相続手続きは自分でできる?自分でやる割合や費用、必要書類を解説

大切な家族が亡くなったときに、遺産の相続手続きを自分だけで行いたいと希望する方もいるでしょう。

自分で手続きをすることにはメリットとデメリットがあるため、慎重に判断する必要があります。

この記事では、相続手続きを自分でやる割合や手続きにかかる費用、必要な書類などを解説します。手続きを専門家に相談したほうがよいケースも紹介するので、相続手続きを控えている方は必読です。

1分でわかる!記事の内容

相続手続きは自分でできる?

遺産相続手続きをすべて自分で行うことは可能です。しかし、手続きが煩雑で専門的な知識が必要になるため、専門家に任せるケースが一般的です。

相続登記を自分でやる割合は少ない

相続手続きの中でも、相続登記(不動産の名義変更)と相続税の申告は手続きが難しいため、自分でやる割合は少なめです。

財務省が発表した「令和2事務年度 国税庁実績評価書」によると、令和2年に提出された相続税申告書に税理士が関与した割合は86.1%に達しています。

8割以上の人が専門家に依頼して手続きをしていることから、自分で手続きをするケースはかなり珍しいと言えるでしょう。

相続手続きを自分でするメリット・デメリット

自分で相続手続きをする場合、メリットだけでなくデメリットもあります。双方を理解した上で、手続きを誰が行うべきか慎重に判断しましょう。

メリット

相続手続きを自分でやるメリットは、専門家に払う報酬を節約できることです。専門家に依頼すると、最低でも5~10万円程度の費用が発生します。手続きが複雑であればあるほど、費用も高額になります。

すべて自分で対応すれば、必要書類の取得費だけで済むでしょう。場合によっては数十万円程度の大幅なコストカットを実現できます。

必要最小限の費用で相続手続きをしたい場合は、自分で行うメリットは大きいでしょう。

デメリット

相続手続きを自分で行うと、以下のようなデメリットがあります。

自分で相続手続きをするデメリット
  • やることが多くて時間がかかる
  • 平日の日中に時間を作る必要がある
  • 登記漏れが生じやすい

手続きに必要な書類をすべて集めて、申請作業までするのはかなり大変です。各書類を収集する場所や、集めた書類を提出する場所もバラバラなので、すべて終えるのに最低でも1カ月以上はかかります。

必要書類を発行する役所や金融機関は土日休みであることが多く、書類に不備があったときなどの電話は平日に入ります。そのため、手続きを終えるまでの間、平日の日中に時間を作らなければなりません。

自分で相続登記をするときに起こりがちなのが、登記漏れです。法務局は申請書に記載された物件の登記を行うだけで、故人名義の物件を調査するわけではありません。

物件の特定は相続人が行う必要があるため、故人が所有していた物件を把握していないと登記漏れが起きます。

相続手続きを自分で行う場合でも、税理士との無料相談サービスを利用することを検討してもいいかもしれません。ココカラ相続などのサービスであれば相談手続きについて確認できます。

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相続手続きを自分でする流れ

自分で相続手続きをするときは、以下の流れで進めていきましょう。

  1. 相続財産を特定する
  2. 必要書類を揃える
  3. 遺産分割協議を行う
  4. 申請書を作成する
  5. 法務局へ申請する
  6. 銀行で払い戻し手続きをする
  7. 相続税の申告をする

