相続手続きの代行は誰に頼むべき?代行サービスの費用や注意点を解説

相続手続きの代行サービスを行う専門家は多いため、誰に頼めばよいか迷っていませんか?

代行先によってサービス範囲や費用は異なるので、事前に予算や依頼したい手続きを決めておくことが大事です。

この記事では、相続手続きの代行サービスを行う専門家の種類依頼できる内容、費用の相場などを解説します。代行先を選ぶときの注意点もご紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。

1分でわかる!記事の内容
  • 紛争を予防したいなら弁護士、節税したいなら税理士がおすすめ
  • 代行費用は銀行が最も高く、行政書士がリーズナブル
  • 代行先は実績や料金、サービス範囲、評判などを見て選ぶことが大事

相続手続き代行サービスとは?

相続手続きの代行サービスとは、遺産相続の手続きを専門家が代行してくれるサービスです。

相続手続きはご自身でもできますが、作業が複雑で時間や手間がかかることが少なくありません。代行サービスを利用すれば、書類作成に必要な情報を集めるところから申請書などの作成・提出まで、一連の作業を一括依頼できます。

各種の専門家へ個別に依頼しなくて済むので、相続人の負担を大きく軽減できるでしょう。

相続手続き代行サービスを利用するメリット

相続手続き代行サービスには、主に以下5つのメリットがあります。

  • 正確に手続きを進められる
  • ご自身でやる手間がかからない
  • 手続きが早く終わる
  • 相続トラブルを防止できる
  • 節税効果を期待できる

それぞれのメリットについて解説していきます。

正確に手続きを進められる

専門家なら必要書類を漏れなく揃えて不備のない書類を作成してくれるため、手続きを正確に進められます。

相続手続きは複雑で、専門知識が必要となる場面が多いです。初めて相続手続きをする方がご自身で対応すると、間違えが発生しやすくやり直しなどの手間がかかります。

専門家に代行してもらえば、初めての方もミスなく手続きができるでしょう。

ご自身でやる手間がかからない

代行サービスを利用すれば専門家がすべての手続きに対応してくれるので、時間や労力をかけなくて済みます。時間を割いて手続きをする必要がないため、日常生活に支障が出る心配もありません。

仕事で忙しい方や遠方に住んでいる方にとって、必要書類を揃えるために何度も役所の窓口に出向くのは大変です。他の相続人と遺産分割の交渉をするのは負担が大きいですが、専門家に依頼すればすべての負担から解放されます。

手続きが早く終わる

専門家は相続手続きに慣れているため、素早く作業を終えられます。

手続き 期間の目安
相続人の調査 1~2カ月
相続財産の調査 1~3カ月
家庭裁判所による遺言書の検認 1~2カ月
遺産分割協議書の作成 数カ月〜
相続登記 数週間〜2カ月程度
金融機関の払い戻し・名義変更 2~4週間程度
相続税の申告・納税 3~6カ月
家庭裁判所で行う相続放棄 1~2カ月程度

上記は一般的な目安です。相続財産や用意する書類が多い場合は、さらに時間を要する可能性があります。相続人の数が多いほど遺産分割協議に多くの時間がかかりやすく、数カ月以上経っても話し合いがまとまらないこともあります。

しかし、専門家なら上記の目安よりも早く終えることが可能です。専門家なら正しいやり方や解決方法をアドバイスできるので、協議も早い段階で合意できます。

すべての手続きを期限内に済ませられるため、ペナルティを受ける心配もありません。期限が迫っている手続きでも、専門家なら素早く対応してくれます。

相続トラブルを防止できる

専門家に依頼すれば、相続人間で揉めるリスクを予防できます。

専門家は手続きをスムーズに進めるだけでなく、代理人として交渉したり有益なアドバイスを提供したりしてくれます。そのため、紛争を最小限にとどめ、早期解決できる可能性が高まるのです。

相続トラブルが起きそうな場合、代行サービスを利用するメリットは大きいと言えるでしょう。

節税効果を期待できる

税理士に相続税申告を代行してもらえば、節税効果が期待できます。税理士のサポートがあれば控除制度を有効活用できるので、数百万円の節税も可能です。

相続税が発生した時に使える控除制度は、以下の7つです。

基礎控除 全員が対象
基礎控除以内であれば相続税の申告は不要
基礎控除=3000万円+(600万円×法定相続人の人数)
配偶者控除 被相続人の配偶者が対象
1億6,000万円まで、または法定相続分の相続財産が非課税
贈与税額控除 相続発生から3年以内に贈与財産を受け取った方が対象
すでに納めた贈与税を相続税から控除
未成年者控除 満18歳未満の未成年が対象
成人に達するまでの年数に10万円を乗じた額を相続税から控除
障害者控除 障害者が対象
障害の程度に応じて相続税から控除
相次相続控除 10年以内に相続が2回発生した方が対象
前回の相続で払った相続税のうち、一定金額を今回の相続から減額
外国税額控除 外国所得税を納付した方が対象
外国で納付した外国税額を相続税額から控除

