「不動産相続について相談したいが、誰に相談すればいいの?」「相談に行くべきタイミングを知りたい」不動産の相続に関し、このようにお悩みの方はいませんか?
不動産が絡む相続は、特にトラブルに発展しやすく、手続きを間違えると多額の納税義務を負ってしまう可能性があります。そこで不動産相続に際しては、各種専門家に相談したうえで適切に手続きを行う必要があるのです。
この記事では、不動産相続について相談できる専門家や、相談すべき内容を分かりやすく解説します。また、相談にいくべきタイミングや事前に用意する書類、手続きの費用相場も解説します。
- まずは弁護士や司法書士などの総合専門家に相談する
- 行政や法テラスなどの無料相談窓口も活用する
- 早めに書類を集めて相談に行くことが重要
不動産相続の相談ができる専門家
どこに相続相談をすればいいのかお悩みの方に向けて、不動産相続の相談先と、主な相談内容について具体的に解説します。
適切な相談先をしっかりと理解し、問題解決のための第一歩を踏み出しましょう。
弁護士|遺産分割協議など法律問題
弁護士は法律関係全般のプロフェッショナルであり、不動産相続でも強い味方となります。
不動産がからむ相続は、特にトラブルに発展する可能性が高いです。遺産分割協議がまとまらない場合には調停や審判など裁判所での手続きに移行し、解決までに1年以上の時間を要してしまうこともあります。
早い段階で弁護士に介入してもらい、法的かつ客観的な視点からのアドバイスを受けることで、トラブルの防止を図ることが可能です。
弁護士は税務手続き以外ほぼすべての法的問題に対応できるため、複合的な問題を抱えている場合や、何が問題となるか分からない場合には、まずは弁護士に相談しましょう。
不動産鑑定士|不動産の鑑定
不動産を相続する場合、相続人同士のトラブルを避けるためには、不動産鑑定士の専門的な鑑定が不可欠となります。
不動産鑑定士は、その名のとおり不動産価格を鑑定するプロフェッショナルであり、市場価格や物件の特性に精通しているため、適正な価格算出ができます。
とはいえ、相続問題を抱えている方が、最初から不動産鑑定士に鑑定を依頼することはあまり多くありません。一般的には、いわば総合窓口にあたる弁護士や司法書士などに相談したあとで、提携している不動産鑑定士を紹介してもらうこととなります。
司法書士|変更登記手続
司法書士は、不動産の所有権移転や名義変更など登記手続に関する専門家で、弁護士をもしのぐ専門性を有しています。実際、弁護士も法的には登記手続を代行できますが、多くの弁護士は提携している司法書士に登記手続を外注します。
登記手続は自力で進めることも可能ですが、適切に手続きを行ってトラブルを防止するためには、司法書士に依頼するのがおすすめです。
他にも、司法書士は戸籍等の必要書類の収集や、遺産分割協議書の作成などの業務も行えるため、費用を抑えたい方はまず司法書士に相続の相談をしてみましょう。
行政書士|書類の準備や作成
行政書士は、各種許認可や申請書類など、行政に提出する書類の作成・収集のエキスパートです。
書類に関連した法的アドバイスも受けられますが、行政書士は基本的に書類の作成や収集がメインの業務であり、弁護士や司法書士ほど職域は広くありません。
とはいえ、資格保有者の数が多く、比較的報酬も安く設定されていることから、「街の法律屋さん」として最初に相談するのもおすすめです。
特に、基本的には相続手続きを自力で進めるつもりで、一部の書類の作成・収集を行政書士に依頼する場合には、とても心強いパートナーとなるでしょう。
税理士|相続税などの税金関係
唯一、税務手続を代行できる専門家である税理士は、相続に関する相談にも対応しています。
相続では相続税のほか、生前贈与がある場合には贈与税・不動産取得税など、さまざまな税金が絡んできます。税金対策になると思ってした行為が、かえって税金の負担を大きくしてしまうケースも少なくありません。
不動産が相続財産に含まれる場合など、多額の相続財産がある際は、弁護士など法律家に相談するのと同時に、必ず税理士にも相談するようにしましょう。
特に相続財産が3,600万円を超える場合には、相続税が発生する可能性が高いため、早急な相談をおすすめします。
不動産会社|売却や賃貸
不動産の売却や、賃貸としての活用を考えている場合には、不動産会社のアドバイスが必要です。不動産会社は、市場の動向や物件のポテンシャルを考慮し、最適な方針を立てられるようにサポートしてくれます。
専門家に相談する際にも同様のことがいえますが、できれば複数の業者を訪問し、最も合理的な提案をしてくれる業者を選定するようにしましょう。
不動産相続の相談に行くべきタイミング
不動産相続に関する相談をするタイミングとして、大きくわけると3つのタイミングがあります。
- 相続開始前・生前対策
