「戒名をつけてもらうと戒名料を払う必要があるって聞いたけど、具体的にいくら必要なんだろう?」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?戒名は普段の生活で意識する機会は少ないため、わからないことは多いですよね。
戒名料は、戒名をつけてもらったことに対するお礼です。戒名はランクによって料金が変わるため、お金の不安を払しょくするためにも、事前に相場を確認することは重要です。
こちらの記事では、戒名料の相場や安く抑えるための方法、お渡しするときのマナーなどを解説します。親族に不幸があり、戒名料に関して悩んでいる方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。
- 戒名をつけるときは戒名料を支払う必要がある
- 戒名料はランクによって異なるが、数十万円は用意する必要がある
- つけない場合はトラブルになる可能性があるので注意
そもそも戒名とは
戒名(かいみょう)とは、仏教における死後の名前です。亡くなったあとの世界で生きるための名前、と考えてください。墓石や位牌に刻まれ、亡くなられた方に手を合わせ、偲ぶ際の大切な名前でもあります。
あの世での生活を円滑にする目的のほかにも、「現世での罪や煩悩を浄化する」という意味が含まれています。菩提寺(ぼだいじ)の僧侶から戒名が与えられます。遺族はつけてもらったことに対するお礼として、戒名料をお渡しするのが通例です。
また、一般的に戒名は亡くなられた方の生き様や性格、趣味などを反映します。深い関わりのある漢字を用いて、あの世でも心地よく生活できるようにお送りするのが通例です。
戒名の構成
戒名は漢字の羅列で「氏」「名」のような構成があります。自宅にご先祖様の仏壇があるなら、位牌を見てみるとイメージが掴めますよ。
院号
院号(いんごう)とは最もランクが高く、院殿号(いんでんごう)とも呼ばれます。院号と院殿号は、貴族や武士など権力を有していた者に授けられていました。
現代では貴族や武士という階級はないため、院号が与えられるのは菩提寺に対して多大な貢献をした方となります。具体的には、菩提寺に多額の寄付をするなど、名前が残るような貢献をする必要があります。
道号
道号(どうごう)は、院号や院殿号がないとき、最上部につける称号です。ニックネームのようなものを指す「字(あざな)」の意味合いもあり、実際に生前の別名を用いる方もいます。
道号では亡くなられた方の性格や人柄を表し、具体的には以下のような漢字を用います。
- 性格や趣味を表す文字:「光」「翁」など
- 場所を表す文字:「海」「山」など
- 住居を表す文字:「殿」「斎」など
なお、未成年の方が亡くなったときは道号を用いません。
戒名
戒名は、本来であれば全体の中における1つの構成要素に過ぎません。ただし、すべての要素を含めて「戒名」と呼ぶのが一般的なので、厳密に使い分ける必要はありません。
戒名は、亡くなられて仏門に入ったことを証明するものです。漢字2文字を用い、1文字は生前の名前である俗名(ぞくめい)からつけ、もう1文字は仏や経典と馴染みが深い漢字を頂くのが通例です。
歴代の天皇を連想させる漢字や、縁起が悪いとされる漢字は使えない点に注意しましょう。
位号
位号(いごう)は「様」のような意味合いがあり、仏教徒としてのランクを表します。亡くなられた方の性別や社会貢献度などを鑑みて名づけられ、位が高いほど費用も高額です。
具体的には、男性と女性では下記のような違いがあります。
男性 | (ランクが高い順に)大居士→居士→信士 |
---|---|
女性 | (ランクが高い順に)清大姉→大姉→信女 |
多くの方々は「信士」や「信女」の位号を授かります。一見すると「最低ランクじゃないか」と思われるかもしれませんが、決してランクが低く蔑まれているわけではありません。
有名人や政治家など、名の通った方や菩提寺に対して多大な貢献をした方でない限り、高いランクの位号を授けられるケースはほとんどない点は押さえておきましょう。
また、亡くなられた方が未成年の場合、下記のようになります。
5歳以下 | 幼児・幼女・水子など |
---|---|
15歳以下 | 大童子・大童女など |
戒名は遺族がつけることも可能
