「樹木葬は安いと聞いたけど本当?」「樹木葬が安いといわれるのはなぜ?」など、樹木葬が安いといわれることに対して疑問を感じている方はいませんか?また、本当に安いなら検討したいという方もいるのではないでしょうか?
樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として使用するお墓です。そのため、一般的なお墓よりも費用を抑えられる可能性があります。
この記事では、安いといわれる樹木葬の費用相場やメリット、デメリットについて解説します。樹木葬以外のお墓との比較や樹木葬を選択した場合の注意点も解説しているため、樹木葬が気になっている方はぜひご覧ください。
- 樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を墓標にしたお墓のこと
- 樹木葬の中でも「合祀型」は低額に、「個別型」は高額になりやすい
- 樹木葬が安い理由には、墓石を使用しないことや費用を抑えられる納骨方法が用意されていることなどがある
樹木葬とは
樹木葬とは、墓石ではなく樹木や草花を墓標として使用したお墓のことです。墓標代わりの樹木は「シンボルツリー」と呼ばれ、サクラやハナミズキなど、さまざまな種類の樹木が使われます。
お墓というと、どうしても暗いイメージを持ってしまいがちですが、樹木葬には「自然に囲まれて眠る」「自然に還る」といった前向きなコンセプトがあります。
そのため、色とりどりの草花が咲き乱れていたり四季によって表情を変える樹木が植えられていたりと、これまでのお墓にはない、明るく華やかな雰囲気のところが多いです。
墓石を使用しない分一般的なお墓よりも費用が抑えられる点や、お墓の管理を墓地や霊園に任せられる永代供養が主流だということもあり、近年注目されている新しいタイプのお墓です。
樹木葬の種類
樹木葬には、庭園型、公園型、里山型の3種類があります。ここでは、樹木葬の種類ごとにそれぞれの特徴を解説します。
庭園型樹木葬
庭園型樹木葬は、まさに庭園のようなスペースにシンボルツリーや草花を墓標として植えるタイプの樹木葬で、ガーデニング型とも呼ばれます。
バラなどの華やかな洋花を用いたイングリッシュガーデン風や、和花をあしらった日本庭園風など、趣は霊園によってさまざまです。
それほど広大な土地を要しないことから都心やその近郊でもよく見られ、駅に近いなどアクセスがよいところも魅力です。里山型などは都心から離れた場所にあることが多いですが、比較的通いやすいところはメリットといえるでしょう。
霊園の中には、フラワーコーディネーターや造園家など、園芸のプロが設計やデザインに関わっているところもあります。
公園型樹木葬
公園型樹木葬とは、自然に手を加えてきれいに整備された、公園のようなお墓のことです。樹木葬の中で、現在もっとも一般的なのがこのタイプです。
墓地や霊園の一部を樹木葬墓地として利用しているところもあれば、広大な土地全体を樹木葬墓地としているケースもあります。自然を残しつつも人工的な美しさがあり、トイレや食事処が設けられていたりなど、お参りする側のことを考えたつくりになっています。
都心やその近郊に位置していることが多く、比較的アクセスがよいのが特徴です。
里山型樹木葬
里山型樹木葬は、山そのものがお墓になったタイプの樹木葬です。まさに「自然に囲まれて眠る」「自然に還る」といった望みが叶うため、自然葬を強く望んでいる方や自然志向の方に向いています。
ただし埋葬する場所が山奥であることから、人里離れたところにある場合や交通の便がよくないケースがほとんどです。そのため、通いにくさを感じるかもしれません。
また、手入れに手間がかかることや、月日とともに緑に飲み込まれ、やがて埋葬した場所がわからなくなる可能性もあるといった難点があります。
ほかのどのタイプの樹木葬よりも自然を感じられる反面、親族の理解を得るのがもっとも難しいタイプの樹木葬だともいえるでしょう。
樹木葬を行う際の埋葬方法
樹木葬には埋葬方法にも種類があります。ここでは、樹木葬を行う際の埋葬方法を3つ紹介します。
遺骨を散骨して自然に還す
