近年人気の高まりを見せる自然葬による供養方法ですが、自然葬である「樹木葬」や「散骨」の違いを明確にご存知でしょうか?
自然に還す点は共通しているものの、樹木葬は「墓石の代わりに樹木を使う」、散骨は「自然の中に遺骨を撒く」という特徴があります。
この記事では樹木葬と散骨の違いやそれぞれのメリット・デメリットを解説し、後悔のない故人の供養方法についての選択ポイントを解説していきます。
- 樹木葬と散骨の違いはお墓の有無
- 樹木葬のメリットは費用が抑えられる点
- 散骨のメリットは費用が抑えられることに加えて、管理が不要な点
樹木葬と散骨の特徴や違い
「樹木葬」と「散骨」はどちらも自然の中で故人を供養する「自然葬」と呼ばれる故人の供養方法です。
近年では一般的な認知度も徐々に上がり、興味を持たれる方や実際に選択するご家族が増えてきています。お墓の継承者を必要としない点、故人を自然に還すという点で現代のライフスタイルに非常に合っていることも、その後押しとなっています。
しかし、従来の埋葬方法とは大きく異なることから、受け入れにくいと感じられる方や、どのようなものかよくわからない、と思われる方が多くいらっしゃるのも事実です。
樹木葬、散骨のそれぞれにどのような特徴があり、違いはどのような点なのか以下に解説していきます。
樹木葬とは
樹木葬とは、従来のお墓にあった墓石の代わりに樹木をシンボルとして植え、故人を自然に還す形で弔う埋葬方法です。
「遺骨を埋葬する」「お墓の形が存在する」という点では、従来のお墓のイメージに極めて近くなるため、様々な方にとって受け入れやすく、利用しやすい自然葬の形と言えます。
一方で、一般的なお墓と比較すると、墓石を購入する必要がないことからコストが安く抑えられるという特徴があり、利用する方にとっての大きなメリットとなっています。
樹木葬の種類
樹木葬には以下の3つの種類があります。
- 山林を利用して作った「里山型」
- 都心部の小規模な墓地や霊園に多い「庭園型」
- 都心型の大きな霊園や寺院墓地の一角に据えられている「公園型」
また、埋葬方法としても3つの種類に分類されています。
- それぞれの遺骨に対して1つのシンボルツリーを植える「個別型」
- 他の遺骨と一緒に埋葬される「合祀(ごうし)型」
- 納骨スペースは個別でシンボルツリーは共用される「集合型」
どのように故人を供養したいか、予算はどの程度かで比較検討し選択できるようになっています。
散骨とは
散骨の大きな特徴はお墓としての実体がないことです。自然の中に遺骨を撒くことで、故人の供養を行います。
火葬したあとの遺骨を細かく砕き、それを海や山などの自然の中に撒きます。
お墓に埋葬するわけではないため、届出等は必要なく、通常の埋葬等と異なり散骨のタイミングもいつでも問題ありません。
しかし、どこにでも撒いてもよいわけではなく、散骨を行う場所によっては法に触れてしまう可能性があります。
できる限り実績のある信頼できる専門の業者に依頼して行うことが大切です。
散骨の種類
散骨の種類はどこに遺骨を撒くのかによって分類されています。
- 海洋散骨:海に散骨する方法
- 山間散骨:山に散骨する方法
海洋散骨と山間散骨は、海や山であればどこにでも撒いてよいわけではありません。海洋散骨の場合は海水浴場や漁場を避け、制限のない場所を選ぶ必要があります。
また、山間散骨に関しては、業者に依頼したうえで指定された場所に散骨します。業者所有の散骨専用地に撒くことが一般的です。
樹木葬のメリット・デメリット
自然葬に分類されている供養方法の中でも、樹木葬は特に様々なタイプのものが増えてきています。
バリエーションが増えてきたことで、従来のお墓と近い感覚で利用できるタイプのものも出てきており、様々なライフスタイルの方にとって利用しやすくなっています。
しかし、どのようなものにもそれぞれにメリット・デメリットがあります。後悔しない供養を行うためには、それらをよく知ったうえで利用することが大切です。
ここからは樹木葬のメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
大きなメリットといえるのが費用面です。
従来のお墓は、新規で購入する場合に100万円〜200万円程度と、非常に高額な費用を必要としていました。その大きな要因となっていたのが、墓石の購入費用でした。
樹木葬の場合、墓石の代わりとしてシンボルツリーを植えることになるため、その分お墓にかかるコストが大きく抑えられます。
また、複数の遺骨と一緒に埋葬される合祀型の樹木葬であれば、さらに費用が抑えられるため、様々な方にとって利用しやすくなっています。
デメリット
樹木葬では他の遺骨と一緒になる合祀型で埋葬されることが多いため、あとから改葬を考えても遺骨を取り出せない点がデメリットです。
