自動車の遺産分割協議書とは?作成方法や記入例を紹介

自動車の相続には、遺産分割協議書が必要なケースと不要なケースがあることをご存じでしょうか。

不動産や預貯金とは異なり、自動車はつい遺産分割の対象に含めるのを忘れがちです。しかし遺産分割協議書に記載がないと、売却や廃車にしたいときなど、いざというときに手続きが進みません。

この記事では自動車の相続に遺産分割協議書が必要なケースや不要なケース遺産分割協議書の作成方法や記入例を紹介します。

相続財産に自動車が含まれているという方は、ぜひ最後までご確認ください。

1分でわかる!記事の内容
  • 自動車も相続財産に該当するため、ケースによっては遺産分割協議書が必要
  • 軽自動車や査定額100万円以下の普通自動車は、名義変更の際に遺産分割協議書がいらない
  • 自動車の遺産分割協議書や遺産分割協議成立申立書の様式は運輸支局に備え付けられており、比較的簡単に作成できる

遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、相続財産の分け方について話し合った結果をまとめた書面です。遺産の分け方について話し合うことを遺産分割協議といい、すべての相続人が内容に合意してはじめて成立します。

遺産分割協議書は、どのようなケースでも必ず作成するというわけではありません。しかし、有効な遺言書が存在しない場合や、法律で定められた相続分と異なる相続割合で相続する際などに必要です。

自動車の遺産分割協議書とは?

自動車も遺産分割の対象です。そのため相続人のうち誰が自動車を相続するのかを決め、遺産分割協議書に記載する必要があります。

しかし、自動車は不動産や預貯金ほど「相続手続きをする必要がある」という印象が強くないためか、遺産分割から漏れてしまうことがよくあります。遺産分割協議書を作成するときは、内容に漏れがないよう気をつけましょう。

遺産分割協議書の形式は、自動車のみを記載する場合や自動車を含むすべての相続財産を記載する場合などさまざまですが、どちらでも構いません。書き方と記入例については後述します。

自動車の相続に遺産分割協議書がいるケース

自動車の相続には、遺産分割協議書がいるケースといらないケースがあります。ここでは、遺産分割協議書がいるケースについて解説します。

  • 普通自動車の査定額が100万円を超える場合
  • 自動車を売却・廃車手続きをする場合

普通自動車の査定額が100万円を超える場合

自動車の所有者が亡くなったら、相続人への名義変更が必要です。また、対象の自動車が査定額100万円を超える普通自動車である場合は、名義変更の際に遺産分割協議書が必要です。

所有者が亡くなった場合の名義変更は義務ではないため、名義変更をしなかったからといって何かペナルティがあるわけではありません。しかし、名義変更を行わないと以下のような不都合が生じます。

  • 新たな所有者の財産にならない
  • 自動車税の納付書が新たな所有者のもとに届かない
  • 売却や廃車手続きができない
  • 事故のときに任意保険が適用されない可能性がある

自動車税の納付書は、名義変更をしないかぎり元の所有者のもとに送られ続けます。新たな所有者が別の場所に住んでいる場合は納付書が手元に届かず、自動車税を延滞してしまう可能性があります。

また、名義変更をしないと売却や廃車の手続きができません。そのほか、保険会社によっては事故のときに任意保険が適用されないことがあります。そのため、名義変更はきちんと行っておく必要があるのです。

自動車を売却・廃車手続きをする場合

相続した自動車を売却したり廃車にしたりする際にも、遺産分割協議書が必要です。売却や廃車手続きを検討している場合でも、ひとまず相続人に名義変更をする必要があるためです。

遺産分割協議書は、名義変更の際の添付書類として運輸支局に提出します。そのため遺産分割協議書がないと名義変更ができず、売却や廃車手続きが進められません。

いくら売却や廃車にするつもりの自動車でも、売却の手続きや廃車手続きをしないかぎり自動車税を支払い続けなければならないため、早めに手続きを行いましょう。

自動車の相続に遺産分割協議書がいらないケース

自動車を相続する際に遺産分割協議書がいらないケースでは、いるケースよりも簡易な手続きが可能です。ここでは、遺産分割協議書がいらないケースについて解説します。

  • 普通自動車の査定額が100万円以下の場合
  • 相続する自動車が軽自動車の場合

普通自動車の査定額が100万円以下の場合

対象の自動車が査定額100万円以下の普通自動車であれば、名義変更の際に遺産分割協議書がいりません。代わりに「遺産分割協議成立申立書」の提出で足りるためです。

申立書は自動車を相続する人の押印だけで済むため、遺産分割協議書よりも手間がかかりません。注意したいのは、査定額が100万円以下であることを証明しなければならない点です。

