あまり考えたくありませんが「喪主になったら何をすればいいのだろう?」と不安になったことはありませんか?
喪主は責任が重く、判断すべきことが数多くありますから、早い段階から役割を知っておきましょう。
この記事では、喪主とは何かを明らかにしたうえで、喪主の役割から決め方、葬儀後の手続きまでを解説します。
- 喪主は葬儀の日程や会場を決定する
- 喪主は続柄を重視して決めることが多い
- 喪主は葬儀後も死後手続きを行う役割を担うことになる
喪主とは
葬儀を行う際は、進行役である喪主が欠かせません。喪主がどのような存在なのか、「施主」との違いとあわせてご紹介します。
喪主は葬儀の責任者
喪主とは、葬儀を執り行う責任者で葬儀の運営に関して最終決定権を持ちます。葬儀をスムーズに執り行うためには、喪主の果たす役割は大変重要です。
葬儀社を決めるところからはじまり、葬儀社との打ち合わせや寺院との連携など、葬儀に関するあらゆる業務を担います。遺族の代表者であり、葬儀の責任者でもあるため、滞りなく個人を弔うために欠かせない存在なのです。
喪主の役割や決め方の詳細は後述します。
喪主と施主の役割の違い
葬儀では、喪主と似た立場で施主という方もいます。施主とは葬儀費用を負担する方のことをいいます。
現在執り行われる個人葬では、施主と喪主が同一人物になるのが一般的です。社葬では役割が分けられ、喪主が遺族側、施主が会社側になります。
費用負担をするので、葬儀に関わる葬儀社とのやりとりは施主が中心となって行います。葬式の進行や内容の打ち合わせ、見積もりや契約、手伝いの手配、受付の準備、席順や供花の順などを喪主の意向を汲みながら葬儀社の間に立って調整をするのです。
施主の決め方についての規則はありません。遺族の合意があれば誰が施主を務めても構いませんが、費用を負担できることが前提です。そのため配偶者や子どもなど、故人と近い血縁者が務めるのが一般的です。
近年の傾向として、高齢の配偶者が喪主を努め、成人した子どもが施主として費用を負担するという方法も増えています。
喪主の役割
喪主は、通夜や葬式の本番はもちろんのこと、葬儀を執り行う前からやるべきことが数多くあります。具体的な役割は、次のとおりです。
- 葬儀社の決定
- 通夜や葬儀の日時の決定
- 訃報の連絡
- 死亡届の提出
- 葬儀社との打ち合わせ
- 遺影を選ぶ
- 供花の順番を決める
- 寺院と調整を行う
- 葬儀中の挨拶
- 世話役、ご近所へのお礼
- 葬儀終了後の後片付け
それぞれの役割について詳しくご紹介していきましょう。
葬儀社を決定する
故人が病院で亡くなった場合、遺体は霊安室に移動します。安置時間は長くて24時間ですから、それまでに葬儀社を決めて搬送する必要があります。
葬儀に対する考え方を故人が生前に示していたら、できる限り意向に沿った形で進めましょう。
何も聞き及んでいない場合は、遺言書やエンディングノートなどを確認します。大学病院などに献体登録をしていることがありますので、登録カードの有無も確認してください。
葬儀社が決まっていない場合は、故人が亡くなった病院の紹介で決めることもあります。その場合、必ずしも葬儀までを依頼する必要はなく、搬送のみの依頼でも可能です。
訃報の連絡をする
医師が死亡の判定をしたら、取り急ぎその場にいない家族や親族へ訃報の連絡をします。訃報の連絡は、喪主が中心となって行います。
その後、通夜、葬儀の日程が決まれば、勤務先や友人知人などの故人が生前交流していた方々に連絡しましょう。連絡先が多く、喪主だけで対応できないときは、他の家族と役割を分担しても問題ありません。
ただし、同じ方に重ねて訃報を伝えないように注意してください。訃報を伝える際は、次の順序で話します。
- 故人と電話主との関係を伝える
- 故人が逝去した日時を述べる
- 葬儀の日程、会場を伝える
具体的には、次のような文言になります。
