「相続人調査って自分でできるの?」「調査を専門家に依頼したら費用はどれくらいかかるの?」「そもそも相続のことを誰に相談したらいいの?」
相続が必要になった時、相続人調査をどのように進めて行ったらいいのか分からず、困ってしまう方も多いのではないでしょうか?専門家に依頼もできますが、費用が気になるところです。
そこで、この記事では相続人調査の費用や流れ、専門家に依頼するメリットについて解説します。
相続の手続きを進めるためには相続人調査が欠かせません。相続人調査に不安がある方はぜひ参考にしてください。
- 相続の手続きには相続人調査が必須
- 相続人調査のは専門家に依頼する時は報酬が必要
- 相続人調査を専門家に依頼するメリットは大きい
相続人調査とは
相続人調査とは、亡くなった方の相続人が誰であるかを調査することを言います。
相続の手続きを進めていく上で「相続人は誰なのか」を、第三者に客観的に証明できなければなりません。
相続人調査では、被相続人の戸籍謄本等を出生から死亡まですべて取り寄せた上で、法定相続人を確定します。
相続人調査の費用相場
相続の手続き範囲によって異なりますが、相続人調査のみを依頼した場合は3万円〜10万円程度が費用相場だと言われています。
相続人調査を専門家に依頼する場合は、戸籍謄本を発行するための手数料に加え、専門家に報酬を支払わなければなりません。
専門家への報酬の費用設定は士業事務所によって異なります。相続関係が複雑で必要な戸籍謄本の数が多い場合などでは、報酬が変わってくる場合もあります。
また、相続人調査以外にも必要な手続きをお願いするケースが発生するかもしれません。その場合は別途費用が追加になります。
- 戸籍謄本を発行するための手数料
- 専門家に支払う報酬
- 相続人調査以外にも手続きを依頼した場合は別途追加費用が必要
相続人調査を自分で行う場合は費用が安く済みますが、役所で戸籍謄本等を発行してもらう費用が発生します。戸籍謄本の手数料は1通450円です。ただし、複数枚必要な場合は必要な枚数に応じて費用がかかります。
戸籍謄本は役所に行けば発行してもらえる一方で、遠方などの場合は郵送してもらうことも可能です。郵送で取り寄せる際には、手数料を定額小為替という郵券で支払います。定額小為替は郵便局の窓口でのみ購入可能です。
また、定額小為替証券1枚につき200円の手数料がかかります。定額小為替証券は全部で12種類あり、例えば1通の戸籍謄本の手数料は450円なので450円の定額小為替証券を1枚購入し、その手数料200円を支払います。合計650円になります。
その他に、役所に行って発行してもらう場合は交通費がかかります。また、郵送してもらう場合は往復の郵送料がかかります。
- 役所に行き戸籍謄本等を発行:1通あたり450円+交通費
- 郵送時:戸籍謄本代450円は定額小為替で支払い、定額小為替1枚につき手数料200円+往復の郵送料
相続人調査の専門家の選び方
相続人調査を依頼できる専門家には、弁護士・司法書士・行政書士・税理士がいます。
相続人調査はいずれの専門家でも実施してもらえますが、相続人調査以外で他の手続きが必要になった場合、頼める専門家と頼めない専門家がいます。必要に応じて専門家を選ぶようにしましょう。
専門外の分野を他の専門家に依頼すれば、さらに別途費用がかかってしまうのはもちろん、各専門家に依頼する手間もかかります。
例えば、相続税や税務調査等の相談が必要な場合は税理士が専門です。相続税申告は税理士しか行えないため、相続税の申告や納税が必要なケースは税理士に相談するとスムーズに進められるでしょう。
また、相続に関してトラブルになっている場合は弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士の専門は、トラブルに関する調停や訴訟に関する分野になります。代理人として行動できるので、トラブルの時には当事者の代わりに交渉してもらうことも可能です。
ただし、依頼する範囲により費用が割高になってしまいます。専門家に依頼すべき手続きをしっかり見極めておくことが大切です。
相続人調査が必要な理由
相続人調査が必要な理由は以下の通りです。
- 遺産分割協議を成立させるため
- 相続手続きで戸籍謄本一式が必要なため
- 想定外の相続人の出現を回避するため
詳しく見ていきましょう。
遺産分割協議を成立させるため
相続人が遺産の分け方を話し合うことを遺産分割協議といいます。遺産分割協議は、法定相続人が全員で話し合って合意しなければ成立しません。一部の相続人だけで協議した内容では無効になってしまいます。
相続人調査は、遺産分割協議書を成立させるため、相続人全員を明確にする必要があります。
相続手続きで戸籍謄本一式が必要なため
相続人全員を把握できている場合でも、相続の手続きには戸籍謄本一式の提出が必要です。銀行口座や不動産の名義変更をする際や、保険金の請求申請にも相続人全員の戸籍謄本の提出が求められます。
