香典返しとは?贈る時期や金額相場、マナーについて解説

「香典返しという言葉はよく聞くけれど、いまいちよくわからない」「贈る時期やマナーがわからないけど、今さら人に聞くのは恥ずかしい」など、香典返しについてお困りではありませんか?

香典返しとは、お通夜や葬儀でいただいた香典へのお返しです。贈る時期や金額相場、品物の選び方などには細かいマナーがあるため、準備をする前にひととおり知っておいたほうがよいでしょう。

この記事では香典返しを贈る時期や金額相場、マナーについて解説します。香典返しについてお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。

1分でわかる!記事の内容
  • 香典返しとは、お通夜や葬儀でいただいた香典に対するお返し
  • 香典返しの金額相場は、いただいた香典の3分の1〜半額程度
  • 香典返しには、お通夜や葬儀当日に渡す「当日返し」と忌明け後などのタイミングで贈る「後日返し」がある

香典返しとは

香典返しとは、お通夜や葬儀の際にいただいた香典へのお返しです。弔事を無事終えたことの報告も兼ねているため、忌明けのタイミングで行うのが一般的です。

しかし、お通夜や葬儀当日にその場でお返しをする「当日返し(即日返し)」というものもあり、中には当日返しが主流の地域もあります。

香典は、江戸時代以前から続いてきた風習です。始まりは、葬儀の準備をする際に米を持ち寄ったことだといわれています。時代が移り変わる中で米はお香やお供えものに姿を変え、江戸時代には香典として現金を供えるようになりました。

ただ、そのころの香典返しといえば、現在のようにいただいた香典に対して品物を贈るものではありませんでした。

香典帳にいただいた金額や名前などを書きとめておき、その方の家庭で不幸があった際、香典帳に記載していた金額と同額の現金を渡したのが香典返しの始まりです。そこからさらに時代は流れ、今のかたちに行き着いたといわれています。

香典返しの金額相場

香典返しの金額相場は、香典の半額に相当する品物を贈る「半返し」が一般的です。しかし半分は多いという意見もあり、3分の1程度のお返しでもマナー違反にはなりません。半返し、3分の1返しそれぞれの予算は以下のとおりです。

香典の金額 半返しの予算 3分の1返しの予算
3,000円 1,500円 1,000円
5,000円 2,500円 1,500円
1万円 5,000円 3,000円

注意したいのは、地域によっては香典返しを行わないところや、香典の金額にかかわらず、決まった予算内でお返しをする地域などもある点です。地域の慣習に詳しい方や、葬儀社などに確認しておきましょう。

また、事情によっては香典返しが不要になるケースもあります。香典返しが不要になるケースについては、「香典返しが不要なケース」で詳しく解説しています。そちらをご覧ください。

香典返しの品物は何を贈る?

香典返しには、どのようなものを選べば先方に喜ばれるのでしょうか?ここでは香典返しによく選ばれる品物と、反対にタブーとされている品物について解説します。

よく選ばれる品物

香典返しによく選ばれる品物は以下のとおりです。

香典返しによく選ばれる品物
  • 日持ちするお菓子
  • 飲み物
  • タオル
  • カタログギフト

お菓子は日持ちしない生菓子を避け、焼き菓子の詰め合わせやあられなど、賞味期限に余裕があるものを選びましょう。また、切り分ける必要がなく食べきれない場合にお裾分けがしやすいよう、個包装になっているものがおすすめです。

飲み物はお茶やコーヒー、紅茶など、アルコール以外のものを選びましょう。「故人との別れを受け入れる」といった意味を持つお茶は、香典返しの定番です。ドリップコーヒーやスティックコーヒーのセットなども、手軽に飲めるため喜ばれます。

そのほか、「悲しみを拭う」という意味が込められているタオルや、カタログギフトもよく選ばれています。カタログギフトは好きなものを選んでもらえるため、相手の好みを外す心配がありません。

