遺産分割調停にかかる費用はどれくらい?目安を徹底解説!

あなたは遺産分割がスムーズに進まず、ストレスに感じていませんか?

相続人同士の話し合いで遺産分割の方法や金額を決定できない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことが一般的です。しかし、「裁判」と耳にすると高額なのではないかと不安に感じる人もいるかもしれません。

この記事では、遺産分割調停にかかる費用を詳しく解説します。遺産分割調停の費用について知りたい方は必読です。

1分でわかる!記事の内容
  • 遺産分割調停申立にかかる費用は1〜数万円、不動産鑑定をする場合は、20〜60万円、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合は、数万〜数百万円かかる
  • 司法書士は調停申立のサポートだけを依頼できる。包括的なサポートが必要な場合は弁護士に依頼するのがおすすめ!
  • 弁護士や司法書士に依頼する際に費用を抑えるコツがある!

この記事の監修者

行政書士いのくち法務事務所


代表


井口 豪 / 行政書士

行政書士いのくち法務事務所を運営。簡潔な文章構成が求められる遺言書作成支援や相続手続き、補助金・許認可申請などに対応する他、法務ライター®️として記事制作や監修を多数手掛ける。

遺産分割調停とは?

遺産分割調停とは、被相続人が亡くなり、その遺産の分割について相続人同士の話し合いがまとまらないときに家庭裁判所に依頼する調停のことです。この調停は相続人のうちの1人または複数の相続人が、他の相続人全員を相手として申し立てます。

遺産分割調停では、裁判所がそれぞれの当事者の意見を聞いたり、必要な資料を確認したり、場合によっては不動産鑑定をしたりしながら、遺産分割方法の解決策を見出します。

調停期日は1〜2ヶ月に1度あり、1回につき1〜2時間ほど話し合うことが一般的です。

遺産分割調停では、裁判所の「調停委員」が間に入るため、基本的に相続人同士が直接顔を合わせることはありません。そのため、遺産分割調停による、相続人間のトラブルや人間関係の亀裂について過度に心配する必要はないでしょう。

最終的に相続人全員が遺産分割の方法や額に合意できたら、調停が成立したことになります。家庭裁判所が「調停調書」を作成して申請があった当事者全員に送付します。調停調書を使って不動産の名義を書き換えたり、預貯金の払い戻しなど相続手続きを始めたりすることが可能です。

万が一遺産分割調停でも決裂してしまった場合は、遺産分割審判に移行します。遺産分割審判では、それぞれの相続人の事情や証拠などをもとに、裁判官が遺産分割方法を決定します。

遺産分割調停やその流れについてさらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

遺産分割調停をすべきケース

遺産分割調停をすべきケースは主に下記の3つのケースです。

  • 相続人間の遺産分割協議が決裂したとき
  • 連絡が取れない相続人がいるとき
  • 相続人同士の仲が既に悪くて話し合いができる状態ではないとき

相続人同士の遺産分割協議が決裂した場合は、家庭裁判所という第三者に介入してもらい話し合いを進めることで、遺産分割の方法や額をスムーズに決められます。

遺産分割協議は、法定相続人全員が参加することが必要です。しかし、場合によっては、連絡が取れない相続人がいたり、コンタクトを取ろうとしているにも関わらず無視する相続人がいたりします。これらのケースの場合、遺産分割協議を進めるのが困難であるため、遺産分割調停を行うことがおすすめです。

そして、遺産分割協議の前から既に相続人同士で仲が悪く、話し合いができる状態でない場合も同様です。遺産分割協議でさらに関係がこじれる危険性もあることから、遺産分割調停を実施した方が得策でしょう。

