相続登記の必要書類とは?取得方法から書類のポイントまで徹底解説!

不動産の相続手続きを自分で行いたいけれど、必要な書類が分からずお困りではないですか?

亡くなった方が所有していた不動産の名義を相続人の名義へ変更する手続きを「相続登記」といいます。相続登記には法的な期限やルールがありません。しかし、令和6年4月1日に、相続登記の義務化が決定しました。

この記事では、相続登記の必要書類や取得方法を解説します。書類について知っておきたいポイントもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続登記は相続の方法により必要書類が異なる
  • 提出した証明書類は原本還付により返却してもらえる
  • 必要書類が取得できないときは代替方法がある

相続登記で必ず用意する書類

相続登記の際には必ず用意する書類があります。

相続登記で必ず用意する書類
  • 戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 相続登記申請書

基本的な書類は市町村役場などで取得できます。

相続の方法により必要書類が異なる

不動産を相続するときは、4種類の相続パターンがあります。

  • 遺産分割協議による相続
  • 法定相続分での相続
  • 遺言書による相続
  • 遺言書による遺贈

それぞれで相続登記に必要な書類が異なるため、パターンごとに確認しておきましょう。

遺産分割協議による相続の必要書類

遺産分割協議とは、亡くなった方が遺した遺産をどうやって分配するかを話し合うことをいいます。相続人が1人の場合は必要ありません。

遺産分割協議による相続の場合、相続登記には以下の書類が必要です。

遺産分割協議による相続の必要書類
  • 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まですべて)
  • 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 相続登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

協議には被相続人の遺産を相続できる権利のある、法定相続人全員が参加しなければなりません。話し合いの結果をまとめた遺産分割協議書と、相続人すべてが協議内容に合意したことを証明する、相続人全員の印鑑証明書も必要になります。

法定相続分での相続の必要書類

法定相続分に沿って相続する際、相続登記に必要な書類は以下のとおりです。

法定相続分での相続の必要書類
  • 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まですべて)
  • 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 相続登記申請書

法定相続分で相続した場合、登記手続きはシンプルです。ただし、民法で定められた法定相続人の相続割合にしたがって相続した場合にのみ登記が可能です。法定相続人が1人しかいない場合は、上記の書類をそろえて手続きすれば問題ないでしょう。

遺言書による相続の必要書類

最近では「終活」の意識が高まり、遺言書が準備されるケースも増えています。

遺言書が見つかり、遺言書に従って法定相続人が相続する場合、相続登記には以下の書類が必要です。

遺言書による相続の必要書類
  • 戸籍謄本(死亡した記載があるもの)
  • 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 相続登記申請書
  • 遺言書

遺言書が見つかった場合は、相続内容を示すために遺言書を法務局に提出しなければなりません。ただし、遺言書は法的に有効なものに限られます。

また、被相続人の戸籍謄本は、相続する方が遺言書で指定されているため、出生から死亡まですべてをさかのぼる必要がありません。亡くなったことがわかる戸籍謄本だけが必要です。

遺言書による遺贈の必要書類

「遺贈」とは、遺言書により法定相続人ではなく、特定の個人や団体に遺産を遺すことをいいます。

遺言書が見つかり遺贈による相続が行われる場合、相続登記に必要な書類は以下のとおりです。

遺言書による遺贈の必要書類
  • 戸籍謄本(死亡した記載があるもの)
  • 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産評価証明書
  • 相続登記申請書
  • 遺言書
  • 遺言執行者の印鑑証明書(※1)
  • 遺言執行者選任審判謄本(※2)
  • 相続人の印鑑証明書(※3)
※1 遺言執行者が選任されている場合 ※2 遺言執行者を家庭裁判所の審判で選任した場合 ※3 遺言執行者が選任されていない場合

遺言執行者とは、遺言に遺された内容を実現するために、必要な事務手続きなどを遂行する方をいいます。


遺言書により、遺言執行者が指定されていた場合は「遺言執行者の印鑑証明書」、遺言執行者を家庭裁判所で選任する場合は「遺言執行者選任審判謄本」を提出します。これにより、遺言執行者が選任されていることを証明できるのです。

遺言執行者がいない場合は、相続人全員と受遺者との共同申請となるため、相続人全員の印鑑証明書が必要です。

相続登記に必要な書類の詳細と取得方法

ここからは、相続登記に必要な書類の詳細と取得方法を解説します。

登記事項証明書

登記事項証明書とは「登記簿謄本」とも呼ばれる、被相続人所有の不動産の情報が記載されているものです。相続登記の添付書類ではありませんが、不動産の地番や家屋番号が記載されているため、正確な情報を記載するためにも必要な書類になります。

