葬式のマナーとは?参列の際の服装から香典・焼香・お悔やみまで解説

葬式に参列する際の服装や身だしなみ、葬式の場での作法に不安を覚える方は少なくないでしょう。葬式にはさまざまなマナーがあり、すべてを記憶することは難しいかもしれません。

しかし葬式の際のマナーには、1つ1つに宗教の教えなどに基づく意味があります。これを正しく理解していれば、遺族や他の参列者の方に不快感を与えることが防げるのです。

今回の記事では、参列の際の服装から香典や焼香の作法に至るまで、葬式のマナーを詳しく解説します。

1分でわかる!記事の内容
  • 葬式のマナーをすべて記憶するのは難しいが、作法の意味を正しく理解すればマナー違反にはつながりにくい
  • 宗教や宗派によって死に対する考え方が違うため、求められるマナーが異なることを理解する
  • 服装や身だしなみは一般的なマナーを守ったうえで、宗教や風習によるマナーを理解する

葬式のマナーとは

参列する際の服装から葬儀の場での作法に至るまで、葬式にはさまざまなマナーがあります。

喪服は「喪に服していることを表す服装」であり、香典には「故人の追悼」や「遺族に対する援助」という意味があります。それぞれのマナーは、宗教の教えや古くからの風習に基づくもので、尊重されるべきものといえるのです。

葬式のマナーは数多く、すべてを記憶することは難しいかもしれません。しかし、1つ1つの作法の意味を正しく理解していれば、マナーを違えることにはつながりにくいともいえるのです。

葬式の服装に関するマナー

喪服とは、着用している方が「喪に服していること」を表すための服装といわれています。このため葬式では、喪服を着用することが基本的なマナーです。

葬式が宗教的・社会的な儀礼であることを正しく理解し、適切な服装や身だしなみでのぞみましょう。

参列者の場合

一般の参列者として葬式に出向く際には、行われる葬式の主旨を正しく理解して適切な服装と身だしなみに気を配ることが必要です。

葬儀というおごそかな場に、カジュアルな服装や華やかな装いは適していません。宗教の教えや風習などに則した考えで、身なりを整えることが大切です。

準喪服を着用する

葬式や告別式では、一般の参列者も準喪服を着用するのがマナーです。準喪服は最も標準的な喪服で、遺族か一般会葬者かを問わず、どのような立場でも着用できます。

男性も女性も「準喪服」として販売されているものを選べば間違いありません。

準喪服
  • 男性:シングルまたはダブルのブラックスーツ
  • 女性:黒いワンピースやスーツ、アンサンブルなど

葬儀や法要で着用される喪服には、種類によって格式の上下が存在することも覚えておきましょう。

準喪服以外に正喪服と略喪服がありますが、一般的に喪服といえば準喪服を指します。正喪服は最も格の高い喪服で、喪主を始めとした喪家の方以外には着用しません。

一方の略喪服は、あくまでも「喪服に準ずる服装」で正式な喪服とはいえず、葬式に着用するにはふさわしくないのです。

平服は通夜でのみ着用する

突然の訃報で出先から通夜に直行する場合や、会社帰りに弔問する場合には平服でも構いません。ここでいう平服とは、略喪服のことを指しています。

略喪服
  • 男性:白いワイシャツに黒や紺などのダークスーツ
  • 女性:ダークカラーのスーツかワンピース

男性のネクタイは黒を用意し、靴と靴下も黒を選びましょう。結構指輪以外の装飾品は付けないのがマナーですから、ネクタイピンなどは外します。腕時計もカジュアルすぎるものや装飾が多いものは外したほうが無難です。

女性の場合は、ストッキングも黒を選びましょう。結婚指輪以外のアクセサリーは外します

ピアスやイヤリングは失礼にはあたらないとされるものの、目立ちすぎるものはよくありません。葬儀のアクセサリーといえば真珠が定番ですが、長すぎるネックレスや2重のデザインのものは避けましょう。

通夜であっても、男女とも数珠を持参するのがマナーです。

身だしなみに気を配る

正しい喪服を着用するとともに、身なりや持ち物などにも気を配りましょう。清潔な髪形や控えめな化粧などの身だしなみも葬式のマナーです。

基本的にアクセサリーなどは外し、華美な印象、清潔感のない印象を持たれないことが大切です。

男女とも長い髪は後ろで束ねるのが好ましいですが、その際には結び目が耳より下に来るように注意しましょう。

無造作に跳ねさせた髪形なども、カジュアルすぎる印象が強いためおすすめできません。髪の色が明るすぎる場合には、一時的に黒く染めるスプレーなども有効です。

女性の化粧は「片化粧」と呼ばれる控えめなナチュラルメイクが基本で、本来は口紅を塗らないのがマナーとされています。このため口紅を用いる場合にも、光沢のない自然な色合いのものを用います。