遺産分割調停の申立や必要書類の収集にかかる費用

遺産分割調停の申立や必要書類の収集にかかる費用はおよそ1万円で、その内訳は下記の通りです。

  • 調停申立費用:1,200円
  • 予納郵券:数千円
  • 必要書類取得費用:数千〜数万円

それぞれの内訳について詳しく説明します。

調停申立費用:1,200円

調停申立費用とは、遺産分割調停を起こすために必要な費用です。調停1件につき費用は1,200円かかり、申立人が申立する際に支払います。

1,200円分の収入印紙を市町村役場や郵便局などで購入して、調停申立書の印紙貼付欄に貼り付けてください。

予納郵券:数千円

遺産分割調停の際には、裁判所から申立人と相手方に郵送物を送付するための郵便切手も必要です。これを予納郵券と呼びます。

必要な郵便切手の種類や金額は裁判所によって異なるため、事前に裁判所に確認してから購入しましょう。ちなみに、調停終了後に余った切手は返還されます。

必要書類取得費用:数千〜数万円

遺産分割調停を申し立てるために必要な書類があります。これらの書類を揃えるために数千〜数万円かかるでしょう。

必要な書類は下記の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍改製原戸籍)謄本(数千〜数万円)
  • 相続人全員の戸籍謄本(数千円)
  • 相続人全員の住民票(戸籍附票)(数千円)
  • 遺産の中に預貯金や不動産が含まれる場合は、下記の書類も併せて必要です。
  • 残高証明書・取引明細書(数千円)
  • 不動産登記事項証明書(数千円)
  • 固定資産評価証明書(数千円)

これらが主に必要な書類ですが、場合によっては別途追加の書類の提出を求められるケースもあるため、裁判所のホームページをチェックして、どのような書類が必要なのか確認しましょう。

交通費:実費

遺産分割調停は相手方の住所地にある家庭裁判所に申し立てるのが一般的です。つまり、相手が遠方に住んでいると、交通費の負担も大きくなります。

遺産分割調停は1度では終わらず、複数回行われることが多いです。2020年裁判所による司法統計情報によるとおよそ遺産分割調停の50%が3回以内の実施で済んでいますが、6回以上のケースも30%近くあります。

相手が遠方に住んでいて、あまりにも交通費の負担が大きい場合は、裁判所にオンラインで対応できるかどうかを確認してみましょう。近年Web会議システムを導入している家庭裁判所は数多くあります。

不動産鑑定費用:20〜60万円

遺産の中に不動産があって不動産の評価額で揉めた場合、遺産分割調停で不動産鑑定士に不動産鑑定を依頼する可能性があります。

不動産の鑑定にかかる費用は20〜60万円が相場です。しかし、鑑定評価額が高額になるほど鑑定費用も高くなります。

下記の表は鑑定評価額が5,000万円を下回った場合の鑑定費用相場をまとめたものです。

  • 更地の土地:20〜30万円程度
  • 建物:20〜30万円程度
  • 土地と建物:25〜60万円程度
  • マンション:30〜60万円程度
  • 賃料:30〜60万円程度

不動産鑑定士は、相続人が直接依頼するケースもあれば、裁判所を通して依頼するケースもあります。

依頼した人が鑑定費用を負担することが一般的ですが、裁判所を通して依頼した場合は当事者同士が折半することになるでしょう。裁判所を通して依頼するケースの方が依頼費用が高くなりがちなので注意してください。なお、遺産に預貯金がある場合は、そこから鑑定費用を支払うこともできます。

不動産鑑定費用が必要なケースは?