相続人を確定していなければ、相続に関する手続きが進められないため、相続人調査は必要となります。
想定外の相続人の出現を回避するため
家族関係がはっきりしていれば、亡くなった方の相続人が誰であるかは、調べなくても把握できていると考えるのが通常です。しかし、相続人は家族だけなので相続人調査は不要だと思っていても、把握していない相続者が存在するケースがあるため注意が必要です。
離婚歴がある方の場合で、前妻との間に子どもがいる場合もその子どもは相続人に当てはまります。また隠し子がいる、養子がいる場合も同様です。
想定外の相続人が現れるケースを回避するためにも相続人調査は重要です。
相続人調査の流れ
相続人調査は以下の手順で行います。
- 法定相続人の範囲と順位を確認する
- 必要な書類を取得する
- 戸籍を読み解く
- 相続関係説明図を作成する
流れを確認し、相続人調査の概要を把握しましょう。
法定相続人の範囲と順位を確認する
法定相続人が誰であるか理解できていなければ、相続人調査で必要な戸籍が準備できません。そのため、法定相続人の範囲と順位を確認しておくことが大切です。
まず、相続人に必ず該当するのは配偶者です。配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人になります。ただし、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られるため、内縁関係の場合は相続人になることはできません。
配偶者以外の相続人の順位は以下の通りです。
相続人調査を円滑に進めるためにも、相続人の順位をあらかじめ頭に入れておきましょう。
必要な書類を取得する
相続人を確定するためには、被相続人の出生時から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本が必要です。
全ての戸籍謄本を取得するには、被相続人が死亡した時の本籍地で取得できる戸籍を取得し、どんどん遡って出生時の戸籍まで繰り返していくのが、漏れなく取得できる方法です。
- 被相続人が死亡した時の本籍地で取得できる戸籍を取得
- 1で取得した戸籍の「1つ前の本籍地」の戸籍を取得
- 2で取得した戸籍の「1つ前の本籍地」の戸籍を取得
2と3を繰り返し、被相続人の出生時の戸籍まで、一つずつ戸籍を遡っていきます。
戸籍謄本類の取得は、本籍地のある市町村役場での手続きが必要になります。窓口での手続きが難しい場合は、郵送による申請も可能です。戸籍謄本類を取得できるのは、戸籍に書かれている人か直系親族に限られるため、代理人が取得する場合は委任状が必要になります。
ただし、相続人調査を依頼できる専門家に頼んだ場合は、職権で戸籍謄本類を取り寄せることが可能です。
戸籍を読み解く
戸籍謄本には、被相続人とその戸籍に入っている全員の名前や生年月日、身分関係等が記載されているため、記載されている名前と続柄から相続人情報が得られます。戸籍謄本に、被相続人の「婚姻」「離婚」「養子縁組」「転籍」「認知」などの記載がないか確かめましょう。
戸籍謄本は、平成6年にデジタル化されました。平成6年以前の古い戸籍は手書きで記載されているため、読み取りづらいことがあります。読み取りづらい戸籍謄本の場合は役所に問い合わせをして正しい情報で読み解かなければなりません。
戸籍謄本の書式に見慣れていなければ、必要な情報を読み取れない場合があるので、見落とさないように注意しましょう。
相続関係説明図を作成する
全ての戸籍がそろったら、相続関係説明図(相続人関係図)を作成します。相続関係説明図とは被相続人と相続人の関係をまとめた家系図のようなものです。相続関係説明図には、名前・続柄・住所・生年月日等が記載され、被相続人から見た関係性を明確にすることに役立ちます。
相続の際に必ず用意しなければならない書類ではありませんが、相続関係説明図を作成しておくと、相続関係が一目でわかるためスムーズに手続きが進められます。
相続人調査の戸籍確認が大変な理由
相続人調査に必要な戸籍の確認は自分でも行えますが、非常に大変な行程です。どのようなところが大変なのか詳しくみていきましょう。
戸籍謄本などが膨大な数になることがある
相続人調査では、被相続人の戸籍から相続人が誰かを確認するために、死亡時から出生児までの戸籍を遡らなければなりません。人は一生のうちに、結婚・離婚・転籍等で戸籍を移動するたびに新たな戸籍が作られます。また、戸籍の様式が改められた場合にも、戸籍の改製が行われ、新しく戸籍が作り直されます。
兄弟姉妹が相続人になる場合は、被相続人の親の出生から死亡までの戸籍もさかのぼらなければならないケースがあり、その数は膨大です。
戸籍は本籍地のある役所で行う必要があり、全て同じ役所で手続きが完了するとは限りません。本籍地が変わっている場合はその本籍地に依頼する必要があります。郵送でも取得可能ですが、その都度それぞれの役所で手続きするのにも手間がかかり、煩雑な作業になります。
戸籍を読み解くには専門知識も必要になる