控除制度以外にも、生前贈与や生命保険の非課税枠を利用した節税方法などを提案してくれます。

税理士が手続きを代行すれば、正確に申告していることが認められるため、税務署による税務調査のリスクも回避できるでしょう。

相続手続き代行サービスのおすすめの依頼先

おすすめの依頼先は、以下の5つです。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 行政書士
  • 銀行

各依頼先の特徴を解説していきます。

弁護士

弁護士は法律のエキスパートなので、ほとんどの相続手続きに対応できます。主に依頼できる業務は以下のとおりです。

弁護士に依頼できる手続き
  • 遺言書の検認
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議書の作成
  • 遺産分割の交渉や調停
  • 相続人間の紛争解決
  • 有価証券の名義変更
  • 相続放棄の申し立て

続人の代理人として交渉ができるのは弁護士だけです。相続人間でトラブルが起きたときや、裁判所での手続きが必要なケースは弁護士に相談しましょう。

相続専門の弁護士は税理士や行政書士と連携していることが多いので、すべての依頼に対応してくれます。相続手続き全般を任せたいなら、弁護士に依頼しましょう。

司法書士

司法書士は不動産登記や裁判所に提出する書類作成のエキスパートです。遺産相続手続きにおいて司法書士は、下記の業務を代行できます。

司法書士に依頼できる手続き
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議書の作成(遺産に不動産がある場合のみ)
  • 預貯金の解約払い戻し
  • 有価証券の名義変更
  • 不動産の名義変更
  • 相続放棄の書類作成

相続財産に不動産があれば、登記手続きを得意としている司法書士が適任です。弁護士にも不動産登記を扱う方はいますが、ごく少数です。遺産に不動産が含まれているなら、司法書士に相談しましょう。

司法書士は弁護士のような代理交渉はできませんが、弁護士と比べて費用が安い傾向にあります。他の相続人と揉めていないなら、司法書士への依頼をおすすめします。

税理士

​​税金の専門家である税理士は、相続税申告を中心とした以下の手続きが可能です。

税理士に依頼できる手続き
  • 相続税の申告
  • 相続税関連の相談全般
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議書の作成(相続税が発生する場合のみ)

専門家の中で税務関連の業務を扱えるのは税理士のみです。相続税の計算が複雑な場合や相続財産が高額で節税したいときは、税理士に依頼しましょう。

行政書士

行政書士は公的書類を作成する専門家です。相続手続きにおいては、下記の手続きを代行できます。

行政書士に依頼できる手続き
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 金融機関での相続手続き
  • 各種事実証明書類の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 預貯金の解約払い戻し
  • 有価証券の名義変更
  • 自動車の名義変更

専門家の中で自動車の名義変更を得意としているのは、行政書士です。他の専門家と比べて費用が安いので、必要な手続きが書類作成や自動車の名義変更だけの場合は、行政書士への依頼をおすすめします。

銀行

銀行でも相続手続き代行をするところが増えています。ただし、銀行員が直接手続きをするのではなく、弁護士や税理士などの専門家を仲介するのが仕事です。銀行は各地にあり、手続きの窓口を一本化できるメリットがあります。