戒名は、遺族の方々がつけることも可能です。法令において「必ず僧侶がつけなければならない」などの決まりはないため、誰でもつけられます。
「縁起が悪い漢字は用いない」などの基本的なルールを守れば、ご自身たちで決めて問題ありません。僧侶に頼まなければお金を支払う必要もないため、節約したい場合はご自身たちでつけることも検討しましょう。
戒名をつけないリスク
戒名をつけないことも可能ですが、リスクが伴う点には留意しましょう。ご自身たち以後の世代が困ってしまう恐れがあるため、単に「お金を払いたくないから」という理由でつけないのはおすすめしません。
菩提寺との関係が悪化する
菩提寺があるにも関わらず、遺族が事前に相談することなく勝手に戒名をつけると、関係が悪化するリスクがあります。菩提寺との関係が悪化すると、あとの世代が亡くなったとき、菩提寺に入れない恐れがあるので注意しましょう。
お墓に入れないことで、いつまでも納骨できずに困ってしまう事態にもなりかねません。遺骨を自宅で保管しても、自然に返す散骨(さんこつ)を行っても問題ありませんが、考えなければならない問題が増えてしまう点には留意しましょう。
位牌に戒名が書けない
戒名がないと位牌に戒名を書けず、手を合わせる際に寂しい思いをする恐れがあります。位牌とは「亡くなられた方の魂が宿っているもの」で、位牌がないと偲ぶ相手がいないことになります。
位牌は弔意を示す際に欠かせない仏具なので、戒名をつけないことで「いつまでも位牌が完成しない」リスクがある点には留意しましょう。
また、お盆は「ご先祖様の魂が返ってくる期間」であり、位牌がないと「亡くなられた方の魂が帰ってこられない」と考えられています。
行事やしきたりを大切にしている方は、戒名をつけないことでご先祖様をお迎えできない点に注意してください。
せっかく仏壇があっても、大切な方の魂がいないのは寂しいですよね。
批判を浴びることがある
戒名をつけないことで、親族から批判を浴びるリスクがあります。親族以外にも、近隣の方や弔問に訪れた方からも批判的に捉えられるリスクがある点に留意しましょう。
親族の中に「戒名をつけるのは当然のこと」と考えている方がいる場合、「つける」「つけない」をめぐってトラブルになる恐れがあります。
「戒名をつけるのが当たり前」と考えている方にとって、つけないのは「親不孝」「不謹慎」という印象を持ちます。無用なトラブルで疲弊しないためにも、事前に親族同士で相談しておくとよいでしょう。
戒名料とは
戒名料とは、戒名をつけてくれたことに対するお礼を指します。四十九日法要を行う前に、菩提寺の僧侶とランクなどの打ち合わせをするのが一般的です。
金額の目安は「安くても20万円〜30万円程度」です。戒名料は「戒名をつけてもらったことに対するお礼」なので、葬儀代やお布施とは趣旨が異なります。
「きちんと支払えるか不安」という方は、菩提寺の僧侶と相談しておくとよいでしょう。
戒名料の相場は宗派やランクによって異なる
戒名料の相場は、宗教や寺院、位号のランクによって異なります。各宗派の目安は、おおむね下記のとおりです。
浄土宗 | 約30万~100万円 |
---|---|
浄土真宗 | 約20万~80万円 |
真言宗・天台宗 | 約30万~150万円 |
日蓮宗 | 約30万~150万円 |
臨済宗・曹洞宗 | 約30万~120万円 |
以下で、各ランクについて解説します。
院居士・院大姉
院居士(いんこじ)と院大姉(いんだいし)は、それぞれ男性、女性につけられる最高ランクの位号です。もともとは、武士や貴族など身分の高い方に対してつけられていました。
現代で、一般市民の方々に院居士・院大姉という位号がつけられるケースはほとんどありません。戒名として院居士・院大姉をつけてもらう場合、80万円~150万円程度のお金を用意する必要があります。
院信士・院信女
院信士(いんしんじ)と院信女(いんしんにょ)は、それぞれ男性、女性につけられます。歴史的に見ても、身分の高い方に用いられている点が特徴です、
「院」という漢字は「出家した皇族が、寺院に付属するように建てたもの」という意味合いがあります。一般市民の方々で、院信士・院信女がつけられるケースはほとんどありません。
