遺産分割協議書はどこでもらえる?作る流れや必要書類を解説

「遺産分割協議書はどこでもらえるのだろう?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

遺産分割協議書は、どこかでもらうものではなく、原則として自分で作成します。既定のフォーマットはないため、Wordや手書きで作成して問題ありません。

こちらの記事では、遺産分割協議書はどこでもらえるのか、具体的な書き方などを解説していきます。ダウンロードして使えるひな形や遺産分割協議書を作る際の注意点もご紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。

1分でわかる!記事の内容
  • 遺産分割協議書は自分で作成できる
  • 作成方法がわからない場合は専門家に依頼するのがおすすめ
  • 遺産分割協議書には相続人全員の署名と押印が必須

遺産分割協議書はどこでもらえる?

被相続人(亡くなった方)が遺言書を用意していなかった場合、相続財産を分けるためには遺産分割協議書を作成する必要があります。まずは、遺産分割協議書はどこでもらえるのか解説します。

遺産分割協議書は原則として自分で作成する

遺産分割協議書は、原則として遺産を分割する当事者である相続人が作成します。「法務局でもらう」「金融機関でもらう」と勘違いする方は多いですが、相続人が自分たちで作成することが可能です。

既定のフォーマットはないため、WordやGoogleドキュメントで作成しても、手書きで作成しても問題ありません

遺産分割協議書は、法律により作成が義務付けられているものではありません。被相続人が遺言書を遺しており、一人でも「遺言書通りに財産を分けたい」という相続人がいる場合、遺産分割協議書を作成しなくても相続の手続きを進めることが可能です。

遺産分割協議書とは、遺言書がない場合に遺産分割協議を通じて、相続人全員が「遺産の分け方について同意した」ことを示す重要な書類です。権利移動の登記をするときや被相続人の遺産を移転するときに、遺産分割協議書が必須となります。

遺産分割協議書は、遺産分割方法について相続人全員が協議し、合意したうえで作成しなければなりません。遺産分割協議書は相続人の人数分を作成し、すべて相続人全員が署名・捺印する必要があります。

専門家に作成してもらうこともできる

遺産分割協議書は、以下のように行政書士や司法書士などの専門家に作成してもらうこともできます。

作成を依頼できる専門家
  • 行政書士
  • 司法書士
  • 弁護士
  • 税理士

遺産分割協議書を作成する機会は、一生のうちに何度もあるものではありません。いざ相続が始まり、遺産分割の手続きを進めるにあたって「どのように遺産分割協議書を作成すればいいのかわからない」と悩むこともあるでしょう。

遺産分割協議書の入手方法や作成方法がわからなくても、専門家に依頼すれば安心して任せられます。「相続人の間で遺産分割協議を行い、合意している」という状況であれば、遺産分割協議書の作成は費用を払えば専門家に一任できます。

ひな形は国税庁・法務局でダウンロードできる

遺産分割協議書のひな形・記入例は、国税庁・法務局のホームページからダウンロードできます。自分たちで遺産分割協議書を作成するにあたり、参考にするといいでしょう。

ただし、法務局に掲載されている遺産分割協議書のひな形は、不動産の登記申請の場面を想定しています。

相続財産に不動産以外が含まれる場合は、国税庁のホームページにある遺産分割協議書の記入例・ひな形を参考にしましょう。

遺産分割協議書を作る流れ

遺産分割協議書を作るためには、相続人全員が協議に参加し、同意しなければなりません。以下で、遺産分割協議書を作る具体的な流れを解説していきます。

相続人を確定させる

遺産分割協議書を作成するには、まず相続人を確定させる必要があります。相続人全員が同意しないと、有効な遺産分割協議書は作成できないためです。

そのため、まず被相続人の戸籍を調べて、誰が相続人に該当するかを確定させましょう。法定相続人となるのは、配偶者以外は下記の人が該当します。

相続順位
  • 第1順位:子
  • 第2順位:被相続人の父母など直系尊属
  • 第3順位:兄弟姉妹

被相続人の状況次第では相続人の確定に時間がかかってしまうケースがあるため、きちんと調べることが欠かせません。

相続財産を調査する

遺産の相続方法には下記の3種類があり、最適な方法を選択するためにも相続財産を調査しましょう。

単純承認 プラスの財産とマイナスの財産をすべて承継する
限定承認 プラスの財産とマイナスの財産があり、トータルがプラスになるときだけ承継する
相続放棄 プラスの財産もマイナスの財産も、そもそも相続しない

