一家の家計を中心となって支えていた家族が亡くなってしまったら、経済的に不安を抱える方も多いのではないでしょうか?
そのようなときの保障として遺族年金制度があります。遺族年金は数種類あり、加入している年金制度や期間によって受け取れる金額が異なるため注意が必要です。
この記事では65歳以上の方が受け取れる、遺族年金の平均金額(月額)をご紹介します。遺族基礎年金と遺族厚生年金、それぞれの制度の違いについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
- 65歳以上の遺族年金受給額の平均は月額11万円程度
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金とで受給要件や金額に大きな違いがある
- 老齢年金との併給の扱いも受給している年金によって異なる
65歳以上の遺族年金の平均受給額はどのくらい?
遺族年金とは、残された遺族の生活を支えるために支給される年金です。65歳以上で遺族年金を受給されている方について見てみると、その多くは、現役時代に専業主婦であった方となります。毎月の受給額を平均すると11万円程度となります。
ただし、遺族年金の受給額は加入している年金制度や加入期間、家族状況などによって大きく異なるため、一概には言えません。
細かな計算式も必要になるため、年金事務所に相談して確認することをおすすめします。
家計を中心になって支えていた家族が突然亡くなったら、大きな悲しみや喪失感を覚える方が多いでしょう。
しかし、たとえそのような感情を抱えた中だったとしても、故人の死後の手続きは迅速に行わなければいけません。
ここから遺族年金の制度について解説するため、65歳以上の方が遺族年金を受給する際の参考にしてください。
遺族年金の種類
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなったときに、遺族が受け取れる年金のことを総称して言います。
亡くなった方が自営業者等で加入していた年金が国民年金だった場合、遺族基礎年金の対象です。
また、会社員等で加入していた年金が厚生年金だった場合には、遺族厚生年金の対象となります。
それぞれ加入していた年金制度によって、支給に際しての要件や金額も異なるため注意が必要です。
以下にそれぞれの年金について解説していきます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入している方が亡くなった際に遺族に支払われる年金です。国民年金とは20歳以上60歳未満の全国民が加入する、年金制度です。厚生年金は会社員等が加入しています。
子どもがいる家庭を支えることが前提となっている年金のため、子どもがいない家庭は対象外となります。
子のいる配偶者か、その子ども自身に受給資格があり、子どもが18歳になる年度の末日まで受給対象となるのです。また、子どもに障がいがある場合には、その期間は20歳になる年度の末日までに延長されます。
金額は一律で年額79万5,000円(68歳以上の方は79万2,600円)となっており、子どもの数に応じて加算額がつけられます。
加算金額は子どもが2人までは1人につき22万8,700円、3人目以降は7万6,200円です。
また以下の受給要件にも注意が必要です。
- 年金加入期間の2/3以上保険料納付済であること(免除期間も含む)
- 老齢年金の受給資格がある、または受給中であること
子どもの人数に応じた遺族基礎年金の金額は以下の表のとおりです。
子の人数 | 基本年金額 | 子の加算額 | 遺族基礎年金額 |
---|---|---|---|
1人 | 79万5,000円 | 22万8,700円 | 1,02万3,700円 |
2人 | 79万5,000円 | 45万7,400円 | 1,25万2,400円 |
3人 | 79万5,000円 | 53万3,600円 | 1,32万8,600円 |
4人 | 79万5,000円 | 60万9,800円 | 1,40万4,800円 |
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している方が亡くなった際にその遺族に支払われる年金です。加入者が将来的に老齢年金として受け取るはずだった年金額に基づいて支給金額が算出されます。
遺族基礎年金と異なり、子どもがいない家庭も支給対象になるのが大きな特徴です。
支給額は亡くなった方の厚生年金加入期間と平均報酬額によって決まり、老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の金額となっています。
報酬比例部分とは、厚生年金の年金額を決定するための計算の基礎となるものです。年金の加入期間、また過去の報酬額に基づいて算出します。
報酬比例部分の基本計算式は以下のとおりです。
- 平均標準報酬月額×7.125/1000×加入期間の月数
平均標準報酬月額を平成15年3月以前(A)と平成15年4月以降(B)に分けて計算し、それぞれを足したものが報酬比例部分となります。
加入期間を300月として計算した支給金額の目安は、以下のとおりです。
