死亡届の提出期限はいつ?遅れた場合の対処法と提出方法を解説

家族が亡くなったときは、通夜や葬儀の準備に加えて、法的手続きをしなければなりません。その一つが死亡届です。

死亡届には提出期限が定められており、最も早く対処する必要があります。正当な理由なく、届出が遅れると、その他の手続きが滞ってしまう懸念や、5万円以下の過料に科される可能性があります。

この記事では、死亡届の期限や届出が遅れたときの対処法を解説します。届出期間などの明確な情報を把握して、手続きをスムーズに進めていきましょう。

1分でわかる!記事の内容
  • 死亡届の提出期限は7日以内、国外の死亡は3カ月以内
  • 期限を過ぎた場合は火葬や埋葬ができない
  • 期限に遅れた場合でも役所への提出は可能

この記事の監修者

司法書士法人永田町事務所


代表


加陽 麻里布/司法書士

司法書士法人永田町事務所 代表、東京司法書士会 理事。上場会社からベンチャー企業の法務手続を幅広く扱っています。上場準備、ファンド組成、ストックオプションの設計から発行まで、ワンストップで行うことが可能です。

死亡届とは?

死亡届とは、人が亡くなった事実を役所に申告するための書類です。正式名称は「死亡届出書」といいます。届出が受理されると戸籍が書き換わり、死亡が法律的に確認されます。

用紙は病院に用意されており、医師や担当者が準備をしてくれるため、遺族側が用意する必要はありません

死亡届と死亡診断書との違い

死亡診断書とは、人が亡くなったことを医学的に証明する書類です。死亡届を作成するのは遺族ですが、死亡診断書では医師が作成する点で異なります。

  • 死亡診断書:医師が作成し、発行手数料がかかる
  • 死亡届:遺族が作成

病院で亡くなった場合は、臨終に立ち会った医師が作成します。自宅で亡くなった場合は、かかりつけ医に作成してもらいましょう。

死亡診断書の作成は保険が適用されない自由診療にあたるため、発行手数料がかかります。料金は医療機関によって異なりますが、5,000円程度が相場です。

死亡届には、亡くなった年月日時分及び場所を記載し、死亡診断書を添付しなければならないので、必ず取得する必要があります(戸籍法86条2項)。

また、発見時にすでに死亡していた場合は死亡診断書ではなく、死体検案書を取得して添付することになります。なお、やむを得ない事由によって、これらの診断書が添付できない場合は、届出先の市区町村へお問い合わせください(法務省H P記載)

死亡届の提出期限はいつまで?

死亡届には以下のとおり、提出期限があります。

死亡届の提出期限
  • 国内での死亡:死亡の事実を知った日から7日以内
  • 国外での死亡:死亡の事実を知った日から3カ月以内

期限を過ぎると罰則が課せられるなどの問題が生じるので注意が必要です。

死亡から7日以内が期限

死亡届の期限は、死亡の事実を知った日から7日以内です(戸籍法第86条)。7日目が役所の閉庁日に当たるときは、翌開庁日までに出せば問題ありません。

死亡届を出さないと火葬許可証が交付されないため、火葬ができません。そのため、多くの場合は死後1~2日で届け出ます。ただし、一度提出すると返却はできません。

死亡届は保険金請求など死後の各種手続きで必要なので、事前に複数枚コピーを取っておきましょう

国外での死亡は3カ月以内が期限

国外で死亡した場合の期限は、その事実を知った日から3カ月以内です。死亡届の作成や提出方法は国内の場合と同じです。

届出義務者も海外にいる場合は、すぐに帰国するか、他の届出義務者に依頼するなどして早めに手続きを取りましょう。

死亡届の提出方法

死亡届の提出方法には、以下のように決まりがあります。

  • 死亡届の届出人は親族・同居人のみ
  • 死亡届の届け出地は3箇所のみ
  • 死亡届の提出に必要な書類・物は3つ

手続きの方法をしっかり確認しておきましょう。

死亡届の届出人は親族・同居人のみ

死亡届に記載・押印する届出人は、原則として親族や同居者のみです。親族や同居者がいない場合は、家主や地主、家屋や土地の管理人が出さなければいけません。一人暮らしで身寄りのない人が死去した場合は、病院長の名前で提出できます。

また、故人が成年後見制度を利用していた場合であれば、後見人保佐人補助人,任意後見人,任意後見受任者なども届出人として認められます。

届出人になれる方
原則 ・親族や同居者のみ
親族や同居者がいない場合 ・家主や地主
・家屋や土地の管理人
故人が成年後見制度を利用していた場合 ・後見人
・保佐人
・補助人
・任意後見人
・任意後見受任者など

届出人には条件がありますが、役所へ出向く人に条件はありません。誰が出しても問題はないため、近年は葬儀屋が代行するケースが増えています。印鑑などの重要なものを葬儀屋に預ける場合は、リスクを回避するために、必ず預かり証を発行してもらいましょう。

他人に代行を依頼する場合、委任状は不要です。期限内に間に合わせるためにも、役所に行きやすい人に依頼するのが無難です。

死亡届の届け出地は3箇所のみ

死亡届の届け出地である提出先は、以下の3箇所のうちいずれかの役所です。

死亡届の届け出地
  • 死亡した土地
  • 死亡者の本籍地
  • 届出人の所在地(住所地)

