一般葬という言葉はよく聞くものの、具体的にどのような葬儀を指すのかわからない方もいるのではないでしょうか?
一般葬は日本における標準的な葬儀形式であり、多くの方に選ばれています。しかし、一般葬にはメリットだけでなくデメリットもあるため、葬式をする際は慎重な判断が必要です。
今回は、一般葬の特徴やメリット・デメリットを解説するとともに、式の流れや家族葬との違いをご紹介します。
- 一般葬とは、参列者を限定しない伝統的な葬儀形式のこと
- 一般葬と家族葬は、葬儀形式や参列者数、葬儀費用が異なる
- 一般葬は多くの方に見送ってもらえるが、準備や費用負担が大きい
一般葬とは?
一般葬は、日本で広く一般的に行われてきた伝統的な葬儀形式です。身内だけでなく、友人や職場の関係者など、故人と関わりのあった方が広く参列できます。
一般葬では、通夜と葬儀・告別式を2日に分けて行います。1日目の夕刻に通夜を営み、2日目に葬儀式と告別式を行うのが一般的です。
一般葬は参列者の数が多いことから、広い会場で行われるケースが多いです。
一般葬と家族葬の違いは?
家族葬とは、遺族や親戚のみで執り行う小規模な葬儀を指します。一般葬と家族葬には、主に以下4つの違いがあります。
葬儀の形式
一般葬と家族葬は、どちらも通夜・告別式を行いますが、家族葬は身内中心の小規模な葬儀ということもあり、一般葬よりも自由な形式を選択できます。
音楽葬などの「無宗教葬」や、通夜を行わない「一日葬」など、どのような形式の家族葬にするのかは故人や遺族で決められます。少人数で行うため、周りの目を気にせずに、納得のいく葬儀を実現できるでしょう。
一般葬は社会的な儀式としての側面が強いので、しきたりや地域の慣習、風習などを踏襲することが求められます。
参列者
一般葬と家族葬では、対象となる参列者の範囲が異なります。
一般葬では遺族や親戚のほか、故人の知り合いや勤務先の関係者、近隣住民などが出席するため、参列者の数が多いのが特徴です。
一方で、家族葬は参列者を家族や親族など近しい方に限定するため、一般葬よりも規模は小さくなります。家族葬の参列者数は30人以内が一般的で、親戚が少ないケースでは10名程度になることも珍しくありません。
葬儀費用
一般葬の平均相場は100〜120万円、家族葬の相場は60〜80万円となっており、一般葬のほうが高い傾向にあります。
一般葬は参列者の数が多く、世間体にも配慮する必要性があることから、結果として費用が高額になりがちです。
一方で、家族葬は参列者が少ないので、大きな会場を用意する必要がなく、返礼品や飲食代などの費用がかかりません。祭壇などにお金をかける必要もないため、費用を抑えやすいと言えます。
香典
一般葬は伝統的な習慣として、参列者から香典をもらうケースが多く、香典に対しては香典返しの品物を送るのが慣例です。近年は通夜や葬儀当日に香典返しの品物を渡す「即日返し」も増えています。
家族葬は身内だけで営むことが多いことから、香典を辞退する方が少なくありません。香典を辞退する場合の葬儀費用は、すべて持ち出しで払うことになります。
一般葬のメリット
一般葬には、主に3つのメリットがあります。
多くの方に見送ってもらえる
一般葬には故人と縁のあった方たちが参列するため、多くの方に見送ってもらえます。
勤務先の関係者など幅広い知人が出席するので、故人のいろいろな一面を知れます。故人が生前お世話になった方々に感謝の気持ちを伝えられ、同時に参列者から励ましをもらうこともあるでしょう。
故人とのお別れを大勢で語り合えるのは、一般葬ならではの魅力です。故人の友人や知人が多く、にぎやかな場を好んでいた場合には、一般葬が適しています。
香典収入が見込める
一般葬には多くの方が参列するので、ある程度の香典収入が見込めます。一般葬は家族葬よりも費用が高額になるケースが多いですが、香典収入によって葬儀費用の一部をカバーできます。
生前の付き合いが幅広かった故人の葬儀では、たくさんの方が香典を持って参列するので、持ち出し費用が発生しないことも珍しくありません。
香典収入によって葬儀費用の負担を軽減できるのは、一般葬ならではのメリットです。
あとで自宅に弔問に来るケースが少ない
一般葬では故人の知人や友人の大半が葬儀に参列するので、葬儀後に自宅に弔問に来る可能性が低くなります。葬儀前は準備に追われて疲れるかもしれませんが、葬儀後は比較的ゆっくりできます。
葬儀が終わったあとに心を落ち着かせてゆっくり休みたい方には、一般葬がおすすめです。
一般葬のデメリット
一般葬にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
準備に手間がかかる
一般葬は規模が一定以上になるため、遺族は各種準備に追われます。
葬儀社のサポートもありますが、遺族が決めることや手配するものもたくさんあるので、葬儀当日まで慌ただしくなりがちです。多くの参列者が見込まれる場合は、相応の負担がかかります。