査定額は、自動車販売店や車買取業者、日本自動車査定協会に発行してもらう「査定書」で証明します。

ただし自動車販売店や車買取業者で査定してもらう場合、自動車の下取りや買取りが前提です。売却するつもりがないのであれば、日本自動車査定協会に依頼しましょう。

なお、申立書の書き方や記入例については後述します。

相続する自動車が軽自動車の場合

軽自動車の名義変更には遺産分割協議書がいりません。軽自動車は普通自動車よりも価値が低いことが多く、相続争いの火種にはなりにくいと考えられるためです。

そのため、自動車を相続する人が単独で手続きでき、ほかの相続人の合意も不要です。

普通自動車の名義変更は運輸支局で行いますが、軽自動車の名義変更は軽自動車検査協会で行います。

遺産分割協議書の書き方と記入例

遺産分割協議書の様式は、大きく分けて2パターンあります。それは、自動車のみを記載する場合と自動車以外の相続財産も記載する場合です。

ここでは、パターン別に書き方と記入例を紹介します。

自動車のみを記載する場合

自動車のみを記載するタイプの遺産分割協議書は、各運輸支局に備え付けられています。

必要な情報が記載されていれば自作した遺産分割協議書でも問題ありませんが、とくにこだわりがなければ運輸支局の様式を使用しましょう。

また、遺産分割協議書に記載する情報は車検証に記載されています。遺産分割協議書を作成する際は、手元に車検証を用意しましょう。

自動車のみを記載する場合の記入例

以下の記入例を参考に、遺産分割協議書を作成してみましょう。

※1〜※7までの解説は以下のとおりです。

※1遺産分割協議が成立した日付を記入。
※2被相続人(自動車の所有者)が亡くなった日付を記入。
※3被相続人(自動車の所有者)の氏名を住民票どおりに記入。
車検証の「所有者」欄に記載されている情報と一致しているか確認要。
※4新たに自動車の所有者となる相続人の氏名を、住民票どおりに記入。
※5自動車登録番号とは、ナンバープレートに記載された番号のこと。
車検証の「車両番号」欄に書かれている番号をそのまま書き写す。
※6車台番号とは、車の識別番号のこと。
車検証の「車両番号」下に記載されているため、そのまま書き写す。
※7これより下は相続人がそれぞれ住所、氏名を記入し、実印を押印をするスペース。
相続人全員が署名、押印すること。

自動車以外の相続財産も記載する場合

自動車以外の相続財産も記載するタイプの遺産分割協議書は、法務局のホームページに見本が掲載されています。そのほか、さまざまな様式が出回っているため、わかりやすいものを探して使用してもよいでしょう。

以下の項目があれば問題なく使用できます。

  • 被相続人の氏名
  • 被相続人の最後の本籍地
  • 被相続人の生年月日
  • 相続が開始した日(被相続人が亡くなった日)
  • 相続財産ごとの事項の記載
  • 遺産分割協議が成立した年月日
  • 相続人それぞれの署名・押印欄

被相続人の最後の本籍地や亡くなった日は、死亡事項記載の戸籍を見ればわかります。遺産分割協議が成立した日はしっかり記憶しておきましょう。

自動車以外の相続財産も記載する場合の記入例

以下の記入例を参考に、遺産分割協議書を作成してみましょう。

※1〜※12までの解説は以下のとおりです。

※1被相続人(自動車の所有者)の氏名と生年月日を記入。
氏名の表記は住民票に合わせる。
※2被相続人(自動車の所有者)が亡くなった日付を記入。
※3被相続人の最後の本籍地を、戸籍謄本どおりに記入。
参考にする戸籍謄本は死亡事項が記載されている最後の戸籍。
※4被相続人の最後の住所を住民票どおりに記入。
※5被相続人の氏名を住民票どおりに記入。
車検証の「所有者」欄に記載されている情報と一致しているか確認要。
※6財産を相続する相続人の氏名を住民票どおりに記入。
※7たとえば土地であれば所在や地番、地目、地積など、相続財産ごとの事項を記入。
※8自動車登録番号とは、ナンバープレートに記載された番号のこと。
車検証の「車両番号」欄に書かれている番号をそのまま書き写す。
※9車台番号とは、車の識別番号のこと。
車検証の「車両番号」下に記載されているため、そのまま書き写す。
※10車名も車検証に記載されているので、そのまま書き写す。
※11遺産分割協議が成立した日付を記入。
※12これより下は相続人がそれぞれ住所、氏名を記入し、実印を押印をするスペース。
相続人全員が署名、押印すること。

