「準確定申告は電子申告できる?」「電子申告をする際に必要なものがわからない」など、準確定申告を電子申告するにあたってお困りなことはありませんか?
準確定申告は電子申告(e-Tax)が可能です。ただし電子申告を行うためには、マイナンバーカードや利用者識別番号の取得といった事前準備が必要です。また、申告データを送信するまでにしなければならないことがいくつかあります。
この記事では、準確定申告を電子申告する場合の手順や必要書類について解説します。電子申告の際の注意点もご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
- 準確定申告は電子申告(e-Tax)が可能
- 準確定申告を電子申告するためには、事前に「マイナンバーカード」と「利用者識別番号」の取得が必要
- 申告期限が4カ月しかないため、早めの準備が必要不可欠
準確定申告とは
準確定申告とは、被相続人に代わって相続人が行う所得税の確定申告です。
確定申告は、通常であれば毎年1月1日から12月31日までの所得を、翌年2月16日から3月15日までの申告期間内に申告します。しかし年の途中で亡くなった場合、被相続人はご自身で確定申告を行えないため、相続人が代わりに申告しなければなりません。
準確定申告を行う必要があるのは事業所得や不動産所得のある方、給与所得者でも2カ所以上の勤務先に勤めている方などです。
なお、準確定申告には「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内」という期限があります。そのため早めの手続きが必要です。
電子申告(e-Tax)が可能
準確定申告は電子申告(e-Tax)が可能です。パソコンからはもちろん、スマートフォンからも申告できます。
65万円の青色申告特別控除を受けられるため節税効果が期待でき、還付金が発生した際は持ち込みや郵送で申告したときよりも、還付がスムーズに行われるというメリットもあります。
ただし、すべてのケースで電子申告ができるわけではありません。令和2年分以降のものにしか対応していないため、それ以前の分については電子申告の対象外です。
準確定申告の電子申告前に準備が必要なもの
電子申告までに準備が必要なものは以下のとおりです。
- 準確定申告を行う方(相続人)のマイナンバーカード
- 利用者識別番号
まずは申告する方のマイナンバーカードを準備しましょう。通常の確定申告であればマイナンバーカードを使用しない「ID・パスワード方式」というものもありますが、準確定申告には対応していないためマイナンバーカードが必須です。
準備しなければならないのは被相続人のものではなく、「準確定申告を行う方」のマイナンバーカードです。相続人が2人以上いる場合でも、代表者のものがあれば問題ありません。
そのほか「利用者識別番号」も必要です。利用者識別番号とは、電子申告を利用する際に使用する16桁の番号のことです。国税庁のホームページから「e-Taxの開始(変更等)届出書」を作成・送信すればすぐに発行されます。
e-Taxソフトは、利用者識別番号がなければダウンロードできません。遅くともそれまでには取得しておきましょう。
準確定申告を電子申告する際の必要書類
準確定申告を電子申告する際の必要書類は以下のとおりです。
- 所得税及び復興特別所得税の準確定申告書
- 所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
- 準確定申告の確認書
- 委任状
「準確定申告書」は、通常の確定申告でも使用する様式を使います。「確定申告書付表」は、書面申請であれば相続人2人以上の場合にのみ提出しますが、電子申告では相続する方が1人であっても提出しなければなりません。
「準確定申告の確認書」は相続人が2人以上いるなら必要です。「委任状」は相続人が2人以上で、還付金を代表者がまとめて受領する場合に添付します。
なお、上記の書類は基本的な書類です。ケースによっては、ほかにも提出を求められる可能性があります。
準確定申告を電子申告する際の手順
準確定申告を電子申告する際の手順は以下のとおりです。
- 準確定申告が必要かどうか確認する
- 電子証明書を取得する
- 利用者識別番号を取得する
- e-Taxのソフトをダウンロードする
- 申告書を作成する
- 申告書を送信する
流れに沿って解説します。
1.準確定申告が必要かどうか確認する
まず、準確定申告が必要かどうかを確認しましょう。準確定申告が必要なケースは以下のとおりです。
- 事業所得や不動産所得が48万円以上ある
- 亡くなった年に不動産の売却費や生命保険の満期金を受け取っていた
- 給与収入が年間2,000万円を超える
- 2カ所以上の勤務先に勤めていた
- 副業の収入が年間20万円を超える
- 公的年金の収入が400万円を超える
- 公的年金にかかる雑所得以外の所得が年間20万円を超える
被相続人がこれまで継続的に確定申告を行っていた方であれば、準確定申告が必要だと考えてよいでしょう。過去の確定申告書があればよいですが、見当たらない場合は税務署からの郵便物や通帳などを見て、上記のケースに該当しないかどうかを確認します。
2.電子証明書を取得する
準確定申告が必要だとわかったら、電子証明書を取得します。電子証明書とは、間違いなく本人からの申告であることを電子的に証明するシステムです。
インターネット上での取引において、免許証やパスポートといった本人確認書類のような役割を果たします。発行した電子証明書を電子申告のデータに添付すれば、その申告が申告者本人によるものであることを証明できます。
電子申告に使用できる電子証明書については以下のとおりです。
上記のようにさまざまな電子証明書がありますが、ほとんどの方はマイナンバーカードに組み込まれた「公的個人認証サービス」の電子証明書を使用します。
ただし公的個人認証サービスを利用するなら、マイナンバーカードの読み取りができるスマートフォンかICカードリーダライタが必要です。
利用する電子証明書によっては、専用ソフトを用意しなければならないこともあります。気になる場合はそれぞれの発行元に確認しましょう。
なお、添付できる電子証明書は申告者のもの1人分です。申告者以外の方の電子証明書は添付できません。税理士に代理送信を依頼する場合は、税理士の電子証明書を添付すれば申告者の電子証明書を省略できます。
3.利用者識別番号を取得する
