人が死亡すると死亡届を役所に提出します。しかし、実際に届け出る立場になったとき、どこの役所に提出すればいいのか迷いませんか?
死亡届を提出するのは、死亡地、死亡者の本籍地、届出人の住所地の役所に限定されています。
死亡届の提出を任されたとき、戸惑うことのないよう死亡届の提出先やルール、さらには書き方や注意点について深く掘り下げます。
- 死亡届の提出先は、死亡地、志望者の本籍地、届出人の居住地の役所である
- 死亡届は届出人が作成する
- 死亡届で故人の氏名を記載する際、戸籍どおりの文字を転写する
死亡届の提出先
人が死亡したときは、死亡届を次のいずれかの土地の市区町村役場に提出します。
- 死亡地(戸籍法第88条第1項)
- 死亡者の本籍地(同法第25条第1項)
- 届出人の住所地(同法第25条第1項)
重要な届出なので、24時間休日なしで受け付けてもらえます。夜間や休日には宿直室などが窓口になるのです。
死亡届は、故人の本籍地である役所に提出するのが一般的です。故人が本籍地と異なる場所で亡くなったときは、亡くなった地の役所へ提出できます。
故人が遠方の旅行先で亡くなった場合に、わざわざ本籍地の役所に向かうよりも亡くなった地域の役所にいくほうが、早く死亡届を提出できるメリットがあります。
届出人が住民登録をしている役所への提出も可能です。
たとえば、故人が本籍を移動しないまま、子どもの家で世話になっている場合に、子どもが自分の住む地の役所に死亡届を提出することがあります。
注意したいのは本籍地以外の役所で死亡届を提出する場合です。死亡届が2通必要になります。1通は受付をした役所用であり、もう1通は本籍地のある役場へ送付するためです。
死亡届提出のルールとは
死亡届は、人が死亡したときに行う届出です。死亡届の提出がないと、火葬が行えません。さらには相続手続きが行えないといった弊害が発生します。
重要な役割がある死亡届には、提出に際して守るべきルールがありますのでご紹介します。
提出期限がある
死亡届には提出期限があります(戸籍法第86条)。故人が国内で亡くなった場合は、死亡の事実を知ってから7日間が提出期限です。
国外で亡くなった場合は、亡くなったことを知ってから3カ月以内に死亡届を提出してください。正当な理由なく期間内に死亡届を提出しないと、5万円以下の過料に処されます。
死亡届の届出義務者は書類を作成する
死亡届を届出なければならない義務者は次のとおりです(同法第87条1項)。
- 同居の親族
- その他の同居者
- 家主や地主、または家屋や土地の管理人
記載した順序に従って届出をするのが基本ですが、一方で順序にかかわらず届出ができると定められています。
また同居していない親族・後見人・保佐人・補助人・任意後見人も死亡届の届出が可能です(同法第87条第2項)。この場合、その資格を有していることを証明する書類が必要になります。
死亡届は代理人が提出できる
実際に役所に足を運び死亡届を提出する方は、代理人でも問題ありません。死亡届を葬儀社の社員などに依頼するのは、一般的によく行われています。
なお、法律で定められる「届出」とは、「書類を作成すること」をいいます。
死亡届の書き方
死亡届の書き方についてご説明いたします。
死亡届の様式は、役所や病院で入手できます。提出に際しては、合わせて死亡診断書か死体検案書の提出が求められます(戸籍法第86条第2項)。
死亡届は、死亡診断書(死体検案書)と一体となったA3サイズの用紙です。左半分が死亡届の用紙で、右半分は医師が記入する死亡診断書(死体検案書)です。
記載は、鉛筆や消えやすいインクは認められませんので、ボールペンなどを用います。それでは項目別にご説明していきましょう。
提出日・提出先の役所名
死亡届を提出する当日の日付を記入します。下段の「○○○○長殿」の空欄に提出先の役所名を記載します。間違いのないよう、役所への提出直前に記入コーナーで記載すると確実です。
故人の氏名・性別・生年月日
亡くなった方の氏名・性別・生年月日を記載します。よく間違えるのが氏名の漢字です。戸籍に記載されている漢字を忠実に転写してください。「𠮷」と「吉」、「巳」と「己」のような違いであっても、ほぼ受理してもらえません。
生年月日は元号で記入します。また生まれて30日以内に亡くなった方については、生まれた時間も記入します。
死亡日時・場所
「死亡したとき」の欄に亡くなった日付と時間、「死亡したところ」の欄に亡くなった場所を記載します。いずれも届出用紙の右半分にある死亡診断書(死体検案書)の同じ項目欄にすでに記載されていますから、こちらを参考にして記入します。
故人の住所と世帯主
亡くなった方が住民登録をしている住所地と、その世帯主の氏名を記載します。
故人の本籍
亡くなった方の本籍地を記載してください。分からないときは、住民票を取得すれば確認できます。「筆頭者の氏名」には、戸籍のはじめに記載されている方の氏名を記載してください。
故人の配偶者の有無
亡くなった方の配偶者の有無で該当するほうにチェックを入れます。「いる」にチェックを入れた場合、配偶者の年齢も記入します。内縁関係の夫や妻は戸籍上の配偶者ではないので「いない」にチェックを入れてください。
故人の職業
亡くなった方の世帯の仕事について、選択肢の中から該当するものにチェックを入れてください。また故人の職業についても記載します。分からない場合は、未記入でも問題ありません。
届出人の住所・本籍・氏名
死亡届を作成した届出人の個人情報を記載します。届出人の資格の選択肢から該当するものにチェックを入れてください。
届出人の住所および本籍、生年月日を記入のうえ、署名をします。押印は任意ですので、押さなくても問題ありません。
死亡届の提出後はどうなる?