戸籍は普段見慣れないものであり、読み解くのが難しいものです。相続に関する知識がない場合は、チェックするポイントが分からず見落とす可能性があります。離婚・養子縁組・認知など、関係性が複雑になれば、誰が相続人になるのか分からなくなってしまう可能性もあるでしょう。
昔の古い戸籍の場合は手書きで書かれているため、文字が読み取りにくいケースもあります。役所で教えてもらうことも可能ですが、確認作業だけでも手間になってしまうことになるでしょう。
相続人調査を専門家に依頼するメリット
前述の通り、相続人調査を行うのは大変なため、専門家に依頼するのがおすすめです。専門家に依頼すると費用はかかりますがその分、メリットも多くあります。
- 煩雑な戸籍収集を代行してもらえる
- 相続人の見落としがない
- 手続きを代行してもらえる
- 相続関連のことを専門家に相談しやすい
- 法定相続情報証明制度にも対応してもらえる
詳しく確認してみましょう。
煩雑な戸籍収集を代行してもらえる
通常、戸籍の取得は戸籍に書かれている人か直系親族しかできず、代理人が取得する場合は委任状が必要です。
しかし、相続人調査を依頼できる専門家の弁護士・司法書士・行政書士・税理士は、業務に関するものに限って職権で他人の戸籍を取り寄せられます。その都度委任状を書かなくても、煩雑な戸籍収集を代行してもらえます。
戸籍収集は非常に大変な作業ですが、相続人調査を専門家に依頼すると、戸籍の収集を全て代行してもらえるのはメリットです。
相続人の見落としがない
戸籍を収集できたとしても、相続に関する知識が充分でなければ、相続人調査が確実に行えません。
特に「婚姻」「離婚」「養子縁組」「転籍」「認知」などの記載があった場合に、理解をしていなければ相続人を見落としてしまう可能性があります。
また、戸籍謄本を収集する時に、収集の抜け漏れが発生するケースもあります。戸籍は亡くなった時から出生時まで途切れることなく取得する必要があります。
戸籍の改製で新しく作り直された場合は、内容が同じでも改製前と改製後の両方が必要です。戸籍の見方に慣れていなければ、どこかで抜け漏れが発生する危険性がありますが、専門家に任せることでそのリスクが軽減します。
手続きを代行してもらえる
専門家に相続人調査を依頼することで、相続人調査以外の相続にまつわるさまざまな手続きも依頼することが可能です。
遺産分割協議書の作成・相続放棄の手続き・相続税の手続き・相続登記など相続に関連する手続きをまとめて依頼できれば手間も省けます。ただし、前述の通り専門家によっては専門外の手続きは対応できないため注意が必要です。
相続関連のことを専門家に相談しやすい
専門家に相続人調査以外の相続に関する手続きを依頼すれば、手続きの手間を省けるのと同時に、その他のさまざまな相談にも乗ってもらえるでしょう。
相続は、誰でも何回も経験するものではないため素人では分からないことだらけです。相続人調査以外にもやらなければならないことがたくさんあり、自分たちで調べて全ての手続きを行うのは至難の技です。
トラブルになった時に相談できたり、必要な手続きを指南してもらったりしながら、相続が滞りなく行えるようにサポートしてもらえれば安心です。
法定相続情報証明制度にも対応してもらえる
相続人調査を依頼できる弁護士・司法書士・行政書士・税理士には、「法定相続情報証明制度」にも対応してもらえます。
法定相続情報証明制度とは、法務局に戸籍謄本等と法定相続情報一覧図を提出することで、登記官の認証文が付いた一覧図の写しを交付してもらえる制度です。相続人の代表が必要書類をそろえて法務局に申出をすると無料で受け取ることができます。一覧図は、法定相続人が誰なのかを証明できる公的な書類になります。
従来では、相続の手続きには毎回、戸籍謄本等を全て用意する必要がありました。しかし、法定相続情報証明制度のスタートにより法定相続情報一覧図を利用して相続手続きができるようになったため、手続きの負担が軽減しています。
この、法定相続情報証明制度に関する手続きも専門家に依頼することが可能です。
相続人調査に期限は無い
相続に関する手続きには期限が定められているものがありますが、相続人調査自体に期限はありません。
例えば、相続放棄する場合は相続発生から3か月以内に手続きが必要です。相続放棄とは、相続人が被相続人の権利を拒否することを言い、親の遺産に借金が含まれる場合などに利用されます。
相続放棄の手続きが遅れたことでマイナスの遺産を引き継ぐことにならないように、期限内に相続放棄の手続きを済ませておく必要があります。
また、相続人は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に相続税を申告しなければなりません。
相続人調査自体に期限があるわけではありませんが、他の相続に関する手続きを進めるためにも、相続人調査を迅速に済ませておく必要があります。
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