戒名として院信士・院信女をつけてもらう場合、80万円~100万円程度のお金が発生します。
居士・大姉・院釋・院釋尼
居士(こじ)と大姉(だいし)は、それぞれ男性、女性に対してつけられます。浄土真宗の場合は、院釋(いんしゃく)と院釋尼(いんしゃくに)という呼び方をします。
「仏教に帰依した方」という意味合いがあり、仏教を深く信仰していた方や、寺院への貢献度が高かった方に対してつけられるケースが多いです。
居士・大姉・院釋・院釋尼の戒名をつけてもらう場合は、40万円~70万円程度が目安となるでしょう。
信士・信女・釋・釋尼
多くの方につけられる標準的なランクの位号が、信士(しんじ)と信女(しんにょ)です。それぞれ男性、女性につけられ、「仏教に帰依した方」というニュアンスがあります。
浄土真宗では、釋(しゃく)釋尼(しゃくに)と呼びます。信士・信女・釋・釋尼をつけてもらう場合は、20万円~40万円が相場です。特段戒名にこだわりがなければ信士・信女・釋・釋尼を検討するとよいでしょう。
戒名料とお布施の違い
「戒名料とお布施はどのような違いがあるの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?いずれも「僧侶にお渡しするもの」ではありますが、趣旨や渡す目的が異なります。
戒名料は「戒名をつけてくれたこと」に対するお礼です。仏教の世界の中でふさわしい漢字を選び、さらに位牌や墓石に刻むための手数料と捉えられます。
一方で、お布施は四十九日法要などで読経し、亡くなられた方が成仏できるように導いてくれたことに対するお礼です。
お布施には「寄付」「供え物」という意味合いもありますが、現代では法要や読経を行ったことに対して、僧侶に感謝や尊敬の意を表す意味合いで用いられます。
そのため、葬儀や四十九日法要で読経してくれたときは「お布施」をお渡しし、戒名を授けてもらったときは「戒名料」をお渡ししましょう。
戒名料 | お布施 | |
---|---|---|
意味 | 「戒名をつけてくれたこと」に対するお礼 | ・亡くなられた方が成仏できるように導いてくれたことに対するお礼 ・現代では法要や読経を行ったことに対して、僧侶に感謝や尊敬の意を表す |
渡すタイミング | 戒名を授けてもらったとき | 葬儀や四十九日法要で読経してくれたとき |
戒名料の渡し方
戒名料を僧侶にお渡しするタイミングや渡し方など、よくわからないことも多いのではないでしょうか?以下で、渡し方に関する一般的なマナーやしきたりについて解説します。
封筒に入れて渡す
戒名料は、封筒に入れてお渡しするのがマナーです。封筒は「不祝儀袋」を選ぶ必要があり、具体的には奉書紙(ほうしょがみ)か無地の白封筒を使うのが通例です。
奉書紙とは上質な和紙で、僧侶にお礼を渡す際に用いられています。奉書紙を用いる際には、現金を半紙などで包み、その上から奉書紙で包みお渡ししましょう。
無地の白封筒を用いる場合は、縁起がいいとされている水引がついていない封筒を使うのが通例です。奉書紙も無地の白封筒も、近隣の小売店やインターネットショッピングで購入できます。
なお、お渡しする際には、封筒の表書きとして「お布施」または「御布施」を記します。「戒名料とお布施は別物」ではありますが、本来であれば、お布施は仏様への感謝の気持ちを金銭で表すものです。
「戒名料」と書くと僧侶に対する報酬や手数料という印象を与えてしまうことから、封筒の表書きにはあくまでも「お布施」または「御布施」と書きましょう。なお、封筒の表書きを書く際には薄墨や筆ペンを使うのが、葬式全般のマナーです。
袱紗に包んで渡す
戒名料を渡すときには、封筒に入れた状態から、さらに袱紗(ふくさ)に包むのが丁寧な渡し方になります。袱紗とは葬儀や結婚式で使われる、小さな風呂敷のことです。
袱紗で包んだ状態で渡すのではなく、中の封筒を取り出し袱紗をたたんで、その上にお金が入った封筒を置きましょう。
たたんだ袱紗に乗せて差し出すほかにも、感謝の言葉とともに両手で差し出す方法もあります。袱紗のたたみ方などに慣れていない場合は、両手で丁寧にお渡しすればよいでしょう。
いつ渡すか
戒名料は、僧侶と打ち合わせをしたタイミングでお渡しするとよいでしょう。ただし、渡すタイミングに決まりはなく、葬儀が終わったあとやお通夜のあとにお渡ししても問題ありません。