不動産の評価方法には複数あり、代表例は下記の5つです。

評価方法によって評価額が大きく異なります。そのため、それぞれの相続人の間で評価額の決め方について揉めることが少なくありません。このようなときに、遺産分割調停で評価方法を当事者全員の合意で決定させ、不動産鑑定士に依頼して不動産鑑定評価額を決めるのです。

遺産分割調停を専門家に依頼した場合の費用

遺産分割調停の専門家は弁護士と司法書士です。

ここではそれぞれに依頼する際にかかる費用と、それぞれのメリットについて解説します。

弁護士費用:数十万〜数百万円

弁護士に依頼すると、遺産分割調停の申立から調停の出席、主張の代弁まで幅広くサポートしてくれます。

弁護士に依頼した場合、数十万〜数百万円の費用がかかり、内訳は下記の通りです。

  • 着手金(20〜60万円)
  • 報酬金(取得した遺産のうちの4〜16%)
  • その他費用(相談料、日当など計数十万円)

弁護士事務所によって費用が大きく異なります。複数の弁護士事務所に見積もりを出してもらい、最適な事務所を選びましょう。

弁護士に依頼するメリット

裁判所が発表した2020年の司法統計情報によると、80%もの遺産分割調停で弁護士が関与しているそうです。

弁護士への依頼は司法書士事務所と比較すると、費用が高額になりがちですが、下記のようにさまざまなメリットがあるためおすすめします。

  • 申立手続きを代行してもらえるため安心できる
  • 主張を代弁してもらえる
  • 調停をスムーズに進められる
  • ストレスが軽減される

申立に必要な書類を全て集めたり、調停でご自身の主張を論理的に話す準備をしたりすることは簡単なことではありません。弁護士にこれらの業務を依頼することで、時間や労力を節約できるでしょう。

また、遺産分割調停は早くても数ヶ月、場合によっては数年ほど時間がかかることが一般的です。調停が長引くほど、モチベーションや体力も奪われます。しかし、弁護士に依頼することで、効率的に話し合いを進められます。ストレスも軽減されることは間違いありません。

弁護士に依頼したいものの、費用の捻出が難しいと悩む方も多いでしょう。詳細は後述しますが、専門家に支払う遺産分割調停のための費用を抑えるためのポイントを紹介しているので、これを参考にしながら、弁護士への依頼も視野に入れてみてください。

司法書士費用:5〜30万円

司法書士には調停申立のサポートを依頼できます。具体的には調停申立書の作成や、調停申立に必要な書類の収集などが含まれています。

弁護士とは異なり、相続人の代理人として調停に携わることができないので気をつけてください。

司法書士に遺産分割調停の申立のサポートを依頼した際にかかる費用は5〜30万円ほどで、その内訳は下記の通りです。

  • 遺産分割調停申立書作成(10万円)
  • 戸籍謄本・住民票の取得(1通につき3,000〜5,000円)
  • 残高証明書等の取得(1通につきおよそ10,000円)
  • 登記事項証明書等の取得(1通につき1,000〜2,000円)

司法書士に依頼するメリット

司法書士に依頼すると遺産分割調停の申立の準備にかかる手間や時間を節約できます。前章でも触れましたが、遺産分割調停に必要な書類を集めたり、調停で論理的にご自身の意見を主張するために準備したりすることは非常に大変です。

司法書士に依頼することで、これらの負担を少し軽減させることにつながるでしょう。

専門家に支払う遺産分割調停のための費用を抑えるためのポイント4つ

専門家に支払う遺産分割調停のための費用を抑えるポイントは下記の4つです。

  • 分割払いができる専門家に依頼する
  • 無料相談を活用する
  • 複数の弁護士や司法書士を訪れ、費用を比較する
  • 法テラスの民事法律扶助を利用する

それぞれのポイントについて詳しく解説します。

分割払いができる専門家に依頼する

遺産分割調停のための費用を一括で支払うことが難しい場合は、分割での支払いができるかどうかを相談してみましょう。多くの弁護士事務所や司法書士事務所で、分割での支払いに応じてくれます。

遺産分割調停は数ヶ月から1年間かかるケースが多いため、その期間に月賦で支払えることが多いです。依頼する前に分割での支払いができるかどうかを確認しましょう。

無料相談を活用する

弁護士事務所や司法書士事務所のホームページを見ていると「無料相談可」と記載している事務所もあります。

しかし、「無料相談」は30〜60分と時間が決められており、時間を超過すると有料になってしまうケースもあるので、無料相談ができる時間や回数を事前に確認しておくことがおすすめです。

