相続した空き家を放置するとどうなる?管理義務や放棄できるのか解説

「空き家を相続したんだけど、どのように処分すればいいんだろう」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

近年日本は高齢化が進展しており、空き家の数も増えています。空き家に住む気がない相続人にとって、空き家を相続するメリットは薄いため、処分に困ってしまうこともあるでしょう。

こちらの記事では、空き家を放置することによるデメリットや、空き家を相続したときの対処法などを解説していきます。

空き家を相続した方や、空き家を相続する見込みがある方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続した空き家をそのまま放置すると、コストがかかる上に近隣住民とトラブルになる
  • 価値のある空き家の場合は、売却や貸し出すという選択肢がある
  • 2023年から始めった相続土地国庫帰属制度を利用するという手もある

相続した空き家を放置するデメリット

一人暮らしをしている親が亡くなった場合、相続人は空き家を相続する可能性があります。

「面倒だから放置する」という人もいますが、相続した空き家を放置することにはさまざまなデメリットがあります。

税金を払い続けることになる

空き家を放置すると、固定資産税と都市計画税を払い続けることになります。

なお、固定資産税と都市計画税の税率は下記のとおりです。

固定資産税 市町村が決めた課税標準×1.4%
都市計画税 市町村が決めた課税標準×0.3%

実際には住んでいなくても、「不動産を所有している」ことに対して固定資産税と都市計画税は課せられるため、遠方に住んでいようが税金負担は発生します。

空き家だけで土地も相続した場合、土地に対しても固定資産税と都市計画税は発生するため、課税標準次第では数十万円の税金を払い続けることになります。

住んでもいない不動産に対して税金を払い続けるのは、大きな経済的負担となってしまうでしょう。

近隣とのトラブルの火種になる

空き家は、放置すればするほど劣化するため周辺環境に悪影響を及ぼします。空き家周辺の近隣住民と、空き家をめぐってトラブルが起こってしまう可能性も考えます。

空き家とはいえ、所有者には保存管理義務が発生するため、もし近隣住民とトラブルが起きたら対応しなければなりません。

ゴミの不法投棄や悪臭など、空き家が周辺環境に与える影響は大きいため、「放置しようと思ってもできない」可能性は高いです。

倒壊すると損害賠償などの恐れがある

空き家を放置して建物が劣化すると、倒壊などのリスクが高まります。もし空き家が倒壊して隣家に損害を与えた場合は、損害賠償を請求されてしまい、法律トラブルを抱えることになります。

つまり、空き家を放置し続けると経済的にも損失を受けてしまう恐れがあるため、放置するデメリットは大きいでしょう。

資産価値が落ち続ける

建物は劣化すればするほど資産価値が下落するため、「売りたくても売れない」という状況になりかねません。資産価値が落ちれば買い手も減少してしまうことから、放置する年数が経過すれば手の施しようがなくなってしまいます。

相続人が空き家から遠方に住んでいる場合は、管理の手間やコストの負担が重くなることから、空き家は放置されがちです。

しかし、管理が面倒だからと言って放置し続けると、売却や賃貸に出すことも難しくなる点は押さえておきましょう。

相続前にできる空き家対策

相続人が困らないようにするためにも、空き家対策はできるだけ早く着手することが大切です。

以下で、相続前にできる空き家対策について解説します。

売却する

空き家になりそうな家に資産価値がある場合は、生前に売却してしまうことが考えられます。売却後は賃貸物件に移り住むか、高齢施設に移り住むことになりますが、その点を受けいれられるのであれば、売却することが有力な選択肢になります。

売却すれば相続人が空き家となった不動産を相続することはなくなるため、空き家をめぐるトラブルを回避できるでしょう。

持ち家を売却すると3000万円特別控除を受けられる

生前に持ち家を売却して譲渡所得が発生した場合は、3000万円の特別控除を受けることが可能です。通常、取得費用よりも高く不動産を売却したときは、利益部分に対して約20%の税金が課されます。

例えば、3000万円で購入した不動産を6000万円で売却すると、利益である3000万円の部分に対して約20%である600万円の税金を納めなければなりません。

しかし、3000万円特別控除があれば、利益部分から3000万円が控除されるため納める税金がゼロになります。3000万円特別控除は、原則として「売却する不動産が持ち主の自宅として使われている」ことが要件です。

相続発生後に3000万円特別控除を利用することは可能ですが、条件が厳しくなるため、売却できるようであれば相続発生前に売却した方が空き家リスクを抑えることができます。