葬儀の準備に時間を取られてしまい、故人とのお別れを偲ぶ時間を十分に取れないこともあります。故人とゆっくりお別れをしたい方や、葬儀の準備に多くの時間を割けない方にとっては、デメリットに感じるでしょう。
参列者への対応が必要になる
葬儀の参列者が多いと、対応に時間を取られて家族の負担になることがあります。参列者に気を遣ったり、おもてなしをしたりしなければならず、精神的にも肉体的にも疲れるでしょう。
また、仕事関係者や友人など参列者の範囲が広いので、予想以上に参列者の数が増えたり、逆に思ったほど参列者が集まらなかったりするなどのトラブルが考えられます。
実際の参列者数を予測するのは難しく、料理や返礼品の追加対応が必要になることもあります。参列者数の予測に関しては、葬儀社スタッフと相談しながら決めましょう。
費用が高額になりやすい
一般葬は規模が大きい傾向にあるため、葬儀費用も高くなります。参列者の数が多い場合は、飲食にかかる費用負担も増えます。
葬儀の規模に比例して費用も高くなるため、葬儀にあまり費用をかけられない方は注意が必要です。一般葬の費用は安くても100万円程度かかるので、葬儀保険や貯蓄などを事前に準備しておくことが大切です。
一般葬の流れ
葬儀の準備をスムーズに進めるには、あらかじめ一連の流れを把握しておく必要があります。
ここでは、病院での逝去から火葬にいたるまでの一般葬の流れを順番に解説します。
- 逝去
- 安置
- 葬儀社と打ち合わせ
- 納棺
- 通夜
- 葬儀・告別式
- 火葬
逝去
医師による死亡確認後、死亡診断書が発行されます。死亡診断書を受け取ったら、親族に連絡すると同時に葬儀社に連絡して、安置場所への搬送手配を行いましょう。
葬儀社が決まっていないときは、病院から葬儀社を紹介してもらえます。搬送の依頼だけでも可能なので、早めに葬儀社に連絡しましょう。
安置
葬儀社が用意した寝台車に故人を乗せて、安置先に搬送します。遺体は葬儀までの間、安置されます。
安置する場所の選択肢は、以下のとおりです。
- 自宅
- 斎場の安置室
- 遺体保管専門施設
自宅なら費用がかからず、故人にずっと寄り添っていられます。自宅がマンションで搬送が難しい場合や、自宅に安置するスペースがないときは、施設に安置するケースが大半です。
自宅に安置する際は、ドライアイスなどで温度管理を徹底し、遺体の腐敗を防ぐ必要があります。葬儀社スタッフの指示に従って適切に安置しましょう。
葬儀社と打ち合わせ
遺体を安置したら、葬儀社と打ち合わせを行います。打ち合わせでは、主に次の項目について確認や決定をします。
- 葬儀形式
- 宗教宗派
- 葬儀会場
- 日程
- 喪主
- 葬祭用品(祭壇、棺、骨壺など)
- 返礼品
- 飲食関係
- 供花、供物
- 僧侶の手配
菩提寺(ぼだいじ)がある場合は、打ち合わせの前に訃報を伝えて、僧侶の都合を伺っておきましょう。
打ち合わせで決定した内容をもとに、日程や葬儀を行う場所などを親族や知人に連絡します。
納棺
通夜が始まるまでに、遺体を棺桶に納めます。納棺のタイミングは地域によって異なりますが、多くの場合は通夜の当日に行います。
納棺は家族や身近な方のみで行うのが基本です。最初に故人の身体を洗い浄める湯灌(ゆかん)の儀式を行い、故人に死装束と呼ばれる衣装を着せたあと、故人の愛用品や遺族が希望するものを納めます。
通夜
一般的には葬儀の前日に通夜が営まれます。
もともと通夜は、夕方に始まり翌日の朝まで行われるものでしたが、現在は開式から3時間ほどで終了する「半通夜」が主流になっています。
通夜では僧侶にお経を読んでもらい、参列者が焼香を行うのが一般的です。通夜のあとには「通夜振る舞い」という会食の席が用意されることもあります。
葬儀・告別式
通夜の翌日には葬儀と告別式を行います。
葬儀と告別式は同じ時間枠で行われますが、本来は別物です。葬儀は宗教的な儀式であるのに対し、告別式は社会的な儀式です。
- 葬儀:宗教的な儀式
- 告別式:社会的な儀式
葬儀では僧侶によって故人をあの世へ送る儀式が行われ、告別式では参列者が故人と最後のお別れをします。
僧侶による読経が始まったら、参列者は焼香をしましょう。僧侶が退席し、家族や親族が最後のお別れをしたら、棺の蓋が開けられて出棺に移ります。
火葬
葬儀式と告別式を終えたら、故人を霊柩車に乗せて火葬場に移動します。火葬場に行くのは家族や親しい方のみであり、一般参列者は出棺後に解散となります。
火葬にかかる時間の目安は1時間前後です。火葬後は、収骨室にて遺骨を骨壺に納める「骨上げ」の儀式を行います。これで一般葬における一連の流れは終了です。
地域によっては、火葬後または火葬中に「精進落とし」という飲食の席を設ける場合もあります。
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