限定承認と相続放棄は、相続が発生したことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。きちんと相続財産を調査しないと、借金を承継することになる可能性があるため気を付けましょう。

遺言書の有無を確認する

遺言書があれば、そもそも遺産分割協議書を作成せずに相続手続きを進められる可能性があります。遺産分割の方法は、下記のように民法で決まっているためです。

遺産分割の方法
  • 遺言書がある場合:相続人全員の反対がない限り、遺言書通りに分ける
  • 遺言書がない場合:遺産分割協議書を作成して分ける

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

これらのうち、公正証書遺言は全国の公証役場に行けば、被相続人が遺言を作成していたか照会できます。秘密証書遺言に関しても、日本公証人連合会の「遺言検索システム」で、被相続人が遺言書を作成していないか照会することが可能です。

遺産分割協議を行う

被相続人が遺言書を作成していない場合は、相続人で遺産分割協議を行う必要があります。相続人全員が同じ場所に集まる必要はなく、遠方に住んでいる相続人に関しては電話や郵送で協議しても問題ありません。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割の方法について相続人全員の合意が取れたら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名と実印で押印する必要があります。全員が一堂に会して遺産分割協議書を作成するのがスムーズですが、遠方に住んでいる相続人がいる場合は、郵送で署名・押印をもらっても問題ありません

全員が原本を保管する

遺産分割協議書は相続人全員分を作成し、印鑑証明書とともに相続人が保存しなければなりません。不動産の権利移動の登記や金融機関で預貯金を口座から移転させるときに、遺産分割協議書が必要となります。

なお、役所や金融機関に提出した遺産分割協議書は、原本が返却されるケースがほとんどです。遺産分割協議書は1枚で足りるケースが多いものの、さまざまな手続きを同時進行させたい場合は、複数枚の遺産分割協議書を作成しておくと安心です。

遺産分割協議書の書き方

有効な遺産分割協議書を作成するためにも、正しい書き方を知っておくことは大切です。

作成した遺産分割協議書に不備があると作り直しになってしまうため、以下で解説する遺産分割協議書の書き方を押さえておきましょう。

各相続人が取得した相続財産を明記する

遺産分割協議書には、各相続人が取得した相続財産を明記しましょう。「誰が、どの財産を取得した」ことを明確に記さないと、役所や金融機関は手続きを受け付けてくれない可能性があります。

当事者以外の第三者が見たときでも、遺産分割の内容が分かるように記載することがポイントです。

不動産は謄本通りに書く

相続財産に不動産がある場合は、下記項目を謄本通りに遺産分割協議書へ記載しましょう。

土地 所在、地番、地目、地積、敷地権の種類と割合
建物 所在、家屋番号、種類、構造、床面積、部屋番号、床面積
1棟の建物 所在、構造、各階の床面積

不動産の謄本には、「1棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の目的である土地の表示」「敷地権の表示」など、記載が細かく分かれています。

記載が不正確だと法務局で登記手続きができない可能性があるため、謄本を見ながら正確な情報を遺産分割協議書に書くことが大切です。

預貯金・有価証券は支店名・口座番号まで書く

預貯金・有価証券について分割方法を記載する際には、銀行名だけでなく支店名と口座番号も記載します。

「同じ銀行で普通預金と定期預金の口座を持っている」というケースもありうるため、口座が特定できないと金融機関が預金の移転を受け付けてくれない可能性があります。

なお、残高に関しては記載しなくても問題ありません。

相続人全員の署名と実印を押す

有効な遺産分割協議書として取り扱うためには、相続人全員の署名と実印が必要です。一人でも漏れがあると「無効な遺産分割協議書」となり、作り直しとなります。

必ず正確に相続人の範囲を確定し、全員分の署名と押印をもらうことを忘れないでください。

遺産分割協議書の作成にあたって必要な書類

遺産分割協議書を作成するにあたり、下記の書類を用意する必要があります。

遺産分割協議書の作成に必要な書類
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 財産目録
  • 相続放棄受理証明書(相続放棄者がいる場合)
  • 寄与分特別受益に関する贈与契約書等の証拠(寄与分・特別受益がある場合)
  • 登記簿謄本
  • 残高証明書