リースバックする

リースバックとは、保有している自宅を売却して、家賃を払いながら住み続ける方法です。賃貸暮らしにはなるものの、不動産の所有権を手放すことができるため、相続人が空き家を相続することはなくなります。

また、本人も住み慣れた自宅で生活を送ることができるため、新しい家に引っ越すことや高齢者施設の利用に抵抗がある場合に有効活用できます。

また、リースバックを行えば住宅の売却資金も得られるため、資金を相続税対策で活用することも可能です。

家を貸し出す  

自分は賃貸物件や高齢者施設に移り住み、持ち家を貸し出すという方法もあります。居住者が多く賃貸物件のニーズが高いエリアに住んでいる場合は、賃貸として貸し出せば空き家リスクを軽減できます。

家賃収入が得られるのはもちろん、相続が発生した後は相続人に家賃収入が帰属するため、相続人にも経済的メリットが期待できるでしょう。

しかし、地方部で賃貸物件の需要がない場合は、家を貸し出すことは現実的ではありません。

遺言書を書く

遺言書を書き、財産分与の意思表示をしておくことも大切です。資産価値がなく、維持管理費用が発生する不動産は「負動産」と呼ばれることもありますが、相続人同士で負動産の押し付け合いが発生するケースは少なくありません。

相続の基本的なルールとして、「相続人全員の反対」がない限りは、遺言書の内容通りに財産分与が行われます。

そのため、空き家をめぐる相続トラブルを防ぐためにも、「空き家を相続する相続人には、解体費用を含めて多くの現金を渡す」などの遺言書を書いておくことは効果的です。

相続後にできる空き家対策 

相続発生前に空き家対策ができなかったとしても、相続後にできる空き家対策も存在します。

空き家を相続した方や、これから空き家を相続する可能性がある方は、最適な方法を選択して空き家対策を進めましょう。

売却する 

相続が発生して空き家を相続した場合でも、当該空き家に買い手が付きそうな場合は売却する方法があります。売却したら固定資産税や都市計画税の負担を回避でき、また倒壊などによる近隣トラブルに見舞われることもありません。

遠方に住んでおり、空き家を維持管理することが難しい場合は、売却することが有力な選択肢となります。

3000万円特別控除を使える可能性(空き家特例)

不動産を売却したときの3000万円特別控除は、原則として売却時に「売り手の自宅として使われていた」ときに適用されます。

しかし、平成27年の税制改正によって、相続発生後に空き家となった自宅を売却したケースでも、以下の要件をクリアできれば3000万円の特別控除が利用できます。

3000万円の特別控除が利用できる要件
  • 昭和56年5月31日以前に建築された物件であること
  • 相続開始時に被相続人が1人で住んでいたこと
  • 耐震基準をクリアするか、建物を取り壊して売却すること
  • 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること

空き家を売却して3000万円特別控除を受けるためには、難しい条件をクリアする必要がある点は押さえておきましょう。

貸し出す

空き家に賃貸物件としての需要が期待できそうな場合は、貸し出すことも有力な選択肢となります。貸し出しても固定資産税や都市計画税を負担する必要はありますが、家賃収入を得ることが可能です。

賃貸として貸し出すためのリフォームが必要になるケースはありますが、賃貸物件の需要が見込めるのであれば、貸し出すことを検討する余地があります。

自分が住む 

相続人が自分の家を持っておらず、空き家に住み続けることで生活に支障がない場合は、自分が住んでしまうことも検討しましょう。

売却や賃貸が難しい場合でも、相続人が住んでしまえば問題ありません。もちろん、別荘として利用する気があるのであれば、別荘として所有し続けることも可能です。

なお、相続した空き家に自分が住む場合、条件を満たせば相続税の負担を軽減できる「小規模宅地等の特例」を利用できるメリットがあります。

相続放棄する

相続放棄とは、被相続人の財産を相続する権利を放棄することです。相続放棄を行えば「最初から相続人ではなかった」という扱いを受けるため、相続財産に空き家があったとしても相続する必要はありません。

しかし、相続放棄は「不動産だけ相続放棄する」など、ピンポイントで財産を選ぶことができない点には注意が必要です。

つまり、相続放棄をすると不動産を含めた、預貯金や株式などの金融資産が全て相続できなくなります。

なお、相続放棄をして空き家の相続を免れたとしても、空き家について相続人がいない場合は相続財産清算人が管理を開始するまで空き家の管理義務が発生する点には注意しましょう。

