【保存版】遺産分割協議をしないデメリットやリスク6つを徹底解説!

遺産分割協議は手間も時間もかかるため、やりたくない方も多いでしょう。

しかし、遺産分割協議をしないとさまざまなデメリットがあります。最悪の場合、あなた自身が損をしてしまう可能性もあります。遺産分割協議をしないデメリットについてご存じない方は必読です。

1分でわかる!記事の内容
  • 遺産分割協議は、遺産の分配方法を決めるために行われる相続人同士の話し合いのこと
  • 遺産分割協議をしないと、相続税の納税について不利になる、子孫の代まで相続問題が解決しないなど数多くのデメリットやリスクがある
  • 故人の死亡後早めに、遺産分割協議や遺産分割協議書の作成を済ませておくことがおすすめ

この記事の監修者

ゆら総合法律事務所


代表


阿部由羅/弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、遺産の分配方法を決めるために行われる相続人同士の話し合いのことを指します。簡単に言うと、「誰が」「どの財産を」「どのくらい」相続するのかを話し合うための協議です。

遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要があります。遺産分割協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書という書類に記載し、相続人全員が実印を押印して締結します。

遺産分割協議への参加を拒否すると、他の相続人から遺産分割調停の申立てをされる可能性があります。そうなると遺産分割トラブルが深刻化するおそれがあるため、遺産分割協議には必ず参加しましょう。

遺産分割協議が必要なケース

遺産分割協議は、全ての相続において必要というわけではありません。遺言書の有無や相続人の構成などにより、遺産分割協議の要否が異なります。

遺産分割協議が必要なのは、相続人が話し合って遺産の分け方を決めるべき場合です。したがって、複数の相続人がいる場合には、遺産分割協議が必要になります。

1人の相続人が全ての遺産を相続する場合でも、それが相続人の話し合いの結果であれば、遺産分割協議書の作成が必要です。

遺産分割協議が不要なケース

遺産分割協議が不要なケースは主に下記の通りです。

  • 被相続人の遺言書により、全ての遺産の分け方が決められていた場合
  • 相続人が1人しかいない場合
  • 他の相続人が相続放棄して、相続人が1人となった場合

遺産分割協議をしないデメリット6つ

遺産分割協議をしないデメリットは数多くあります。

ここでは、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

名義変更手続きが始められない

遺産分割協議が終わるまで、相続人は遺産の名義変更手続きを行うことができません

例えば、不動産については遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有となるため、売却や賃貸には他の相続人の同意が必要です。固定資産税などの維持コストがかかる一方で、スムーズに不動産を活用できず損をしてしまうおそれがあります。

被相続人の預貯金口座は凍結され、遺産分割協議が完了するまでは、一定の限度額を超える引き出しができません。多額の預貯金がある場合は、活用の機会が失われてしまいます。

税務上不利になる

相続税の申告と納付の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内と定められています。

この期限までに相続税の申告と納付をしないと、支払うべき相続税とは別に延滞税が発生するので注意が必要です。

遺産分割協議が終わっていない場合は、法定相続分に従って相続税の申告・納付を行い、後から税額を修正する手続きをとる必要があるので、二度手間になってしまいます。

また、相続税を軽減できる「配偶者の税額の軽減」と「小規模宅地等の特例」の適用を受けるためには、申告期限までに相続税の申告を行った上で、原則として申告期限から3年以内に遺産分割を行い、その後4か月以内に更正の請求を行う必要があります。

遺産分割協議を行わないままでいると、「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」の適用を受けられず、より多額の相続税を納めることになりかねないのでご注意ください。

不動産の共有持分を勝手に売却されてしまうことがある

遺産分割が完了していない段階でも、相続人は遺産の共有持分を単独で売却できます。

相続人によって相続不動産の共有持分が売却されると、見知らぬ第三者との間で不動産を共有することになり、トラブルのリスクが増大してしまいます。

相続財産に対する責任を相続人全員が負うことになる

遺産分割が完了していない段階では、全ての遺産は相続人全員の共有となります。したがって、遺産の管理に必要な費用や、遺産の管理不備が原因で第三者に生じた損害の賠償責任は、相続人全員が負担しなければなりません。

いらないと思っている遺産についても、遺産分割協議が完了しない段階では責任を負うことになります。早めに遺産分割協議を行い、遺産を管理すべき相続人を明確化することが望ましいでしょう。

子孫の代まで相続問題が付きまとう

相続が発生した直後であれば、遺産の把握は比較的容易であり、相続人同士も面識があるため、スムーズに遺産分割協議が進む可能性が高いです。

しかし、遺産分割協議が完了しないまま、相続人が死亡してさらなる相続が発生すると、子や孫の代にまで相続問題が引き継がれてしまいます。この場合、遺産分割協議に参加する相続人の数が増えたり、お互いに面識がなかったりするため、遺産分割協議が難航するリスクが高くなるので要注意です。

