直葬を執り行いたいと思っても、具体的な流れがわからず困っていませんか?
直葬では通夜式や告別式を行わないため、葬儀の流れはいたってシンプルです。ただし、24時間以上安置するなど最低限のルールもあるので、事前に確認しておく必要があります。
本記事では、直葬の具体的な流れと、直葬のメリットやデメリットを解説します。
- 直葬は通夜式や告別式などをせずに、火葬のみを行う
- 直葬は費用が安い反面、周囲とトラブルになりやすいデメリットがある
- 直葬を行う前、親族や菩提寺の理解を得ることが大事
直葬とは?
直葬とは、通夜式や告別式などの儀式をせずに、火葬のみを行う葬儀です。
一般的な葬儀では1日目に通夜式、2日目に告別式と火葬を行いますが、直葬では火葬だけを行います。さまざまなプロセスを省いたシンプルな葬儀なので、一般葬と比べて短期間で終わることが多いです。
参列者は家族や親族がほとんどで、少数の参列者のみで執り行います。
近年では宗教観の変化や経済的な理由から、直葬を選ばれる方が増えています。
直葬の読み方
直葬の読み方は「ちょくそう」です。ほかにも「じきそう」「じかそう」などの読み方があり、どの読み方も間違いではありませんが、「ちょくそう」が一般的です。
直葬には「直ちに葬る」「直接葬る」という意味があり、葬儀業界では比較的新しい言葉になります。
直葬と火葬式の違い
直葬と火葬式は名称が違うだけで、内容はほぼ同じです。ただし、僧侶を招いて読経をしてもらう時間があるかないかの違いがあります。
火葬式は、火葬炉の前で僧侶にお経をあげてもらい、供養の時間を取る場合に使います。読経は行わずに火葬だけを行う場合は、直葬と呼ぶのが一般的です。
火葬式 | 火葬炉の前で僧侶にお経をあげてもらい、供養の時間を取る |
---|---|
直葬 | 読経は行わずに火葬だけを行う |
火葬式よりも直葬のほうが簡素で、最低限必要なことをする意味合いが強いと言えるでしょう。
直葬の流れ
直葬は葬儀や告別式などの儀式を省略しているため、一般的な葬儀より流れがシンプルです。
ここでは、臨終から骨上げまでの流れを順番に解説します。
- 臨終
- お迎え
- 安置
- 納棺・出棺
- 火葬
- 骨上げ
1.臨終
死亡が確認されたら、遺体の搬送手配をします。亡くなった場所が病院の場合は、葬儀社へ連絡をしましょう。ほとんどの葬儀社は24時間365日対応が可能で、深夜でもすぐに対応してもらえます。
事前に葬儀社を決めていないときは、病院からの紹介も可能です。
逝去した場所が自宅の場合は、かかりつけ医または近郊の病院に連絡を入れて指示を仰ぎます。事件性が疑われるときは、遺体を移動させずに警察の判断を仰ぎましょう。
遺族は医師から「死亡診断書」を受け取ります。警察で死亡が確認された場合は「死体検案書」を受け取りましょう。
死亡診断書(死体検案書)は、死亡届の提出や火葬許可証を受け取る際に必要です。
2.お迎え
病院では遺体を長期間安置できないので、安置場所への搬送が必要です。
葬儀社に依頼すると、1時間程度で搬送車が迎えに来ます。到着後は葬儀社のスタッフにより搬送準備が行われるため、遺族が対応する必要はありません。
自宅で亡くなって自宅に安置する場合は、搬送は不要です。
3.安置
自宅や安置施設へ遺体を搬送したあとは、24時間以上安置します。法律上、死後24時間は火葬できないので、火葬までの間は安置所で最期のときを過ごします。
安置場所は自宅が一般的です。自宅がマンションの高層階でエレベーターが使えないときや、室内に十分な安置スペースが確保できないときは、葬儀社の安置所に安置します。
4.納棺・出棺
24時間以上安置の時間をおき、火葬の日を迎えたら、安置している場所にて遺族立ち合いのもと納棺します。
納官後の棺には、お花や故人が好きだったものを入れられます。ただし、以下の不燃物や危険物は一緒に入れられません。