タブーとされている品物

香典返しでタブーとされている品物は以下のとおりです。

香典返しでタブーとされている品物
  • 生肉や生魚などの「四つ足生臭もの」
  • 昆布や鰹節などの「縁起物」
  • お酒

「四つ足生臭もの」と呼ばれる生肉や生魚を贈るのはタブーとされています。日持ちもしないため、贈るのであれば佃煮などの加工されたものを選びましょう。昆布や鰹節などの縁起物や、縁起物がモチーフになっているものもふさわしくありません。

お酒も、お祝いごとで贈られることが多く、香典返しには不向きです。中にはビールなどを贈る地域もありますが、お酒は避けるべきと認識している地域のほうが圧倒的に多いため、アルコール類は避けたほうが無難です。

香典返しを渡す時期

香典返しは忌明けに行うのが一般的です。ただし忌明けの時期は宗教・宗派ごとに異なるため、「故人が亡くなってから何日目が忌明けにあたるのか」は宗教・宗派によります。宗教・宗派別の忌明けの時期は以下のとおりです。

宗教・宗派 忌明けの時期
仏式 亡くなってから49日目の四十九日法要(35日目の場合もあり)
キリスト教式 カトリック 亡くなってから30日目の追悼ミサ
プロテスタント 亡くなってから1カ月後の召天記念式
神式 亡くなってから50日目の五十日祭
無宗教 なし

仏式では、四十九日法要が忌明けのタイミングです。しかし、亡くなってから四十九日までの期間が3カ月にわたる場合は、「三月(みつき)またぎ」で縁起がよくないとして、35日目の五七忌(ごしちにちき)に繰り上げることもあります。

キリスト教式はカトリックかプロテスタントかで異なり、神式は亡くなってから50日目の五十日祭が忌明けにあたります。

なお、無宗教には「忌明け」というものが存在しません。そのため、葬儀が終わればいつ香典返しを行っても構いません。納骨のタイミングや、仏式の四十九日法要に合わせて行う場合もあります。

香典返しの渡し方

以前は四十九日の法要が終わったら、香典をいただいた方の自宅を1軒ずつ順番に回り、直接香典返しを手渡すのが一般的でした。

しかし現在では、参列者が遠方に住んでいる場合や留守がちであるなどの事情もあり、近所でないかぎりは郵送するのが主流です。手渡しでなくても失礼にはあたりません。

ただし、郵送する場合は品物だけを送るのではなく、挨拶状(お礼状)を添えるのがマナーです。手渡しするなら先方の予定を聞かず突然押しかけるのではなく、きちんとアポを取ったうえで訪問しましょう。

会葬御礼と香典返しの違い

お通夜や葬儀の際、参列者に渡す「会葬御礼(かいそうおんれい)」というものがあります。会葬御礼は、香典返しと何が異なるのでしょうか?ここでは、会葬御礼と香典返しの違いについて解説します。

会葬御礼

会葬御礼とは、お通夜や葬儀に参列してくれた方全員に渡す品物のことです。参列してくれたことへのお礼であるため、香典をいただいたかどうかは関係なく、すべての参列者に同じものを渡します。

会葬御礼でよく選ばれるのは、お茶やコーヒー、ハンカチなど、500〜1,000円程度で用意できるささやかなものです。消えものや、日常で使用するものが定番です。

そこに会葬へのお礼や挨拶を書面で済ませることへのお詫びをしたためた「会葬御礼状」、清めの塩を添えて渡します。参列者が少ないケースや費用を抑えたいときなどは用意しないこともありますが、その場合でも会葬御礼状だけは用意するようにしましょう。

参列者の中には、仕事を休んで葬儀に参列してくれている方もおり、職場に葬儀への参列を証明しなければならないケースもあるためです。

香典返しを辞退された場合でも、会葬御礼は渡しましょう。

香典返し(当日返し)

香典返しには、お通夜や葬儀当日にお返しをする「当日返し」というものがあります。会葬御礼と異なるのは、「香典をいただいた方のみに渡す」ところです。つまり、香典をいただいていない方には渡す必要がありません。