遺骨を土中に埋めるのではなく、撒いて埋葬する方法です。「自然に還る」という発想により近い手段であるため、自然志向が強い方に適しています。
ただし、一度撒いた遺骨は集められません。この方法を選択した場合、あとから別の方法で埋葬したいと思っても、ほかの手段に切り替えられないことを念頭に置いておく必要があるでしょう。
遺骨を布や和紙に包んで埋葬する
遺骨を布や和紙に包んだ状態で納骨する埋葬方法もあります。
遺骨を布や和紙で包むのはほかの遺骨とまざらないようにするためですが、それでも最終的にはほかの遺骨と一緒になってしまいます。その場合、やはり遺骨を取り出せなくなるため注意が必要です。
遺骨を骨壺に入れて納骨する
遺骨を骨壺に入れて納骨する方法です。ほかの遺骨と同じスペースに埋葬する方法と、個別の区画に埋葬する方法とがあります。
どちらにしても骨壺に入れて納骨するため、そのままの状態であればほかの遺骨とまざることはありません。
しかし、樹木葬では個別で安置できる期間が定められているところが多く、期間が終了すればほかの遺骨と一緒に埋葬され、最終的にはほかの遺骨と一緒に土に還っていきます。
樹木葬の費用相場
樹木葬を選んだ場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか?費用については、遺骨をどのような方法で納骨するかによって異なります。ここでは樹木葬の費用相場について、タイプごとに解説します。
合祀型(5万~30万円)
合祀型の費用相場は5万~30万円です。合祀型とは、個別ではなくほかの方と同じところに遺骨を納骨し、シンボルツリーを共有するタイプの樹木葬です。
霊園やどのような埋葬方法を選ぶかによっても異なるため、金額に開きがありますが、個別にスペースを確保しなくても済む分ほかのタイプよりも比較的費用を抑えられます。安さを重視したい方や、埋葬方法にこだわらない方には向いている方法でしょう。
しかし、ほかの方と納骨されてしまうことについて抵抗を感じる方や、遺骨を取り出せなくなると困る場合などはおすすめできません。
集合型(15万~60万円)
集合型の費用相場は15万~60万円です。集合型とは、礼拝するシンボルツリーはほかの方との共有であるものの、個別にカロートという納骨スペースが設けられているタイプの納骨方法です。
個別にスペースを用意してもらえる分合祀型よりも費用がかかりますが、後述する里山型や個別型よりは費用を抑えられます。できるだけ費用を抑えつつ、納骨場所はほかの方と別にしたいという方におすすめです。
霊園によっては、プレートや石碑の用意が必要な場合もあります。
里山型(50万~70万円)
里山型の費用相場は50万~70万円です。里山型とは、山そのものを墓地として利用したタイプの樹木葬で、山中に遺骨を納骨します。
里山型の場合、ほかのタイプの樹木葬よりも「自然に還る」といった概念が強いため、人工物であるカロートはあまり使用しません。
遺骨を埋葬する場所は、シンボルツリーの下やもともと生えている木の下、何もないところなどさまざまです。埋葬した場所の目印として、プレートをつけることもあります。
もともとある山を利用しているため数が少なく、あってもアクセスが悪いケースが多い点には注意が必要です。
個別型(20万~100万円)
個別型の費用相場は20万~100万円です。個別型とは、個別に割り当てられたスペースで納骨と礼拝を行う樹木葬のことです。
シンボルツリーや納骨する場所をほかの方と共有しない分、樹木葬の中ではもっとも高額になりやすい納骨方法です。その反面、自分たちだけのお墓に自分たちだけの遺骨を納骨できるため、ほかのタイプよりも人気があります。
納骨する場所は霊園によって異なりますが、土中やカロート内に行うのが一般的です。なお、シンボルツリーやプレートなどは自由に選択できるケースが多いです。
ただし、樹木葬の多くは個別の状態で安置できる期間にかぎりがあります。いくら個別型で契約していたとしても、期限を過ぎたあとは集合墓地に移動され、合祀型に移行することがほとんどです。
樹木葬にかかる費用の内訳
樹木葬にはさまざまな費用がかかります。費用の内訳は以下のとおりです。
- 永代使用料・永代供養料
