葬儀の形が多様化し、近親者だけで行う家族葬が増えてきました。「興味はあるけれど、どのくらいの費用を見込んでおけばよいのだろう?」と不安を覚える方もいるかもしれません。
家族葬は、故人に近い親族などだけで行う小規模な葬儀で、葬儀費用の総額を抑えられる傾向にあります。一方で、規模に関わらず必要な費用は抑制できないため、支出自体は一般葬と変わらない可能性も否めません。
この記事では、家族葬の特徴や費用の内訳、安く抑えるためのポイントをご紹介します。家族葬を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
- 家族葬とは近親者だけを招いて執り行う小規模な葬儀
- 参列者が少ない分費用は安くなるが、お布施などは一般葬と変わらない
- 参列者1人あたりの費用はむしろ高くなりがちなため、見積りなどを精査することが必要
家族葬とは?
家族葬とは、故人の家族やとりわけ親しかった友人など、近親者だけを招いて執り行う小規模な葬儀です。
明確な基準があるわけではないですが、参列者を30人程度までに限った葬儀が家族葬と呼ばれます。
人数を限定することで、葬儀の形には大きな影響を及ぼします。家族葬の特徴やメリット・デメリットを詳しくみていきましょう。
一般の葬儀との違い
家族葬と一般葬とでは、参列者の人数を基準に区別されるケースが多いですが、明確な違いは「会葬者を限定するか否か」という点です。
一般葬では広く訃報を送り、葬儀に関する案内を伝えます。親族はもちろんですが、仕事関係や友人の方などを含め、訃報に触れた方が通夜や葬儀に参列するかの判断をするといってもよいでしょう。
一方の家族葬は、参列者を近親者に限るため、それ以外の方の会葬を辞退します。結果的に小規模な葬儀となるのです。
家族葬のメリット
家族葬のメリットとして挙げられるのが、喪主を始めとした遺族が会葬者の対応に追われないことでしょう。
一般的な葬儀では、縁の遠い親戚の方や仕事でのつながりがある方など、さまざまな弔問客、会葬者への対応に時間を割かねばなりません。故人を見送るという以上に、葬儀を主催する立場として、参列者をもてなさなければならないからです。
しかし、家族葬は案内した方しか参列しないことから、事前に参列者の数を正確に把握でき、結果的に費用を抑えることにつながります。
また、参列者の数を事前に把握できない一般葬の場合、会場の大きさや用意する飲食物などに余裕を持たせなければなりません。近親者だけを招く家族葬では会場や飲食物に余裕を持たせる必要がなく、費用の抑制につながるのです。
家族葬のデメリット
家族葬にもデメリットがもちろん存在します。懸念されるのは、会葬の案内を送らなかった親戚や友人とのトラブルです。
確かに家族葬の認知度は上がってきているとはいえ、まだまだそれが一般的とまではいえません。葬儀に招かなかったことに不満を感じる方が出てもおかしくはないのです。
また、葬儀後に自宅への弔問を希望する方がいれば、その対応が必要になることもあるでしょう。
葬儀では近親者だけで落ち着いて故人を見送れる一方で、結果的にその後の弔問客への対応が負担になる可能性も否めません。
一般的に葬儀費用が安く抑えられると考えられている家族葬ですが、弔問客が少ないことは香典が少なくなることにもつながります。
実際に負担する費用という面では、逆に高くなってしまう可能性があることもデメリットです。
家族葬の費用相場
家族葬の費用は、参列者数や葬儀の形式によって異なるものの、平均的な相場は100万円程度といわれています。
ただし、家族葬であっても宗教者へのお布施などの費用は一般葬と変わりません。
費用が抑えられるのは、規模が小さいことで会場費や飲食費などが抑えられることに起因しています。
家族葬の費用の内訳
家族葬にかかる費用の内訳も、基本的には一般葬と変わりません。
斎場の使用や運営など葬儀そのものにかかる費用、会食や返礼品などの飲食接待費用、宗教者へのお布施などにかかる費用です。
それぞれの内容をみていきましょう。
葬儀一式費用
葬儀そのものにかかる費用は、斎場の使用にかかる費用、祭壇や棺などにかかる費用、スタッフの人件費、遺体の移送にかかる費用など、葬儀を執り行うためにかかる直接的な支出です。
このほか遺体の火葬などにも費用が掛かります。
- 斎場使用料
- 遺体の運搬費
- 祭壇
- 棺
- 位牌、遺影
- スタッフの人件費
飲食接待費用
飲食接待費用は、通夜振る舞いや精進落としなどの会食にかかる費用と、会葬御礼など返礼品の費用です。
参列者が多ければそれだけ費用も高額になるため、小規模な家族葬ではこれらの支出が抑えられます。
宗教者へのお礼
通夜や葬儀での読経、戒名に対するお礼として宗教者へ渡すのがお布施です。この支出に関しては、葬儀社の見積りには含まれない点も注意しましょう。
お布施は宗教者へのお礼という位置付けですから、明確な金額が決まっているわけではありません。さらに戒名には「位号(いごう)」という、いわゆるランクがあり、それに応じて費用が大きく変わる点も特徴です。
お布施の一般的な相場は20万~50万円程度といわれますが、ご自身で決めるのが難しければ、葬儀社に相談してみることをおすすめします。菩提寺があるのなら、「皆様はいかほど包まれますか?」と聞いてみるのもよいでしょう。
このほかに交通費としてのお車代、僧侶が会食を辞退した場合にはお膳料として、それぞれ5,000円~1万円を渡すのがマナーです。
家族葬と一般葬の費用比較