- 眼鏡
- 結婚指輪
- 腕時計
- アクセサリー
- メガネ
- ガラス
- ライター
- お金
素材によっては一緒に入れられないため、不安な場合は葬儀社の担当者や火葬場に確認しておきましょう。
遺体は棺に納める前に湯灌(ゆかん)を行います。湯灌とは遺体をお湯で拭き、体を清めることです。
男性は髭剃り、女性は死化粧をほどこし、仏衣(ぶつえ)で包んでから棺へ納めます。納棺から出棺までにかかる時間は、長くても1時間です。
5.火葬
火葬場に搬送したあとは、すぐに火葬となります。宗教的儀式を取り入れたい場合は、火葬炉前で僧侶に読経をしてもらい、焼香を行います。
火葬式は故人と過ごす最後の時間です。通常は5~10分程度の短時間で最後のお別れをします。ただし、火葬炉前でお別れができない火葬場もあるので、事前に確認しておきましょう。
火葬にかかる時間は1時間程度で、遺族は控え室で待機します。
6.骨上げ
火葬後に、遺骨を骨壷に納める「骨上げ」をします。骨上げは喪主を始めに、血縁の深い順に2人1組で行われ、箸で遺骨を同時に挟んで骨壺に納めます。足側から遺骨を拾い上げ、喉仏の骨を最後に納めるのがしきたりです。
骨上げの方法は地域により異なり、東日本では遺骨をすべて収める「全収骨」、西日本は遺骨の一部を収める「部分収骨」が一般的です。
直葬を自分でする方法
直葬は手順が少ないため、自分で行うこともできます。ここでは、直葬を自分でする方法を解説します。
- 搬送車を用意する
- 死亡届を市役所へ提出する
- 火葬手続きをする
- 納骨先を確保する
搬送車を用意する
遺体は病院で長期保管ができないため、搬送車を用意して、自宅や斎場の安置施設などに運搬する必要があります。
搬送は自家用車でも可能ですが、さまざまなリスクがあるため、霊柩車を手配するのが一般的です。霊柩車の価格は距離や時間によって異なりますが、10Km以内の搬送だと2~3万円程度が相場です。
搬送は病院から安置場所までと、安置場所から火葬場までの2回必要になります。
死亡届を市役所へ提出する
死亡届とは、人の死亡を役所に届け出る書類のことです。死亡届の提出期限は、死亡を知った日から7日以内と定められており、死亡届を出さないと火葬や世帯主変更などの手続きができません。
ご自身で提出する際は、期限までに市役所に死亡届を提出して、火葬許可証を受け取りましょう。
届出人 | 親族、同居人など |
---|---|
提出期限 | 死亡した事実を知ってから7日以内 (国外で亡くなった場合は3カ月以内) |
提出先 | 市区町村役所 (本籍地、死亡地、届出人の所在地) |
必要書類 | 死亡診断書または死亡検案書 届出人の身分証明書 |
届出地に該当しない窓口での死亡届は受理されないので注意が必要です。
死亡届を提出する前に、コピーをとっておきましょう。死亡届のコピーは遺族年金の受給や生命保険金の請求など、さまざまな手続きに必要になるため、複数枚とっておくことをおすすめします。
火葬手続きをする
火葬の手配は、住民票のある自治体で行うのが一般的です。死亡届が受理されると火葬(埋葬)許可証が発行されるので、近くの火葬場へ持参しましょう。
火葬場受付では、火葬許可申請書と埋葬許可申請書用紙に記入し、火葬許可証と一緒に提出して火葬の日程を予約します。
火葬費用は公営と民営で異なります。
公営火葬場 | 無料〜5万円程度 |
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民営火葬場 | 5~15万円 |
公営火葬場の場合、地域によっては無料です。ただし、休憩室(控室)が別料金になっているところもあるので、事前に確認しておきましょう。
火葬当日は約1時間程で火葬が終わり、スタッフの指示に従って骨上げをして終了です。
納骨先を確保する