登記事項証明書の取得方法は「法務局の窓口」「郵送」「オンライン」の3つの方法があります。

 取得方法費用
窓口登記簿謄本交付申請書に必要事項を記入して提出600円の収入印紙
郵送登記簿謄本交付申請書に必要事項を記入し、返信用封筒を同封して法務局に郵送600円の収入印紙
オンライン法務省のホームページにある「登記・供託オンライン申請システム」で手続き窓口での受け取り:480円
郵送での受け取り:500円

窓口での請求は午前8時30分から午後5時15分までです。オンラインなら平日の午前8時30分から午後9時まで請求でき、待ち時間もなく便利です。

被相続人の戸籍謄本

戸籍謄本は、相続が発生したことや相続人が誰であるかを証明するために必要な書類です。

戸籍謄本で相続人が誰であるかを明確にするためには、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本を用意しなければなりません。

戸籍謄本は、本籍地の移転・結婚・離婚などで戸籍が移動するたびに作り変えられます。戸籍の改製といい、法律で様式が変更されたときにも新しく作られるため、一生のうちに複数枚作成されます。

被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本が必要なのは、遺産分割協議による相続の場合と法定相続分での相続の場合です。遺言書による相続の場合は、遺言書に相続する方が指定されているため、戸籍をたどって相続人を明確にする必要がありません。

被相続人の戸籍謄本の取得方法は以下のとおりです。

取得場所 被相続人の本籍地の市区町村役場(郵送での手配も可能)
取得方法 戸籍証明書等交付申請
本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
印鑑(認め印可)
被相続人との関係がわかる書類(自分の戸籍謄本など)
費用 1通450円
除籍謄本と改製原戸籍謄本は1通750円

除籍謄本とは中に入っている方が全員いなくなった戸籍の写しのことです。改製原戸籍謄本は法改正によって様式が改められる前につくられた戸籍をいいます。

被相続人の住民票除票もしくは戸籍の附票

住民票除票とは、住民登録から除かれた住民票のことです。不動産の登記簿に記載されている被相続人と、戸籍上の被相続人が同一人物であることを確認するために必要です。

戸籍附票にも住所が記載されているため、戸籍の附票の提出でも可能とされています。

被相続人の住民票除票の取得方法は以下のとおりです。

取得場所 被相続人が最後に住所をおいていた市区町村役場(郵送での手配も可能)
取得方法 住民票の写し等交付申請書
本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
印鑑(認め印可)
被相続人との関係がわかる書類(戸籍謄本など)
費用 1通300円

相続人全員の戸籍謄本

相続発生時に相続人が生存していることを明らかにするために必要です。相続人の戸籍謄本は、現在の戸籍のみ準備します。

相続人の戸籍謄本の取得方法は以下のとおりです。

取得場所 被相続人の本籍地の市区町村役場(郵送での手配も可能)
取得方法 戸籍証明書等交付申請
本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
印鑑(認め印可)
費用 1通450円

不動産を相続する方の住民票

不動産を相続する方の現住所を証明するために、住民票を取得します。不動産を取得するすべての相続人の住民票が必要です。

不動産を相続する方の住民票の取得方法は以下のとおりです。

取得場所 住所地の市区町村役場(郵送での手配も可能・コンビニで発行できる自治体もある)
取得方法 住民票の写し等交付申請書
本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
費用 1通300円

住民票は、本籍地記載のものを取得しましょう。住民票ではなく戸籍の附票でも代用可能です。

相続関係説明図

相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を表した図をいいます。相続関係説明図を提出すれば、戸籍謄本などの原本を返却してもらう場合に、戸籍のコピーを添付する必要がなくなります

決まった書式がないため、インターネットで調べてフォーマットをダウンロードして作成するとよいでしょう。法務局のホームページにも「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」が掲載されています。

作成する際には被相続人と相続人の関係を整理しなければならないため、被相続人の出生から死亡までが把握できるすべての戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要になります。

遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書とは遺産分割の話し合いをまとめた書類をいい、遺産分割協議による相続の際に必要な書類です。

遺産分割協議には、相続人全員が協議の内容に合意していることを証明するために、相続人すべての署名・押印が必要です。また、印鑑証明書も添付しなければなりません。

決まった書式はないので、インターネットで雛形を検索して作成するとスムーズです。最低限、被相続人の情報や相続人全員の名前、誰がどの遺産を引き継ぐのかをすべて記載する必要があります。

重要な書類なので、割印をして相続人全員がそれぞれ保管しておくとよいでしょう。

遺言書

遺言書に沿って相続を行う場合は、遺言書を提出する必要があります。

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。自宅などで保管していた自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認手続きをしなければ開封できません。検認の手続きをして「検認済証明書」がついた遺言書だけが認められます。

一方、公正証書遺言は法務局で保管されているため、家庭裁判所の検認は必要ありません。自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言も同様です。