利用者識別番号をまだ取得していない場合は「e-Taxの開始(変更等)届出書」を提出し、利用者識別番号を取得しましょう。e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーからWeb上で手続きすれば、番号がすぐに発行されます。
税務署の窓口に出向けば書面での取得も可能ですが、その場合は通知書が手元に届くまで1週間程度かかります。準確定申告は時間との闘いでもあるため、とくにこだわりがなければWeb上での届出がおすすめです。
4.e-Taxのソフトをダウンロードする
利用者識別番号が発行されたらe-Taxのソフトやアプリをダウンロードします。パソコン版、スマホ版ともに国税庁のe-Taxホームページからダウンロードが可能です。
e-Taxを利用するためには「電子証明書」と「利用者識別番号」が必要です。この時点でまだ取得していない場合は急いで手配しましょう。
ダウンロード方法や利用にあたっての注意事項は「e-Taxソフトについて」や「e-Taxアプリについて」で解説されています。内容をよく確認したうえでダウンロードしましょう。
5.申告書を作成する
e-Taxソフトを用いて「所得税及び復興特別所得税の準確定申告書」を作成します。
氏名欄には被相続人の名前を入力します。
申告する方の名前は入力してもしなくても構いません。たとえば「(被相続人)◯◯」「(被相続人)◯◯、(相続人)◇◇」といった書き方をするとよいでしょう。
なお、被相続人が事業を営んでいた場合や不動産賃貸での収入があるケースでは、単に申告書類を作成すればよいだけではなく帳簿を作成するところからスタートしなければなりません。その分時間がかかることを念頭に置いておきましょう。
申告書のほかにも、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」や「準確定申告の確認書」の作成が必要です。確定申告書付表には相続人ごとに住所や納付税額、還付金の受け取り口座などを記入します。
確認書には相続人それぞれが氏名、住所、税額を記入します。税額欄に入る数字は、確定申告書付表に記載する「納める税金等」と一致しなければなりません。
6.申告書を送信する
必要書類を添付したら申告書を送信します。送信先は、被相続人の最後の納税地を管轄する税務署です。e-Taxソフトに利用者識別番号を登録したあと、申告書のデータに電子証明書を付与して送信すれば完了です。
必要書類は以下の形式で添付します。
所得税及び復興特別所得税の準確定申告書 | XML形式 |
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所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表 | XML形式 |
準確定申告の確認書 | PDF形式 |
委任状 | PDF形式 |
準確定申告が電子申告できるようになってからも、委任状だけはほかの書類を送信したあと、書面を税務署に持ち込むか郵送する必要がありました。しかし、現在では委任状もPDFデータで添付できるようになっています。
確認書・委任状は相続人それぞれが署名・押印したものをPDFデータに変換し、送信する際に添付しましょう。
参考:国税庁-所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について
準確定申告を電子申告する際に注意すること
準確定申告を電子申請するにあたって、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?ここでは、電子申告の際に注意することをご紹介します。
期限が4カ月しかない
準確定申告で注意したいのは、申告期限が「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4カ月以内」であり、通常の確定申告とはタイミングが異なる点です。
早めに取り掛からないと、事前準備やe-Taxの操作方法を調べることに時間を費やしてしまい、実際に申告書を作成する時間がなくなってしまうおそれがあります。
とくにこれからマイナンバーカードを取得する場合は、発行に3週間から1カ月程度かかるため注意が必要です。
電子申告は手間がかからない面もありますが、慣れていないと思っていたよりも苦戦します。
うっかり期限を過ぎてしまうと65万円の青色申告特別控除が10万円になってしまうため、そうならないためにも早めの準備を心がけましょう。
代表者がまとめて手続きをする必要がある
書面での申告であれば相続人それぞれが手続きする選択肢もありますが、電子申告では相続人の代表者がまとめて手続きしなければなりません。
準確定申告は期限が短いこともあり、ケースによっては大変な作業になる可能性があります。そのため、確実に期限内に申告できる方が代表者を務める必要があります。
また、代表者になった方は手続きが終わるまで、多くの時間が取られる可能性があることを覚悟しておく必要があるでしょう。
確定申告書等作成コーナーでは申告できない
通常の確定申告では国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」で作成から送信まで行えますが、準確定申告には対応していないため利用できません。
厳密にいうと、申告書をただ作成するだけなら可能です。ただし送信ができないため、作成コーナーを利用すると結局書面申告になってしまいます。
また、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」は作成コーナーでは作成できないため、国税庁のホームページでダウンロードしなければなりません。
以上のことから、e-Taxソフトを用いて作成・送信を行う必要があることを覚えておきましょう。
e-Taxに対応していないパソコンもある
パソコンによっては、e-Taxに対応していないこともあります。たとえばWindowsには対応していますが、Macには対応していません。
また、パソコンで申告する場合、使用しているスマートフォンにマイナンバー読取機能がなければICカードリーダライタも必要です。e-Taxに対応しているパソコンやスマートフォンがない場合は、書面での申告に切り替える必要があるでしょう。
なお、スマートフォンに関しては、iPhoneの場合はiPhone7以降であればマイナンバーの読み取りに対応できます。Androidは6.0以上でリーダ機能が搭載されている機種であれば利用できます。
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