骨上げした遺骨を納める場所の確保も必要です。 納骨場所を確保できなければ、自宅等で遺骨を安置します。
直葬では菩提寺(ぼだいじ)に納骨を拒まれるケースがあるので、別の納骨先を見つける必要があります。
菩提寺以外の納骨先は、以下のとおりです。
- 公営墓地
- 納骨堂
- 樹木葬
公営墓地は地方自治体が運営しており、管理料が安いのがメリットです。ただし地域によっては希望者が多く、抽選に外れてしまうこともあります。
納骨堂は建物内で遺骨を安置する施設で、ロッカーに安置するものなど形式はさまざまです。近年は、墓石を持たない樹木葬を選ぶ方も増えています。
直葬のメリット
直葬には主に3つのメリットがあります。
費用を安く抑えられる
直葬の大きなメリットは、費用を抑えられる点です。
葬儀の形式 | 平均費用 |
---|---|
一般葬 | 100〜200万円 |
直葬 | 10〜30万円 |
通夜と葬儀を行い、僧侶に読経を依頼する一般葬は最低でも100万円はかかります。対して直葬は通夜や告別式を行わないため、返礼品にかかる費用や飲食費がかかりません。僧侶を呼ばないケースも多く、基本的に火葬費用だけで済みます。
10万円台の低価格プランを提供する葬儀社もあるため、少しでも費用を節約したいという方に最適な葬儀形式と言えるでしょう。
▼こちらの記事では、直葬の費用について詳しく解説しています。気になる方はぜひご一読ください。
参列者への対応をせずに済む
直葬は身内のみで執り行われるので、弔問客の対応や接待は不要です。受付係の手配や参列者への挨拶、会食の準備などの手間がかからないので、故人とゆっくりお別れができます。
直葬は1日で済むため、参列者側も手間と時間を抑えられます。拘束時間が短いため、高齢の参列者も身体的負担を軽減できるでしょう。
遺族と参列者の双方に負担がかからないのも、直葬が選ばれる理由と言えます。
葬儀後の対応も最小限で済む
直葬は香典のお返しや、手伝ってくれた近所の方への挨拶など、葬儀後の対応を最小限に抑えられます。
一般的な葬儀では、葬儀後に香典返しや挨拶まわりをしなければならず、それなりに労力を要します。葬儀社に香典返しの手配を依頼すれば負担を軽減できますが、基本的には追加費用が必要です。
直葬は参列者が少ないため、挨拶まわりや香典返しの手配も最小限で済みます。直葬を選択すれば、精神的な負担も軽減できるでしょう。
直葬のデメリット
直葬はメリットが多い反面、いくつかのデメリットがあります。デメリットも把握したうえで、直葬をすべきか慎重に判断しましょう。
菩提寺とトラブルに発展する恐れがある
直葬は宗教的な儀式を省いているため、事前に承諾を得ておかないと菩提寺とトラブルになることがあります。
特に檀家として寺院との付き合いがある場合は、事前の相談が欠かせません。葬儀は仏教徒にとって大切な儀式であり、式の存在で檀家と寺の関係が成り立っています。
菩提寺には通夜や葬儀を頼むのが一般的なので、中には直葬を快く思わない僧侶もいるのです。直葬を選んだことで檀家と寺の関係性が崩れ、納骨の拒否や、離檀料を請求されることもあります。
戒名が必要な宗派だと、戒名のない故人は受け入れられないでしょう。
親族への同意が得られないことがある
親戚から直葬への理解や同意が得られず、トラブルになることもあります。直葬は通夜式や告別式を行わないため、親族の中には快く思わない方がいるかもしれません。
また、直葬は基本的に近親者のみで執り行われるので、参列できない親族から不満が出ることもあります。直葬について事前に説明をしておかないと、後日トラブルになる可能性が高いでしょう。
お別れの時間を充分にとれない
直葬は火葬のみを行う葬儀形式のため、限られた時間の中でお別れをしなくてはなりません。火葬炉前でお別れできる時間は5~10分ほどしかないため、直葬に参列すると短いと感じる方もいるでしょう。
