「家族葬は通常の葬式よりも何がよいのだろう」と疑問を抱く方がいらっしゃいます。故人は生前人付き合いが少なかった、盛大な式典を好む性格ではなかったなどの理由で、お葬式を小規模に行いたいと考えるご遺族は少なくありません。
家族葬は本当に近しい間柄の関係者のみ参列する小規模な葬儀です。ご遺族は参列者対応に追われず、大切な故人とのお別れの時間をたっぷりと確保できます。
家族葬のメリットやデメリット、よくあるトラブルをまとめたのでぜひご一読ください。
- 家族葬は家族や近しい友人などしか参列しない小規模なお葬式
- 参列者対応の負担が少なく、葬式にかかる費用を抑えやすいのがメリット
- 後日葬儀に参列しなかった方の弔問対応に追われる場合がある
家族葬は小規模でアットホームなお葬式
家族葬は親しい親族のみを招く小規模なお葬式で、コロナ禍で大勢集まることが難しくなった昨今、注目され始めた葬儀の形です。
参列者は故人と深いゆかりがある人物に限るのが基本ですが、呼ぶ範囲に特別なルールは存在せず、家族以外を呼んでも問題ありません。よく似た密葬との違いや、家族葬の流れについてご紹介します。
密葬との違い
親しい間柄のみの葬儀にはもう1つ密葬がありますが、家族葬とはお葬式のスタイルが異なります。密葬は後日大々的に本葬が開催されることを前提としており、2つの式典がセットになっています。一方、家族葬は単体で成立するのが特徴です。
密葬は社会的に名の知れた方で、葬式に大多数の参列者が想定される場合に、近親者のみでじっくりとお別れの時間を設けるために行われます。家族葬ははじめから小規模で、身内以外の参列者が少ないときに適したお葬式です。
親しい人たちとの別れの場を設けるという目的は同じでも、家族葬と密葬では規模感が大きく異なります。
家族葬の流れ
家族葬と聞くと、通常の葬式と何が違うのだろうと感じる方もいるでしょう。お葬式の基本的な流れは次のとおりです。
- 逝去
- 安置
- お通夜
- 葬儀・告別式
- 火葬
- 四十九日・法要
上記のとおり、葬式の進め方は一般葬と変わりません。ただし参列者の範囲が狭いため会場の規模は小さくなります。
また、通常のお葬式ではお通夜と葬儀・告別式が別日で開催されますが、小規模な家族葬では1日にまとめて行われる場合もあります。
家族葬のメリット
家族葬が近年人気を博しているのは、お葬式に伴うさまざまな負担を軽減できるためです。一般葬と比べてどのようなメリットがあるのか、具体的に解説します。
- お別れの時間を十分に確保できる
- 参列者への対応の負担が軽減する
- 小規模のため葬儀費用を抑えやすい
- オーダーメイドの葬儀を実現しやすい
- 温かみのあるお葬式になりやすい
1.お別れの時間を十分に確保できる
参列者の数が少ない家族葬では、参列者1人ひとりが故人とのお別れの時間をたっぷりと確保できるのが特徴です。一般的なお葬式では当日の対応がせわしなくなりがちで、感謝の言葉や生前に伝えきれなかった想いを伝える時間がない場合があります。
さらに故人と近しい間柄ではない方まで参加されるため、挨拶や接待で手いっぱいになるケースも見受けられます。一生に一度のお葬式で十分なお別れができなかったとしたら、後々悔やんでも悔やみきれません。
ゆとりをもって故人との最後の時間を過ごしたい場合、家族葬がおすすめです。
2.参列者への対応の負担が軽減する
家族葬では大勢の参列者に対する準備や気遣いの手間が省け、ご遺族の負担が軽減されるでしょう。大規模なお葬式では普段は目にかからない方も出席します。
当日は受付や会計の体制を整え、次々と参列されるお客様に絶えず気を配る必要があります。気疲れで葬儀が終わった頃にはくたくたに疲れ果ててしまう方もいるでしょう。
家族葬では身内や親しい間柄の関係者しか参列しないため、余計な気を回す負担から解放され、故人とのお別れに集中できます。
3.小規模のため葬儀費用を抑えやすい
家族葬は一般的なお葬式と比べて小規模な形式なので、葬儀費用を抑えられる傾向があります。なぜなら香典返しや飲食費等の接待費を節約でき、参列者が少なく会場の規模も小さく済むためです。
注意が必要なのは参列者が少ない分、受け取る香典の額が減りやすいことです。
4.オーダーメイドの葬儀を実現しやすい
家族葬は一般の方からの目を気にせず、自由度の高い葬儀を実現しやすいのも利点です。新しい形のお葬式なので形式にとらわれず、生前の故人からの要望も柔軟に叶えられます。
たとえばBGM代わりに好きだった音楽を流したり、好物の食べ物を持ち寄ったりなど、趣味や好みを色濃く反映した、個性的なお葬式が実現できるのも家族葬ならではだといえます。葬儀社も豊富なプランを用意しており、希望を伝えれば柔軟に対応してくれますよ。
5.温かみのあるお葬式になりやすい
家族葬は気の置けない方しか参列しないため、思い出話に花が咲きやすいのも特徴です。お葬式特有の厳格な雰囲気のなかでも、温かみのある空気を形成できます。