家族葬と一般葬の費用を比較して、大きな違いが生じるのは葬儀一式費用と飲食接待費用です。この2つに関しては葬儀の規模と費用が比例するため、小規模な家族葬では抑えられるポイントです。
家族葬に要する費用は全体で100万円程度、一般葬の場合は150~200万円程度といわれています。これは、参列者の人数が少ないことで会場の規模が小さく済む点や、会食の費用が抑えられることが要因です。
一方で、読経や戒名に対するお礼などに関しては参列者の数が影響しないため、家族葬も一般葬も変わりません。つまり、参列者1人あたりの費用で考えれば、一般葬よりも高くなる可能性もあり得ます。
家族葬の費用を安くするポイント
家族葬だからといって、必ずしも費用が安くなるとは限りません。近親者だけの落ち着いた環境で葬儀を行うというメリットに加えて、費用を抑えたいのであれば、いくつかの点を押さえておきましょう。
家族葬の費用を安くするために注意すべきポイントをご紹介します。
複数の見積りを比較する
不幸があった際にやるべき手続きは多岐に渡り、多忙な中で葬儀社を選ばなくてはなりません。しかし、できるだけ複数の葬儀会社から見積りを取って比較しましょう。
葬儀費用は、依頼した葬儀社によって変わります。項目ごとのいわゆる単価設定に違いがあるのはもちろん、想定されたグレードによる価格差も大きいです。
このため葬儀社の見積りを比較することで、どのような形で葬儀を行いたいか明確になってくるという側面もあります。
複数の葬儀社を比較する際には、見積りに含まれていない料金にも注意が必要です。例えば火葬料などは、葬儀社の料金に含まれていないこともあります。
会食の内容を見直す
葬儀にかかる費用の中でも、会食に要する支出は小さくありません。会食の内容を見直すことも費用の軽減につながります。
一般葬と違い、近親者だけで行う家族葬では「弔問客や会葬者をもてなすことを、さほど重要視しなくてよい」という利点があります。
会食の形式や内容にこだわらなければ、その分の費用を抑えられるのです。
一日葬を検討する
一日葬とは、通夜を行わずに告別式と火葬だけを1日で行う形式の葬儀のことです。家族葬のように「近親者だけに参列を制限する」という形式に限らず、一般の会葬も受けて行うこともできます。
通夜を行わないために費用が抑えられるだけでなく、参列者の時間的・体力的な負担を軽減することから、一日葬を選ぶ方も多いようです。
軽減できる費用は通夜振る舞いにかかる費用や参列者の宿泊費などですが、会場費に関しては必ずしも1日分で済むとは限りません。そもそも斎場の費用設定が2日分を想定している場合や、遺体を前日に運び入れなければならないケースもあるからです。
また一日葬は比較的新しい葬儀の形であるため、菩提寺がある場合には事前に相談する必要があります。通夜から葬儀・告別式、火葬という流れにはそれぞれの意味があり、それを省略することを好ましくないと考えるお寺は少なくありません。
不要なオプションを見直す
葬儀の形が多様化するにつれ、葬儀社が用意するプランにもさまざまなオプションが設定されているケースが少なくありません。祭壇や棺、花などを豪華なものに変更したり、返礼品や礼状を個別に選択したりするのが代表的な例です。
葬儀社が提示した見積りの中には、これらのオプションがあらかじめ組み込まれているケースもあります。近親者だけで小規模に葬儀を執り行うのであれば、必要のないものが含まれているかもしれません。
これらを見直すことも、合理的に費用を抑えるポイントです。
家族葬の費用に関するよくある質問
家族葬といえど、基本的な葬儀の流れは一般葬と変わりません。費用に関していえば、あくまでも規模的な要因でそれが抑えられるということに留まります。
さらに理解を深めるために、よくある質問もチェックしておきましょう。
家族葬の費用は誰が支払う?
葬儀費用を負担するのは施主とされますが、施主を立てずに喪主の方が兼任するのが一般的です。家族葬においても基本的には変わりません。
しかし実際には、明確な決まりがあるわけではありません。親族の方で話し合って決めるのがよいでしょう。
ただし、喪主の方が支払った後に他の親族に費用負担を請求すると、トラブルになる可能性が否めません。「どのような形式で、どれくらいの費用の葬儀を行うか」を決めるのが喪主であるからです。
このため親族に負担を求めたい場合には、事前に話し合っておきましょう。
遺産の中から葬儀費用を拠出する場合も同様です。
常識的な範疇で行われた葬儀であれば、遺産の中から拠出することも認められますが、これはあくまでも相続人の合意があってのこと。「家族葬の費用を遺産から支払いたい」旨を相続人の間で共有し、合意を得ておかなければなりません。
家族葬の費用は香典でまかなえる?
家族葬の費用が抑えられるのは、参列者が少ないことに起因しています。これは香典を持参する方が少ないことを意味しているため、香典で葬儀費用をまかなうのは難しいと考えられます。
香典には「葬儀費用の一部を参列者が負担する」という相互扶助の意味も込められており、実際に葬儀費用として活用されるのが一般的です。
家族葬にすることで会場や飲食に要する費用は抑えられるものの、お布施などの費用は変わりません。このため参列者1人あたりに換算した額は高くなりがちなため、香典だけで費用を捻出するのは困難といえるのです。
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