直葬とは?知っておきたいデメリットや後悔しないための方法を解説

「直葬って聞いたことはあるけど、どのような葬儀方法なんだろう?」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?葬儀の方法にはさまざまな種類があるため、各方法の違いについて理解するのは難しいですよね。

直葬とは、宗教的な儀式を省いて、亡くなった方をお送りする葬儀方法です。手間をかけず火葬のみ行うため、遺族の経済的負担を減らせるメリットがあります。

こちらの記事では、直葬の具体的な流れやメリット・デメリットなどを解説します。家族や親族の最期に備えるうえで、葬儀方法について検討している方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 直葬は葬儀費用を大幅に抑えられるメリットがある
  • 経済的負担だけでなく葬儀に関する事務的負担・精神的負担も抑えられる
  • 近年は直葬を行う方が増加している

直葬とは

直葬とは、通夜や告別式などの宗教的な儀礼・儀式を省き、数名で火葬のみを行う葬儀方法です。読み方は「ちょくそう」「じきそう」です。近年は費用を抑えられる関係から、直葬を行う方が増えています。

直葬は葬儀方法の中で最もシンプルで、費用だけでなく遺族の事務的負担を抑えられる点が大きなメリットです。一方で、亡くなられた方とのお別れの時間を十分に確保できず、後々に後悔してしまう恐れがあります。

葬儀の形式にこだわりがなく、参列者も少ないケースにおいて、直葬を選択する方が多いです。ただし、葬儀全体における直葬の割合はまだまだ少ないため、直葬についてきちんと理解できていない方も多いのではないでしょうか?

亡くなった方の意思を尊重しつつ、遺族にとって最もよい葬儀方法を選択するためにも、直葬のメリットやデメリットについて理解を深めてみてくださいね。

直葬の費用

直葬は、一般的な葬儀よりも経済的負担が軽いです。祭壇や式場使用料、参列者に渡す返礼品の用意が不要なので、費用をカットできるメリットがあります。

一般的な葬儀では、場合によって200万円から300万円ほどかかりますが、直葬は30万円程度で済みます。亡くなられた方も残された遺族も盛大な葬儀を望んでいない場合は、直葬が合理的な葬儀方法といえるでしょう。

直葬と火葬式の違い

直葬と火葬式は名称が異なるだけで、葬儀の形式としては同じです。「直葬」は宗教的な儀式を省略して直接火葬場へ向かうことから、「火葬式」は火葬だけを行うことから、それぞれ「直葬」「火葬式」と呼ばれています。

どちらも宗教的な儀式を省いた短時間の葬儀であり、「直葬=火葬式」と認識して問題ありません。

直葬の流れ

直葬は、通夜や告別式を行わずに火葬のみ行うため、葬儀の流れがシンプルです。以下で、具体的な直葬の流れについて解説していきます。

臨終・葬儀社へ連絡

家族や親族が亡くなったら、医師に「死亡診断書」を発行してもらい葬儀社へ連絡をします。亡くなった方の遺体を安置するためにも、実際に亡くなられる前に葬儀社を決めておくとスムーズです。

お迎え・安置

亡くなったあと、法律により死後24時間は火葬が行えません。葬儀社が用意した寝台車で、亡くなられた方の遺体を安置できる場所まで運びます。

自宅か葬儀社が用意している安置場所へ運ぶことが一般的で、遺体を運んだあとに直葬に関する進め方や打ち合わせを行います。

納棺・出棺

安置後には、納棺・出棺を行います。通常の葬式と同じように、棺の中に亡くなられた方の愛用品などを入れても問題ありません。

納棺が終わり、火葬の予約時間が近づいたら出棺し、火葬場へ向かいます。

火葬

火葬場へ到着し、時間になったら亡くなられた方と最後のお別れをして、火葬が行われます。僧侶を招いて読経をしてもらうこともできるため、事前に確認しておきましょう。火葬が終わるまで1〜2時間程度かかり、その間は火葬場の控室で待機します。

骨上げ

火葬が終わったら、亡くなられた方の遺骨を骨壷に納める「骨上げ」を行います。骨上げは、足側から拾い、最後に喉仏を納める流れで進むのが一般的です。

直葬を行う方の割合

株式会社鎌倉新書が、2022年3月に実施した「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、選択した葬儀の種類の割合は下記のとおりでした。(2020年3月から2022年3月に喪主を経験した日本全国の40歳以上の男女が対象)