上記以外の役所に出しても受理されません。故人の住所がある役所も届出先に認められないため注意が必要です。

死亡届は重要な書類なので、基本的に24時間365日いつでも受け付けてもらえます。ただし、夜間や休日は受付のみで、実際の手続きは翌日以降に行われます。

死亡届の提出に必要な書類・物は3つ

死亡届を出すときは、以下3つのものを持参しましょう。

死亡届提出時に必要なもの
  • 医師が記載した死亡診断書
  • 届出人の身分証明書
  • 届出人の印鑑

葬儀屋などの代理人が役所に出向く場合でも、届出人の身分証明書が必要です。

身分証明書として認められるのは、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの写真付きのものです。印鑑は実印でなくても構いませんが、シャチハタは不可です。

死亡届の書き方

死亡届の用紙は左側が「死亡届」、右側が「死亡診断書」になっており、左側の部分にのみ記入します。書式は病院で用意してくれるケースが多いですが、役所の戸籍課で受け取ることも可能です。

届出人が記入する事項は、以下の通りです。

記入事項書き方
死亡届の提出日窓口に提出する日
死亡者の氏名・性別・生年月日生年月日は西暦ではなく和暦
死亡した時と場所死亡診断書(死体検案書)を見ながら記入
死亡者の住所住民登録をしている住所と世帯主名
死亡者の本籍住民票で本籍地を確認
死亡者の配偶者「いる」「いない」から選択
レ点でチェックを入れる
死亡した時の世帯のおもな仕事と死亡した人の職業・産業レ点で該当するものにチェックを入れる
死亡した人の職業・産業は任意
届出人の情報届出人の住所・本籍地などを記入し署名する

死亡届には記入する事項が複数あるので、書き方を見て漏れのないように記入しましょう。

死亡届の提出期限を過ぎた場合のリスク

死亡届の期限を過ぎると、以下の6つのリスクが発生します。

  • 埋葬・火葬ができない
  • 年金の不正受給になる
  • 介護保険資格喪失届が提出できない
  • 住民票が抹消されない
  • 世帯主の変更ができない
  • 過料の制裁が科される

どのような問題が起きるのか、ここでしっかりチェックしておきましょう。

埋葬・火葬ができない

死亡届を出さないと、火(埋)葬許可証を発行してもらえません。日本では、死後24時間経過してからでなければ火葬・埋葬してはならないと定められており、火葬・埋葬をするためには許可証が必要となります。したがって、死亡届を出さなければ、火葬・埋葬の手続きが遅れてしまいます。

家族が亡くなった後は、死後2日目に通夜を執り行い、死後3日目に葬儀をして火葬という流れが一般的です。葬儀後の手続きを円滑に進めるには、死亡届を死後2日目までに出す必要があります

年金の不正受給になる

故人が年金受給者であった場合には、死亡届を出して年金受給停止手続きをする必要があります。手続きをしなかった場合は不正受給になり、重い罰金が課せられるので注意が必要です。

手続きには、以下のように期限が設けられています。

手続きの期限
厚生年金死亡してから10日以内
国民年金死亡してから14日以内

死亡届の届出先は、最寄りの年金事務所や年金相談センターです。期限を過ぎてしまった場合は、年金法によって10万円以下の罰金が科されます

何年も年金を不正受給し続けていた場合、不正受給した分の一括返還を請求されたり、詐欺罪として10年以下の懲役の重い刑罰が課されたりする可能性があります。

故人の未受給分の年金や遺族年金を受け取れない恐れもあるので注意が必要です。

介護保険資格喪失届が提出できない

死亡届を出さないと介護保険の資格喪失届を出せなくなり、故人が生前支払った保険料の還付手続きを受けられなくなります

故人が以下に当てはまる場合は、死後14日以内に提出しましょう。

  • 65歳以上の介護保険の第1号被保険者
  • 40~64歳未満で第2号被保険者

提出を怠ると未納分の保険料を払えず、納め過ぎた保険料の還付が受け取れません。相続人に当たる人は、故人の住民票のある役所で手続きをしましょう。

住民票が抹消されない・戸籍に反映されない

死亡届がないと役所が事実を認知できないため、住民票の抹消や戸籍への記載が行われません。結果として、相続手続きがスムーズにできなくなります

本籍地と届出地が異なる場合、死亡届提出後戸籍に反映されるまでに1~2週間ほどかかります。相続手続きを開始するには、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と住民票の除票が必要となることにも注意しましょう。

死亡届の提出後は役所が住民票を削除してくれるので、特別な手続きは不要です。

世帯主の変更ができない

死亡届が受理されないと世帯主の変更ができません。世帯主を変更するには死亡届を出し、故人の死亡後14日以内に世帯主変更届の届出が必要です。

故人が世帯主で同居家族が2人以上いる場合、期限を過ぎると手続きができない場合があります。手続きは役所の戸籍・住民登録窓口で受け付けており、届出人の印鑑と本人確認書類が必要です。

なお夫婦2人だけの世帯だったり、妻の他に15歳未満の子どもがいたりするケースでは、妻が自動的に世帯主になるので、届出は必要ありません。

過料の制裁が科される

期限内に死亡届を出さないと、届出人に5万円以下の過料が科される可能性があります。刑事罰の罰金ではないため前科はつきませんが、行政罰なので金銭を払わなければなりません。

死亡届の提出期限に遅れた場合の対処法

死亡届は期限が過ぎた後も受け付けています。事情があって7日以内に提出できなかった場合は、早めに役所へ出向きましょう

期限に遅れてしまうと、理由書などを出さなくてはならず何かと面倒です。死亡届を受け取ったら、すぐに役所に出向きましょう。

忙しくて役所に行く時間がない場合は、葬儀屋へ依頼がおすすめです。

おすすめの記事

ほかにもこちらのメディアでは、相続の手続きをしなかったらどうなるか相続時に必要な印鑑証明についても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。