〇〇(故人の名前)の妻の〇〇(喪主の名前)でございます。夫の〇〇が10月16日に永眠いたしました。お通夜は10月17日の午後6時より、葬儀は18日の午前11時より、〇〇斎場で執り行います。
死亡届を提出する
死亡の判定をした医師より「死亡診断書」が発行されますので、速やかに死亡届の手続きを行います。
死亡届の提出期間は7日以内と、法律により定められています。しかし、死亡届を提出しないと火葬ができませんから、時間的な余裕はあまりありません。
届出先は「死亡者の本籍地」「届出人の所在地(住所地)」「死亡地」のいずれかの市区町村の役所です。
死亡届の提出は喪主以外の方でも行えますから、忙しくて手が回らない場合は、他の家族や葬儀社にお願いしましょう。
葬儀社と打ち合わせを行う
喪主の重要な任務として、葬儀社との打ち合わせがあります。打ち合わせの場に他の遺族が同席しても問題はありませんが、その場であれこれ揉めないように進めることが大切です。
施主を他の方が務めている場合は、費用に関わる話が多いので、必ず施主にも同席してもらいます。
葬儀社との打ち合わせでは、主に次のようなことを決めます。
- 通夜や告別式の日程
- 斎場や会場
- 葬儀までの安置場所
- 会葬者の人数
- 会食の有無
- 香典辞退の有無
- 返礼品の有無
- 葬儀費用の見積り
- 葬儀費用の支払い方法
特に判断が求められるのが葬儀の規模についてです。会葬者の人数がどれくらいになるのかが、葬儀全体を左右する重要なポイントになるので事前に想定しておく必要があります。
遺影を選ぶ
葬儀の手配では、遺影の選択も行います。生前の印象に近く、故人の個性が生かされた画像を選びましょう。
故人が生前用意している場合もありますので、エンディングノートなどを確認します。通夜に間に合わせるよう、開始時間の5時間前までに決定する必要があります。
供花の順番を決める
供花(くげ)が届いたら、どのような順番で配列するのかを決めるのも喪主の役目です。生前に故人と関係性が近かった方を遺影の近くに並べます。祭壇を挟んで、上段から右、左と左右交互に並べていきます。
次のような順に並べるのが一般的です。
- 喪主の兄弟(その妻)
- 喪主の姉妹(その夫)
- 喪主の子ども
- 故人の兄弟、姉妹(その妻や夫)
- 故人の妻の兄弟、姉妹
- 喪主の兄弟、姉妹の子供
- 喪主の妻の両親
- 喪主の兄弟の妻の両親
- 喪主の姉妹の夫
- 喪主の従兄弟姉妹
- 故人の友人等
- 会社関係者
社会的地位には配慮せず、故人との関係性を重視した配列を心がけます。
寺院と調整を行う
寺院の住職と葬儀の日程や戒名などに関して、打ち合わせを行います。葬儀の際のお布施や僧侶のお車代などを渡すのも喪主の役割です。
菩提寺(先祖のお墓があるお寺)がある場合は、できるかぎり早く連絡をして、通夜や葬式の日程と読経をお願いする僧侶の人数などを相談します。戒名の依頼も合わせて行います。これらにかかるお布施の金額も確認しておいたほうが安心です。
菩提寺があるのに連絡をせず、葬儀社からの紹介で僧侶や戒名の手配を進めると、菩提寺に納骨できないといったトラブルになる可能性があるので注意してください。
菩提寺がなく、仏式を選択する場合は、葬儀社に宗派を伝えて僧侶を紹介してもらいます。
挨拶をする
喪主は遺族を代表して会葬者に挨拶をします。挨拶は、次の3つの場面で必要になります。
- 通夜終了時
- 出棺時
- 精進落とし時
それぞれ、2〜3分を目途に行いましょう。
たとえば、通夜終了時に喪主の挨拶を故人の息子が行う場合には、次のような事柄を話します。
本日はご多忙中にもかかわらず、参列いただきまして心よりお礼申し上げます。故人もさぞかし喜んでいることと存じます。ささやかではございますが、別室にお食事の用意をしております。ご都合の許す方は、ぜひお時間の許す限り、父〇〇との思い出話をお聞かせ願えればと存じます。