  • 家族葬:55.7%
  • 一般葬:25.9%
  • 直葬・火葬式:11.4%

「約10世帯に1世帯」が、葬儀の方法として直葬を選んでいることがわかります。新型コロナウイルスの影響で、身内だけで葬儀を済ませたいというニーズが増えたことも関係しているでしょう。

なお、核家族化が進んでいる都心部は、直葬を選ぶ方の割合が増える傾向にあります。

直葬のメリット

直葬は火葬のみ行うシンプルな葬儀方法なので、遺族と参列者の負担を抑えられるメリットがあります。以下で解説する内容に魅力を感じる場合は、直葬を検討してみてはいかがでしょうか?

遺族の負担が軽い

直葬は通夜や告別式を省略して火葬のみ行うため、経済的負担に加えて事務的負担も軽減できます。一般的な葬儀を行う場合、2~3日程度は葬儀関連の仕事や業務に付きっきりになります。参列者への対応を行う必要もあり、負担が重くなりがちです。

しかし、直葬は家族や身近な方のみで行うため、参列者への対応などを省略できます。葬儀社の手配や火葬に関する手続きで済むため、遺族の事務的負担を大きく軽減できるでしょう。

参列者の負担が軽い

直葬は、遺族だけでなく参列者の負担も軽減できます。直葬では家族以外の参列者が最小限になることから、参列者同士で挨拶などを行う手間が省略できます。

特に、高齢の参列者にとって関係が深くない方との挨拶は、気苦労から負担になりかねません。

遺族だけでなく、参列者も亡くなられた方の見送りに集中できる点は、直葬のメリットです。

直葬のデメリット

直葬は、経済的負担や事務的負担が抑えられる一方で、デメリットも存在します。きちんと時間をかけて亡くなられた方を見送りたい方にとって、直葬は向かない可能性があります。

お別れがあっさりしている

直葬は見送りの時間が短く、お別れがあっさりしています。直葬の場合、お別れの時間を確保できるのは火葬前の「5~10分程度」で、一般的な葬儀と比較すると、ゆっくりと偲ぶ時間がありません。

5~10分程度で、亡くなられた方とお別れをしなければならないため、場合によっては「葬儀をした実感がない」という感情を抱く可能性もあります。

亡くなられた方との思い出を噛みしめながら、時間をかけてお送りしたいと考えている方にとって、直葬では後悔の念が残ってしまうでしょう。

周囲の理解が得られない恐れがある

直葬は宗教的儀礼を省略して火葬のみ行うため、周囲の理解が得られない可能性があります。通夜式や告別式を「当然行うもの」と考えている遺族がいると、「直葬なんて故人に失礼だ」という論争になりかねません。

実際に、近年は直葬を行う世帯が増えているとはいえ、まだまだ少数派です。周囲の理解を得ておかないと、後日トラブルになる可能性がある点には注意しましょう。

後に弔問客が来る場合がある

直葬では、家族や親族で亡くなられた方をお送りするケースがほとんどです。しかし、亡くなられた方と親交が深かった方が、後日弔問に訪れることがあります。弔問客が多いと、「結果的に負担が増える」という事態になりかねません。

弔問客が来たら対応する必要があるため、もし余裕があれば、直葬を行ったあとに弔問の機会を設けることも検討しましょう。

納骨できない恐れがある

亡くなられた方の遺骨は先祖のお墓がある菩提寺(ぼだいじ)に納骨するのが一般的ですが、直葬の場合は納骨ができない恐れがあります。本来、納骨するには菩提寺の住職による読経を経て、菩提寺の考えの基に葬儀を行う必要があります。

しかし、直葬の場合は宗教的儀礼を省略するため、菩提寺によっては納骨を断られてしまう可能性があるのです。納骨ができない場合は、自宅で大切に保管するか、頃合いを見て散骨をする必要があります。

戒名がつけられない可能性がある

直葬を行うと、戒名がつけられないことがあります。本来、亡くなられた方の戒名は菩提寺の住職が、儀式を通して授けてくれます。直葬では儀式を行わずに火葬するため、戒名を授けられないのです。

菩提寺が直葬に対して否定的だと、関係が損なわれてしまいトラブルに発展することもあります。菩提寺によっては、直葬でもお布施を用意したうえで依頼すれば戒名をつけてくれるため、事前に相談することが大切です。

