告別式という言葉は聞いたことがあっても、どのような目的で執り行われているのかを知らない方も多いのではないでしょうか?
通夜や葬儀と混同されがちですが、それぞれ異なる意味合いを持ちます。遺族に対して失礼な行動がないように、告別式の役割や当日の流れ、マナーなどを事前に把握しておくことが大切です。
今回は、告別式の正しい意味を解説するとともに、通夜と葬儀との違いや服装マナーなどをご紹介します。
- 告別式とは、遺族以外の方も参列して故人に別れを告げる社会的な儀式
- 通夜や葬儀とは違い、告別式に宗教性はない
- 告別式の参列者は男女とも略礼服を着用し、数珠を持参するのがマナー
告別式とは?
告別式とは、故人に別れを告げるために喪主が中心となって行う儀式です。故人とのお別れを目的とした社会的儀式なので、遺族や親族に限らず、誰でも参列できます。
告別式では、参列者が遺族にお悔やみの言葉を寄せ、焼香や献花をするのが一般的です。
明治30年代頃に宗教性のない儀礼として始まったのがきっかけとなり、現代では葬儀の直後に続けて行われるセレモニーとして広く普及しています。
通夜・葬儀との違い
告別式と通夜・葬儀の違いは、宗教性の有無や日程にあります。
通夜 | 葬儀 | 告別式 | |
---|---|---|---|
宗教性 | あり | あり | なし |
日程 | 1日目 | 2日目 | 2日目 |
時間帯 | 夜 | 日中 | 日中 |
現代の葬式は一般的に2日間に渡って行われており、1日目を通夜、2日目を葬儀・告別式と呼びます。
通夜は、家族や友人などの親しい方が集まり、お経を読んだり線香をあげたりして、故人とお別れの時間を過ごす宗教儀式です。もともとは夜を通して行っていたため「通夜」と呼ばれていますが、現在は1~3時間で終わる「半通夜」が主流になっています。
葬儀は、家族や知人が故人の冥福を祈り、死者を葬るための宗教儀式です。
葬儀と告別式はどちらも2日目に執り行われますが、儀式の性格が異なります。葬儀は宗教的儀式で、告別式は社会的儀式です。通夜と葬儀は僧侶が中心となって執り行う儀式なのに対し、告別式は喪主が中心となって行います。
通夜も宗教儀式ですが、葬儀では故人をあの世に送り出す「引導」と、仏弟子としての戒を授ける「授戒(じゅかい)」を執り行う点で通夜と異なります。
葬儀と告別式は意味合いこそ異なりますが、火葬時刻の関係もあり、1つの会場で同時進行するのが一般的です。そのため、儀式と儀式の間の明確な区切りはなく、2日目のセレモニー全体を「告別式」と呼ぶことも少なくありません。
告別式の流れ
告別式は、葬儀とほぼ同時進行で始まります。午前中に開始され、1〜2時間で終わるのが一般的です。
ここからは、告別式の一般的な流れをご紹介します。
- 焼香
- 供花
- 釘打ち
- 喪主挨拶
- 出棺
- 火葬
焼香
焼香は喪主から始まり、遺族、親族、一般参列者の順で行います。司会者や会場スタッフから案内されたら焼香台へ進み、焼香して故人の冥福を祈ります。
焼香の回数は宗旨・宗派によって異なりますが、特に指示がない場合には1~3回の間で構いません。焼香をしたら遺族に黙礼をして、席に戻ります。
事情があり最後まで出席できないときは、焼香だけに伺って退出しても失礼にあたりません。ただし、遺族に親しい方がいれば、事前に最後まで見送れない旨を伝えておくと丁寧です。
供花
僧侶が退席したあと、棺に花を納めていきます。飾られていた生花が遺族や参列者に配られるので、焼香のときと同様に遺族から一般参列者の順に献花を行います。
遺族にとって故人と対面する最後の時間なので、ご自身の順番が終わったら次の参列者に場所を譲り、遺族がゆっくりお別れができるように配慮しましょう。
供花が済むと全員が手を添え、棺の蓋を閉じます。
釘打ち
棺の蓋を閉じたら、釘打ちの儀式をします。釘打ちには「故人を無事にお墓に運ぶ」という意味があるとされており、葬儀社が金づちで半分だけ釘を打ったあとに、遺族や参列者が小石で軽く叩いていきます。
ただし、釘打ちの儀式は必ず行うわけではありません。宗派や地域によっては行わないこともあります。
喪主挨拶
出棺の前に、喪主または遺族の代表者から参列者へ向けて感謝の挨拶があるので、全員で立ち会いましょう。
挨拶が終われば、遺族や親しかった友人が集まり、霊柩車へ棺を運びます。運ぶのは男性が多いですが、女性が運ぶこともあります。
出棺
挨拶が終わったら出棺となり、遺族は火葬場へ向かいます。喪主は位牌を持って霊柩車に同乗し、親族はマイクロバスやタクシーに乗り込んで火葬場へ向けて出発します。
霊柩車の鳴らすクラクションの音とともに、一般参列者は合掌をして出棺を見送るのが基本です。一般参列者は火葬場へ同行せずに、出棺を見送ったら解散します。
遺族から火葬場の同行を依頼された場合のみ、参列者は同行します。遺族からの依頼がない限り、ご自身から申し出ることは控えましょう。
火葬
火葬場に着いたら、火葬炉前に移動して火葬を見届けます。火葬場によっては、僧侶の読経ができるところもあります。
火葬時間は1〜2時間程度です。地域によっては火葬中にお茶や食事をすることもあります。
火葬が終わったら収骨を行い、遺骨を骨壷に納めます。これで一通りの流れは終了です。