遺言書には厳しいルールがあり、形式不備などがあれば無効になってしまいます。法的に有効でなくてはならないため注意が必要です。なお、遺言書の検認には1カ月程度かかるため早めに申請しておきましょう。

固定資産評価証明書

固定資産評価証明書は、登録免許税を算出するために必要な書類です。対象となる不動産の固定資産税評価額を使い、登録免許税を求めます。

固定資産評価証明書の取得方法は以下のとおりです。

取得場所 被相続人の本籍地の市区町村役場(郵送での手配も可能)
取得方法 固定資産評価証明書の交付申請書
本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
被相続人が死亡した記載がある書類(住民票の除票など)
被相続人との関係がわかる書類(戸籍謄本など)
費用 1通300〜400円(自治体によって異なる)

固定資産税評価額は「固定資産評価証明書」の「価額」欄で確認できます。

相続登記申請書

相続登記申請書は、相続登記を申請する際に記入する用紙です。

決まった書式はなく、司法書士に依頼する場合は作成してもらえます。自分で作成する際は、法務局のホームページからフォーマットをダウンロードできます。

代理人に依頼する場合は委任状

相続登記の手続きを代理人にお願いする場合は、委任状が必要です。

委任状に決まった書式はありませんが、以下の情報を記載しておきましょう。

委任状に必要な情報
  • 代理人の住所・氏名
  • 委任者の住所・氏名(実印)
  • 委任する内容
  • 不動産の情報
  • 委任状を作成した年月日

司法書士に依頼する場合は、委任状を作成してもらえるので署名・押印してください。相続する方が相続登記を行えないため、他の家族などに代理で手続きしてもらう場合にも委任状は必要です。

相続登記の必要書類の綴じ方

相続登記に必要な書類が準備できたら、申請書類を並べて綴じていきます。厳密な決まりはありませんが、一般的な並べ方は以下の順序です。

  1. 相続登記申請書・収入印紙貼付台紙
  2. 委任状
  3. 相続関係説明図
  4. 原本の返却を希望する書類のコピー
  5. 原本の返却を希望する書類の原本

相続登記申請書と収入印紙貼付台は1セットなので、ホチキスでとめて契印を押します。委任状と相続関係説明図は、必要な場合にのみ準備してください。

次に、戸籍謄本・住民票・遺産分割協議書・遺言書などの、原本を返却してほしい書類のコピー、原本の順に並べます。相続関係説明図があれば戸籍謄本のコピーは不要です。

相続登記書類の知っておきたいポイント

最後に相続登記書類について、知っておきたいポイントを確認しておきましょう。

相続登記の必要書類には有効期限がない

相続登記に必要な書類には有効期限が定められていません。

ただし、相続人の戸籍謄本は相続が発生した時点で相続人が生存していることを証明しなければならないため、被相続人が亡くなったあとに発行されているものが必要です。

また、固定資産評価証明書で確認する固定資産税評価額は毎年変わるため、申請する年度に発行された最新の証明書を準備する必要があります。

相続登記の申請に権利証はいらない

相続登記の申請に登記済権利証は必要ありません。登記済権利証とはいわゆる不動産の権利証のことです。

平成17年の法改正で登記済権利証の発行は廃止され、登記識別情報が発行されるようになりました。不動産登記のオンライン化により、パスワードが発行され本人確認が行われるシステムに変更されています。

ただし、住民票や戸籍附票などが準備できない場合は、代わりの書類として提出する場合があります。

提出した証明書類は返却してもらえる

前述のとおり、相続登記で提出した証明書類の原本は返却してもらえます。この、原本を返却してもらうことを「原本還付」といいます。

原本還付の流れは以下のとおりです。

  1. 返却してほしい証明書類をコピーする
  2. コピーの余白部分に「これは原本の写しである。」と記入する
  3. 署名・押印する
  4. 複数枚の場合は契印し、左側2カ所をホチキスで止める
  5. 原本と一緒にコピーを提出する

登記申請書・委任状・相続関係説明図は原本還付ができません。また、原本還付は「相続関係説明図」を提出することにより、書類のコピーを添付する必要がなくなります。

原本還付をすれば、同じ書類を何度も取得する手間が省け、発行手数料の節約にもなります。相続登記には同じ証明書類の提出を求められるケースがよくあるため、原本還付を受けることがおすすめです。

必要書類が取得できないときの対処法

被相続人の戸籍謄本や住民票などは、証明書の保存期間が過ぎているため取得できないケースがあります。必要な書類が取得できない場合は、管轄の市区町村役場で、市区町村長の証明書を交付してもらえば手続き可能です。

住民票の除票や戸籍附票などを取得できず住所がつながらない場合は、登記識別情報(登記済権利証)や相続人全員の上申書を提示するなどの手段があります。

相続にはさまざまな必要書類があるため、準備が難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。

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