自動車に関する項目で重要なのは、以下の3項目です。

  • 自動車登録番号
  • 車台番号
  • 車名

以上の情報を車検証で確認し、記載しましょう。

遺産分割協議成立申立書とは

遺産分割協議成立申立書とは、査定額が100万円以下の普通自動車を名義変更する場合に、遺産分割協議書に代えて提出できる書類です。遺産分割協議書と同様に、様式は運輸支局で取得できます。

申立書は遺産分割協議書よりも簡易的な書類です。遺産分割協議書はすべての相続人の署名と実印での押印が必要ですが、申立書であれば自動車を相続する人の署名と実印での押印だけで完成します。

遺産分割協議成立申立書の書き方と記入例

以下の記入例を参考に、遺産分割協議成立申立書を作成してみましょう。

※1〜※9までの解説は以下のとおりです。

※1登録番号とは、ナンバープレートに記載されている自動車登録番号のこと。
車検証の「車両番号」欄に書かれている番号をそのまま書き写す。
※2車台番号とは、車の識別番号のこと。
車検証の「車両番号」下に記載されているため、そのまま書き写す。
※3被相続人の氏名を住民票どおりに記入。
車検証の「所有者」欄に記載されている情報と一致しているか確認要。
※4被相続人(自動車の所有者)が亡くなった日付を記入。
※5遺産分割協議が成立した日付を記入。
※6申立書による申請の同意を得た日付を記入。
※7申立書を作成した日付を記入。
※8申立書を提出する運輸支局を記入。
※9自動車を相続する相続人の住所、氏名を記入し、実印を押印。

遺産分割成立申立書を提出する場合、相続する人以外の相続人から署名・押印をもらう必要はありませんが、申立書による申請を行うことについて同意を得る必要があります。

「申立書による申請の同意年月日」には、自分以外の相続人に同意を得た日付を記入しましょう。遺産分割協議が成立した日に同意を得たのであれば、同じ日付でも構いません。

自動車の名義変更に必要な書類一覧

自動車の名義変更には遺産分割協議書以外にもさまざまな書類が必要です。ここでは、普通自動車・軽自動車別に必要書類を紹介します。

普通自動車の場合

普通自動車の名義変更に必要な書類は以下のとおりです。

必要書類備考
車検証(自動車検査証)
被相続人の死亡事項記載の戸籍謄本
相続人全員が記載されている戸籍謄本
自動車を相続する人の印鑑証明書発行から3カ月以内のもの
自動車を相続する人の実印
遺産分割協議書査定額が100万円超えの場合。
100万円以下であれば「遺産分割協議成立申立書」の提出が可能。
(申立ての際は査定書も必要)
車庫証明書被相続人と自動車を相続する人が同居であれば不要

そのほか、以下の書類が必要です。

  • 申請書
  • 手数料納付書
  • 自動車税・自動車取得税申告書

以上3つの書類は運輸支局に備え付けられています。

軽自動車の場合

軽自動車の名義変更に必要な書類は以下のとおりです。

必要書類備考
車検証(自動車検査証)
被相続人の死亡事項記載の戸籍謄本
被相続人と自動車を相続する人との関係性がわかる戸籍
自動車を相続する人の住民票または印鑑証明書発行から3カ月以内のもの

以上のように、軽自動車の名義変更に遺産分割協議書は不要です。手続きの際は、軽自動車検査協会に備え付けられている「自動車検査証記入申請書」も一緒に提出しましょう。

遺産分割協議書の作成が難しい場合は専門家に依頼を

自動車を相続する際の遺産分割協議書についてや作成方法、記入例を紹介しました。

自動車の遺産分割協議書は、自動車だけを記載するのであれば簡単に作成できます。

また、ケースによっては遺産分割協議書がいらないこともあるため、自動車を相続することが決まったら、まずは遺産分割協議書が必要なケースなのかどうかを判断する必要があります。

ご自身での判断や遺産分割協議書の作成が難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

ほかにもこちらのメディアでは、遺産分割協議書の提出先について遺産分割協議の期限についても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。