各手続きについて詳しく解説します。

1.相続財産を特定する

最初にやるべきことは、相続財産の特定です。被相続人が相続発生時に所有していたプラスの財産とマイナス財産をすべて調査して特定する必要があります。

プラスの財産現金不動産・土地車貴金属生命保険金、など
マイナスの財産債務(借入金、買掛金など)保証債務家賃の滞納未払いの税金葬式費用

2.必要書類を揃える

相続手続きには複数の書類が必要になります。代表的な書類は以下のとおりです。

必要書類必要になる手続き書類の入手先
残高証明書遺産分割協議
相続税の申告
銀行など金融機関
被相続人の戸籍謄本相続人調査
不動産の相続登記
預貯金の名義変更や払い戻し
有価証券の名義変更・売却・解約
自動車の名義変更
相続税の申告
相続放棄限定承認の申し立て
被相続人の本籍地のあった市区町村役場
相続人全員の戸籍謄本相続人調査
不動産の相続登記
預貯金の名義変更や払い戻し
有価証券の名義変更・売却・解約
自動車の名義変更
相続税の申告
相続放棄や限定承認の申し立て
本籍地の市区町村役場
遺産分割協議書もしくは遺言不動産の相続登記
相続税の申告
預金口座が多い場合
相続人同士のトラブルが予想される場合
遺産分割協議書は相続人、遺言は被相続人が作成
(専門家による作成代行もあり)
相続人全員の印鑑証明書複数相続人がいる場合の遺産分割協議
不動産の相続登記
金融機関・証券会社での払い戻し手続き
相続税の申告
市区町村役場
被相続人の住民票の除票不動産の相続登記被相続人が最後に住んでいた住所の市区町村役場
不動産の登記事項証明書不動産の相続登記法務局
登記申請書不動産の相続登記法務局
固定資産評価証明書不動産の相続登記土地や建物が所在する市区町村役場

3.遺産分割協議を行う

相続人と相続財産が明らかになったら、相続人による遺産分割協議を行います。遺産分割協議では、遺産の分け方を話し合います。

遺産分割協議は、相続人全員の合意のもとで出席が必要です。相続人が1人でも欠けた場合は、協議自体が無効となります。

遺産分割協議が終わった後は、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書には誰がどの財産を相続するかなどの具体的な内容を明記し、相続人全員で署名・押印します。

遺産分割協議書は、預貯金や不動産などの相続手続きに必要なので、正しい方法で作成しないと無効になります。記載内容が明確だったり不十分だったりすると、相続人間でトラブルが生じてしまう原因にもなるので、細かい文言まで慎重に作成しましょう。

遺言書がある場合は遺言書通りに分けるため、遺産分割協議や遺産分割協議書の作成は不要です。

4.申請書を作成する

必要書類がすべて揃ったら、申請書を作成しましょう。申請書や相続税申告書の書き方には細かなルールがあり、必要事項を漏れなく記載する必要があります。相続用の登記申請書は法務局ホームページから入手可能です。

申請書の提出時にチェックはないので、不備があると後日修正を求められる場合があります。申請自体がやり直しになることもあるので、不安な場合は専門家にサポートを求めましょう

5.法務局へ申請する

法務局の申請方法には、以下の3種類があります。 

窓口申請書類一式と申請書に押印した印鑑を持参して申請
郵送申請書類一式を法務省に郵送して申請
オンライン申請申請時に電子署名や電子証明書が必要

最も手軽な方法はオンライン申請です。インターネットを利用するので自宅やオフィスなどからいつでも申請ができて、手数料の負担も低いのがメリットです。

法務局に出向く時間がない場合は郵送も可能ですが、書類の不備があったときにすぐに対応できません。万一のことに備えて、普通郵便ではなく書留郵便で送りましょう。

手続きに自信がないなら、法務局まで足を運び、窓口で申請をする方法がおすすめです。窓口で申請すれば内容に不備があった場合に、その場ですぐに対応ができます。また、わからないことがあれば相談にのってもらえます。

6.銀行で払い戻し手続きをする

預貯金を相続したら、金融機関で預貯金の払い戻しの手続きをしましょう。手続きをする際は、本人確認書類や通帳・キャッシュカードなどを持参し、解約請求書などの書類を提出します。