仮に従来のような個別の埋葬区画を用意する場合には、費用が高額になります。特に都心部の霊園では地価が高い分、一人ひとりに使用するスペースが限られています。
また、新しい埋葬方法を受け入れられない親族からは、反発を招く可能性があるため、事前に理解を得ておきましょう。
散骨のメリット・デメリット
散骨は樹木葬とは異なり、遺骨を埋葬したお墓という実体のある形はありません。
遺骨を細かく砕いて自然の中に撒くことで故人の供養をします。
「自然に還す」というスタイルをより具現化しているため、自然葬を行いたいという希望を持っている方にとっては理想的な供養のスタイルと言えるでしょう。
ここからは散骨のメリット・デメリットについてご紹介します。
メリット
樹木葬よりもさらに費用を抑えられる点が、散骨のメリットです。前述のとおり、散骨にはお墓が必要ありません。
埋葬するための土地を準備することも、お墓のシンボルとなる墓石や樹木を準備することも不要です。埋葬後の管理費も必要ありません。
故人を自然に還し、お墓の費用をできるだけ少なくしたいと考える方にとっては、大きなメリットとなります。
デメリット
お墓がないということは、散骨におけるメリットであると同時にデメリットにもなっています。
残された遺族にとっては、大切な故人を供養し偲ぶためのお墓という場所が、一種の拠り所になることもあるのです。
節目にお墓参りに出かけ、手を合わせることで故人の供養を行い、それと同時に、家族にとっての心の支えへとつながり精神的な安らぎを得られます。
しかし、お墓がないことでそれが叶わず、一抹の寂しさを感じることになる可能性があるのです。
樹木葬と散骨の費用
樹木葬と散骨は、どちらも一般的なお墓への埋葬と比較すると、かなり費用が抑えられます。従来のお墓では、遺骨を埋葬するための土地区画や墓石を準備することが必要となっており、その費用がかなりかかっていました。
一方で樹木葬や散骨による供養方法では、これまでの一般的なお墓の形式とはかなり異なるために、費用の内訳も大きく異なっています。
以下に樹木葬と散骨の費用についてご紹介していきます。
樹木葬の費用
樹木葬の費用は、墓石ではなく樹木や草花をお墓のシンボルとすることで抑えられています。
従来の一般的なお墓のように、個別のお墓に個別のシンボルツリーがある「個別型」と呼ばれるタイプで、費用は50万円〜80万円程度です。
合祀型になると、もう少し費用は抑えられて、5万円〜20万円程度となっています。
それぞれの費用内訳や、埋葬の条件などをよく検討し、希望の条件に合致しているかを見極めて申し込みを行うようにしましょう。
散骨の費用
散骨を行うための費用は、5万円〜30万円程度が一般的で、樹木葬よりも安く抑えられることがほとんどです。
ただし散骨の方法によっては、それ以上に費用が多くかかることもあります。
海洋散骨を行う場合、海水浴場や漁場に影響がないポイントまで船で向かい、散骨する必要があります。そこに向かうための船の代金や、業者に委託するための費用で、最大20万円程度必要です。
樹木葬と散骨で後悔しないための注意点
自然の中で埋葬し、故人を自然に還す形で供養したいと考えたとき、自然葬の「樹木葬」と「散骨」を選択される方が多いでしょう。
しかし、ポイントを抑えてよく考えたうえで選択しなければ後悔することにつながりかねません。
また、どちらも一般的な故人の供養方法とは異なるため、親族の中にはそれに対する反発をされる方もいるかもしれません。
情報をよく整理して希望に沿った故人の供養方法を選択しましょう。
樹木葬の注意点
遺骨を埋葬する場所は、行政の許可を得た場所でなければいけません。
しかし業者の中には正式な許可を得ないまま、埋葬を請け負っている可能性があります。正式な申し込みをする前に健全な経営を行っている業者であるのかを確認することも大切です。
また、樹木葬の埋葬方法はかなりバラエティーに富んでいるため、本当に希望の条件に叶う埋葬方法を行う霊園なのかを事前に確認し、見極めたうえで依頼することが大切です。
散骨の注意点
散骨による故人の供養は、法律上判断しづらいのが実情です。
遺骨を遺棄すること自体は違法であり、状況に応じては懲役刑が課せられます。しかし、ライフスタイルや宗教観も多様化する現代社会の流れを考慮して、葬送を目的として散骨する場合は違法ではないという見解が法務省からも示されています。
そのため、供養を目的とした散骨であれば法律上罰せられませんが、地域によっては条例が定められている場合もあるため、どこにでも散骨できるわけではありません。
トラブルを避けるためにも、専門の業者に依頼して散骨を行いましょう。ご自身で行う場合は近隣在住の方に事前に説明を行い、理解を得ておく必要があります。
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