数珠のマナーとは?葬式・通夜での持ち方から選ぶ際の注意点まで解説

葬儀の際のマナーとして、「数珠を持って参列すべきか」を気にされる方も多いと思います。外出先で急な訃報が入り、参列者にその場で借りることを考える方もいるかもしれません。

実は、数珠を他人から借りるのは、してはいけない行為です。マナーを重んじようと思った行動が、逆に失礼にあたってしまいます。数珠は宗教上の道具の1つですから、その扱いや選び方を間違えると、逆に遺族に不快な思いをさせるかもしれません。

今回の記事では通夜や葬儀に参列する際に知っておくべき数珠のマナーや選び方について、詳しく解説していきます。特に初めて数珠を購入しようと考えている方は、ぜひ最後まで目を通してください。

1分でわかる!記事の内容
  • 数珠は煩悩を取り除き、仏の世界とつながるための道具
  • 数珠の貸し借りは、例え家族であってもNG
  • 葬儀用に初めての数珠を選ぶなら、略式数珠がおすすめ

数珠とは?

数珠(じゅず)とは、通夜や葬儀、法事などの際に使用される、小さな珠を連ねて輪を形成した仏具のことです。

念珠(ねんじゅ)とも呼ばれ、本来は僧侶が修行などでお経を唱えた回数を数える際に用いるものでした。しかし、数珠をもって合掌することで煩悩が無くなるなどの理由から、現在は参列者も持つようになりました。

数珠は数を数える道具

数珠の本来の用途は、僧侶がお経や念仏を唱える回数を数える際の道具です。数珠の珠の数は、正式には「煩悩の数」といわれる108つで、それになぞらえて唱えることに由来します。

なお、お経と念仏はいずれも葬儀や法要などで唱えられるものですが、その意味は異なります。お経は般若心経や法華経などの「釈迦の教えを唱えること」で、念仏は南無阿弥陀仏など「仏の名を唱えること」という違いです。

お経は遺族の心を落ち着かせるもの、念仏は故人の冥福を祈るものといわれています。

これらも宗派によって違いがあり、葬儀の場で唱えられるお経や念仏はこの宗派に基づくものです。

本式数珠と略式数珠

数珠には、仏教の宗派ごとに定められた正式な数珠である「本式数珠」と、宗派を問わずに使える簡略した形式である「略式数珠」の2種類があります。

本式数珠の形状は宗派ごとに異なるものの、基本的な珠の数は108つとされています。これが前述した108つの煩悩に由来するものです。略式数珠は珠の数が少なく作られており、片手念珠とも呼ばれます。

宗派ごとの数珠の違い

宗派ごとに焼香などの作法が異なるのと同様に、本式数珠の形も違います。

ご自身の宗派に合わせた本式数珠を購入するのであれば、宗派による違いを知って選ばなければなりません。

本式数珠は「本連数珠(ほんれんじゅず)」、「二輪数珠(ふたわじゅず)」とも呼ばれます。輪を構成する珠が主珠(おもだま)、房につながる一番大きい珠が親珠(おやだま)です。

このほか、房の部分にある弟子球(でしだま)や露珠(つゆだま)、主珠の間にある小さめの四天珠(してんだま)などで構成されますが、これらの有無や配置、形状などが宗派によって異なるのです。

真言宗

真言を数えながら唱えるため、親玉から7個目と21個目に四天玉という小さな珠があるのが特徴です。親珠は2個で、房にはそれぞれ5個ずつ、合計20個の弟子珠と露珠がついています。

長い念珠を二重にして用いる形状から振分数珠(ふりわけじゅず)とも呼ばれ、日蓮宗以外であればさまざまな宗派で使える数珠としても知られています。

浄土宗

浄土宗の数珠は、2連の輪違いという独特な形状です。2つの輪を交差させて1つに組み合わせた形で、両方の輪がそれぞれ親珠と主珠で構成されています。

片方の一連には主珠の間に副珠(ふくだま)と呼ばれる小さな珠が交互に入り、金属製の輪が通っている独特な形状です。

他の宗派の本式数珠と異なり主珠の数が108ではありません。2連の数珠を繰り金属の輪を動かすため、最も多く念仏の回数を数えられる数珠とされています。

浄土真宗(本願寺派・大谷派)