相続財産を把握することと相続に関する事実確認をするためにも、上記書類は必要です。また、役所や金融機関で登記や財産の移転手続きをする際にも提出を求められることがあるため、事前に準備しておきましょう。

遺産分割協議書の提出先・必要になるシーン

遺産分割協議書の提出先や必要になるシーンは下記のとおりです。

提出先 必要になるシーン
金融機関 預貯金の移転手続き
税務署 相続税の申告
法務局 不動産の移転手続き
運輸局 自動車の移転手続き

さまざまなシーンで遺産分割協議書が必要となります。遺産分割協議書は「相続人の全員が遺産分割について合意した証明」となるため、各種手続きをするときには必ずと言っていいほど提出を求められます。

遺産分割協議書を作成するときの注意点

遺産分割協議書を作成するにあたり、注意するべき点があります。手続きに関する遅延を防ぎ、財産移転をスムーズに進めるためにも、下記で解説する内容を押さえておきましょう。

相続税が発生する場合は納付期限を守る

遺産分割協議書の作成期限は特にありませんが、相続税には申告期限があります。相続税は「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」に申告・納付を行わなければなりません。

法定期限を過ぎると重加算税や延滞税などの追徴課税が課されるため、要注意です。遺産分割協議がまとまらないときでも、「相続税には申告期限がある」ことは意識しましょう。

相続人全員の署名と押印を忘れない

有効な遺産分割協議書を作成するには、相続人全員の署名と実印が必須です。相続人のうち一人でも署名と押印が欠けている場合は、せっかく作成した遺産分割協議書が無効になります。

「財産を相続させたくない相続人がいる」と考えていても、相続人全員の同意や署名・押印が必要となる点は押さえておきましょう。

財産移管手続きでは原本が必要となる

役所や金融機関で財産移管手続きをするときは、遺産分割協議書の原本が必要です。コピーでは原則として手続きを進めてくれないため、必ず原本を持参しましょう。

手続きが完了したら遺産分割協議書の原本は返却されますが、中には原本がそのまま回収されてしまうこともあります。そのため、事前に「原本は返却されるか」を確認したうえで、手続きに必要な枚数分の遺産分割協議書を作成すると安心です。

遺産分割協議書に関するよくある質問

最後に、遺産分割協議書がどこでもらえるのか、書き方に関するよくある質問を紹介していきます。多くの方が疑問に感じるポイントをピックアップしたので、参考にしてください。

相続人が遠方に住んでいる場合はどのように作成する?

郵便で署名・押印と印鑑証明書をもらうケースが一般的です。遺産分割協議は「必ず全員が一堂に会して行う」必要はありません。

なお、遺産分割の方法に関しては、電話やメールなどで話し合うことも可能です。

遺産分割協議書の書き方に決まりはある?

遺産分割協議書に既定のフォーマットはありませんが、書き方として下記のポイントに注意する必要があります。

遺産分割協議書記載時の注意ポイント
  • 各相続人が取得した相続財産を明記する
  • 不動産は謄本通りに書く
  • 預貯金・有価証券は支店名・口座番号まで書く
  • 相続人全員の署名と実印を押す

相続財産が不明確な場合や、相続人全員の署名と押印がない場合は無効と判断されるため、気を付けましょう。

遺産分割協議書はスマホで作成できる?

遺産分割協議書はスマホで作成できます。ただし、相続人全員の押印に関しては、電子化できません

相続人が自分一人のときも遺産分割協議書は必要なの?

相続人が一人の時は、遺産分割協議書は不要です。そもそも、相続人が一人の場合は遺産を「分割する」という概念がないためです。

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