基本的に1回で手続きが終わることはなく、最低でも2回の手続きが必要です。特にゆうちょ銀行で投資信託があるケースでは、手続きが煩雑になる傾向があります。

信用金庫の場合は、担当の支店に直接行って手続きをしなければなりません。支店が遠方にある際は、手続きに手間がかかるため大変です。

故人が契約してた金融機関の数が多いと、何回も足を運ばなければなりません。手続きは平日の営業時間内に限られるため、仕事を休まなければならない場合もあります。

7.相続税の申告をする

基礎控除額以上の遺産を相続した場合は、相続税の申告が必要です。相続税の基礎控除額は、以下の計算式で求められます。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

相続財産が3,600万円以下であれば、相続税の申告は必要ありません。


基礎控除額を超える場合は、相続開始の翌日から10カ月以内に申告して納税します。

納税方法は複数あり、金融機関や税務署の窓口をはじめ、インターネットバンキングやコンビニエンスストアの窓口でも納付できます。

相続手続きにかかる費用

相続手続きにかかる費用は、誰が対応するかによって異なります。

  • 自分でする場合
  • 専門家に依頼する場合

各ケースごとにかかる費用を解説します。

自分でする場合

自分でする場合の費用相場は、最低で約3,000円です。相続手続きに必要な書類とかかる費用は、以下のとおりです。

必要書類1通あたりの費用
戸籍謄本450円
除籍謄本750円
戸籍の附票300〜350円
住民票300~400円
住民票除票300〜350円
印鑑登録証明書300~400円
不動産の登記事項証明書600円
固定資産評価証明書300~400円

戸籍の附票、住民票、住民票除票、印鑑登録証明書、固定資産評価証明書の取得費用は、自治体によって異なるので事前に確認しておきましょう。

どの書類も市区町村窓口での取得が基本ですが、コンビニ交付に対応している自治体もあります。コンビニで書類を取得する場合は、窓口で取得するときよりも費用がやや安くなります。

被相続人の財産に不動産がなければ、登記事項証明書と固定資産評価証明書は不要です。相続財産が預貯金や有価証券、貴金属だけであれば、必要書類を取得する費用だけで済みます。

専門家に依頼する場合

専門家に相続手続きの代行を依頼する場合、依頼先によって費用が異なります。

依頼先費用対応可能な業務
弁護士20万円~相続手続き全般
司法書士10万円~不動産の登記手続
行政書士10万円~必要書類の取得、書類作成代行
税理士遺産総額の0.5〜1.0%相続税の計算、申告
銀行100万円~弁護士や司法書士の紹介

一般的に、遺産相続手続きは司法書士や行政書士に依頼したほうが、費用を安く抑えられます。ただし、弁護士なら紛争解決を含めた幅広い業務に対応できるため、何を依頼するかによって依頼先をよく検討しましょう。

銀行は直接手続きを行うのではなく、提携先の弁護士や司法書士の紹介を行います。そのため、仲介手数料などの費用がプラスされて割高になる傾向があります。

手続きをワンストップで行いたい場合は銀行が便利ですが、自分で直接専門家に依頼したほうが費用は抑えられるケースが多いです。

相続手続きを自分でしたほうがよいケース

相続手続きを自分でしたほうがよいのは、主に以下3つのケースです。

  • 遺産が少ない場合
  • 相続人が少ない場合
  • 時間に余裕がある場合

各ケースごとに解説します。

遺産が少ない場合

遺産が預貯金のみで不動産がない場合は、手続きは比較的スムーズなので自分だけでも対応できます。預貯金のみなら財産評価を行いやすいため、専門知識や面倒な計算は必要ありません。

土地・建物や株の評価は複雑で、専門的な知識が必要です。故人が賃貸物件をいくつも所有していた場合には、手続きがかなり複雑になるので、専門家の力を借りたほうがよいでしょう。