なお、明日の葬儀は、△△時より××にて行います。なにとぞよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。
喪主の決め方
喪主の決め方については規則がありませんから、遺族が自由に決められます。
ただし民法に「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する(第897条第1項)」とありますので、生前故人が喪主に指名した方がいないかを確認してください。
喪主に指定された方がいなければ遺族間で話し合って決めます。喪主は、続柄を重視した慣習によって決めるのが一般的です。
続柄を重視する場合
夫婦と子どもがいる家族で、夫が亡くなったケースでは、配偶者である妻が喪主を務めるのが典型的な事例といえるでしょう。ただし、高齢や病気などの理由で妻が喪主を務めることが困難だと判断される場合は、子どもが務めることもあります。
子どもが喪主を務める場合は、長男、次男以降の直系の男子、長女、長女以降の直系の女子の順で喪主を務めるのが慣習です。
日本の古くからの慣習とされる順位は次のようになります。
- 長男
- 次男以降直系の男子
- 長女
- 長女以降直系の女子
- 故人の両親
- 故人の兄弟姉妹
ただし近年では、直系の男子がいる場合においても、長女などの直系の女子が喪主を務めるケースも珍しくはありません。
血縁がいない場合
故人に血縁がいない場合や血縁内で適任者が見つからない場合は、友人が喪主を務める方法があります。または入所していた介護施設の代表者などが喪主を務めることもあります。
このようなケースでは、「友人代表」や「世話人代表」と呼ぶのが一般的です。
さらに友人にも喪主の引き受け手がいない場合は、葬儀社やお寺の住職に喪主の代行をお願いする方法があります。
葬儀後の喪主の役割
喪主というのは葬儀の場での呼称ですが、遺族の代表という立場上、葬儀が終了した後もやるべきことが多くあります。葬儀後にどのような役割があるのか、ご紹介していきましょう。
埋葬先の決定
埋葬先を決めることも喪主の役割です。近年は、お墓への納骨(火葬の後に遺骨を納めること)を選択しない方が増えています。
お墓に納める場合は、遺族が集まる四十九日法要に合わせて行われるのが一般的です。
ほかにも散骨や樹木葬などのさまざまな選択肢がありますので、できるかぎり故人の生前の希望に沿った形で行うことが供養になります。
死後手続き
喪主には、家族の死後に行う手続きが数多くあります。死亡届けの提出や埋葬許可書交付申請以外にも、行政関係では次のような死後手続きがあります。
また、民間企業関連の手続きとして、つぎのような死後手続きが想定できます。
- 各種会員証の解約
- 水道、電気、ガスの解約(名義変更)
- NTTの解約(名義変更)
- NHKの解約(名義変更)
- 携帯電話の解約
- インターネット(回線・プロバイダ)の解約
- クレジットカードの解約
- レンタル用品の解約
- 生命保険の請求手続き
- 火災保険の名義変更
- 医療保険の請求手続き
相続手続き
遺族の代表という立場では、相続手続きも重要な役割です。相続手続きは、次のような流れで進められます。
四十九日法要
四十九日法要は葬儀後の最も重要な法要ですから、早い段階で準備が必要になります。日取りや場所決め、本位牌、仏壇の用意、食事の手配などの準備が必要です。
香典返しの手配
四十九日法要に合わせて香典返しの手配をします。香典返しは、四十九日法要の後に贈るのが一般的です。法要が無事に終わったことを伝える挨拶状を添えて香典返しの品物を贈ります。
香典返しを贈る時期は、四十九日法要後1カ月以内が目安となりますが、すぐに贈っても問題はありません。
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