集まった親族の手で故人が好きだったものを散りばめたり、望みを叶えたりしやすいのも利点です。
亡くなった方にゆかりのある物を集めれば、唯一無二の式典が実現し、参列者の心に忘れられない思い出として刻まれるでしょう。
家族葬のデメリット
家族葬を実施して後悔しないためには、事前にデメリットも把握しましょう。厳格なルールが存在しない自由度が高いお葬式の反面、親族間で意見の食い違いが生じたり、参列者の選別が難しくなったりするリスクがあります。
また、葬式後の弔問対応に追われる可能性があることには注意が必要です。
- 親族から反対を受ける可能性がある
- 参列者の選別が難しい
- 後日弔問の対応が増える
1.親族から反対を受ける可能性がある
家族葬は比較的新しい形の葬式なので、伝統や形式を重んじる身内から反対の意見が出る場合もあります。近しい間柄のみの小規模なお葬式か、最後は豪勢に送り出してあげたいか、遺族間で意見が分かれることは大いに考えられます。
一般葬を好む方はいると思われるので、遺族間で合意を得られないと、仲たがいの原因となる可能性があるのです。
2.参列者の選別が難しい
家族葬は参列者をしぼる必要がある分、誰を呼んで、誰を呼ばないかの選別が難しくなります。参列者の決め方に法的なルールはありません。友人や知人をどこまで呼ぶか決めるだけでも時間がかかるでしょう。
ご遺族の判断だけで参列者を決めると、後日「私も参加したかった」と参列者以外からクレームが入ることがあります。参列者を決める際は、故人が最後に誰と会いたいのか考えるのが1つの手です。
3.後日弔問の対応が増える
参列者を限定した分、葬儀後にはじめて不幸を知った親族や友人などが自宅に訪れる場合があります。悪気がないだけにむげに扱うことはできず、返礼品を準備して対応するのがマナーです。
弔問の手間を考慮すると結果的に負担が増大し、家族葬にしたメリットを感じられなくなるかもしれません。
家族葬でよくあるトラブルと注意点
家族葬でありがちなトラブルをご紹介します。事前に想定される問題を把握しておけば、何に気を付けるべきかわかります。
具体的な事例のほか、注意点や防止策もご紹介するのでぜひ参考にしてください。
参加者以外からクレームが入る
葬儀後に訃報を知った参列者から、呼ばれなかったことに対してクレームを受ける場合があります。生前お世話になっていて故人を弔いたい気持ちが強いと、事実を受け入れられずに憤りの声を漏らしてしまうものです。
参列を求めない場合でも、故人と関係の深い方には家族葬を行う旨をきちんと明示するのが1つの手です。「故人の意向により」と理由も合わせて伝えると、自分は招待されていないとわかっても納得を得られる可能性が高まります。
当日に参列予定者ではない方が来る
当日不意に参列予定者以外が会場に来てしまい、対応に苦慮する場合もあります。その場で立ち去ることを求めるわけにはいかず、スムーズな式典の進行を妨げる可能性は否定できません。
このトラブルを避けるには、参列者以外には事前に訃報を伝えないことが重要です。どの範囲まで事実を伝えるかの判断は極めて難しく、参列予定者のみに絞ると、後日クレームを受けるリスクが高まります。
弔問客が多すぎる
家族葬で参列者の範囲を絞ったために、後日大勢の弔問客の対応に追われることがあります。会社関係者や近所に住む方、友人などが頻繁に訪れると、かえって通常の葬儀より負担が増してしまいかねません。
弔問は事前に連絡を入れての訪問がマナーですが、突然訪れる方が出ることも想定しましょう。葬儀後数日〜数週間にわたって、いつ訪れるかわからない弔問客に備えていては気が休まる暇もありません。
葬儀後の弔問の負担を軽減したい場合、弔問辞退を検討しましょう。訃報の連絡時に「なお故人の希望もあり、香典・供花・供物・弔問・弔電は辞退申し上げます」と伝えれば問題ありません。
家族葬がおすすめの方は?
なかには家族葬が自分たちに向いているか判断できない方もいるでしょう。一般的に家族葬がおすすめの方は次の特徴をもっています。
- 喪主や遺族も高齢で心身ともに負担を避けたい
- 葬儀にかかる費用を抑えたい
- 故人は人付き合いが少ない方だった
- 親族で反対意見が出ていない
家族葬は体力的にも精神的にも、金銭的にも負担が小さいお葬式です。故人が特段希望をしていなくても、遺族が高齢だったり体力に自信がなかったりする場合、検討してはいかがでしょうか?
家族葬の費用相場は?
家族葬の費用相場は100万円程度です。内訳は、斎場の使用料やセレモニースタッフの人件費、寝台車や棺の費用など葬儀本体にかかるお金のほか、飲食接待費用(当日の飲食費、香典返し、返礼品代)、お布施などです。
参列者が少ない家族葬は飲食接待費を抑えられます。コストをさらに削減したい場合、通夜と告別式をまとめて行う1日葬の形態がおすすめです。
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