直葬の行い方

直葬の行い方は、自分で執り行う方法と葬儀屋に依頼する方法の2つがあります。費用を抑えたい場合は自分で行い、手間を軽減したい場合は葬儀屋に依頼するとよいでしょう。

自分で執り行う

直葬は火葬しか行わないため、自分だけで執り行えます。火葬場の予約をして、火葬をする日時まで亡くなられた方の遺体を安置すれば、葬儀屋に頼らずに直葬を進められます。

棺や骨壺などの備品は自分で用意する必要があり、早い段階で用意しておくとスムーズに直葬を行えるでしょう。できるだけ葬儀費用を抑えたいと考えている方は、自分で執り行う方法を検討してみてください。

葬儀屋を探して依頼する

自分で葬儀を執り行える自信がない場合は、葬儀屋に直葬を依頼しましょう。家族や親族が亡くなられたときは、心身共に疲弊してしまいますよね。少しでも事務手続きなどの負担を軽減したい場合は、無理をせず葬儀屋に依頼するのがおすすめです。

葬儀屋に依頼すると、自分で執り行う場合よりも費用がかかりますが、火葬場の予約や棺などの用意をサポートしてくれます。信頼できる葬儀屋を見つけておけば、いざというときスムーズに直葬を行えるでしょう。

直葬を行うときの注意点

直葬を行う世帯は近年増えていますが、直葬を行うにあたって注意するべきポイントがあります。直葬を検討している方は、以下で解説する内容に留意しましょう。

遺体の安置場所を確保する必要がある

亡くなられた方がいても、法律により死後24時間以内に火葬をすることは禁止されています。火葬場の予約を行い、実際に火葬をするまでは亡くなられた方の遺体を安置しなければなりません。

火葬を行うまで日時が空く場合は、遺体の腐敗を防ぐためにドライアイスを用意する必要があります。もし自宅に遺体を安置する場所がなければ、葬儀社や火葬場に相談して霊安室を利用させてもらいましょう。

埋葬費・葬祭費が支給されない可能性がある

直葬の場合は、公的給付である埋葬費・葬祭料が支給されない可能性があります。埋葬費・葬祭料は遺族の葬儀の負担を減らすために設けられている、国の制度です。

埋葬費は、会社員や公務員など国民健康保険以外の社会保険に加入していた方が亡くなったときに支給され、支給額は一律5万円です。葬祭費は国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入していた方が亡くなったときに支給され、支給額は自治体によって異なります。

直葬を行ったあとに埋葬費・葬祭料の申請を行うと、「葬儀が行われていないから」という理由で、支給対象外となるケースがあります。基本的に、葬儀を行う際には埋葬費か葬祭費を請求するため、事前に支給要件を確認しておきましょう。

菩提寺とトラブルになる可能性がある

直葬を行うことで、菩提寺とトラブルになる可能性があります。菩提寺としては、檀家で亡くなられた方がいたときは、弔うために読経を行い戒名をつけることが一般的であるためです。

直葬では葬儀を行わないため、菩提寺からすると「勝手に葬儀を行った家」と、ネガティブな感情を持つ可能性が考えられます。菩提寺に無断で直葬を行うことで、納骨ができないなど、トラブルに発展するケースもあります。

そのため、直葬を行う場合は事前に菩提寺に伝えておき、理解を得ることが大切です。

香典を受け取ったら返礼品を用意する

直葬を行う場合、香典を受け取る想定をしていないケースもあります。しかし、何らかの理由で弔問客が訪れ、香典を受け取った場合は返礼品を渡す必要があります。

地域によって香典を渡す慣習があるかどうかは異なりますが、もし香典を受け取ったら、後日返礼品を送るのがマナーです。返礼品の目安としては、「受け取った香典額の3分の1から半額程度」が相場です。

直葬の場合でも、香典返しとして返礼品を用意する必要がある点には留意しましょう。

直葬の服装は一般的な葬儀と変わらない

直葬は宗教的儀礼を行わないものの、一般的な葬儀と同じく準喪服が適しています。。上下が黒のスーツとネクタイ、革靴で参列するのが一般的なマナーです。

参列者に気楽な思いで来てほしいと感じる場合は、事前に「平服でお越しください」と伝えておきましょう。この場合、準喪服ではなく略喪服を着用します。いずれにせよ、亡くなられた方を送る場として、ふさわしい服装を意識することが大切です。