相続登記に遺産分割協議書は必要?書き方のポイントも解説

相続登記の申請書類に遺産分割協議書が必要か分からず悩んでいませんか?

結論からいうと、遺言があるときや法定相続分どおりに遺産を分割するとき、遺産分割協議書は不要です。遺産分割協議でまとまった内容を登記したいときは、遺産分割協議書を法務局に提出しなくてはいけません。

今回は相続登記に遺産分割協議書が必要・不要なケースや書き方のポイントをご紹介します。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続登記で遺産分割協議書が必要なのは遺言書がないときや、法定相続分と異なる相続が行われたとき
  • 相続登記で遺産分割協議書が不要なのは相続人が1人だけのときや、遺産分割協議がまとまらず調停・審判を行うとき
  • 不動産のみ別個で作成した遺産分割協議書も有効

相続登記に遺産分割協議書は必須ではない

相続登記では、必ずしも遺産分割協議書が必要になるわけではありません。

登記の手続きでは、申請書とともに対象の土地や相続人を表す添付書類の提出が求められます。遺産分割協議書もこの中の1つですが、遺産分割協議で財産の分配が決まったときにのみ添付が必要です。

遺言や法定相続分どおりの相続であれば提出は不要です。このように、遺産分割協議書が相続登記で必要か否かはケースによって異なります。

相続登記に遺産分割協議書が必要な場合

相続登記の際に遺産分割協議書が必要になるのは2つのケースです。

  • 遺言書が存在しないとき
  • 法定相続分と異なる遺産分割が行われたとき

相続登記に遺産分割協議が必要なケースについて解説します。

遺産分割協議を行わないのであれば、相続登記の手続きに協議書の添付は不要です。

遺言書が存在しないとき

被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合、相続登記の添付書類として遺産分割協議書が必要です。なぜなら誰がどれだけ相続財産を譲り受けるかは、遺産分割協議によって決められるからです。

なお、遺言書がある場合でも、相続人全員の同意によって遺言と異なる内容の協議書を作成できます。

法定相続分と異なる遺産分割が行われたとき

遺産分割協議の結果、法定相続分と異なる内容で財産の分配が決まった場合も、遺産分割協議書が必要です。話し合いでまとまった内容を法務局に認めてもらうため、相続登記の申請書に遺産分割協議書の添付が求められます。

法定相続分とは、法定相続人が相続財産を取得する割合のことです。例えば配偶者と子供が相続人のケースでは、それぞれ1/2ずつ取得すると決まっています。

法定相続分で相続が行われる場合、相続人同士で話し合わなくてもよいため、協議書は不要です。

相続登記に遺産分割協議書が不要な場合

遺言書があるときや法定相続分どおりの遺産分割が行われたときは、相続登記に協議書を添付する必要はありません。また、相続人が1人だけのとき、遺産分割協議がまとまらず調停・審判を行うときも登記の申請書類として省略できます。

相続人が1人だけのとき

相続人が1人だけのときは遺産分割を考えなくてもよいため、協議書の作成は不要です。例えば被相続人の配偶者がすでに死亡していて、長男がすべての財産を譲り受ける場合が該当します。

2人いる子供のうち1人が相続放棄して、実質的に相続人が単独になったときも遺産分割協議書は必要ありません。

遺産分割がまとまらず調停・審判を行うとき

話し合いでは遺産分割がまとまらず、裁判所に調停や審判を申し立てるときも遺産分割協議書は不要です。遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が必須なので、認めない方が1人でもいれば作成できません。

家庭裁判所での調停でも合意に達するのが難しければ、審判で裁判官による判決を受けます。上記の結果は調停調書や審判書に記され、記載内容には不動産の分配方法も含まれます。

調停調書や審判書にすでに記されているため、財産の所有者を証明する遺産分割協議書を作らなくても問題ないのです。

遺産分割協議書のひな形は?

遺産分割協議書のひな形は法律事務所や行政書士事務所のHPから無料でダウンロードできます。法務局が公開している記載例を参考にして作成を進めると、記載事項の漏れやミスを防げるでしょう。

相続人の数や不動産の種類に応じて協議書の記載内容は違います。フォーマットを使えば1人で作ることも可能ですが、専門家でないとわからない書き方のポイントがあるのも事実です。遺産分割協議書の記載で少しでも迷うところがあるなら司法書士への相談をおすすめします。