- 相続開始後3カ月以内
- 相続開始3カ月超
それぞれのタイミングで考慮すべき内容が異なってくるため、以下の内容を参考に、具体的な相談内容をあらかじめ検討しておきましょう。
相続開始前・生前対策
相続財産に不動産が含まれる場合には、トラブル防止と節税の観点から、相続開始前(生前)に相談に行くのが望ましいといえるでしょう。
相続開始前であれば、生前贈与や遺贈(遺言書で贈与相手を指定すること)により、相続させる相手を指定できるため、相続トラブルを回避できます。また、相続税を大幅に軽減できる可能性もあります。
ただし、生前対策によって、かえって税金の負担が重くなったり、他の相続候補者に不満を募らせたりする可能性もあるため注意が必要です。
生前対策を行う場合にも、さまざまな角度から専門家の指示を仰ぐことがおすすめです。
- 法的観点→弁護士・司法書士・行政書士
- 税的観点→税理士
- 不動産特有の観点→不動産鑑定士・不動産会社
相続開始後3カ月以内
相続開始後(被相続人の死亡後)、3カ月以内であれば、原則として相続放棄が可能です。
相続では、ローンや借金などマイナスの財産も承継の対象となり、相続税の支払いは原則一括で行われます。相続によって不動産を取得したとしても、トータルでみると大幅なマイナスを抱えてしまうことも珍しくありません。
不動産など大きな財産を相続する場合には、相続財産と相続人の数を把握し、相続放棄が必要かどうかしっかりと見極めましょう。
仮に相続人全員が相続放棄をする場合、不動産は国庫に帰属することとなります。ただし、この場合には清算人を立てた手続きが必要となるため、通常の相続放棄よりも手続きが複雑になります。
相続開始後3カ月以内に相談する場合にも、法律・税金・不動産取引など多角的なアドバイスを受ける必要があるといえるでしょう。
相続開始3カ月超
相続の開始を知った後3カ月が経過してしまうと、原則として相続の放棄ができなくなります。
そのため、基本的には相続した不動産を相続人の間で分割するか、特定の相続人に相続させるために遺言書がない場合は遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議の過程では、不動産価値の適正な価値や、各相続人の意向・要望など、多くの要素を考慮しなければなりません。一方で、不動産が絡むとどうしても感情的な議論に陥ってしまいがちです。
できる限り早い段階で専門家や中立的な第三者の助けを借り、早急にトラブルの芽を摘み取る必要があります。
不動産相続の相談に行く前に準備するもの
専門家に不動産相続の相談をする際、基本的に何も用意する必要はありません。特に弁護士などの専門家は書類の収集も業務として行えるため、極論をいうと相談者の身分証明書と印鑑があれば大丈夫です。
しかし、相談をスムーズに進め、より適確に相談内容を伝えるために、あらかじめ書類等を用意しておくことをおすすめします。
以下からは、相談に行く前にできれば準備しておきたい書類等をご紹介します。
相続に関する書類
まずは、相続全般に関する書類です。ここでご紹介する書類を揃えておくと、相続財産や相続人の詳細がわかるため、今後の手続きをしっかり把握できます。
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本(被相続人および相続人全員分)
- 印鑑登録証明書(相続人全員分)
- 家系図、時系列表
- 被相続人の預金通帳
- 株式・ゴルフ会員権・生命保険書・損害保険書や有価証券
- 被相続人の年金手帳
- 借用書、保証人契約書
- 自動車の車検証 など
特に、遺言書は極めて重要です。遺言書は被相続人の意思を反映したものとして、基本的に遺産分割協議書よりも強い効力をもつためです。
したがって、まずは遺言書があるか確認してください。遺言書が公正証書遺言ではない場合、原則として裁判所での検認手続きが必要となるため、開封せずにそのまま専門家のもとに持参しましょう。
不動産に関する書類
相続財産に不動産が含まれる場合には、不動産に関する書類が必要です。
- 不動産の権利書(登記済権利証または登記識別情報通知)や登記事項証明書
- 固定資産税の課税証明書(納税通知書)または固定資産税評価証明書
- 賃貸契約書
- ローン契約書、借用書
これらの書類は、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などが職権で取り寄せることも可能ですが、自宅等に保管されている場合も多いため、まずは手元にないか確認してみましょう。
不動産相続の相談は無料でできる?
不動産の相続は、人生でそう何度も経験する出来事ではないため、専門家への相談を考えている方も多いでしょう。一方で、どうしても相談にかかる費用に不安を覚える方も多いのではないでしょうか?