株式の権利が失われる

遺産の中に株式がある場合、ずっと放置していると株主としての権利が失われる可能性があるのでご注意ください。

なぜなら、株式を発行する会社は長期間所在不明の株主の株を買い取れるからです。

具体的には、5年以上株式を放置していると、株主としての地位を失うリスクがあります。そのため、早めに遺産分割協議を行いましょう。

遺産分割の流れ

遺産分割は人生で何度も遭遇する場面ではないため、実際にそのような場面になると、どのように進めればいいか困ってしまうことも少なくありません。

ここでは、遺産分割をスムーズに進められるように遺産分割の流れを説明します。

Step1: 遺言書の有無の確認

まずは遺言書の有無をご確認ください。遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けます。

遺言書は、被相続人の遺品から見つかる場合もありますが、公証役場や法務局で保管されていることもあります。公証役場の遺言検索や、最寄りの法務局の窓口照会などをご利用ください。

見つかった遺言書が封印されている場合、公正証書遺言以外の遺言書は開封してはいけません。自筆証書遺言書や秘密証書遺言を家庭裁判所の検認の前に開封した場合、最大5万円の過料が課せられる可能性があるからです。

遺言書を見つけられなかった、または遺言書では分け方が指定されていない遺産がある場合は、遺産分割協議へ移ってください。

Step2: 相続財産の確定

遺産分割をする際には、まずはどのような相続財産があるのかを確認しましょう。

財産の中には評価額の算定が難しいものもあったり、銀行預金についてどの銀行に口座があるのかが不明だったりする場合は、専門家に依頼するとスムーズに進みます。

また、のちに新たな財産が発覚すると、遺産分割トラブルが再燃するおそれがあるため、このタイミングで全ての相続財産を確認しましょう。

下記が相続財産の代表例です。相続財産確認の際に活用してください。

  • 現金(財布や金庫などを確認)
  • 有価証券(証券会社からの郵便物などで確認)
  • 不動産(権利証や登記簿謄本などで確認)
  • 自動車(現物または登録事項証明書で確認)
  • 美術品、貴金属(現物を確認)

なお、金銭債務(借金や税金など)は遺産分割の対象にならず、法定相続分に従って相続人間で当然に分割されると解されています。ただし、公平な遺産分割を行う観点からは、遺産分割協議において金銭債務の(内部的な)負担者を定めておくことが望ましいでしょう。

Step3:戸籍謄本を活用した相続人の確定

相続手続きを進める際には、誰が相続人であるのかを明確にするために下記書類を用意します。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本

被相続人の戸籍等は本籍地の役所で入手できますが、遠方の場合は郵送での取り寄せも可能です。本籍地の役所で、相続手続きに必要である旨を伝えれば、出生から死亡までの連続した戸籍が必要であると理解してもらえるので、必要な書類を取得できるでしょう。

なお、戸籍謄本は複数の自治体から取得すべきケースも多いです。ある程度時間がかかることも想定して、早めに戸籍謄本の収集に着手しましょう。

Step4: 遺産分割協議において相続配分を決定

必要書類が揃ったら、相続人全員で遺産分割協議を行います。

対面で実施しても、メールなどのやり取りで済ませても構いません。どのような進め方をする場合でも、最終的な合意内容については、全ての相続人がきちんと確認できるようにしましょう。

Step5: 遺産分割協議書の作成

続いて遺産分割協議書の作成に移ります。書類を作成する際には下記の点にご注意ください。

  • 表題を「遺産分割協議書」とする
  • 作成は手書き、パソコンなどいずれの方法でも構わない
    (パソコンを用いて作成するのが便利)
  • 相続人の署名は手書きにし、実印を押印する
  • 「誰が」「どの遺産を」「どのくらい」相続するかを正確に記載する
  • 遺産の内容は、他の遺産と区別できる程度に特定して記載する
    (例:預貯金については金融機関名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義人を記載する。
    土地については、登記簿謄本通りに所在・地番・地目・地積を記載する。)
  • 相続人の人数分の遺産分割協議書を作成し、それぞれの相続人が原本を1通ずつ保管する
  • 遺産分割協議が難航して決着がつきそうにない場合は、家庭裁判所へ調停の申立てをする

遺産分割や遺産分割協議に関するFAQ

最後に、遺産分割や遺産分割協議に関するよくある質問と回答を紹介します。

遺産分割に法律で定められた期限はあるの?

遺産分割の期限については特に法律で定められていません

しかし、相続税の納税について不利になる、子孫の代まで相続問題が解決しないなどデメリットが非常に多いので、遺産分割は被相続人の死後、身辺整理等が落ち着いた段階で早めにスタートさせることがおすすめです。

他の相続人と顔を合わせずに遺産分割協議を行うことはできるの?

他の相続人と顔を合わせずに遺産分割協議を行うことは可能です。

相続人全員が遺産分割の方法や内容について納得し、全員で遺産分割協議書を作成するのであれば、相続人全員が直接顔を合わせて話す必要はありません。

手紙・メール・LINEなど、相続人全員にとって便利な方法でやり取りすればよいでしょう。

最終的な合意内容については、認識に齟齬がないよう慎重に確認する必要があります。

なお、リモートで遺産分割協議を行う場合、取りまとめ役を決めることが望ましいです。公平な遺産分割を行う観点からは、取りまとめ役を弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

遺産分割協議を実施するおすすめのタイミングは?

遺産分割協議や遺産分割協議書作成のタイミングは、法律によって決まっているわけではありません。

しかし、相続税申告の二度手間を回避するためには、被相続人の死亡後10カ月以内に遺産分割を完了することが望ましいです。

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