死亡届を受理した役所では、死亡したことに関わる様々な手続きを進めていきます。死亡届けの受理後、役所ではどのような処理が行われるのかご説明します。
戸籍への記載と住民票の抹消が行われる
故人が死亡した事実が戸籍に記載され、住民票から故人の記載内容が抹消されます。ただし、死亡届を提出して即日実施されることはないので、提出した日に戸籍や住民票を入手しても記載内容に変更はありません。
死亡届が戸籍や住民票に反映されるには、3日程度を要します。
戸籍のある役所以外に死亡届が提出された場合は1週間以上かかることがあります。
遺産相続の手続きでは、故人の出生から死亡するまでの戸籍謄本や、住民票の除票を用意しなくてはなりません。死亡届が反映されるまでに時間がかかることを念頭に準備を進めてください。
火葬許可証が交付される
故人の遺体を火葬するために必要なものが火葬許可証です。死亡届を提出すれば火葬許可証が交付されます。
基本的には死亡届を提出した際に火葬許可証が発行されます。地方自治体によっては、別途火葬許可申請書が必要な場合もありますので、ご注意ください。
火葬終了後、火葬許可証は埋葬許可証として取り扱われます。埋葬許可証がなければ納骨ができません。なくさないよう、しっかり管理をしましょう。
役所から税務署へ通知される
死亡届を提出すると、翌月末までに故人の住所地を管轄する税務署へ通知されます(相続税法第58条第1項)。役所から通知されるので、遺族が書類などを提出する必要はありません。
死亡の通知と合わせて、故人が所有していた不動産とその評価額についても通知されます。
税務署は通知された資料や過去の確定申告書などを参考にして、故人の遺産を推定するのです。納税義務が発生する可能性がある場合は、相続人へ通知書が送付されます。
死亡届を提出した後の注意点
死亡届を提出すれば、葬儀の準備やそのほかの手続きを進めることになります。そのため、死亡届を提出した後も注意しなければならない事態に直面します。
死亡届を提出したあとの注意点についてご紹介しましょう。
口座は凍結されない
役所に死亡届を提出しても、故人の銀行口座は凍結されません。役所に死亡届を提出したからといって、役所から銀行に通知されることはないからです。遺族が銀行へ手続きを行うことで、初めて銀行口座は凍結されます。
ただし一部の地方では、銀行職員が新聞の訃報欄に目を通し、顧客の情報があれば遺族に確認をとったうえで、凍結手続きを促すことがあります。
故人の印鑑証明は発行できない
故人の印鑑証明が発行できない点にも注意しましょう。
死亡届を提出すると住民票から故人の記載が抹消され、同時に故人の印鑑登録も抹消されます。相続手続きで必要なのは相続人全員の印鑑証明ですから、基本的には支障はありません。
ただし、故人が生前に契約書等に実印を押していても、死亡届提出後は、それが実印であることの証明はできません。
死産の場合は「死産届」を提出する
死産の場合は、死亡届ではなく「死産届」を提出します。
死産とは、妊娠12週目以降に死亡した胎児を出産することをいいます。死産届は、原則父が届出義務者です。やむを得ない場合は母が届出をする必要があります。
父母ともにやむを得ない事由があれば、同居人、死産に立ち会った医師やその他の立会者による届出も可能です。
死亡届の提出後の手続き
死亡届を出したあとに必要となる死後手続きについてご説明します。
世帯主の変更
世帯主が死亡すると、住民票の世帯主変更届を14日以内に提出しなくてはなりません(住民基本台帳法第25条)。
つい忘れてしまいがちな手続きなので、死亡届と同時に提出すると安心です。
火葬許可申請
火葬を行うには、市区町村長の許可が必要です。 火葬許可証は、故人の遺体の火葬許可を証明する書類です。火葬許可証がなければ遺体の火葬はできません。
多くの自治体では、埋葬許可申請書と一体になった「埋・火葬許可申請書」といった名称の書類で、両方をひとつの申請書で兼ねています。
申請書は役所の窓口に備えられています。記載内容も簡素なので、その場で記入して提出が可能です。この書類が受理されるとその場で火葬許可証が交付されるのです。
火葬場で遺体を荼毘に付す際に火葬許可証を提出すれば火葬が行われ、済んだあとに火葬日時が記入された火葬許可証が返却されます。
火葬場が印を押し、遺体の火葬を証明することで、火葬証明証だった書類は埋葬許可証になるのです。
年金の死亡届の提出
年金を受給していた方が亡くなると、年金を受ける権利が消滅します。そのため、死亡届の届出義務者が、死亡の事実を年金事務所または年金相談センターに届出なくてはなりません(国民年金法第105条第4項)。
ただし、故人が日本年金機構にマイナンバーを登録している場合は、原則として届出を省略できます。
年金を受給していた方がまだ受け取っていない年金や、亡くなった日より後に振込みされた年金であっても、亡くなった月分までは遺族が受け取れます。
年金を受け取れるのは、故人と生計を同じくしていた次の遺族です。このうち上位の順位の方が受け取れます。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
また、亡くなった方に一定の条件が当てはまる遺族がいれば、遺族年金を受け取れます。
国民健康保険の資格喪失届の提出
亡くなられた方が国民健康保険に加入していた場合は、死亡から14日以内に国民健康保険資格喪失届を市区町村役場に提出して保険証を返却します。
一部の自治体では、死亡を証明するものとして戸籍謄本または死亡届のコピーなどを求められることがあります。
故人が会社員や公務員の場合や扶養家族として健康保険に加入していた場合は、勤務先で健康保険の資格喪失手続を行います。
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