なお、戒名料はお布施とまとめてお渡ししても大丈夫です。渡しやすいタイミングで、感謝の言葉を添えてお渡ししましょう。
戒名に関するトラブルを避ける方法
戒名をめぐって、菩提寺とトラブルになってしまう事例が実際にあります。菩提寺とトラブルになると、ご自身よりあとの世代が葬儀の際に困るため、トラブルを避けるための方法を知っておきましょう。
菩提寺の有無を確認しておく
先祖代々が祀られている菩提寺があるのかどうか、まず確認しましょう。多くの家庭では祖父母や父母の供養・法要を行っている菩提寺があります。
しかし、普段の生活の中でお寺とコンタクトをとる機会はほとんどないため「菩提寺があるか、そもそもわからない」というケースもありますよね。そのようなときは、菩提寺の有無について親族に尋ねましょう。
親族は同じ菩薩寺で法要を行うのが一般的なので、親族に聞けば家の菩提寺を把握できます。菩提寺があるにも関わらず、他の寺の僧侶に依頼するとトラブルになるため、注意しましょう。
家族間でも話し合っておく
戒名をつけるかつけないか、つけるとしたらどのランクでつけてもらうのか、家族間で話し合っておきましょう。亡くなられた方を弔ううえで戒名は大切なものですが、高いお金を支払って家計が窮するのは問題です。
また、ご自身は戒名をつけるか悩んでおり、親族の方に「つけるのは遺族として当たり前だ」と考えている方がいる場合、意見の衝突が起こる恐れがあります。
親族間での仲違いやトラブルを防ぐためにも、家族間で話し合っておくことが大切です。
戒名料を最初に確認しておく
「戒名料が払えるか不安」「本音としては、出費を抑えたい」と考えている方は、最初に費用を確認しておくとよいでしょう。戒名料は宗派や各寺院によって異なるうえに、僧侶によっては「お気持ちだけで大丈夫ですよ」と言ってくれることもあります。
「お金に関する相談をするのは恥ずかしい」と感じる方も多いですが、不安を抱えたまま法要を迎えると、不安やストレスが増長してしまいます。事前に予算などを含めて相談することで、安心して法要を執り行えるでしょう。
「生前戒名」を検討する
親族の方が亡くなられたあとは不可能ですが、生前にご自身で戒名をつける「生前戒名」という方法があります。希望の戒名をつけられ、死後につけるよりも安く抑えられる点が生前戒名のメリットです。
生前戒名をすることで、遺族の負担を軽減できるメリットもあります。興味がある場合は、菩提寺で相談してみましょう。
戒名料に関するよくある質問
ご自身が喪主になり、僧侶と打ち合わせをする機会は少ないため、戒名料に関してわからないことは多いですよね。以下で、よくある質問をまとめました。
戒名料が高くて払えない場合はどうする?
戒名料が高くて払えない場合は、菩提寺の僧侶に相談しましょう。亡くなられる前であれば生前戒名を検討する選択肢もありますが、亡くなられたあとは僧侶に相談するしかありません。
「戒名をつけない」ことで戒名料を払わずに済ませることも可能ですが、菩提寺とトラブルになる恐れがあるため、おすすめしません。
戒名料とお布施は同時に渡しても問題ない?
戒名料とお布施を同時にお渡ししても、特段問題はありません。「絶対にこのタイミングで渡さなければならない」という決まりがないため、それぞれ渡しやすいタイミングでお渡ししましょう。
なお、お布施に関しては読経が終わったあとにお渡しするのが通例なので、お布施と一緒に戒名料をお渡しして問題ありません。
戒名をつけない場合のデメリットはある?
戒名をつけないことで、菩提寺や親族とトラブルになる、位牌が完成しないなどのデメリットがあります。
菩提寺とトラブルになると、ご自身の世代以後の納骨や法要が依頼できなくなる恐れがあるため、注意しましょう。
戒名は絶対に必要なの?
戒名は、絶対に必要というわけではありません。戒名は仏教における考えなので、キリスト教やイスラム教をはじめ、仏教以外を信仰している場合は不要です。
また、仏教徒でつけなかったとしても、大きな問題はありません。ただし、菩提寺や親族間のトラブルを避けたい場合は、つけたほうが無難です。
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