費用相場は5,000円程度の香典をいただくと想定し、2,000〜3,000円程度の品物を選ぶことが多い傾向にあります。お茶や海苔、カタログギフトなどが定番です。

当日返しの注意点は、香典の金額にかかわらず同じものを渡すため、香典の金額によっては不公平が生じてしまうことです。当日返しでは返しきれないような高額な香典を受け取ったときは、不足分に対するお返しを後日あらためて行いましょう。

香典返し(後日返し)

後日返しとは、香典へのお返しをお通夜や葬儀当日ではなく後日行うことで、一般的に「香典返し」といえば当日返しではなくこちらを指します。当日返しを行わない場合、お通夜や葬儀当日に渡すのは会葬御礼だけです。

当日返しはあらかじめ品物を用意しておき、香典をいただいた方全員に同じものを渡します。それに対し、後日返しは香典をいただいてから品物を手配するため、それぞれの金額に合わせて1人ずつ品物を選べます

香典をいただいた方それぞれの好みを考えながら品物を選べる分、感謝の気持ちも込めやすいでしょう。ただし、当日返しに比べて品物選びに時間がかかってしまう点はデメリットといえます。

香典返しの掛け紙と表書き

香典返しの品物には「掛け紙」と呼ばれる紙をつけ、掛け紙には「表書き」を書くのがマナーです。ここでは、掛け紙の種類と表書きの書き方について解説します。

香典返しには掛け紙をつける

香典返しの品物には「掛け紙」をつけるのがマナーです。掛け紙とは、贈りものの前面や上面からつける、誰がどのような目的で贈るのかを記した紙のことです。

かしこまった贈りものというと、「のし」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、のしとは紙そのものではなくのし紙につける飾りである「熨斗鮑(のしあわび)」のことをいい、おめでたいシーンで使われます。

そのため香典返しには「のし」をつけず、水引のみが印刷された掛け紙を使用するのです。

なお、掛け紙には3種類あり、宗教・宗派や地域によって使用するものが異なります。掛け紙の種類は以下のとおりです。

掛け紙の種類 使用する宗教・宗派、地域
黒白のし(蓮の絵なし) 仏事全般
黒白のし(蓮の絵あり) 仏式
黄白のし キリスト教式、神式
北陸地方、関西、西日本

黒白のしには、蓮の絵があるものとないものがあります。蓮の絵がないものは宗教・宗派関係なく使用できますが、蓮の絵があるものは仏式のみ使用可能です。

キリスト教式や神式、北陸地方や関西、西日本の一部地域では黄白のしを使用します。

表書きは宗教や地域によって異なる

掛け紙の上部に記載する「表書き」は、宗教・宗派や地域によって使用する文言が異なります。表書きとは、贈りものの目的のことです。宗教・宗派、地域別の表書きは以下のとおりです。

表書きの文言 使用する宗教・宗派、地域
仏事全般
仏式
偲び草(偲草) キリスト教式、神式
満中陰志 北陸地方、関西、西日本の一部
茶の子 中国、四国、九州地方の一部

「志」は宗教・宗派に関係なく使用できる表書きです。たとえば、「偲び草(偲草)」と記載することが一般的なキリスト教式や神式でも、問題なく「志」を使用できます。

ただし北陸地方や関西、西日本では、仏式でも「満中陰志(まんちゅういんし)」を使用する地域があるため要注意です。また、中国、四国、九州地方の瀬戸内海に面した地域では「茶の子(ちゃのこ)」と書くところもあります。