遺族の場合

葬式を主催する遺族の立場では、必ず喪服を着用することが必要です。現在は喪主であっても正喪服を着用することは稀で、準喪服が一般的となっています。

遺族の場合には、通夜であっても準喪服を着用します。

宗教・宗派に関するマナー

日本では仏式で行われる葬儀が最も多く、全体の9割を占めているといわれます。ただし、宗派によって教義や死にたいする考え方が異なることから、葬式の場で求められるマナーも変わるのです。

また故人が神道やキリスト教の信者である場合には、仏教のマナーがあてはまりません。

葬式の宗教や宗派を正しく理解して、それに則したマナーで参列することも大切です。

仏式の宗派

仏式の葬儀は、故人が極楽浄土へ行けることを願って行われる儀式といえます。

冥福を祈る」とは、仏教ならではの考え方で、死後の幸せを祈ることを意味しています。死後の世界をさまよっている亡くなった方の魂が、幸せな方向に導かれることを願う言葉です。

しかし、仏教の中でも浄土真宗では、人が亡くなったあとに、すぐに仏様になる「臨終即往生」という考えがあります。このため「冥福を祈る」という言葉は適切ではなく、むしろマナー違反と考えられます。

同じ仏教でも宗派によって焼香や数珠などの作法が異なるため、それをすべて把握するのは難しいかもしれません。

しかし、「死後49日間は魂が留まる」という仏教の基本的な考えを理解したうえで、浄土真宗に限っては、「死後すぐに仏様になる」という考えであることを知ることが大切です。

神道の葬式

神道では、「故人は家の守り神になる」と考えられています。神式の葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれ、故人の魂を留めて守護神として奉るという意味をもつ儀式です。

このため葬式の作法も仏式のものとは大きく異なります。供養や成仏、前述した「ご冥福をお祈りします」という言葉は、仏教の教えに基づくもののため、神式の葬儀では使いません。

参列する際の服装は仏式の通夜や葬式と同様の考え方で選べば問題ありませんが、数珠は不要です。

葬儀では、焼香に代わり玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われます。神職、神前に一礼し、玉串を供えたあとで拝礼を行うため、作法を覚えておきましょう。

拝礼は「2礼・2拍手・1礼」といわれるとおり、頭を2回下げ、柏手を2回打ち、最後に1礼する作法です。ただし、弔事では柏手の際に両手を直前で止め音を鳴らさない「忍び手」で行います。

キリスト教の葬式

キリスト教式の葬式は、故人の死を悼む儀式ではなく、故人が神の元に召されることを祝福する儀式という意味を持ちます。このため、お悔やみの言葉はふさわしくないことを知っておかなければなりません。

葬式は主に教会で行われるのが一般的で、聖歌・賛美歌の斉唱や献花などが行われます。仏教でいう香典に相当するお金を包む際も、「御花料」とすることを覚えておきましょう。

キリスト教式の葬儀に参列する場合でも、服装は他の宗教の葬儀と同様で問題ありませんが、もちろん数珠は用いません。

また、カトリックとプロテスタントでは教義や死後の世界観に違いがあるため、葬儀の方法も異なります。カトリックでは聖職者を「神父」と呼び、プロテスタントでは「牧師」と呼ぶことなどを知っておくとよいでしょう。

香典のマナー

香典とは、故人の追悼と遺族への支援の意味を込めて、通夜や葬式に持参するお金です。香典にもさまざまなマナーがあり、知らなければ遺族に不快感を与える原因ともなりかねません。

香典を準備する際、通夜や葬儀の場で渡す際のマナーについてもしっかりと確認しておきましょう。

金額と不祝儀袋

香典に包む金額は、故人との関係性に応じて決めるのがマナーです。多すぎても少なすぎても先方に対して失礼にあたり、好ましくありません。

故人との関係性によってある程度の目安が存在しますから、相場に則した金額を包むのが適切です。

また、不祝儀袋も金額に合ったものを選びましょう。5,000円以下の香典を包むのに適しているのは、水引が印刷された簡易的なものです。金額が1万円以上のときは、実物の水引が結ばれているものを選びましょう。

表書きも宗教や宗派によって異なる点にも注意が必要です。そもそも香典という表現は仏教のもので、神道やキリスト教では用いません。

宗教・宗派によって、人が亡くなることに対する考え方が異なるため、教義に則した表書きを用いなければならないのです。

包み方・渡し方

香典袋の包み方や、香典を渡す際のマナーを知っておくことも大切です。

香典として包むお札は新札を用いず、肖像画を裏向きの下側に向けて揃えて入れます。外袋を閉じる際に、折り込みが上から下にかぶさる位置関係になることも大切です。

お札の向きは「顔を伏せて追悼の意を示すため」、閉じ方の意味は「悲しみに暮れる涙を流すため」です。それぞれの意味を知っておけば、忘れたときにも間違えることはないでしょう。

