「身内だけで行う家族葬では、喪主の挨拶は必要ないのでは?」と考える方もいるでしょう。結論から言うと、家族葬でも喪主の挨拶は必要です。
喪主の挨拶は参列者に対して感謝の気持ちを伝えるもので、家族葬でも大切なこと。一般葬ほど堅苦しくなり過ぎないような挨拶をするとよいでしょう。
今回の記事では、家族葬で使える喪主の挨拶の文例などをご紹介します。人前で話すことが苦手な方は必読です。
- 親しい方だけで行う家族葬でも、喪主の挨拶は必要
- 一般葬ほど改まって挨拶する必要はないため、自然な挨拶を心がける
- 家族葬の挨拶でも「忌み言葉」を使わないなどのマナーは厳守する
家族葬で喪主の挨拶は必要?
親しい方だけで行う家族葬でも、喪主の挨拶は必要と考えましょう。
葬儀での喪主の挨拶は、故人を追悼するだけのものではありません。参列者に対して、会葬に対する感謝の気持ちや、故人が生前に受けた厚意や親交に対するお礼を伝えることです。これは、参列者を少人数に限定した家族葬においても、とても大切なことといえます。
身近な家族だけで故人を見送るごくごく小規模な家族葬の場合を除いては、堅苦しくなり過ぎない言葉で挨拶をすることが必要です。
基本的には家族葬でも必要
家族葬といっても、ごくごく身近な近親者だけを招いて数人で行う形式から、故人と親しかった友人なども招いて行う形式のものまでさまざまです。特に家族以外の参列者がいる場合は、喪主がしっかりと挨拶をしましょう。
喪主は遺族の代表者であり、故人に代わって参列者に対して感謝の意を伝える立場だからです。
家族葬といっても、規模が異なるだけで、葬儀の意味や目的は一般葬と変わりません。葬儀の主催者として、参列者を迎え入れてもてなすことも、喪主の大切な役割といえます。
もちろん気心の知れた方、顔なじみの方だけが参列する家族葬であれば、一般葬ほどかしこまった挨拶をする必要はありません。一般葬よりも少しだけ肩の力を抜いて、自然な挨拶を心がけるとよいでしょう。
極めて小規模な葬儀では不要
故人の家族や身近な親族だけがあつまる極めて少規模な家族葬であれば、改まった形での喪主の挨拶が不自然というケースもあります。このような場合の挨拶は、省略しても差し支えありません。
喪主の挨拶をするか否かの判断は、「友人など家族以外の方が参列するか」「日ごろ顔を合わせる機会が少ない親戚が参列するか」という点が1つの基準になります。
いずれかに当てはまる場合には、例え家族葬とはいえ喪主が挨拶をするのが一般的です。葬式は故人を見送る宗教的な儀式であるとともに、故人と縁を持ってくれた方に感謝する社会的な儀式でもあるからです。
喪主や家族だけで判断が付きかねるケースもあるでしょう。そのような場合には、葬儀社に相談してみるのも1つの方法です。
家族葬での喪主の挨拶の注意点
身近な方だけが参列する家族葬とはいえ、喪主の挨拶では一定のルールに従って、ポイントを押さえて話すことが大切です。
葬儀の場では「忌み言葉」と呼ばれる「使ってはいけない言葉」もあれば、挨拶として適切な長さの目安もあります。人前で話すことに慣れていなければ、例え少人数の近親者とはいえ、挨拶すること自体に戸惑う方、不安を覚える方も少なくはないでしょう。
しかし一定のルールや注意点が存在することは、逆に言えば、それに沿って文面を考えて臨めば難しくはないことを意味しています。
家族葬での喪主の挨拶の注意点を、しっかりと確認しておきましょう。
適切な長さで挨拶する
喪主の挨拶には、適切とされる長さの目安があります。時間にして2~3分程度が妥当とされ、長すぎても短すぎてもよくありません。最大でも5分以内にまとめることが大切です。
挨拶の際には、早口になり過ぎないように、大きな声ではっきりと話すことを心がけましょう。マイクを使って話すときも、このような話し方が聞き取りやすく伝わるポイントです。
人前で話すことに慣れていなければ、時間を計りながら声を出して、挨拶の文面を読んでおくことをおすすめします。
忌み言葉は避ける
葬儀の挨拶では、「忌み言葉」と呼ばれる不吉な言葉、縁起が悪い言葉を避けるべきとされています。家族葬の挨拶であっても、文章に忌み言葉を交えないよう注意が必要です。
忌み言葉は、宗教上の教えや風習に基づいて好ましくないとされたものです。加えて、家族葬が神道やキリスト教の形式で行われる場合には、仏教の教えに基づく言葉もふさわしくありません。「冥福」「他界」「供養」などの表現が、仏教の考え方に基づく言葉の代表例です。
忌み言葉の中には、普段何気なく使っている表現が数多く含まれます。挨拶だけに留まらず、葬儀中には使うべきでない言葉として、しっかりと把握しておくことが大切です。
重ね言葉
重ね言葉とは、「ますます」「たびたび」など同じ音を繰り返す言葉です。同じ音の繰り返しが「不吉なことが重なる」という発想を抱かせるため、葬式の場では避けるべきとされています。
同様の意味合いから、不幸が続くことと連想させる言葉も用いるべきではありません。「繰り返し」「重ねて」「相次ぎ」「今一度」などの言葉が該当します。
例 | |
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重ね言葉 | 重ね重ね たびたび またまた 次々 わざわざ ますます いろいろ いよいよ |
繰り返しを連想させる言葉 | 繰り返し 重ねて 再び 再三 今一度 続いて 追って 相次ぎ |
直接的な生死の表現
生死を直接的に表現する言葉は、参列者に不快な思いをさせる可能性があるため、避けるべきとされています。「死ぬ」「亡くなる」「死亡」などのほか、「生存」や「生きる」なども好ましくありません。