どのように書けばよいのか、事前に確認しておきましょう。

「内のし」「外のし」は渡し方で使い分ける

「内のし」か「外のし」かは、香典返しの渡し方によって使い分けるとよいでしょう。「内のし」「外のし」というのは、掛け紙をつける場所のことです。

内のしであれば、品物を包装紙で包む前に掛け紙をつけます。一方外のしなら、品物を包装紙で包んでから掛け紙をつけます。

内のしは掛け紙をつけたあと包装紙で包んでいるため、外からでは掛け紙が見えません。しかし、外のしにした場合は外から香典返しの品物であることが一目でわかります。

香典返しの品物を直接手渡すのであれば中身のわかりやすい「外のし」、郵送するなら中身が香典返しの品物であるとわからない「内のし」を選択するとよいでしょう。

とくに郵送するときは、配達中に掛け紙が汚れたり破れたりする可能性もあるため内のしがおすすめです。

内のし ・品物を包装紙で包む前に掛け紙をつける
・郵送時におすすめ
外のし ・品物を包装紙で包んでから掛け紙をつける
・中身がわかりやすいため手渡しにおすすめ

ただし、どちらを選択するのが正解かは地域にもよります。事前に地域の慣習がないかどうか確認し、とくにないのであれば上記のように使い分けるとよいでしょう。

香典返しに挨拶状(お礼状)は必要?

香典返しを郵送するなら挨拶状(御礼状)を添えるのがマナーです。手渡しであれば直接感謝の気持ちを伝えられますが、郵送ではそれが叶わないためです。

挨拶状の書き方にはいくつかルールがあるため、作成するならルールに従って書く必要があります。挨拶状のルールは以下のとおりです。

香典返しに添える挨拶状の書き方のルール
  • 頭語・結語を使用する
  • 季節の挨拶は不要
  • 句読点を使わない
  • 忌み言葉を避ける
  • 宗教・宗派ごとに使用できる文言が異なる

頭語(「謹啓」「拝啓」)や結語(「謹白」「敬具」)を使用しましょう。必ず入れなければならないわけではありませんが、あったほうがより丁寧です。

しかし、通常の手紙とは異なるため季節の挨拶は必要ありません。また、挨拶状には「、」「。」といった句読点も使用しないのがマナーです。

「重ね重ね」「ますます」などの重ね言葉や、「死ぬ」「生きる」といった生死を連想させる言葉も使わないようにしましょう。宗教・宗派ごとに文面や、使用できる文言が異なる点にも注意が必要です。

中には、香典返しが不要なケースもあります。ここでは、香典返しが不要なケースをご紹介します。

香典返しを辞退されたとき

香典返しを辞退されたときは、厚意に甘えたほうがよいこともあります。遺族に余計な気遣いをさせないためや、今後の生活を気遣う気持ちから辞退されることが多いためです。

このような場合、もらいっぱなしは悪いからと無理に贈るとかえって失礼にあたります。

そのほか、連名で香典をいただいたケースで、人数が多く1人あたりの金額が少ないときも辞退されることがあります。ただし、香典返しを辞退された場合でも、挨拶状(お礼状)は送るのがマナーです。感謝の気持ちをしたためて、きちんと送りましょう。

香典を会社名義でいただいたとき

香典を会社名義でいただいたときは香典返しが不要です。会社から形式的に贈られたもので、福利厚生の一環であるためです。

ただし、上司や同僚から個人的にいただいた場合は香典返しをすべきでしょう。香典の名義が会社名+社長名であるなど、判断に困ったときは会社の担当部署に確認することをおすすめします。

地域の慣習があるとき

地域によっては香典返しをしないところもあります。たとえば群馬や栃木などの一部地域では、冠婚葬祭にかかる金銭的な負担を軽減しようとする文化があり、今も根強く残っています。

その考えに賛同する場合は香典を1,000円だけ包み、香典返しは辞退するのが習わしです。

このように、独特の風習が残っている地域はほかにもあります。地域の慣習がよくわからない場合は、念のため詳しい方や葬儀社に確認したほうがよいでしょう。

故人が大黒柱だったなどの事情があるとき

故人が一家の大黒柱で小さな子どもがいる場合など、事情によっては香典返しを省略するケースもあります。

香典は、遺族の経済的な負担を軽減するためのものでもあります。一家を金銭的に支えていた方を失いこれからの生活に不安を感じる中、無理をしてまで香典返しをする必要はありません

感謝の気持ちを伝えたいときは、香典をいただいた方に挨拶状(お礼状)を送るとよいでしょう。何かほかのかたちでお礼をするのでも構いません。

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