- 年間管理費
- 納骨費
- プレート代
永代使用料・永代供養料は寺院や霊園に供養してもらうための費用です。樹木葬の多くは遺骨を個別のまま安置できる期間に限度があり、17回忌まで、33回忌まで、というように、回忌法要のタイミングで期限が設定されることが一般的です。
期限を過ぎると、個別型であっても合祀型に変更されます。合祀の際にかかる費用は、永代供養料に含まれていることが多いです。
集合型や個別型の場合は、毎年年間管理費がかかることがあります。ただし、寺院や霊園によってはかからないことや、永代供養料に含まれているケースもあります。
なお、納骨費とは、遺骨を納骨するときにかかる費用のことです。寺院や霊園によっては永代使用料・永代供養料に含まれますが、通常は納骨のたびにかかります。納骨時の工事にかかる費用も含まれています。
故人の名前を彫刻したプレートを設置するなら、プレート代が別途必要です。寺院や霊園にもよりますが、5万~30万円程度の費用が発生することもあります。
樹木葬以外のお墓に関する費用相場
墓石を使用する一般的なお墓や納骨堂、海への散骨など、樹木葬以外のお墓にはどのくらいかかるのでしょうか?ここでは、樹木葬以外のお墓に関する費用をご紹介します。
お墓の種類 | 費用相場 | |
---|---|---|
墓石 | 100万~350万円 | |
納骨堂 | 位牌式 | 10万~20万円 |
ロッカー式・棚式 | 20万~80万円 | |
仏壇式 | 50万~150万円 | |
自動搬送式 | 80万~150万円 | |
海洋散骨 | 委託・代理散骨 | 3万~10万円 |
合同散骨 | 10万~25万円 | |
個人・貸切散骨 | 15万~40万円 |
やはりもっとも高額なのは墓石のお墓です。墓石そのものに費用がかかるためです。ただし、選ぶ墓石や場所によって費用は大きく異なります。
納骨堂は、墓石のお墓に比べるとリーズナブルです。どのタイプを選択するかにもよるため、慎重に検討する必要があるでしょう。
海洋散骨は、遺族が行うよりも業者に委託するほうが費用を抑えられます。合同散骨は複数の家族が一度に行う散骨で、個人・貸切散骨よりは費用がかからないことも多いですが、委託・代理散骨よりかかるケースがほとんどです。
なぜ樹木葬は費用が安いのか?
なぜ樹木葬は費用が安いのでしょうか?理由は以下のとおりです。
- 墓石を使用しないため
- 合祀型や集合型など費用を抑えられる方法が用意されているため
墓石を使用しないというのがもっとも大きなポイントです。墓石を使用する場合、採石から始まり加工、運搬など、設置するまでの過程でさまざまなコストがかかります。
しかし樹木葬は、苗木を植えたりシンボルツリーの周辺にプレートを設置したりすれば終了です。このあたりのコストの違いに価格の差が出ているといえます。
また、「合祀型」や「集合型」など、費用を抑えた納骨方法が複数用意されていることも、費用が安くなる理由として大きいでしょう。
樹木葬のメリットとデメリット
樹木葬にはメリットもありますが、同じ分だけデメリットも存在します。ここでは、樹木葬を選択するメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。
樹木葬のメリット
樹木葬を選択するメリットは以下のとおりです。
- 樹木葬以外のお墓に比べて費用が安い
- 自然に還ることが可能
- お墓の承継者がいなくても問題ない
- 宗旨宗派が関係ない
- ペットとともに入れる場合もある
樹木葬のメリットは、なんといってもやはり低予算でできることです。「自然の中で眠りにつきたい」「自然に還りたい」と考えている方には、これ以上ないほど適したお墓であるという点も魅力です。
また、永代供養が一般的であるため、故人にお墓の承継者がいなくても問題ありません。そのほか、宗旨宗派に関係なく入れる点や、ペットとともに入れる樹木葬も増えていることなどもメリットといえるでしょう。
樹木葬のデメリット
樹木葬を選択するデメリットは以下のとおりです。
- 最終的には遺骨が取り出せなくなる
- タイプによっては個別の墓参りが難しい