専門家に支払う費用とは別に銀行に支払う仲介手数料が発生するので、費用は高額になるケースが多いです。

【依頼先別】相続手続き代行サービスの費用相場

相続手続きの費用相場は、依頼先によって大きく異なります。

  • 弁護士:10万円〜
  • 司法書士:数万円〜
  • 税理士:遺産総額の0.5〜1.0%
  • 行政書士:数万円〜
  • 銀行:100万円〜

予算オーバーになることがないように、費用相場をしっかり確認しておきましょう。

弁護士は10万円〜

弁護士の費用相場は10万円~数十万円です。費用相場の幅が広いのは、弁護士が相続手続き全般をまとめて引き受けられる専門家だからです。

遺産分割調停を依頼する場合、着手金の相場は約20~60万円、報酬金は依頼者が得た経済的利益の4~16%程度が相場となります。

着手金とは案件の着手時にかかる費用、報酬金は案件が解決したときに支払う費用を指します。

司法書士は数万円〜

司法書士に不動産の名義変更を依頼するときの費用は、1件5~6万円前後が相場です。相続手続きを丸ごと依頼する場合は、20~50万円程度が一般的です。

司法書士には不動産登記を依頼するケースが多く、ピンポイントの依頼なら数万円で済みます。

税理士は遺産総額の0.5〜1.0%

税理士の費用相場は、遺産総額の0.5〜1.0%です。遺産総額が増えるほど財産調査や計算が複雑になるため、多くの事務所が遺産総額に応じた報酬形態をとっています。

遺産額に応じて税理士費用も変動しますが、20~50万円程度が一般的です。

行政書士は数万円〜

行政書士の費用相場は、他士業に比べて低めです。

依頼内容 費用
相続人調査、相続財産調査 5〜6万円
遺産分割協議書の作成 3~5万円
自動車の名義変更 2~5万円
預貯金や株式の名義変更 3〜5万円

他と比較して費用が安いのは、書類作成や名義変更といったピンポイントでの依頼が多いからです。 

「遺産分割協議書のみ作成してほしい」「車の名義変更だけ依頼したい」という場合は、行政書士に依頼するとよいでしょう。

銀行は100万円〜

銀行に依頼するときの費用相場は100万円〜となります。

他の依頼先と比較して費用が高いのは、他の専門家を紹介する仲介手数料が余分に含まれるからです。

費用を安く抑えたいなら、各専門家に直接依頼しましょう。

相続手続き代行サービスを選ぶポイント

代行サービスを選ぶときのポイントは、以下4つです。

  • 実績が豊富である
  • 料金が妥当である
  • 評判がよい
  • 相談時の対応がよい

それぞれのポイントについて解説します。

実績が豊富である

普段から相続手続きに取り組んでいて、実績が豊富な専門家を選ぶことが大事です。

専門家は得意分野がそれぞれ異なるため、誰を選んでもよいわけではありません。専門外の方が、スムーズに手続きを進めることは難しいでしょう。実績豊富な代行先なら、手続きをスピーディーかつ正確に進めてくれます。

実績の多さは、多くの顧客に支持されていることの証しでもあります。まずは各事務所のホームページにアクセスして、相続手続きに関する実績がどれくらいあるかをチェックしてみましょう。

料金が妥当である

料金が相場よりかけ離れていないかどうかも確認しましょう。

各事務所のホームページには、報酬の目安が掲載されています。2〜3つの事務所を比較すれば、料金の妥当性を判断できるでしょう。

ただし、パッケージプランの場合は別途費用がかかることがあるので注意が必要です。無料の初回相談を利用して、正確な見積書を作成してもらいましょう。

見積書で不明点がある場合に、詳細を説明したがらない専門家は避けたほうが無難です。質問して納得がいく回答をしてくれる専門家なら、安心して依頼できるでしょう。

評判がよい

顧客からの評判がよいかどうかも大事なポイントです。評判のよい専門家なら、実際に依頼したときに不満な思いをする可能性は少ないでしょう。

ホームページにお客様の声を掲載している事務所も多いので、事前に確認しておくことをおすすめします。よい評判だけでなく、ご自身にとって厳しい意見も掲載している事務所なら、信頼性は高いと言えます。

相談時の対応がよい

専門家とは何度か顔を合わせることになるので、相談時の対応がよいところを選びましょう。最初の面談時や問い合わせた際に、印象が悪い事務所は避けたほうがよいでしょう。

親身になってアドバイスをしてくれるかコミュニケーションが取りやすいかをチェックして、誠実で信頼できそうな専門家を選ぶことが大切です。

聞きたいことを気軽に質問できる専門家なら、相続手続きを円滑に進められるでしょう。

相続手続き代行サービスを選ぶときの注意点

代行サービスを選ぶときは、以下の2点に注意が必要です。

  • 依頼先ごとにサービス範囲が異なる
  • 安いだけで選ばない

事前に注意点を把握して、依頼先を慎重に選びましょう。

依頼先ごとにサービス範囲が異なる

専門家によって対応できる手続きは異なります。サービス範囲外の手続きを依頼しても、対応はできません。依頼する前に、どのようなサービスを提供しているのかを確認しておきましょう。

相続手続きの中には専門性が高く、資格を必要とする業務も多数あります。ご自身の頼みたい手続きを専門としているか、担当者が必要な資格を保有しているかなどもチェックしたうえで、依頼先を選びましょう。

個別の依頼が面倒な場合には、他の専門家と提携している事務所への依頼をおすすめします。

安いだけで選ばない

費用が安ければ誰を選んでもよいというものではありません。費用が安いと、以下のようなデメリットが発生する可能性があります。

費用が安いサービスのデメリット
  • 依頼できる業務が少ない
  • 対応が遅い
  • 手続きに不備がある

費用が安くてもサービスの質が悪ければ、依頼する意味はありません。

過去の実績や口コミ、業務範囲などを比較して、安心して依頼できそうな専門家をいくつかピックアップしてみましょう。そのうえで費用を比較すれば、専門家選びに失敗するリスクを減らせます。

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