出棺のタイミングでお別れの時間を取れますが、直葬は基本的に身内のみで行うため、参列できない方だとお別れの時間を充分にとれません。
ゆっくり別れを惜しめなかったと終わってから感じて、後悔する可能性もあります。
直葬を行うときの注意点
直葬には一般葬と形式が異なるため、いくつか注意すべき点があります。
菩提寺には事前に相談する
菩提寺がある場合は、事前に相談して了承を得る必要があります。
通夜や告別式を行うときは菩提寺に依頼するのが通例です。経済的な理由や遠方で直葬を行うなどの事情がある場合は、率直に話してみましょう。直葬でも納骨は可能か、戒名は付けられるかなどを確認しておくことも大事です。
無断で直葬を行うと、納骨できなくなったり、今後の法事への影響が出たりするため、直葬にする理由を述べてから準備を行いましょう。
菩提寺との関係を維持するために、読経や戒名だけ依頼するのも1つの方法です。
周囲の理解を得る
直葬を選ぶ際は、親族や知人などの周囲に了承を得てから準備を進めましょう。事後連絡だと不満の声が上がりやすいので、早めに話しておくことが大事です。
従来の形式やしきたりにこだわる方がいる場合は、理由を説明する際に「故人の希望だった」と言うと、了承してもらいやすくなります。直葬のメリットを1つずつ丁寧に話せば、親族も納得しやすいでしょう。
葬儀社の費用を確認する
直葬の費用相場は10~30万円ですが、オプションサービスを追加依頼すると40万円ほどかかることもあります。提案された直葬のプランがあまりにも安すぎる場合は、高額な追加費用を請求される可能性があるので注意が必要です。
下記は別料金で請求される場合があります。
- 2回分の搬送料(病院から安置所、安置所から火葬場)
- 搬送助手料
- 安置施設3日分の使用料
- 火葬料
- 施工運営料
- 戒名や読経をあげてもらう僧侶への謝礼
- 棺・布団・シーツ・骨壺・焼香道具など
直葬プランは葬儀社によって異なるので、提示されたプランにどのサービスが含まれているかを必ずチェックしましょう。
直葬のマナー
直葬のマナーは一般的な葬儀とほぼ同様ですが、異なる点もあります。ここでは、直葬における基本的なマナーをご紹介します。
常識の範囲内の服装にする
直葬は親しい親族のみが集まることがほとんどなので、参列者は喪服に準じた服でも構いません。
ただし、派手な色や柄は避けて、常識の範囲内の服装にしましょう。哀悼の意を表すために、以下の服装を選ぶのが無難です。
男性 | 準喪服のブラックスーツ 白のワイシャツ 黒いネクタイ 黒の靴下 黒い靴 |
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女性 | 黒のフォーマルスーツ、ワンピース 黒のストッキング 黒のパンプス |
男性はワイシャツのみ白で、ほかはすべて黒です。女性はいずれも黒色を選びます。
▼こちらの記事では直葬の服装マナーについて解説しています。その他のマナーも解説しているので、葬儀前にマナーを知りたい方はこちらの記事をご一読ください。
食事の場は設けない
直葬では基本的に食事の場を設けません。通夜振る舞いや精進落としなどの会食はないので、参列する際は食事を済ませておきましょう。
ただし、火葬場によっては待機時間や火葬後に食事の場を設けることもあります。
香典には返礼品を贈る
直葬でも香典には返礼が必要です。いただいた香典の額の3分の1から半額程度を目安に、当日もしくは後日返礼品を贈ります。
香典返しの金額や日取りは地域によっても異なるため、地域の風習に従いましょう。
香典が必要ない場合は、事前連絡がマナーです。
▼こちらの記事では、香典や香典返しの相場やタイミングについて詳しく解説しています。一般葬との違いについても解説しているので、ぜひご一読ください。
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