浄土真宗の数珠は、男性用と女性用で異なります。男性が用いるのは略式数珠とされいますが、女性が使うのは片方の房に20個の弟子珠が付いた2連の念珠です。

浄土真宗では、念仏を唱える回数などは重んじられていないため、このような形になったといわれています。

日蓮宗

日蓮宗の数珠は108珠で、これを二重にして使います。2つの親珠があり、片方からは2本、片方からは3本の房が出ているのが特徴です。

さらに3本の房のうち1本には、数取珠(かずとりだま)という10個の珠がついており、お題目(南無妙法蓮華経)をとなえる数を数えます。

日蓮宗では、正式な数珠を持つことに重きをおいているとされ、略式数珠ではなく正当な本式数珠を持つことが好まれるそうです。

臨済宗

臨済宗の数珠は、親珠が1つ、1連108珠の形状です。これを二重にして使います。房には弟子珠がなく、他の宗派と比較してもシンプルなつくりです。

これは臨済宗が、念仏を唱えるよりも座禅を重んじているためとされています。座禅の際は数珠を使わないため、数珠自体にも細かい決まりがありません

曹洞宗

曹洞宗の数珠は、房に弟子玉がない108珠で、臨済宗の数珠によく似た形状です。ただし、曹洞宗の数珠には金属の輪が通っています

天台宗

天台宗の数珠は、そろばんのような平玉(ひらだま)を使うことが特徴で、念仏の回数を数えることに適した形状といわれています。

葬儀には数珠を持参すべき?

もともとは僧侶が持つべき仏具、修行のための道具であった数珠ですが、現在は一般参列者も含め、葬儀や法要の場で広く使われるようになっています。

数珠を持って合掌することには「煩悩をなくす」「仏様に近づく」などの意味が込められており、数珠を持参することは1つの葬式のマナーとも考えられるでしょう。

数珠は「失礼のない身だしなみ」

数珠には厄除け・お守りとしての意味があり、自分自身の分身ともいわれています。数珠を持つことで煩悩を除き、仏の世界とつながるとされることから、葬儀には数珠を持参して参列することが一般的なマナーとして普及してきているのです。

喪服を着用して葬儀に参列することと同様に、社会的なマナーである「失礼のない身だしなみ」の1つと考えて持参することをおすすめします。

仮に通夜に平服で駆けつけたとしても、「数珠を持っていれば失礼にあたらない」ともいわれるほどです。

また仏教では、左手は仏の世界をつなぐ手、右手は現世をつなぐ手と考えられており、数珠に手を通して合掌することで仏の世界と自分自身をつなぐという意味があるそうです。

数珠の貸し借りはNG

急な葬儀で数珠を手に入れることが間に合わなかったとしても、他人の数珠を借りるのはよくありません。貸し借りをするくらいなら、数珠を持たずに参列したほうがよいともいわれます。

数珠は本来、厄除けやお守りとしての意味合いを持ち、ご自身の分身、またはご自身そのものとされています。ご自身だけの数珠を持つことで、功徳があるとされるのです。

例え家族であっても、複数人で1つの数珠を共有することはおすすめできません。

略式数珠を持っていれば、仏式のほとんどの葬儀に持参できますから、これを機会に用意しておくとよいでしょう。

仏教以外の葬儀では不要

数珠は本来僧侶が使う道具とされてきたものですから、あくまでも仏式の葬儀で用いるものです。神道やキリスト教の葬儀では使いません

とはいえ、「どのような宗教の葬儀が行われるかわからない」こともあるでしょう。特に神道では、神社で葬儀が行われることはなく、仏式の葬儀と同様に自宅や斎場で葬儀が行われるため、式場に着くまでわからないという可能性も否めません。

その際は念のためバッグに忍ばせておきましょう。神式の葬儀であった場合には、そのまま出さなければよいのです。

葬儀での数珠のマナー

葬儀の場では数珠の取り扱いについても、さまざまなマナーがあります。一例を挙げれば、葬儀間は常に数珠を左手で持っておくのがマナーとされ、焼香の際にバッグから取り出すなどはよくありません。

せっかく数珠を持参しても、作法を誤れば遺族に不快な思いをさせてしまいます。数珠は仏の世界とつながるための道具ですから、葬儀の場で粗相があれば、仏様に対しても失礼にあたるからです。

数珠のマナーもしっかりと理解しておきましょう。

房を下向きに左手で持つ形が基本

葬儀の間は、常に左手で数珠を持つのが基本です。これは「左手が仏の世界をつなぐ手」とされるためで、焼香で移動する際などには左手に持ち、房部分を下に向けるのが正しい作法です。