相続人が少ない場合

相続人が配偶者と子供だけという場合や1人しかいない場合は、必要な書類の収集に手間がかからないため、自分だけで手続きを済ませられるでしょう。

相続登記をする際、相続人全員分の戸籍謄本を用意する必要がありますが、相続人が少ない場合は手間もさほどかからないといえます。

遺言がない場合には遺産分割協議が必要ですが、相続人が1人しかいない場合は、遺産分割について話し合う必要はありません。すべての手続きが簡潔なので、比較的スムーズに進められるでしょう。

時間に余裕がある場合

市区町村役所や法務局は平日の日中のみの対応なので、時間に余裕がある方に向いています。

代理人に頼んだり郵送でとり寄せたりする方法もありますが、申請の前に相談したいという場合は日中に限られます。役所や法務局が遠方にある場合は、往復するだけでも時間がとられるでしょう。

銀行口座の名義変更なども、金融機関の窓口が空いている平日しかできません。平日に休みが取れる、またはまとまった休日調整ができるのであれば、自分で相続手続きをこなせるでしょう。 

多くの方にとって相続手続きは不慣れなものなので、準備には多大な時間と労力がかかります。その意味でも、手続きに必要な時間を確保できることも条件の一つといえるのです。

相続手続きを専門家に任せたほうがよいケース

相続手続きを専門家に任せたほうがよいのは、主に以下4つのケースです。

  • 相続関係が複雑な場合
  • 相続人同士の仲が悪い場合
  • 遠方にある不動産を相続する場合
  • 相続税の申告期限まで時間がない場合

各ケースについて解説します。

相続関係が複雑な場合

相続関係が複雑な場合は、最初から専門家に任せたほうがよいでしょう。相続関係が複雑な場合は、具体的に以下のケースです。

相続関係が複雑なケース
  • 故人が離婚と再婚を繰り返して異父(母)兄弟がいる
  • 認知した子がいる
  • 養子縁組や離縁をしている

上記の場合には、戸籍謄本をしっかり読まないと法定相続人を間違える可能性があるので注意が必要です。

相続関係が複雑だと、相続分の計算も複雑になります。相続人間のトラブルを避けるためにも、早い段階で専門家に相談したほうがよいでしょう。

相続人同士の仲が悪い場合

相続人同士が不仲であると、遺産分割協議がまとまりにくいため、専門家のサポートを受けたほうがいいでしょう。

複数の相続人がいる場合、本来なら必要書類の収集を分担して協力できますが、仲が悪ければ協力できません。遺産分割協議も進まないため、相続手続きがいつまで経っても終わらなくなります。

相続手続きはトラブルもつきものですが、専門家がいるだけでトラブルを防げます。連絡を取りにくい相続人がいる場合も、専門家に代理で協議を進めてもらうのがよいでしょう。

遠方にある不動産を相続する場合

不動産の所在地が住んでいる場所から離れている場合、法務局の手続きなどに支障をきたすため、専門家へ依頼するのが無難です。

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局への申請が必要です。そのため、東京に暮らしている相続人が札幌市にある実家の相続登記を申請する場合は、東京法務局ではなく札幌法務局に申請しなければなりません。

登記はオンラインでも申請できますが、電子署名の利用登録などに手間がかかるため、法務局か郵送で手続きするのが一般的です。

専門家ならオンライン申請に対応している場合が多いため、全国どこの物件でも相続登記を行えます。法務局とは何度かやり取りをするので、遠方にある場合には専門家に依頼して手続きの負担を減らしましょう。

相続税の申告期限まで時間がない場合

相続税の申告期限まで時間が少ししかない場合は、専門家に依頼したほうがよいでしょう。

相続税は、相続開始の翌日から10カ月以内に必ず申告しなければなりません。遺産相続手続きの期限ギリギリで、資料作成や必要書類の収集などに失敗が許されない場合は、専門家に依頼したほうが安心です。

ただし、あまりにも期限ギリギリだと、割増料金を請求されるケースがあります。税理士に依頼する場合は、なるべく早めに決断しましょう。

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