- 交通の便が悪いところにあるケースが多い
- 管理しないと荒れてしまう
- 里山型以外の方法では自然志向から外れる可能性がある
個別型を選んだとしても最終的には合祀型になり、遺骨が取り出せなくなるというデメリットがあります。
合祀型や集合型ではシンボルツリーを共有しているため、家族水入らずで墓参りをすることが難しいのもデメリットとして挙げられます。
里山型の場合は山奥にあるケースが多く、交通の便が悪いためにお参りがしにくいと感じるケースも少なくありません。しかし雑草の成長は早く、手入れを怠ればどこに埋葬したかわからなくなってしまうこともあるため、こまめな管理や手入れが必要です。
そのほか、里山型以外の方法では、人工物であるカロートやプレートを使用することがよくあります。完全な自然志向を目指している方からすると、理想からずれる可能性があるというのもデメリットのひとつといえるでしょう。
樹木葬の選び方
樹木葬の選び方にはいくつかポイントがあります。ここでは、樹木葬の選び方を3つご紹介します。
通いやすい
「通いやすい」というのは非常に重要なポイントです。どれほどすばらしい霊園であっても、アクセスが悪く通いにくければ遺族の負担になり、足も遠のいてしまうためです。
近場にあるのが一番ですが、たとえ遠方であっても、バス停から近い、駅のすぐそばにあるなど、できるだけ公共交通機関で通いやすい場所を選ぶようにしましょう。
施設の設備が整っている
施設の設備が整っているかどうかも大切な要素です。施設のコンセプトや外観だけでなく、遺族が参りやすいかどうか、ということも考慮して選ぶとよいでしょう。
遺族も次第に年を取り、足腰が弱くなっていきます。そのため、たとえばバリアフリーになっているなど、お墓参りをする方を気遣ったつくりになっているかどうか、という点も判断材料にするのがおすすめです。
管理や費用の負担が少ない
管理面や費用面での負担が少ないかどうかも考えるべきポイントです。管理の手間がかかる場合や管理費用が高額なところでは、遺族に大きな負担がかかるためです。
管理費用が無理のない範囲であることや手入れがしやすいところなど、遺族への負担があまりかからない寺院や霊園を選ぶようにしましょう。
また、手入れがしにくい場合はお墓が荒れてしまい、思い描いていたイメージから遠ざかってしまいます。
思い描いていたとおりの環境で眠るためには、慎重な検討が必要でしょう。
樹木葬を選ぶときの注意点
樹木葬を選ぶ際にはいくつか注意したいことがあります。ここでは、樹木葬を選ぶときの注意点について解説します。
合祀型はあとから遺骨を取り出せない
合祀型を選択した場合、あとから遺骨を取り出せません。合祀型ではほかの方と同じ場所に納骨されるため、遺骨がまざってしまうのです。そうすると、遺骨を別の場所に移す「改葬」ができません。
樹木葬を選ぶときは、本当にそれでよいのか、ほかの選択肢はないのかなど、よく検討する必要があるでしょう。
最終的に個別型でも合祀型になることがある
個別型や集合型を選択した場合でも、最終的に合祀型になることがあります。一度契約したからといって、遺骨を永遠に個別で安置できるわけではないためです。
多くの寺院や霊園では、遺骨を個別で安置できる期限があります。期限を過ぎると集合墓地に合祀され、以降はほかの遺骨とともに供養されます。
期限があるのかないのか、あるのなら何回忌までなのかなど、契約前にしっかり確認しておくことが重要です。
親族の理解を得ることが難しい
樹木葬には、親族の理解を得ることが難しいという問題があります。人気が高まっているとはいえ、樹木葬はまだ一般的であるとはいえず、とくに年配の方には受け入れられにくいかもしれません。
そのため、親族から反対される可能性があることを知っておきましょう。
周囲の理解を得たうえで樹木葬を選ぶためには、樹木葬について正しい知識をつけ、親族が納得できるようご自身の思いも含めて説明できるようになる必要があります。
おすすめの記事
ほかにもこちらのメディアでは、樹木葬の種類についてや樹木葬の費用についても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。