式の最中は常に数珠を手で持っておくのがマナーとされ、ポケットやバッグにしまうこともいけません。

焼香する際の数珠の持ち方

焼香の際には、左手の親指と人差し指の間に数珠をかけ房を下向きにした状態で、右手で抹香をつまみ焼香をします。

略式数珠を使って合掌する際には、左手だけに数珠を掛けたまま合掌する方法と、両手に数珠をかけて通す方法があります。いずれの方法でも構いません。

ただし本式数珠では、宗派によって数珠の種類が異なるだけでなく、持ち方などの作法も違います。

宗派ごとの合掌の作法をみていきましょう。

真言宗数珠を両方の中指にかけ、珠が両手の間に来るように合掌する
浄土宗2つの輪を重ねて合掌した両手の親指にかけ、房を手前側の下向きに垂らして合掌する
2つの輪を重ねて合掌した両手の親指を除く4本の指にかけ、房を真下に垂らして合掌する
浄土真宗(本願寺派)二重に巻いた数珠を合掌した両手にかけ、両手の甲の真下へ房を垂らす
浄土真宗(大谷派)二重に巻いた数珠を親珠が上に来るように合掌した両手にかけ、房を左手の甲に垂らす
日蓮宗数珠を8の字にねじり、右手側に2本の房が、左手側に3本の房が垂れるよう両手の中指にかけて合掌する
臨済宗数珠を二重にして、房を下向きに左手にかけ、右手を合わせて合掌する
曹洞宗数珠を二重にして、房を下向きに左手にかけ、右手を合わせて合掌する
天台宗親珠を上にして二重にし、左手の親指以外の4本指にかけ、そこに右手を重ねて合掌する
房は親指の内側に垂らす

椅子やテーブルに置きっぱなしはNG

数珠は、ご自身と仏様をつなぐ仏具です。このため席を離れるときでも置きっぱなしにすることはよくない行為とされています。

特に椅子や足元に置くなどは避けてください。離席する際にはバッグやポケットにしまうのがマナーです。やむを得ず机や椅子の上に一時的に置く際には、ハンカチや袱紗などを敷いて、その上に置きましょう。直に置いてはいけません。

また、バッグやポケットにしまったまま参列し、焼香の際にだけ取り出すのもよくありません。通夜でも告別式でも、葬儀の間は始まりから終わりまで左手で持っておくのが正しい作法です。

また、持ち運びなどの際にバッグやポケットにそのまま入れてしまうと、数珠が傷む原因になります。特に房は癖が付きやすいため、数珠袋にいれて丁寧に持ち歩きましょう。

数珠を選ぶ際の注意点

数珠はお守り、ご自身の分身という意味合いを持つものであるため、できるだけ同じ数珠を長く使い続けるのが望ましいともいわれます。

最近では100円均一ショップでも手に入り、急いで用意する必要がある場合などには便利です。しかし、せっかく購入するのであればしっかりとしたものを選びたいものです。

数珠を選ぶ際の注意点もみておきましょう。

葬儀用なら略式を用意する

葬儀用に初めての数珠を購入するのであれば、まずは略式数珠を用意するのがよいでしょう。

略式数珠であれば、宗派を問わずにいずれの葬儀にも使えるうえ、扱い方の決まりも本式数珠よりも簡略化されています。そのため、作法を覚えるのも容易といえます。

本式数珠と略式数珠の両方を持って、場面によって使い分けることも可能です。仕事の関係や知人の葬儀などに参列する際には略式数珠を用い、身内の葬儀にはご自身の宗派に合った本式数珠を用意するのもよいでしょう。

ただし、アクセサリー的な要素が強いものは葬儀の席にはふさわしくありません。

お守りとして日常から数珠を身につける方も少なくないですが、中通しのひもがゴム製の数珠などは、あくまでもブレスレットとして使うものです。

これらを葬儀の場で使用するのは、マナー違反と考えられます。

本式数珠は別の宗派のものでも問題ない

本式数珠は宗派ごとに異なるといっても、必ずしも参列する葬儀の宗派に合わせる必要はありません。ご自身の宗派の本式数珠をお持ちであれば、それを持参すれば問題ないのです。

ただし、結婚した場合などには、いわゆる「嫁ぎ先」の宗派にあわせた数珠を用意するのが基本とされています。

男女で玉の大きさが異なる

略式数珠は宗派による違いがないものの、男性用と女性用で珠の大きさが異なる点には注意が必要です。男性用の数珠は女性用のものよりも大きい珠が使われています。

一般的な略式数珠の珠の大きさは男性用が10~12ミリであるのに対し、女性用は6~8ミリです。珠の数には決まりがあるわけではありませんが、珠の大きさに応じて22か20の数珠が一般的です。

数珠の材質や色に関しても、略式数珠では自由に選んで構いません。葬儀の場であることから黒や茶色などの決まりがあるように感じがちですが、水晶など淡い色合いの数珠も用意されています。

気に入った数珠を購入して長く使用することは、数珠の本来の意味とも合致するのです。

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