実は不動産相続に関しては、弁護士などの専門家のほか、一部の公的機関が無料相談を実施しています。具体的な相談先や、手続きを依頼した場合の費用等に関して解説します。
役所や法テラスなどの無料相談窓口を活用しよう
相続に関しては、各市区町村のほか、国税庁や法テラス(正式名称:日本司法支援センター)等にて無料相談を受けられます。
具体的な相談先や、主に相談できる内容は以下の通りです。
相談先 | 相談できる内容 |
---|---|
各市区町村 | 法律・税金・登記など行政手続一般 |
国税庁 | 税金 |
税務署 | 税金 |
法テラス | 法律全般(弁護士・司法書士) |
弁護士会 | 法律全般 |
司法書士会 | 法律(主に登記) |
不動産鑑定士会 | 不動産(主に不動産鑑定) |
行政書士会 | 法律(主に書類関係) |
税理士会 | 税金 |
実際に相談に行く際には、上記の表からリンクを辿るか、Googleなどで「不動産 相続 相談 〇〇(相談先の名称)」と検索し、最寄りの管轄団体の相談窓口を検索しましょう。
ただし、こうした窓口の無料相談では、必ずしも不動産相続に精通している担当者に相談できるとは限りません。あくまで一般的な情報提供や手続きのガイダンスを目的としているため、個別具体的な相談には乗ってもらえない可能性があります。
多くの専門家は初回の相談を無料で受け付けているため、まずは家の近所で開業している事務所が無料相談を実施しているか問い合わせてみることをおすすめします。
専門家に手続きを依頼した場合の費用相場
専門家に相続に関する具体的な手続きを依頼した場合、着手金や報酬などの費用が発生します。また、2回目以降の相談は時間制の有料になることが一般的です。
各専門家に不動産相続関係の手続きを依頼した場合の費用相場は、各専門家の方針や地方によって異なりますが、おおむね次のとおりです。
依頼先 | 費用相場 |
---|---|
弁護士 | 相談料:1時間あたり5,000円~1万円 着手金:20万円~60万円 成功報酬:経済的利益の5%~15% ※調停や審判などの紛争処理の場合 |
司法書士 | 相談料:1時間あたり5,000円~1万円 報酬:6万円~8万円 ※所有権移転登記を依頼した場合 |
不動産鑑定士 | 相談料:1時間あたり3,000円~7,000円 鑑定料:20万円~30万円 |
行政書士 | 相談料:1時間あたり5,000円~1万円 報酬:5万円~7万円 ※公的書類の作成を依頼した場合 |
税理士 | 相談料:1時間あたり5,000円~1万円 基本報酬:遺産総額の0.5%~1.0%程度 加算報酬:相続人の人数ごとに基本報酬の10%など |
実際には案件の複雑さや相続財産の価格など、さまざまな要因によって費用は大きく変動するため、初回の相談時に必ず見積もりを出してもらいましょう。
不動産相続に関して知っておきたい基礎知識
ここまで解説したように、不動産の相続にあたっては各種専門家に相談したうえで、適切な手続きを行うことが大切です。
各専門家はそれぞれの分野のプロフェッショナルであり、極力簡単な言葉で説明をしてくれますが、相談者としてもあらかじめ相続に関する最低限の基礎知識を押さえておくと、よりスムーズに相談を進められます。
そこで以下からは、不動産相続に関して知っておきたい基本的な知識を解説します。
不動産相続にかかる税金や費用
不動産の相続により、さまざまな税金や費用が発生します。代表的なものは相続税ですが、場合によっては所得税や住民税を加算される場合もあります。
名称 | 課税されるケース |
---|---|
相続税 | 不動産の価額が各種控除を上回る場合遺贈を受けた場合 |
登録免許税 | 不動産の登記名義を変更した場合 |
固定資産税 | 不動産を保有しつづける場合 |
贈与税不動産取得税 | 生前贈与を受けた場合 |
所得税住民税 | 家賃収入や売却益を得た場合または相続人に未納税があった場合 |
不動産相続に対しては、さまざまな控除が設けられています。基礎控除だけでも多額の控除を受けられます。
- 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
その他にも各種控除があるものの、実際に適用できるかどうかの判断は極めて難しいです。悩んだときは税理士へ相続について相談することをおすすめします。
不動産の共有は避けたほうが無難
相続財産のうち不動産は、遺言がない場合、遺産分割協議が終わるまでの間、法定相続人全員の共有状態となります。
不動産の共有は法的に不安定な状態であり、望ましくないとされています。共有状態のままでは、不動産の売却や活用に際して共有者全員の同意を得る必要があり、不動産の処分等が難しくなってしまうためです。
また、相続人の1人が亡くなった場合、さらに共有名義人が増えることとなり、収集がつかない事態に陥いるリスクもあります。
不動産を複数人で相続した場合には、できる限り早い段階で遺産分割協議と登記変更手続きを行い、早急に共有状態を解消するようにしましょう。
相続放棄と相続税支払いには期限がある
相続手続きにおいて、相続放棄と相続税の納付には期間制限がある点に注意しましょう。
- 相続放棄の期限:原則として相続開始を知った日の翌日から3カ月
- 相続税の納付期限:相続を知った日の翌日から10カ月以内
3カ月を経過するともはや相続放棄ができず、10カ月を経過すると遅延税などのペナルティを課せられるおそれがあります。
期限内に相続手続きを行うためにも、早めに書類を揃えて専門家に相談し、適切に手続きを終えるようにしましょう。
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