解体する

「空き家には価値がなさそうだけど、土地には利用価値がありそう」という場合は、解体することを検討しましょう。解体して土地を更地すれば土地活用の選択肢が増えることから、空き家がある状態よりも買い手が見つかりやすくなります。

数百万円程度の解体費用が発生するデメリットはありますが、もし土地に買い手が見つかりそうな場合は、解体することで不動産の管理から解放されます。

相続土地国庫帰属制度を活用する

相続土地国庫帰属制度とは、相続した土地を国に引き取ってもらう制度です

もし空き家を相続して、解体しても土地の買い手が見つかりそうにない場合は、相続土地国庫帰属制度の活用を検討しましょう。

「通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものに当たらない」と判断され、10年分の土地管理費相当分の負担金を納付すれば、土地の所有権が国に帰属します。

空き家の解体費用や負担金を支払う必要があるものの、遠方に住んでいる場合や不動産の管理をする負担が大きい場合は、相続土地国庫帰属制度の活用を検討してみてください。

寄付する

売却や貸し出しが見込めない場合は、寄付をすることも検討しましょう。寄付先候補となるのは自治体・個人・法人ですが、一部の自治体では一定の条件を満たせば無償で寄付を受け付けています。

被相続人の住所地の役場に確認して、寄付が可能か確認するといいでしょう。

また、もし空き家と土地の受贈を希望する個人や法人がいる場合は、登記などの手続きを経れば寄付することが可能です。

空き家を相続したときに必要な手続き

空き家を相続したときは、さまざまな手続きが必要となります。

必要な手続きを行わないと、相続税負担が大きくなるなどの不利益を被るため、注意しましょう。

相続登記をおこなう

相続財産に空き家などの不動産がある場合は、相続登記を行い不動産の名義を相続人に移さなければなりません。相続登記を行う名義変更に法定期限はないものの、相続登記をせずに放置していると、相続人全員が法定相続分で不動産を共有していることになります。

相続人全員で空き家の管理義務が発生することになるため、相続登記をしないでいると、もし近隣トラブルが起こったときに負動産の押し付け合いなどのトラブルが発生する可能性があります。

余計なトラブルを増やさないためにも、遺言書を活用して空き家の管理トラブルを未然に防ぐことが大切です。

小規模宅地の特例を受ける

もし空き家となった家に相続人が住み続けることになった場合、下記の要件をクリアすれば小規模宅地等の特例を受けることができます。

小規模宅地等の特例を受けることができる要件
  • 被相続人と別居している
  • 3年以上借家に住んでいる
  • 被相続人に配偶者や同居している相続人がいない
  • 相続した宅地を相続開始より10カ月所有する

具体的には、被相続人が住んでいる家から遠方に住んでおり、なおかつ持ち家ではなく賃貸物件に3年以上暮らしているケースが該当します。小規模宅地等の特例が適用されれば、被相続人の居住の用に供されていた土地に関して「330㎡まで80%の減額」を受けることが可能です。

小規模宅地等の特例を使えば、相続税を大幅に削減できます。相続税の申告を行うときに小規模宅地等の特例を利用することも申告する必要があるため、忘れずに手続きすることが大切です。

3000万円の特別控除を受ける(空き家特例) 

相続した空き家を売却するときに3000万円の特別控除を受けられそうなときは、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の手続きを行いましょう。

3000万円の特別控除を受ければ、最大で600万円の税金負担を回避できることから、不動産を売却した人からするとメリットが大きいです。

3000万円の特別控除が利用できる要件(空き家特例)
  • 昭和56年5月31日以前に建築された物件であること
  • 相続開始時に被相続人が1人で住んでいたこと
  • 耐震基準をクリアするか、建物を取り壊して売却すること
  • 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること

上記の条件をクリアできている場合は、忘れずに翌年の確定申告のタイミングで、譲渡所得の内訳書や売買契約書のコピー(購入時と売却時)を提出しましょう。

空き家問題はなるべく早く対処しよう

相続が発生する前に空き家対策をすることが重要ですが、相続が発生した後でも空き家問題に対処する方法はいくつかあります。

空き家を放置すると税金などのコストが発生し続けるうえに、近隣住民とトラブルになる恐れもあります。

空き家を相続したときや相続しそうなときは、きちんと対策を取ることが重要といえるででしょう。 

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