複数の弁護士や司法書士を訪れ、費用を比較する

この記事では、遺産分割調停の際に、弁護士と司法書士に依頼した場合のそれぞれの費用の目安について紹介しました。この費用相場を確認しながら相場から大きく外れない費用を提示する事務所を選ぶことがおすすめです。

最も費用が安い弁護士事務所または司法書士事務所を選びがちですが、費用が安いということはその分サポートや業務の内容が限定されてしまう可能性もあるので注意してください。

また、複数の事務所に通うことで、依頼する事務所選びに失敗するリスクを軽減させられることができます。

法テラスの民事法律扶助を利用する

所得や資産が少ない方は、法テラスの民事法律扶助を利用できます。民事法律扶助を活用することで、法テラスを通じて低い金額で弁護士に依頼でき、毎月1万円程度から分割での支払いが可能です。

ただし、法テラスを利用した場合、弁護士を自分で選べないので気をつけてください。

地域の法テラスに相談してみたり、個別の法律事務所で法テラスと契約している弁護士に直接依頼したりする方法があります。まずは電話やメールで問い合わせてみましょう。

遺産分割調停の費用に関するFAQ

最後に、遺産分割調停の費用に関するよくある質問とその回答を紹介します。

弁護士や司法書士など専門家に依頼するための費用は経費として相続税から控除できる?

遺産分割調停を専門家に依頼した際にかかった費用は、相続税から控除できません

被相続人が残した借金や未払い金などの負債であれば債務控除が可能ですが、専門家への依頼のための費用は、被相続人が残した負債ではなく、相続人自身が自ら背負った負債であると見なされるからです。

不動産鑑定費用の負担者は誰?

依頼した人が鑑定費用を負担することが一般的ですが、裁判所を通して依頼した場合は当事者同士が折半することになります。

裁判所を通して依頼するケースの方が依頼費用が高くなりがちなので注意してください。なお、遺産に預貯金がある場合は、そこから鑑定費用を支払うこともできます。

遺産分割調停にかかった費用は誰が負担する?

遺産分割調停にかかる費用は基本的には申し立てた人、または依頼した人が負担します。

裁判で負けた方が費用を負担するのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、遺産分割調停は民事調停なので、勝ち負けはありません。

また、相続人全員で分担するのではと考える人もいるかもしれませんが、他の相続人に負担を求めることもできないので注意してください。

調停申立の費用も専門家への支払いも依頼者が負担します。

遺産分割調停にかかる期間はどれくらい?

遺産分割調停は比較的時間がかかります。数ヶ月から1年ほどかかることが一般的です。

回数に制限はなく、解決するか決裂するかまで続けられます。そのため数年かかることも珍しくはありません。

半年以内で解決するケースが全体の約30%、半年から1年ほどかかるケースが約30%、そして1年以上かかるケースが約30%となっています。

まとめ

遺産分割調停申立にかかる費用は1〜数万円程度で高額な金額ではありません。

しかし、遺産分割調停のために必要な資料を収集したり、話し合いの場で、調停委員を説得できるような話を準備したりすることは労力や時間がかかります。

そのため、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することがおすすめです。専門家に依頼すると数万〜数百万円とかなり高額の費用がかかりますが、遺産分割調停をスムーズに進められ、肉体的にも精神的にもかなりストレスが軽減されるでしょう。

専門家に依頼するための費用を捻出するのが難しい場合は、下記のいずれかの方法を検討してみてください。

  • 分割払いができる専門家に依頼する
  • 無料相談を活用する
  • 複数の弁護士や司法書士を訪れ、費用を比較する
  • 法テラスの民事法律扶助を利用する

ほかにもこちらのメディアでは、代償分割とは?といったテーマや、遺産分割協議をしないデメリットやリスクというテーマについても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。