遺産分割協議書の書き方のポイント

遺産分割協議書を書くときのポイントは次のとおりです。

  • 不動産の記載内容は登記簿と一致させる
  • 財産の内容は具体的に記載する
  • 押印は実印で行う必要がある

上記を守らないと申請が通らないので、相続登記を自分で行う場合は注意が必要です。詳しい書き方のポイントについて解説します。

不動産の記載内容は登記簿と一致させる

遺産分割協議書に不動産の詳細を記載する際は、登記簿の内容と一致させましょう。法務局に対して土地や建物の情報が正確に伝わらないと、登記申請は認められないためです。

遺産分割協議書には、所有者名や住所、地番などを記載する箇所があります。「〇〇番地〇」を「〇〇-〇」のように省略した場合、申請が受け付けられない場合があります。正しく遺産分割協議書を作成するには、事前に法務局で登記簿を取得しましょう。

財産の内容は具体的に記載する

遺産分割協議書には「相続人Aが不動産の一切を取得する」という曖昧な記載は認められません。土地であれば所在・地番・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面などまで記載します。

登記事項証明書の記載内容をそのまま転記してください。ただし後日判明した財産の内容については、具体的に記載しなくても問題ありません。

例えば「新たな遺産を発見したときは再度全員で協議する」「後日発見した不動産は相続人Aが取得する」などが考えられます。

押印は実印で行う必要がある

遺産分割協議書に必要な相続人による押印は、実印で行わなければいけません。遺産分割の場合、相続登記の申請では印鑑証明書の添付も求められます。整合が取れないと差し戻しを受けるため、必ず実印を押しましょう。

場合によっては実印を持っていない、協議の内容に納得がいかない等の理由で押印してもらえないこともあります。相続登記には実印が必須だと事情を説明して、新たに印鑑を作れないか、意思を曲げる気はないか打診しましょう。

どうしても実印による押印が難しければ、家庭裁判所に申し立てて調停の手続きに移行しなくてはいけません。協議書が複数枚に及ぶ場合のページ間に押す契印や、記載を間違えた際の訂正印も実印を使用するのが一般的です。

相続登記の遺産分割協議のQ&A

相続登記の遺産分割協議書でよくある疑問をまとめました。初めて遺産分割協議書を作成する方や、相続登記とは何かわからない方はぜひ参考にしましょう。

不動産のみの遺産分割協議書は有効?

相続財産のなかで、不動産のみ記載した遺産分割協議書の作成も認められています。誰がどの財産を取得すべきか完全に決まっていなくても、一部の協議結果を反映するだけで問題ありません。

相続登記を早く終わらせたいときや、預貯金・株式等の詳細を他人に知られたくないときに有効です。しかし不動産の登記は漏れが発生しやすく、書き方も間違えやすい財産です。

例えばマンションの遺産分割の場合、専有部分の部屋だけでなく、建物や敷地権の詳細まで記載します。

土地や戸建ての相続と比べて記載事項が多いため、いつも以上に抜け漏れがないように注意が必要です。

遺産分割協議書の有効期限は?

遺産分割協議書には有効期限ありません。作成時から10年や20年が経過した書類も有効です。いつまでに協議を終わらせるべきという締め切りもないため、なかなか遺産分割協議がまとまらなくても罰則は受けません。

しかし遺産分割協議自体に期限がなくても、関連する制度が締め切りを迎えて損をしてしまう場合があります。例えば相続放棄の期限は相続の事実を知ってから3カ月以内です。さらに相続税の申告期限は相続開始から10カ月後です。

遺産分割協議が遅れることで、相続放棄ができなくなったり申告期限に間に合わず追徴課税が課されたりする危険があります。

遺産分割協議書は手書きでないとダメ?

遺産分割協議書を直筆で書くとするルールは存在せず、Word等のワープロを使って作成しても問題ありません。紙のサイズや横書き・縦書きの定めもなく、記載事項以外は自由な書き方が認められています。

土地や建物などの情報をパソコンで記載した場合、直筆で署名すべきか迷うこともあるでしょう。しかし氏名も手書きである必要はなく、パソコンで印字したもので問題ありません。

相続人が高齢で自筆が難しい場合、ご自身の名前や住所を書き入れるだけでも相当な体力を消費します。手が不自由な方で直筆が難しい場合もあるでしょう。

相続人の代表者等が相続人全員の氏名をパソコンで印字し、ハンコを押すだけでよい状態にしておくと、手続きがスムーズに進みます。

司法書士に作成を依頼したときの相場は?

司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼する場合、相場は6万円~8万円です。この費用には協議書の作成のほか、相続登記の申請や必要書類の取得も含まれています。

コストを削減したい場合はご自身で戸籍や住民票を取得し、登記と遺産分割協議書の作成のみ依頼するのも一つの手です。

協議書の作成を代行できる専門家は、司法書士以外にも弁護士や税理士、行政書士なども存在します。いくつかの候補があるなかで司法書士に依頼するメリットは、相続登記まで一貫して対応できる点です。

他人の登記事務の代行は司法書士の独占業務の一つです。弁護士も報酬を受けて他者の登記を代わりに行う権利を持っていますが、相場が高く、コストを抑えたい方にはあまりおすすめできません。

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