「死ぬ」は「逝去(せいきょ)」などと、言い換えて用いましょう。
例 | |
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直接的な生死の表現 | 死ぬ 亡くなる 死亡 急死 自殺 生存 生きる 逝く 生きている時 |
不吉な表現
不吉な表現も、葬式の場では用いべきではありません。「終わりに」「苦労」などの言葉は、ともすれば挨拶で使ってしまいがちですが、これらも不吉な言葉とされています。同様に、死を連想させる「4」、苦を連想させる「9」も避けるべき数字です。
例 | |
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不吉な表現 | 消える 落ちる 焦る 離れる 浮かばれない 苦労 忙しい 大変 4 9 |
カンペを見ても構わない
喪主の挨拶では、あらかじめ用意した原稿、いわゆるカンペを見ながら話しても失礼にはあたりません。
前述のとおり、葬儀の挨拶には使ってはならない言葉など、他の場面とは異なるルールが存在します。よほど人前で挨拶をする機会が多い方であっても、これらのルールに則した原稿を事前に用意して、それを読んで挨拶をするほうが安心ともいえるでしょう。
ただし、スマートフォンに表示した原稿を見ながら挨拶をするのは好ましくありません。特に高齢の会葬者の中には、それが失礼だと感じる方もいるはずです。
カンペを読むのであれば、紙に書いたものを用意しなければなりません。
家族葬での喪主の挨拶のタイミングと文例
基本的な挨拶のタイミングは家族葬でも一般葬でも変わりません。しかし、身近な家族や親族、普段から親しい関係の友人で行う家族葬では、一部の挨拶を省略できます。また、一般葬ほどかしこまった言葉を使わずに挨拶をしてもいいでしょう。
家族葬での喪主の挨拶のタイミングは、通夜の終了後、通夜振る舞い、出棺時、精進落としなどです。いずれも「弔問への感謝」と「次の席の案内」をポイントに、故人の思い出を交えて話すとよいでしょう。
それぞれの場面での挨拶の文例をご紹介します。
通夜終了後の挨拶
本日はご多用の中、〇〇(故人)の通夜にご参列いただき、誠にありがとうございます。皆様にこのように見守られ、故人も喜んでいることと思います。生前のご厚誼に対しまして、本人に代わり厚くお礼申し上げます。
葬儀・告別式は明日〇〇時より、こちらの斎場にて執り行う予定です。なにとぞ、よろしくお願いいたします。
この後ささやかではございますが、別室にてお食事の席をご用意いたしました。故人をしのび召し上がりながら、思い出話などをお聞かせいただければと存じます。
本日は誠にありがとうございました。
通夜振る舞いでの挨拶
本日はお忙しい中お越しいただき、誠にありがとうございました。
ささやかではございますが、お食事をご用意いたしました。お時間の許す限りおくつろぎいただき、故人の思い出話などをお聞かせいただければありがたく思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
出棺時の挨拶
遺族を代表いたしまして、皆さまにひとことご挨拶を申し上げます。故人の妻の〇〇でございます。本日はご多用にもかかわらず、亡き〇〇(故人)の葬儀にご参列くださり、誠にありがとうございました。
おかげさまで葬儀・告別式とも滞りなく進み、これより出棺の運びとなりました。大勢の方々にお見送りいただき、故人もさぞかし喜んでいることと存じます。
(故人の生前エピソード)
生前に賜りましたご厚誼につきまして、〇〇(故人)に代わりまして厚くお礼を申し上げます。今後とも〇〇(故人)の生前と変わりないご指導、ご鞭撻のほどをお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。
精進落としでの挨拶
本日はご多用のなか、〇〇(故人)の葬儀にお集まりいただき、誠にありがとうございました。
おかげさまで、滞りなく葬儀、告別式を終えることができました。
ささやかではございますが、精進落しのお席をご用意させていただきました。皆様お時間の許す限りおくつろぎください。
家族葬でのその他の挨拶
家族葬での喪主の挨拶には、遺族の代表として話す以外にも、僧侶に対する挨拶や参列者への個別の挨拶などがあります。
宗教者への挨拶
読経を依頼した僧侶の方に対しては、喪主が挨拶をするのがマナーです。通夜・葬儀で僧侶を迎えるとき、通夜・葬儀を終えて僧侶を見送るときなどには、来てくれたことに対する感謝、読経や戒名授与に対する感謝を手短に伝えましょう。
なお、通夜の前に挨拶をするタイミングで、お布施を渡すのがよいでしょう。
本日はご足労いただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします
本日はお勤めいただき、誠にありがとうございました
お布施でございます。お納めください
お悔やみに対するお礼
故人の仕事関係者などが参列しない家族葬では、一般葬ほどお悔やみに対するお礼に気を使わなくてもよいといえます。
通常のお悔やみに対するお礼の言葉を伝えれば問題ありません。
生前は故人が大変お世話になりました
ご多忙の中お越しいただき、ありがとうございます
また、一般葬では特定の会葬者と長話をすることは好ましくないと考えられますが、家族葬ではそこまで神経質にならなくてもよいでしょう。
久々に会った親族と気兼ねなく故人を見送れるのも、家族葬のメリットといえるからです。
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