平均標準報酬額 | 遺族厚生年金(年額) |
---|---|
20万円 | 24万6,645円 |
30万円 | 36万9,968円 |
40万円 | 49万3,220円 |
50万円 | 61万6,613円 |
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)とは遺族厚生年金に上乗せする形で支給される年金です。遺族厚生年金を受給する妻が40歳以上65歳未満で、遺族基礎年金の対象となる子どもがいない場合に限り支給されます。加算金額は年額で59万6,300円です。
注意が必要なのは、「配偶者」がすべて対象になるわけではなく「妻」のみが対象になることです。つまり妻が亡くなった夫には支給されないことになります。
妻が専業主婦であった場合が考慮された加算で、夫が亡くなった直後に就業することの難しさを考え、急激な収入の減少を抑える目的があるからです。
以下の2つが受給のための要件となります。
- 40歳以上65歳未満で同一生計の子どもがいない場合
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金を併給していた子のいる妻が、遺族基礎年金の受給要件を失った場合(子が18歳、もしくは20歳を迎えた)
ここで注意が必要なのは、「同一生計の子ども」の範囲です。例えば一緒に住んでいなかったとしても、仕送りをしている子どもも同一生計と判断されます。
経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算を受けていた遺族厚生年金の受給者が65歳になると、中高齢寡婦加算の受給資格がなくなります。その代わりに経過的寡婦加算の対象となります。
これは中高齢寡婦加算がなくなったことにより、急激に年金額が減少するのを防ぐための加算なのです。
経過的寡婦加算の金額は、老齢年金の額と合わせて中高年寡婦加算を受給していたときと同等の額になるように設定されています。
老齢年金とは
一般的に「年金」という言葉でイメージされるのは、この老齢年金でしょう。老齢年金は、公的年金制度の加入者に対して、老後の保障として支給される年金のことです。
原則65歳以上になると受け取れるようになり、支給開始以降、生涯を通して受け取れます。
老齢年金の年金額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金によって異なるため注意が必要です。
老齢基礎年金では、国民年金の保険料の納付状況によって異なり、20歳から60歳までの保険料を満額支払うと年額79万5,000円が支払われます。(2023年度)
老齢厚生年金では、報酬比例部分と定額部分が設定されており、それぞれの合計金額によって年金額が決定されます。そのため、基本的に収入額が高かった方、加入期間が長かった方が年金額も高くなるのです。
遺族年金と老齢年金の併給はできる?
それでは遺族年金の受給者が65歳になったとき、新たに受給資格が生まれる老齢年金との併給はできるのでしょうか?
結論から申し上げると、受給中の年金が遺族基礎年金か、遺族厚生年金かによって異なります。
具体的な年金額や、併給可能かどうかなどは、年金の加入状況やそれまでの報酬状況によって算出されるため、正確な情報を得るためには個別に年金事務所へ相談して把握することが大切です。
以下にそれぞれの状況に応じて解説しますので、目安を知り、将来的な生活設計について考えていくのがよいでしょう。
遺族基礎年金の場合
遺族基礎年金と老齢年金の併給はできません。年金受給の考え方として1人1年金とされているため、複数の年金を受給することは基本的にありません。
遺族基礎年金を受給している方が65歳を迎えたとき、老齢年金との金額を比較してより多い金額が支給されるほうを選択することになります。ただし、自分自身で選択をしなくても大丈夫です。
複数の年金の受給資格がある方は、「年金受給選択申出書」を提出することで、より受給金額の多いほうの年金が支給されます。
遺族厚生年金の場合
遺族厚生年金を受給している場合は、老齢年金との併給ができます。
遺族厚生年金を受給している配偶者本人が65歳となり、老齢年金の受給資格が発生した場合、併給できますが、注意が必要なのは全額支給されるわけではないところです。
老齢年金は全額支給され、遺族厚生年金は老齢年金の支給額相当が支給停止となります。
- 遺族厚生年金−老齢厚生年金=遺族厚生年金支給金額
寡婦年金の場合
寡婦(かふ)年金とは、国民年金の保険料納付期間が免除期間も含めて10年以上ある加入者が亡くなった場合に、その配偶者である妻が60歳から65歳までの期間支給される年金のことを言います。
寡婦年金は、子どものいない夫婦が対象となっていることが特徴です。また、この年金はもともと65歳までが支給期間となっていることから、65歳から受給できる老齢年金との併給はできません。
年金額は夫の年金加入期間から算出した老齢基礎年金額の3/4となり、婚姻期間が10年以上あることも受給要件となっています。
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