必要があるためです。

とはいえカジュアルな服装で伺うのは適切ではありません。男性であれば黒・グレー・ネイビーなどの落ち着いたスーツやジャケット、女性も同様のセミフォーマルを着用し、過度なメイクや露出は控えましょう。

家族葬を行う前の流れ

家族葬を行う前にすべきことや、気を付けたいマナー・心遣いについてご紹介します。参列者のなかには、まだ家族葬に参列した経験がないという方も多いため、しっかりとした下準備と丁寧な対応が必要です。

参列者の範囲を決める

まず初めに、家族葬の参列者の人数・範囲を決めます。

一般的に、家族葬には二親等以内の親族など故人と近しい関係にある方を招待し、参列者の総数は20名~40名程度に収まることが多いです。故人の親族や友人などを全員招待するのは難しく、一定の範囲で線引きをしなければなりません。

参列者の範囲を決めるおすすめ方法は、葬儀会場の収容人数や予算から逆算し、先に参列者の総数を決めたうえで、そこから参列者の内訳を考えるというものです。

そうすることで、「家族だけ」「二親等以内の親族まで」「友人を数人まで」といった具体的な内訳を考えやすくなり、予算の管理もしやすくなります。

50名以内の例 二親等以内の親族・従兄弟(従姉妹)・甥姪・友人・知人
30名以内の例 二親等以内の親族・従兄弟(従姉妹)・甥姪・特に親しい方
15名以内の例 故人の親・兄弟・子孫など、直系家族・親族

いずれにしても、後々のトラブルを防ぐために、参列しない方に対しても丁寧な対応と説明をすることが大切です。

訃報・葬儀の知らせをする

参列者の範囲を決めたら、訃報と、家族葬にて執り行うことを知らせましょう。

「参列しないにしても、せめて訃報は早く知りたかった」というトラブルを避けるためにも、基本的には全員に知らせるのがおすすめです。

家族葬では、参列する方にだけ葬儀前に訃報や葬儀の詳細を知らせ、参列しない方に対しては葬儀が終わったあとに知らせることもあります。


参列しない方に対する連絡では、「葬儀につきましては 故人の意向により 家族葬にて執り行います」等と記載し、葬儀の日時や場所などは記載しません。

香典などを辞退する場合には、この段階で明確に辞退の意向を伝えます。曖昧な表現をすると、参列者の混乱を招いてしまうため、以下の例文を参考に必ず記述してください。

  • 御香典・御弔電・御供花等のご厚意は謹んで辞退いたします
  • 誠に勝手ながら、御香典・御弔電・御供花等は辞退いたします
  • 大変申し訳ございませんが、故人の意向により、御香典・御弔電・御供花等は辞退させていただきます

家族葬に参列する際の注意点

家族葬に参列する際の注意点についてご紹介します。これらの注意点に気を付けて、遺族に負担をかけることなく故人を偲びましょう。

招待されたとき以外は参列しない

そもそも家族葬とは、家族や親族などが集まり、故人との最後のひとときを静かに過ごすために行われるものです。そのため、家族葬では家族・親族以外の参列は前提とされていません。

家族葬に参列してもいいか迷ったときは、まず訃報や葬儀のお知らせを確認しましょう。参列辞退と記載があったり、葬儀の詳細が書かれていなかったりなど、お知らせで明確に葬儀に招待されていないときは、参列を控えます。

招待されていない方を誘わない

家族葬への参列をお願いされた場合でも、訃報や葬儀を他の方に知らせたり、葬儀に誘ったりしないようにしましょう。

参列しない方には葬儀後に訃報を知らせることもあるため、訃報や葬儀の情報が広まると、「自分は聞いていない」というトラブルに発展する可能性があるのです。

したがって、訃報や葬儀があったことを他の方に伝えるのは、葬儀が終わってからにしましょう。

香典・供花・供物が辞退されていないか確認する

家族葬に参列する際、香典や供花・供物を渡すことで弔意を示したいという方も多いでしょう。しかし家族葬では、遺族がこれらの贈り物を辞退している場合が多いため、注意が必要です。

香典等を送ると、遺族としてはお返しの品物を準備したり、お礼状を書いたりしなければならなくなり、負担をかけてしまいます。

そのため、まずは訃報や葬儀の案内等を確認し、辞退されているときは贈り物を控えましょう。

辞退されていないときは香典等を送っても構いませんが、その際に「お返しは辞退させていただきます」とメッセージを添えておけば、遺族の負担を軽減できます

通夜振舞い・会食は早めに切り上げる

家族葬でも、通夜や葬儀が終わったあとに通夜振舞いや会食が行われることが一般的です。こうした会食は、故人を偲んで思い出話をし、供養するための大切な場です。そのため、会食の誘いを受けたらできる限り出席しましょう。

どうしても参加できない事情があるときは、辞退する旨を丁寧に伝え、目立たないように退出します。

通夜振舞いや会食の場では、大声で盛り上がる・過度に飲酒する・笑う・ビジネスや仕事の話をすることは避け、長居しすぎないようにしましょう。

あくまで故人を偲ぶ場であることをわきまえ、節度ある態度を保つことが重要です。

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