告別式の服装マナー
告別式は故人と最期のお別れをする儀式なので、男女ともに略礼服の着用が望ましいです。派手な服装やメイクは避け、清潔感を意識した身だしなみを心がけましょう。
ここでは、告別式に参列するときの服装マナーをご紹介します。
男性
男性は、ブラックスーツかダークスーツに白無地のワイシャツを着用します。
服装 | 黒のスーツ 白無地のワイシャツ 黒無地の靴下 |
---|---|
小物類 | 黒のネクタイ 黒を基調にしたベルトやカバン |
靴 | 黒の革靴(光沢なし) |
足元は黒の革靴と靴下で統一し、ベルトやカバンなども黒を基調にしたものを選びましょう。ネクタイピンはつけないことが望ましいです。
女性
女性の服装は、光沢のない黒のアンサンブルやスーツが基本です。
服装 | 黒のワンピース、アンサンブル、スーツ 黒のストッキング |
---|---|
小物類 | 真珠や黒色の一連ネックレス 一粒タイプのイヤリング フォーマルなバッグ |
靴 | 黒のパンプス |
アクセサリー類は、結婚指輪以外は付けないのがマナーです。付けたい場合は、真珠のネックレスや一粒タイプのイヤリングなど、華美にならないものを1つだけ選びましょう。
バッグや小物類は、金具が付いているものや派手な色、光沢感のある素材を避けます。
足元は、ヒールがあまり高くない布製の黒のパンプスに、黒のストッキングを履きます。メイクも華美にならないように気をつけましょう。
子ども
子どもは学校の制服が正式な礼装ですが、制服がない場合は黒もしくは黒に近い色のジャケットやズボン、スカートを合わせます。
服装 | 制服 黒もしくは黒に近い色のジャケット、ズボン、スカート 白いシャツ、ブラウス 黒色やグレーの靴下 |
---|---|
靴 | 黒に近い靴 |
靴や靴下も黒に近い地味な色を選ぶのが無難です。色が派手なものやキャラクター入りのもの、光るものは避けましょう。
幼児や乳児は、黒やそれに近い地味な色の服装を選べば問題ありません。
告別式の香典マナー
香典は哀悼の意を込めて遺族に渡すものであり、いくつかマナーがあります。
新札は使わない
香典に新札を使うと、死の準備をしていた印象を与えることから、葬儀の場面で使うのはよくないとされています。香典に包む紙幣は、新札でないものを用意しましょう。
新札しかないときは、折り目をつければ問題ありません。香典袋に入れる前に、新札を一度折っておきましょう。
香典の金額は4や9を避ける
香典の金額は「4」や「9」を避けたほうがよいとされています。理由としては、どちらも死と苦を連想させる忌み数であり、縁起が悪いと捉えられているためです。
また、偶数の金額も避けたほうが無難です。偶数は「割り切れる」数なので、「故人とのつながりを切る」ことを連想させます。そのため、香典の金額は「1」「3」「5」という奇数の金額を包むのが一般的です。
香典袋は金額に合うものを選ぶ
香典袋のグレードは、金額と見合うものを選びましょう。金額が低いのに豪華な香典袋を使用すると、中身が調和しておらず失礼にあたります。
5,000円の香典金額に対して、豪華な水引のついた香典袋を用意するのは不相応です。香典金額が5,000円なら、コンビニで売っている水引が印刷されたもので十分です。
告別式の参列マナー
告別式に参列するときは、遺族に失礼な態度を取ることがないように、以下のマナーを押さえて行動しましょう。
遺族への挨拶は短くする
喪主や遺族は式の段取りや他の参列者への対応などで忙しいため、哀悼の意を伝えるときは軽い挨拶に留めましょう。
挨拶する際も、使う言葉には気を配らなくてはなりません。 「死」「死亡」などの死に関する直接的な表現は遺族に重たく響くため、「お亡くなりになった」など表現を変えましょう。
また、「たびたび」「重ね重ね」などの忌み言葉は不幸が重なると捉えられるので、葬儀の場では使わないようにします。
私語を慎む
葬儀会場で親族や友人、知人と会ったときは、私語を控え、黙礼する程度に留めましょう。厳粛な葬儀の場面なので、長い会話や冗談を言い合う不謹慎な言動は控えます。
どうしても話がしたいときは、葬儀場を出て話すなど遺族への配慮が必要です。
数珠を持参する
仏式の葬儀には数珠が必要です。色や形は宗派によって違いますが、遺族の宗派に合わせる必要はありません。ご自身の宗派に該当する数珠を用意しましょう。
式中は左手首に数珠をかけ、歩くときは房を下にして持ちます。焼香では、親指と人差し指の間に数珠をかけて手を合わせましょう。
近年は葬儀形式が多様化していますが、大多数は仏式の葬儀です。あらかじめ宗教がわかっている場合を除き、基本的に葬儀に参列するときは数珠を持参しましょう。
参列できないときは弔電や供花を送付する
事前に参列できないことがわかっている場合は、弔電や供花を送付して弔いの気持ちを伝えましょう。その際、参列できない理由を長く述べる必要はありません。「どうしても都合がつかない」「事情がある」など簡潔に理由を伝えます。
香典は参列予定の知人に頼んで代わりに届けてもらったり、現金書留で送付したりしても構いません。
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