「涙で薄くなった」「墨をする時間がなかった」という意味で、薄墨を使うことも忘れてはなりません

香典はポケットやバッグなどに直接入れず、袱紗に包んで持参します。渡す際には袱紗を下に敷いた状態で先方から文字が読める方向に向きを変え、お悔やみの言葉を添えて両手で渡すのがマナーです。

通夜と葬儀の両方で香典を渡すのも、マナー違反にあたります。「不幸が重なる」と捉えられ、弔事では同じことの繰り返しを避けるべきとされています。

数珠のマナー

仏式の葬儀に参列する際には、数珠を持参するのがマナーです。数珠を持って合掌することで、煩悩をなくし仏の世界とつながるなどの意味から、喪服の着用と同様に葬儀へ持参することが社会的なマナーと考えられています。

ただし、数珠の形や作法は宗派によってさまざまです。このため宗派ごとに定められた正式な数珠である「本式数珠」ではなく、宗派を問わずにいずれの葬儀にも使える「略式数珠」を用意することをおすすめします

葬儀の場では、常に左手で数珠を持っておくのがマナーです。焼香の際には、左手に数珠を掛けた状態で、右手で焼香をします。

数珠は、ご自身と仏の世界をつなぐ大切な道具であり、ご自身の分身とも言われます。このため数珠の貸し借りは好ましくないこと、椅子などにそのまま置くことも避けるべきとされることなどを知っておきましょう。

焼香のマナー

焼香では基本的な流れだけを理解しておきましょう。

ご自身の順番がきたら、抹香を右手の親指と人差し指、中指でつまみ、額の前におしいただいてから香炉にくべます。これを1~3回繰り返すのが一般的です。

焼香には「心身を清める」「故人に対するお供え」などの意味が込められているため、できる限り正しい作法で行う必要があります。

しかし、作法は宗派によって細かく異なり、正確に把握するのは難しいかもしれません。正確な作法がわからない場合は、追悼の気持ちを込めて行いましょう。

お悔やみのマナー

受付で香典を渡す際や遺族に挨拶をする際など、故人を悼む気持ち、遺族へのねぎらいとしてお悔みの言葉を伝える機会があるでしょう。お悔やみの言葉にも注意すべきマナーがあります。

声のトーンを控えめにして、「この度はご愁傷さまです」「謹んでお悔やみ申し上げます」など、簡潔に伝えるのが失礼のないマナーです。

忌み言葉を避ける

お悔やみを伝える際には、使ってはならない「忌み言葉」がいくつか存在します。「たびたび」などの重ね言葉や不吉な表現などがこれにあたり、縁起が悪いと考えられることから避けなければなりません。

また、直接的な生死の表現も好ましくないとされています。「死ぬ」「生きる」などの言葉は避けたほうがよいでしょう。死因などを尋ねることも失礼にあたります。

忌み言葉の例
重ね言葉 重ね重ね
たびたび
またまた
次々
ますます
返す返す
いよいよ
繰り返しを連想させる言葉 繰り返し
繰り返す
再び
再三
続いて
追って
相次ぎ
不吉を感じさせる言葉 消える
落ちる
焦る
離れる
浮かばれない
4
9
直接的な生死の表現 死ぬ
亡くなる
死亡
急死
生存
生きる
逝く

遺族との長話を避ける

喪主や遺族の方に直接挨拶する機会があったとしても、通夜や葬式の場で遺族を長い時間引き留めるのはマナー違反です。簡潔なお悔やみを伝えるだけに留め、長話は避けましょう。

また「元気を出して」「頑張って」などの直接的な励ましの言葉も、葬儀の場では控えるべきです。

葬儀を終えるまでは、喪主を始めとする遺族は故人を亡くした悲しみにくれる間もないほど慌ただしく過ごしています。そのことを理解して配慮することも、参列者に必要なマナーといえるのです。

葬儀に参列できないときのマナー

遠方で葬式が行われる場合や、所要などで葬式に参列できない場合に、香典を郵送したり、葬儀後に自宅に弔問したりというケースもあるでしょう。このような場合のマナーも理解しておかなければなりません。

香典を郵送する場合には、現金書留で送ります。香典袋とともに、お悔やみの言葉と参列できないお詫びを記した手紙を同封して送るのがマナーです。

葬式のあとに自宅を訪問して弔問したい場合には、事前にその旨を伝えて遺族の意向を確認することが大切です。特に葬式を終えた直後などは、迷惑と感じられるかもしれません。

葬儀から3日間は避け、四十九日までの間に弔問するのがよいでしょう。

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